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御社の営業がダメな理由

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著者:藤本篤志、出版社:新潮新書
 新聞で大きな広告をうっていましたので、つい気になって読んでみました。センセーショナルな題名ですが、書いてあることは至極もっともな、いわばオーソドックスな営業展開をすすめている本だと受けとめました。
 営業セミナーや営業研修に、いくら時間と資金を費やしても、さしたる効果は得られない。営業センスとは、第一印象がよいこと(明るさ、信頼できると感じさせる話し方など)、ポジティブで負けず嫌いな性格、記憶力、質問に簡潔にこたえる能力、洞察力、的確なヒアリング能力、人の悪口を言わない性格。このなかでもっとも重要なのは、洞察力とヒアリング能力。
 営業マンにとってもっとも大切なことは、ひたすら勤勉に営業先をまわって、可能な限り確率の母数を広げること。門前払いをくわされたときには、すぐ次のセールス先に移動することができ、無駄な時間をつかわなくてすんだと喜ぶべき。まあ、ものは考えよう、ということです。
 営業日報を書くなんてムダなことだからやめよう。著者は、こう提案しています。
 日々、営業日報に記載するという作業が、営業マン一人一人の貴重な営業時間を奪いとっている。標準社員の無意識的な怠慢時間、つまり結果的怠慢時間の温床となっている。営業日報を記載する作業は、営業マンを働いているつもりにさせるだけ。現実問題として、営業日報に書かれたウソは絶対に見抜くことができない。
 強い営業組織をつくるためには、営業マネージャーに課したノルマをきれいさっぱりと外さねばならない。どんな営業マネージャーであっても、自分のノルマが達成できるまでは、決して部下の行動を管理できない。営業マネージャーは、一人の部下から一日30分のヒアリングをすること。そして同行営業をする。
 営業マネージャーの部下は、多くて7人までが限界。それでも、一日に4時間ほどのヒアリングをして、クロージング案件に顔を出し、さらに社内の会議や調整に追われる激務の日々となる。
 うーん、そうなんですか・・・。そう言われたら、きっとそうなんでしょうね。そう思います。
 営業の方程式とは、結果的怠慢時間を減らす努力に会社全体で取りくむことにより、営業量を増やし、そして会社の発足以来積み上げてきた、今まで経験してきた営業を行ううえで必要な知識を集約し、社員の頭の中に積み上げていくこと。なーるほど、ですね。標準的社員のやる気を引き出す、そのためにムダな時間を削るということのようです。
 何事につけ、真理は単純ななかにあるようです。

うちのネコが訴えられました

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著者:山田タロウ、出版社:角川書店
 アメーバブログ第1位とオビに書かれています。「実録ネコ裁判」を一冊の本にしたものです。裁判に一度も関わったことのない人にとっては、その顛末がきっと面白いのだと思います。
 実は、私も目下、お隣りに住む暴力団員から、おたくのネコがうちの高級外車を傷つけたとして損害賠償を求められた裁判を扱っています。といっても、裁判を起こしたのは私の方です。コワーイお兄さんと直接交渉するのは遠慮したいので、裁判所を中に入れることにしたのです。
 「うちのネコ」がその車の上に何回も乗って爪でキズつけたというのが先方の主張です。でも、何の証拠があるわけでもありません。車の上に「うちのネコ」が乗っている写真もなければ、「うちのネコ」がその高級外車を傷つけたという証拠もないのです。いや、おまえのところの白いネコが車にキズつけているのをオレは確かに見たんだという「証言」があるだけなんです。それで100万円の請求です。
 この本では高級外車BMWの上に被告の飼いネコがたびたび乗って、その爪で傷をつけたとして、修理代金110万円が請求されています。そして、ネコが車の上で寝ている写真などが証拠として提出されています。裁判の2回目で2人の証人が調べられ、原告と被告の本人たちも証言します。なんと、定刻の5時を過ぎて、6時ころまで証人調べがおこなわれました。ええ、ときどきあるんです。裁判所では5時前に終わるのがあたりまえではありますが、まれに夜8時とか9時すぎまであることも絶無ではありません(ただし、私は経験したことはありません)。
 原告が当然のことながら立証に失敗して、原告の請求は棄却となりました。あっ、これは本人訴訟です。弁護士のところに相談に行ったのですが、合計したら弁護士費用が20万円以上かかるだろうと言われて、自分でやることにしたのでした。
 そうなんです。裁判は自分でもできるんです。でも、それには相当勉強もしてから行くようにしてくださいね。裁判を甘く見ていたらいけません。
 といっても、弁護士をつけない本人のほうが勝つことがないわけではありません。そんなときには大金をいただいている弁護士としては、本当に申し訳なく思ってしまいます。トホホ・・・の心境です。
 朝、わが家から出た蛇が隣家へ遊びに出かけているのを見つけました。1メートルくらいの長さの元気な蛇です。暑いなか、ご苦労さん、と声をかけてやりました。真紅の朝顔、爽やかなブルーの朝顔が咲いていて、雨戸をあけるときが楽しみです。夏本番は今しばらく続きそうですね。いただきもののウナギを食べて精をつけながら、この夏を乗り切るつもりです。

