法律相談センター検索 弁護士検索

似せてだます擬態の不思議な世界

カテゴリー:未分類

著者:藤原晴彦、出版社:化学同人
 捕食されるための擬態が存在する。ええーっ、何のこと・・・?擬態って、捕食されないか、逆に捕食するためのものでは。ところが、もう一つ、別の擬態があったんです。取りの消化管に寄生する吸虫です。
 鳥が排泄すると、その卵は外に出る。岸辺に住む巻き貝がその卵を摂取する。巻き貝の中で吸虫の卵はかえり、巻貝の中で発生し、最終的には巻貝の触覚の中に入りこむ。そして巻貝の触角の中で吸虫は周期的に動きまわり、巻貝の触角はまるで昆虫の幼虫のように脈動する。鳥たちは、それを見て、思わず巻貝の触角を、昆虫の幼虫と思って食べたいという欲求にかられる。吸虫は、鳥に自分を食べさせるために昆虫の幼虫に擬態して鳥をおびき寄せているのだ。鳥に首尾よく食べられた吸虫は、再び鳥の消化管に寄生する。
 この本のユニークなところは、この擬態について、そのメカニズムを分子生物学からアプローチしたところです。擬態を制御している遺伝子の究明をすすめているのです。
 ハナカマキリが、なぜあれほど精巧にランの花に似せられるのか?
 無毒のチョウがまったく異なる種の有毒のチョウに、なぜ似せることができるのか?
 これを分子生物学レベルで追究しようとするのです。でも、今のところ、何の手がかりもありません。それにしても、ホントに不思議ですよね。
 広葉樹の葉に似せたコノハムシの写真などを見ているうちに、自然の偉大な神秘の前には人間社会の小さな秘密なんて、まさしくどうでもよくなります。
 「それで、どうして、ここまで似せることができるのでしょう?」
 「ええ、それはやはり大自然の神秘としか言いようがありません」
 特定の標的遺伝子の変異というよりは、遺伝子ネットワークの組合せの変化が適応進化の本質ではないか。擬態のメカニズムを解明しようとすると、まさに自然の不思議の迷路のなかにさまようことになります。でも、そんな迷路でまようのも楽しいひとときです。
 実に不思議な世界がたっぷりあることが分かります。

日本人になった祖先たち

カテゴリー:未分類

著者:篠田謙一、出版社:NHKブックス
 世界でも珍しいほど日本は下戸が多い。えーっ、そうなんですかー・・・。ちっとも知りませんでした。たしかに、飲めない人は私の周囲にもたくさんいますが、それが世界でも珍しいことと言われると、なんだかピンときません。
 DNA分析と化石の研究から、現代人は20万年から10万年前のアフリカに誕生したと考えられている。人類はアフリカで誕生したんです。ですから、もっとアフリカに注目しましょう。人類、みな兄弟、というのは単なるスローガンではなく、本当のことだったのです。
 現在60億人という巨大な人口をもつ現代人も、もとはごく少数の集団から出発した。それは恐らく子どもや老人をふくめ2万人ほどの集団だった。
 最新のDNA研究によると、最初にアフリカを旅立った人数は150人ほどだった。ええーっ、そんなに少ないグループが世界各地へ展開していったんですかー・・・。
 10万年前にアフリカを出て、中近東に6万年前にたどりつき、インドネシアあたりに5万年前、日本列島には4万〜3万年前に来たというのです。アメリカ半島へは、ベーリング海をわたり、アラスカから入りますので、ようやく1万5000年前に入ったのです。ここでもアメリカは新参者です。
 ハワイは、人類が世界へ拡散して最後にたどり付いた地域。ハワイには世界中から人が集まり、現在のハワイには、実に多様な集団に由来する人々が生活している。ひぇーっ、そうなんですかー・・・。
 日本人の骨格は歴史上、2回、大きく変化する。1回目は縄文から弥生時代にかけて、2回目は江戸から明治にかけて。いずれも日本人の生活様式が大きく変わった時期。一回目は狩猟採集社会から農耕社会への移行、2回目は西洋文明が受容された。
 日本人は、旧石器時代人につながる東南アジア系の縄文人が居住していた日本列島に、東北アジア系の弥生人が流入して徐々に混血して現在にいたっているというのが主流の学説。
 日本人の先祖集団の成立に際しては、大陸の広い地域の人々が関与したために、日本人のもつDNAは東アジアの広い地域の人々に共有されている。
 なーるほど、日本人はやっぱり東アジアのなかの一員なんですね。やっぱり東アジアの平和共存が大切なわけです。お先祖様が同じだというんですからね。

