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描かれた戦国の京都

カテゴリー:日本史(戦国)

著者 小島 道裕、 出版 吉川弘文館
 16世紀、室町時代の終わりころの京都とその周辺の景観、風俗を描いた屏風絵が残っています。『洛中洛外国屏風』と呼ばれるものです。この本は、この屏風絵を部分拡大もしながら、そこに描かれている人物を特定しつつ、その情景を解説しています。カラー図版もあり、楽しく学びながら室町・戦国期の京都風景を味わうことができます。
 学者って、本当にすごいですね。よく勉強しています。ほとほと感心します。
 屏風は2つで一双と呼ぶ。左右で1組になる。右隻(うせき)、左隻(させき)と呼ぶ。京都の東側を描くのは右隻で、西側は左隻。そして、この屏風絵は鳥瞰図(ちょうかんず)となっている。市街地を上空から眺めている。
 著者は、相国寺(しょうこくじ)の東に六角七重の巨大な塔が建っていて、その上から見た景色が描かれているとみています。この塔は、高さが109メートルあり、今の京都タワー100メートルより少し高いというのです。すごい塔がそびえ立っていたのですね。信じられません。
 屏風図には、伝統的な四季絵、月次(つきなみ)祭礼国を踏襲して、春夏秋冬がきれいに配分されていて、それが京都の東西南北の方位に合致している。いやあ、大したものです。
 室町時代の幕府、すなわち将軍の御所は、かなり転々としており、代替わりごとに新たな御所を営んでいた。花の御所を作ったのは、三代将軍足利義満である。それまで幕府はほかの場所にあった。その後も、必ずしも花の御所が使われたわけではない。応仁の乱のあと、将軍は逃亡して京都にいないことが多く、京都にいるときも寺院や武家などの屋敷に間借りすることが多かった。
 幕府の門前では、たとえ関白であろうと乗り物に乗ることは許されないという慣行があった。これは将軍の格の高さを示すものである。
 このようなことを手掛かりとして、絵に描かれている人物を特定していくのです。
 古い京都とそのころの日本人の生活の一端を視覚的に知ることのできる本として、面白く読みました。
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくご愛読ください。
 お正月は風もなく晴れ上がって気持ちの良い一日でした。午後から庭に出て球根を植えました。通りかかったお隣さんが、「いいお天気に恵まれましたね。今年はいいことがありそうですね」と声をかけてくれました。本当にそうですね。今年が日本と世界にとっていい年であることを心から願っています。
 大晦日は恒例の除夜の鐘をつきに近くの山寺に出かけました。11時45分から鐘をつき始めます。まだ若いお坊さんから、つく前に注意を受けました。つく前に、まず今年一年の反省をしてください。そして、ついた後に新年の希望を願掛けしてください。なるほど、と思いましたが、どちらもたくさんありますので、とりあえず新年は家内安全、無病息災を願いました。
 不況のせいなのか、例年になく鐘つきに並ぶ人は少なかったのですが、午前0時を過ぎたころ人が次々にやってきました。実は、我が家には韓国から娘の友人である若い女性が泊まりに来ていましたので、一緒に出かけて鐘をついてもらいました。日本は初めての人です。
 
(2009年10月刊。2200円+税)

昭和20年夏、僕は兵士だった

カテゴリー:日本史(戦後)