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

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著者:山口真美、出版社:平凡 赤ちゃんはもっとも身近にいる、未知の生命体だ。
 なーるほど、そうなんですよね。これは3歳未満の体験を誰も何ひとつ語ることができないということからくるものにもよります。
 姿形は私たちと同じ人間ではあっても、何を見て何を考えているか、まったく分からない。私たちの近くにいるにもかかわらず、赤ちゃんは別世界の住人なのだ。
 赤ちゃん学は、この30年ほどですすんだということです。ちょうど私の弁護士生活と重なっています。少しは私の認識も進歩したでしょうか・・・。実はまったく心もとないものがあります。クライアントには決してそんなことは言えませんが、実は法律の知識がかなり怪しくなってきているのです。今では絶えず弁護士になりたての若手に確認しておかないと不安です。ホントのことです。いえ、なにも若年性のアルツハイマーにかかったと「告白」しているのではありません。ちょっとでも縁が遠くなると、その分野についての知識が急速に忘却していくということなんです。これは、まったくの自然現象です。少なくとも本人はそう考えています。
 先天性の白内障を手術して治したとき、どうなるか。よくても色が分かる程度で、形や景色を読みとるには、ほど遠い。つまり、網膜に光が到達しただけでは世界は見えない。風景も文字も、実は、あらゆるものが、見るのはとても難しいこと。眼があるというだけで、見えることにはならない。
 胎児のときから音を聞き、生まれた直後でも眼が見える。生まれたばかりの新生児の視力は0.001程度。生後半年でも0.2程度の視力しかない。眼の水晶体(レンズ)の焦点は大人にあわせてできているので、赤ちゃんの小さな眼球にはあわない。レンズの焦点は眼球が成長したときにあうよう、網膜のうしろで結ばれるようになっている。
 見る経験は、受け身の状態ではムダだということが分かっている。自ら積極的に環境に関わりながら見ることが必要なのだ。動きを見ることは、形を見ることとはまったく異なるものだ。脳の異なる部位が働いている。
 赤ちゃんには、目新しいモノに注目し、見慣れたモノには注目しないという特性がある。赤ちゃんにとって、人間の顔は、目や鼻、口といった部分ではなく、それらが並ぶ配置こそが大切なのだ。たとえば、赤ちゃんは、生まれてから2日間、母親の顔を見た時間が11時間から12時間を超えると、お母さん顔を好むようになる。これも、生まれたばかりの赤ちゃんをじっくり観察して分かったものなんです。学者ってすごい忍耐力と想像力を必要とするんですね。
 ところが、ニホンザルは、育てられた種の顔を好む。たった3時間の見る経験で、お母さん顔への好みが成立する。ヒトの6倍の速さだ。すごーい。
 生後3ヶ月の赤ちゃんは、サルの顔もヒトの顔も同じように分けへだてなく個体を区別する能力がある。しかし、生後7ヶ月になると、大人と同じように、サルの顔では個体の区別はできなくなり、ヒトの顔だけを区別するようになる。これは母国語の習得に似ている。生まれてすぐの赤ちゃんは、あらゆる言葉の母音を聞き分ける能力をもつ。ところが、生後10ヶ月になると、自分の母国語を聞き分ける能力だけを残し、他の言語の母音は聞きとりにくくなる。
 学習とは、何でも受けいれた段階から、自分の環境にあるものへと特化することをさすのだ。なーるほど、そうだったんですか・・・。社新書