人が人を裁くとき

カテゴリー:アメリカ

著者:ニルス・クリスティ、出版社:有信堂
 裁判員のための修復的司法入門というサブ・タイトルがついています。ノルウェーの学者による本です。ノルウェー事情も少し知ることができました。
 日本とノルウェーは似ている。日本の人口10万人あたりの囚人は60人。ノルウェーは69人。いずれも極めて低い。ヨーロッパは通常、人口10万人あたり100人前後で、ロシアで569人という多さ。アメリカは、それよりもっと多くて、なんと763人。アメリカの刑務所人口を増やし続ける犯罪政策は、ナチスのホロコーストに類似していると厳しく批判しています。
 ノルウェーでは、民事事件は、市町村における調停を経なければ裁判所に訴えることができないという調停前置主義がとられている。これは江戸時代の日本と同じですね。
 ノルウェーでは、市町村ごとに刑事調停委員会がつくられており、主として少年犯罪を対象とし、一般市民から選ばれた調停員が斡旋することにより、加害者と被害者とが面談し、双方の合意が成立すれば起訴しないという刑事調停委員会が機能している。
 アメリカでは囚人は210万人いる。このほか、保護観察や仮釈放など監視下にある人々が470万人いる。それを加えると680万人となり、これは10万人のうち2267人にもなる。これは人口の2.4%を占める。青壮年の男性(18〜44歳)に限って比率をみると、なんとその12人に1人が刑罰法令の監視下で生活している。
 ロシアは囚人が減っている。2003年1月の囚人は86万人であった。
 なぜ、アメリカでこのように爆発的に囚人が増えているのか。その原因の一つに、アメリカ中産階級の功利主義的な世論がある。
 アメリカが犯罪が増加しはじめたのは1975年ころから。
 アメリカでは、ここ15年間ほど、毎年1000人規模の刑務所が1000ヶ所ほど増設されている。それにともない、刑務所関連の建設・給食・警備などの刑務所依存産業が急成長し、それが囚人数増加への加力団体となっている。
 刑務所が民営化すると、刑務所の公共的機能よりも、事業収入が刑務所産業に対する事業評価の基準となる。できるだけ少ない人員、経費、設備で、できるだけ多くの囚人を収容し、それを効率的に管理することが刑務所産業の目標となる。囚人数の減少は経営を悪化させる。犯罪があるから刑務所があるのではなく、刑務所があるから囚人が増加する。判断基準となるのは、犯罪人を放任した場合の犯罪取締の費用と、それを刑務所に収容した場合の費用との比較なのである。犯罪は、もはや矯正の対象ではなく、戦いの対象となり、隔離すること自体が目標となっている。
 犯罪処罰手続は効率化され、刑罰量定表がつくられている。そこでは刑罰を緩和する事情は一切考慮されず、逆に犯罪状況はすべて刑罰を加重する事情として考慮される。
 アメリカには選挙権をなくした成人が390万人いて、そのうち140万人は黒人である。これは黒人男性の13%にあたる。彼ら貧困層は選挙権を行使できないため、政治に対する影響も行使することができない。
 アメリカでもイギリスでも、自らを、あるいは自分の党を、犯罪と戦うリーダーであると誇示するための激しい競争がある。通常、政治家や政党は、お互いにより厳しい手段を主張しあうのが政策になっている。ほかに残っている見せ場がほとんどないからである。犯罪との戦いが政治家の正当性を主張するのに不可欠となっている。
 アメリカは世界でもっとも富める国である。にもかかわらず、福祉の代わりに刑務所を用いる国である。たえず自由について語る国でありながら、世界最大の刑務所を有している国である。
 アメリカみたいな国に日本をしてはいけないとつくづく思います。悪いことをした連中はどんどん刑務所に入れてしまえばいいんだ。こういう考えを持つ国民は多いと思いますが、それはすごく危険です。だって、みんないずれ出てくるんですよ。お隣さんが社会への復讐心に燃えていたらどうしますか。やっぱり、いろんな人がいるわけなんですから、それなりに折りあいをつけて生きていくしかありません。
 わが家の庭のチューリップは終わりかけ、今はアイリスがたくさん咲いています。青紫と白がほどよく調和した心優しいアイリスのほか、元気溌剌な真っ黄色のアイリスも咲き出しました。ジャーマンアイリスもようやく咲きはじめました。青紫の気品のある花です。アイリスより一段と豪華な雰囲気です。福岡県弁護士会館の通用口のそばに咲いているのは、わが家の庭から持ってきたものです。今が見頃ですから、ぜひ見てやってくださいね。朝、自宅を出るときにはフェンスに咲くクレマチスに向かって、行ってきますと挨拶しています。赤紫色の花です。春はいろとりどりの花が咲いて、いい気分です。