著者 梯 久美子、 出版 角川書店
 この本で紹介されている三国連太郎の話には驚きました。彼は大正12年(1932年)生まれで、召集されます。しかし、その前に日本を逃げ出すのです。
 鉄砲を持たされて人を撃つのもいやだし、自分が殺されるのもいやだ。徴兵検査には合格したけれど、入隊するのは何としても免れたかった。それで、とにかく逃げよう。逃げるんなら、大陸がいいんじゃないかと、中国にわたり、朝鮮・釜山に行き、また日本に舞い戻ってきた。そして入隊通知が実家に来ているのを知り、九州・唐津へ逃げ、そこで特高警察に捕まった。
 刑務所には入られず、すぐに入隊させられて中国戦線の戦地へ送られた。入院したりしているうちに幸いにも終戦を迎えて日本に戻ってきた。
戦争の中では美しい人間も美しい出来事も一度も見なかった。
 戦争で死ななかったことより、戦後、いろいろなことを偽って生きてきたことの方に負い目がある。人を利用し、便乗し、嘘をつき、そんなふうに生きてきた。
 俳優になってロケで地方に行くことがあるが、昔の自分を知っていそうな所に行くのは怖い。正直、今でもそんなところがある。
 こんな自分の体験を率直に語るのですから、やはり正直な人だと私は思います……。
 別の人の話です。レイテ沖海戦で戦艦に乗っていた人です。
 陸の戦いでは寝泊りしている場所と戦場は普通は別である。生活の場を離れて出陣していくわけだ。しかし、海の戦いでは、そこで眠り、飯を食った場所に何時間か後には遺体が散乱し、負傷者が横たわっているという状況になる。生の営みと死とが、同時にそこにある。このレイテ沖海戦で、まさにそんな体験をした。そうなんですね、海上では逃げるところがありません。
 もう一つ。これも船に乗っていて、アメリカ軍に沈没させられた人の話です。
 もう駄目だと思ったとき、ズタズタに切れたクレーンのワイヤーロープが何本もぶらさがっているのに気がついた。思わず、そのうちの一本にとびついた。うまく捕まることができると、脚にだれかがすがりついてきた。その重さでずるずると下に落ちて行きそうになる。そのまま落ちれば、下は燃えさかる船底だ。そこで、しがみついてくる者をけり落とし、ふりほどいた。必死だった。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』と同じである。誰だか分らない兵隊をけり落として、反動をつけて甲板によじ登り、そこから海に飛び込んだ。けり落とされた兵隊は死んだはずだ。人を殺してしまった……。
 船がやられたら、泳いだらいけない。船が沈むときには、いろんなものが浮くから、それにつかまること。つかまって、早く船から離れる。
 いやはや、すさまじい戦争のむごさを改めて実感させられました。戦争は絶対にいやです。
 
(2009年9月刊。1700円+税)

カップヌードルをぶっつぶせ

カテゴリー:社会

著者 安藤 宏基、 出版 中央公論新社
 私は、ホカ弁はもちろん、カップヌードルもまったく食べません。いえ、駅弁は食べますし、デパ地下の弁当は買って食べるのです。でも、ホカ弁にはご飯に化学調味料がまぶしてあるんじゃないか、カップヌードルは容器から化学物質が溶け出しているんじゃないかと気になって仕方がないからです。それは、絶対にコカ・コーラを飲みたくない、マックを食べたくないのと同じです。化学調味料まみれの得体の知れないものは口にしたくありません。
 ではなぜ、この本を読んだかというと、カップヌードルがなぜこんなに売れるのか、その秘密を知りたかったからです。
 私の小学生のころ、インスタントラーメンが初めて売り出されました。メンに味をしみ込ませてあるから、お湯を注いで3分間待てば美味しく食べられるというので大人気でした。大学生の頃には寮で夜中、小さな手鍋をもってうろうろし、夜食として食べていました。
 この業界での新製品競争はすさまじいものがある。まさに消耗戦だ。勝ち残るためには闘い続けるしかない。新しい医薬品に何十億、何百億円という開発費をかける業界とは違う世界である。消費者の食に対する嗜好はどんどん多様化し、日々変化している。日新食品だけで年間300アイテムの新製品を作り出している。業界全体では毎年600アイテムになる。このように数は多いが、1年後まで店頭に残って定着するのはわずか1%に過ぎない。食品業界の中でも名うての激戦区なのだ。
 日清食品は変人をきちんと評価する。つまり、非効率を許す風土を大切にしている。変人とは一般的な常識には欠けているかもしれないが、ある特定なことに以上に関心が高く、その専門領域では誰にも負けない知識を持っているような人のこと。このような変人を社内に3割は欲しい。逆に、3割を超えると経営が成り立たなくなるだろう。
 いやはや、会社経営というのはまことに大変なんですね。常識人ばかりの会社では生き残れないというのですからね……。
(2009年10月刊。1500円+税)