テレビ政治

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著者:星 浩、出版社:朝日新聞社
 テレビと政治と世論の危ない関係。新聞とテレビ、国民により影響を与えているのは、テレビで86.5%。これはオビの言葉です。本当にテレビは世論操作の有力な道具です。小泉首相を批判するコラムを書いたら、すぐにコラムを批判する投書が80通も来たそうです。がんばっている首相に失礼だとか、かわいそうだという内容の投書です。私にはとても信じられませんが、恐らく本気なのでしょう。小泉べったりに洗脳されている日本人がかなりいることを意味しています。
 小泉改革のおかげで、郵便局の離島での集配が廃止に追い込まれています。なんでも効率(もうかるかどうか、だけです)から、田舎の不採算局が次々に廃止されていくのは必至です。でも、小泉は、選挙のときにはそんなことはないと断言して国民を欺きました。
 そして、いま高齢者に地方税が10倍になるという重圧がかかっています。「週刊ポスト」が大きな特集を組みました。そんなことは分かっていたはず。小泉はそう言うでしょう。でも、小泉を支持した高齢者は、まさか自分のフトコロを直撃する改革があるなんて夢にも思いませんでした。
 リハビリを6ヶ月で打ち切るという新たなシステム改悪は、私の母にも及びました。たしかに、うちの母にとってリハビリは、もう客観的には効果が期待できません。でも、身内としては、それでもいいのです。カッコだけでもリハビリ中ということでいいのです。必要なお金も負担します。でも、6ヶ月たったからといって、せっかく入った病院を追い出されてしまいました。弱い者いじめの小泉改革のおかげです。
 この本は、朝日新聞の政治記者とメディア政治の研究者の二人による共著です。朝日の記者は東大大学院政治学研究科の特任教授でもありました。
 小泉首相が閣議で解散を決めた8月8日夜の記者会見を中継したNHKの視聴率は、なんと27%という異例の高率となった。投票率が高いと自民党は不利という最近の選挙の傾向とは逆の結果となった。選挙への関心が高まり、ふだん棄権していた有権者が投票所に足を運んだことが、自民党の圧勝につながった。つまり、多くの国民が小泉にだまされて自分の首をしめに投票所に向かったことになります。
 東大の石田英敬教授は、総選挙の真の敗北者はテレビだと主張する。なぜなら、コイズミ劇場にテレビが支配されてしまったから。
 刺客騒動は話題を呼び、世間の関心を集め、当初あまりパッとしなかった毎分視聴率も急上昇した。こうなるとテレビ制作者は弱い。やはり数字がとれた方がいいと考えてしまう。自民党内のお家騒動は、人気時代劇の「暴れん坊将軍」のように、見ていて面白い。ここを小泉はうまく利用した。
 小泉の作戦は、国会議員を飛びこえ、さらには自民党員まで越えて一般有権者の支持を集めることだった。それによって、党員や国会議員への影響力を高めようとしたのだ。
 小泉が国会議員や支持団体の枠をこえて投げかけた「自民党をぶっ壊す」というメッセージは大衆的人気を博した。新聞は権力を批判するが、テレビはコントロール可能。テレビは商売だと割り切って接していた。
 小泉は、ワンフレーズ・ポリティクスという批判に対して、「いくつも話すと、もっとも不快な部分を拡大して報じられる。一つのことしか言わなければ、どのメディアも仕方なくそれを報じる」と切り返した。
 テレビでくり返し唱え続け、なおかつ、そのメッセージをいくらか実現させることで国民に一定のリアリティーを感じさせる。これが小泉の戦略だった。
 日本は世界最大の新聞大国である。毎日、朝夕刊あわせて7000万部以上が発刊されている。それでも、今やテレビにかないません。日本人は、このまま流されていくだけなのでしょうか。