チャップリン、未公開NGフィルムの全貌

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:大野裕之、出版社:NHK出版
 大変な労作です。なにしろチャップリンの映画でNGになったフィルムを全部をみた人は世界に3人しかいないというのに、33歳の日本人がその一人だというのです。たいしたものです。この若さで日本チャップリン協会の会長だというのも当然の偉業です。2年間にわたってロンドンでNGフィルムを見たというのです。
 チャップリンは台本なしに映画をとっていたといいます。台本を書くようになっても、現場でのひらめきや即興演技を何度もやり直すことによって作品を完成させていった。一人で監督・脚本・主演を兼ねていたチャップリンは、自らの演技をフィルムに収めて吟味し、何度も撮影をやり直した。
 チャップリンは、あくまでギャグの論理性、必然性にこだわった。だから脈絡のないシーンは大胆にカットされていった。膨大なNGフィルムが残されていたわけです。
 チャップリンはNGフィルムを焼却処分するように命じていた。しかし、スタッフがチャップリンの命令に反してスタジオに保管していた。良かったですね。今となっては大変貴重なフィルムですよ。
 チャップリンは両親ともミュージック・ホールの歌手だった家庭に生まれた。だから、5歳のときに初舞台をふんでいる。その後、ずっと舞台芸人としてのキャリアを積んでいる。チャップリンの生まれたのは貧しい労働者街。そこでチャップリンは極貧の幼少時代を送った。弱者の味方チャーリーの原点は、この幼少期の体験にある。
 労働者向けの娯楽として、ミュージック・ホールは、豪華絢爛な建築物だった。そこでは大英帝国の一員であることを自覚させられるような催し物が演じられていた。
 なーるほど、そういうことだったんですか・・・。まるで、今の日本のテレビ番組ですよね。馬鹿馬鹿しいお笑い番組を見ているうちに、知らず知らずのうちに自民党政権の体質に同化させられ、反抗の牙が抜かれていくようなものですね。
 チャップリンは、ちょっとしたレストランで演奏できるほどうまく楽器を弾けた。ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、そしてチェロなど。
 チャップリンの運転手に日本人がいて(高野虎市)、その誠実さからチャップリンは部下としてではなく、友だちとみていたといいます。すごいですね。
 チャップリンはテニスを好んでいて、そのテニスコートはハリウッドの社交場だった。
 チャップリンの最高傑作「街の灯」は600日間、4571テイクにわたって撮り直しが続けられた壮絶な撮影の成果なのだ。
 うーん、さすがです。すごいですね。たしかに「街の灯」は空前絶後の最高傑作だと私も思います。
 第二次大戦で戦勝国となったアメリカで、チャップリンの平和思想が問題とされ、反共主義のマッカーシー旋風が吹き荒れるなか、チャップリンは共産党シンパとして危険視された。
 チャップリンを共産党だというなら、共産党のほうが断然正しいし、優れていることになりますよね。みなさん、そう思いませんか。少なくとも私は、そう思います。
 素顔のチャップリンは、なかなかの美男子です。女性にもてたのも当然です。
 それにしてもチャップリンの映画って、何度みても素晴らしいですよね。古臭さが全然ありません。いつ見ても新鮮で飽きがきません。至高の芸術作品を見せていただいているという気がします。
 チャップリンは、あくまで万人が心から共感できる笑いを得るために苦闘を続けた。
 そうなんです。あの天才チャップリンも、スランプに陥って兄にSOSを発したりしているのです。天才にも凡才のようなところもあったというわけです。でも、そんなことがあったことを知れば、ますますチャップリンに対する敬愛の念が湧いてきます。