巡査の休日

カテゴリー:警察

著者 佐々木 譲、 出版 角川春樹事務所
 北海道警シリーズです。
 かつては捜査本部長は所轄署長がつとめた。しかし今は、捜査本部長は必ず道警本部の刑事部長があたることになっている。しかし、キャリア組の刑事部長が捜査本部長におさまったところで、捜査の現場もノウハウも知らず、土地勘もない刑事部長に、具体的な捜査指揮など出来っこない。ただ、精神論を言うだけの存在である。つまり、名前だけ。道警本部全組織一丸で捜査にあたっているという格好をつけるための制度だった。刑事部長本人もそれを知っているから、通常の捜査会議には顔を出さない。顔を出したところで、そこで語られることが理解できるはずもなく、余計な口をはさめば、むしろ捜査の妨害になる。謙虚なキャリアはそれを知っている。ときおり、むやみに指揮したり、指示・命令を連発する捜査本部長も出てくるが、そんなとき、現場はひどく混乱する。部下たちは、事件解決よりも捜査本部長の指示に従ったという形をとることに腐心する。結果として、事件解決は遠のく。
 なーるほど、そういうものなんでしょうかね……。それでもキャリア組は警察組織には必要なんですね……。
犯人は自衛隊の出身者。それを道警は追って、横浜にまで捜査員を派遣する。
 そして、女性が狙われる。かつてのストーカー被害者がまたもやメールで犯罪予告される。道警の威信をかけて守りぬく必要がある。
いくつかの事件が発生し、それぞれの捜査がすすんでいきます。ところが、次第に、これらの事件は相互に関連を持っていることが明らかにされていきます。ここらあたりの筋立てがとても巧妙で、感心してしまいました。
 いつもながらの巧みな警察小説です。いやはや、すごいと感嘆しながら読みふけってしまいました。
 
(2009年11月刊。1600円+税)

イカはしゃべるし空も飛ぶ

カテゴリー:生物

著者 奥谷 喬司、 出版 講談社ブルーバックス
 日本人は、年間1人あたりイカを1.2キログラム(イカ3~4杯)も食べている。これほど日本人のイカ好きのため、日本列島沿岸でとるイカ40~50万トンではとうてい足りない。
 イカには、血中のコレステロールを抑えるタウリンという物質が多く含まれている。イカは非常に良質のたんぱく質を含み、低脂肪でもあって、ダイエット志向にぴったりである。
 日本のスルメイカは1968年に空前の豊漁があり、70万トンもとれた。今では、その半分以下の30万トンもとれない。
 化石のアンモナイトはイカの遠い祖先筋にあたり、イカも昔は重い貝殻を背負っていた。イカは貝類の親戚なのである。
 イカの筋肉は運動力の強いものほどよく発達していて、そのようなイカほどおいしい。運動力の鈍いものは筋力も弱くて、まずい。
 同じ重さの金と同じ値打ちのある「竜涎香」(りゅうぜんこう)と呼ばれる高価な香料のもとは、実はマッコウクジラの腹の中にたまった不消化のイカの「からすとんび」の塊なのである。いやはや、とんだことですね。
 イカは水中を矢のように泳ぐが、それだけイカの筋肉は短時間に多量の酸素を必要とする。
 イカの墨は粘液に飛んでいるので、ぷっと吹き出すと、しばらくその雲は散らばらない。これは恐らく攻撃の目を欺くダミーと思われる。
 イカは一瞬にして体色を変えるという超能力を持っている。すべての色素細胞が収縮すると、イカの皮膚には色がなくなり、全体が透明となる。
 スルメイカは1年間で一生を終える。アカイカは胴長が1ヶ月で3~4センチも伸び、1年間で体重5キロ、胴長40センチを超す巨体になる。
 イカは水族館で慣らさない限り、生きた餌しか食べない。そこで、疑似餌を水中で跳ねるようにしてあやつり、イカを誘う。
 イカのことをいろいろ知ることのできる本でした。イカ刺しってホントおいしいですよね。また呼子に行ってみたくなりました。
(2009年2月刊。1600円+税)

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