朴正熈、最後の一日

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著者:趙 甲済、出版社:草思社
 「ヒトラーの最期の10日間」を思い出させる本です。独裁者の孤独な生活が描かれています。最近みた韓国映画「大統領の理髪師」を、映像という点で視覚的に想起しました。
 韓国では、最近、朴正熈を見直す動きが強まっています。その娘が野党の代表者として人気を集めているのは、その具体的なあらわれでしょう。でも、私には、野蛮な軍人であり、民主化を阻んだ独裁者としか思えません。
 朴正熈が側近の金載圭KCIA部長から宴会場で射殺される一日を詳しく描いた本です。図と写真もついていて、状況がよく分かります。朴正熈が射殺されたとき、2人の若い女性が宴会にはべっていたというのを知っていましたが、なんだかいかがわしい状況を想像していました。でも、女子大生と女優の2人はギターをもちこんで歌っただけのようです。それどころか、宴会場は車智?・青瓦台警護室長とKCIA部長の激しい応酬でトゲトゲしい雰囲気だったようです。
 1979年10月26日、朴正熈はKCIA部長に射殺された。62歳だった。この年の10月初め、金載圭の命令で、KCIAの元部長・金炯旭がパリで暗殺されていた。 
 青瓦台の本館には、職員が夕方6時に退庁したあとは。525坪の本館に大統領と2人娘のほかは、宿直当番の秘書室職員と警護官のみ。都市のなかの孤島になった。
 朴正熈の書斎兼執務室には600冊の本があったが、小説やエッセイ・詩集は一冊もない。彼は実用主義者だった。「金日成」「資本論の誤訳」などの日本語版もあった。
 その日、朴正熈の演説には、いつもの張りがなかった。独特の、鉄を叩くようなキンキンと響く声ではなく、力が少し抜ける感じだった。
 映画「シルミド」で有名になった金日成暗殺部隊の創設を命じたのは、朴正熈でした。
 朴正熈大統領と、その側近だった金桂元、金載圭、車智?の3人の元軍人は身長が164センチと小柄だった。
 車智?は傲慢、金桂元は調整力不正、金載圭は肝臓病病み。
 権威主義的な政権の核心においては、最高権力者の耳と目を独占しようとする競争が熾烈さを増す。誰よりも先に情報を提供し、権力者の公的的な先入観をつくりあげることが、この権力ゲームのやり方だ。車智?室長が影の権力者の地位を、こうしたゲームに活用していたため、秘書室長と情報部長は常に一歩出遅れた。
 車智?は佐官将校として除隊したにすぎないのに、陸軍大将出身の秘書室長と陸軍中将出身の情報部長、それもずっと年上の2人を、まるで部下のように扱った。
 朴正熈は、郷里の後輩であり、陸士の同期生であり、そして自分の庇護のもとで育ててきた金載圭を甘く見ていたのか人前で金載圭の無能力さをなじることが多々あった。
 この日の宴会では、車智?と朴正熈がまるで口裏をあわせたかのように金載圭を一方的に追いこんだ。これが決定的な要因となって、激しやすい金載圭は車智?を殺してしまおうと思いつめ、そのためには朴正熈が邪魔となった。朴正熈はあの傲慢な車智?を偏愛してきた。そして今夜も一緒になって私を追いこんでいる。許せない。金載圭の鬱屈した感情は殺意へ変わった。
 金載圭は朴正熈の射殺直前に2人の部下に警護員たちの暗殺指令を下したが、そのとき自由民主主義のために、と言っている。KCIA部長は、長期政権に対する国民の不満を確認していた。釜山での非常戒厳令事態をふまえての認識だ。
 金載圭は、まず車智?の右手首をうった。そのあと数秒して、足もとがふらついたままの姿勢で朴正熈を見下ろし、胸をうった。朴正熈は「何をしておる」と言ったまま、目を閉じ、胡座をかいたまま動かなかった。金載圭の拳銃(ワルサーPPK)はこの2発をうったあと故障して動かなくなり、金載圭はあわてた。
 金載圭の部下に倒された警護官たちは防弾ベストを装着していなかった。
 金載圭の頭のなかには、朴正熈の殺害までのスケジュールしかなく、それ以降の行動計画は何ひとつ考えていなかった。現場にいて殺害状況を目撃した2人の女性は20万ウォンの小切手をもたされて帰宅させられた。現場保全も遺体の安置も、支配確保もまったくなされていない。
 大変緊張しながら2時間かけて一気に読み通しました。緊迫した状況がよく伝わってきます。そして、このあとに登場するのが全斗煥です。軍人って、本当に嫌な人種です。昔も今も、洋の東西を問わず、人殺しと自分の栄誉しか考えていない連中ばかりですから・・・。

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