我、自衛隊を愛す。故に、憲法9条を守る

カテゴリー:社会

著者:防衛省元幹部3人、出版社:かもがわ出版
 防衛庁は、いつのまにか防衛省に昇格してしまいました。教育訓練局長・小池清彦、官房長・竹岡勝美、政務次官・箕輪登の3氏が憲法9条の大切さを説いた貴重な本です。多くの日本の国民に読まれるべき本だと思います。150頁ほどの薄くて軽い本です(定価1400円)が、内容はぐっと厚味のある重たい本です。
 憲法9条改正のねらいには、自衛隊の海外派兵を恒常化することにではなく、海外派兵の体制づくりにある。このことをぜひ知ってほしい。本の前書きで強調されています。まったく同感です。
 もし平和憲法がなかったら、日本は朝鮮戦争(1950〜1953年)にも、ベトナム戦争(1965〜1975年)にも、湾岸戦争(1991年)にも、世界のほとんどの戦争に参加させられていて、今ごろは徴兵制がしかれ、日本人は海外で血を流し続けていたはずだ。平和憲法のおかげで、日本人は海外で血を流さずにすんでいると実感している。
 日本の自衛隊がいまイラクへ行っているが、これは国際貢献ではなく、対米貢献である。対米貢献を国際貢献と言っているだけ。そんな対米貢献で、日本人の命を落としてはならない。
 自衛隊がイラクでやっている兵站(へいたん)補給の支援というのは、戦闘行為のなかで一番大切な部分だ。
 硫黄島に送られた2万人の日本軍将兵のうち半ばの1万人が死傷したとき、なぜ大本営は名誉の降伏を許さなかったのか。もし許されていたら、残る1万人は、戦後の日本で愛する家族ともども平和な人生を享受できたはずだ。
 日本の有事とは、在日米軍を含むアメリカ軍と日本周辺国家との戦争に巻きこまれる波及有事のみ。万一にもアメリカ軍が一方的に北朝鮮を崩壊させようとしたとき、北朝鮮の200基のノドン・ミサイルが日本海沿岸に濫立する十数基の原子力発電所を爆破するかもしれない。たしかにその危険はあります。でも、そうならないようにするのが政治ですよね。
 イラクに派遣された自衛隊は、武力行使が禁じられていることを理解され、オランダ軍やイギリス軍が心温かく守ってくれた。ところが、憲法9条が改正されると、自衛隊全体が軍隊そのものに変質する。
 後藤田正晴氏は、「アリの一穴」を恐れ、猪木正道・元防衛大学校長も「私は護憲論者である。なぜかというと、これをいじりだしたら、とてつもなく右傾化してしまう。日本の軍国主義的性質は本当に恐い」と警告している。
 戦後60年、日本が一人の外国人兵も殺さず、一人の自衛隊も殺されなかったという、世界に誇る名誉の看板は取りはずすべきではない。
 いやあ、やっぱり憲法9条2項は絶対に守るべきです。
 福岡ではイラクへ自衛隊派遣の差し止め裁判が起きていませんが、これは残念なことです。自覚したそれぞれの人々が、各々のやりやすいところで、憲法9条(とりわけ2項)を残したいと連携しあっています。あなたもぜひ、その輪に加わってください。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.