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金融大狂乱

カテゴリー:アメリカ

著者 ローレンス・マクドナルド、 出版 徳間書店
 リーマン・ブラザーズの元社員が、その内情を曝露した本です。サブプライム・ローンの実態を知るにつけ、アメリカは狂っているとしか言いようがありません。
 頭金の確保や月々のローン返済もままならないような人々が、銀行から住宅ローンを提供された。クリントン大統領によって住宅都市開発相の次官補に抜擢されたロバータは、全国的に体制を整備し、各地の出先機関に弁護士と調査員を配置した。この配置の目的は、差別禁止の法律を銀行に対して適用すること、アメリカ国民に住宅ローンの資金を供給することにあった。1993年から1999年までのあいだに、200万人以上の人が新たに住宅の所有者となった。
 2004年の末、不動産の世界には、新たな文化が生まれていた。住宅ローン会社は、自社の資本をリスクにさらしていないため、将来の返済状況を気にする必要がなくなった。
 カリフォルニアで働くセールスマンは、無理やり中低所得者にまで顧客層を広げ、相手が大喜びする条件で見境なくローンを売りまくった。ここには規範もなければ、責任もなければ、非難もなかった。結果を気にする者は皆無だった。いや、結果を気にする必要自体がなかった。
 このころ、カリフォルニア州だけでも、毎日50万人ものセールスマンが住宅ローンを売り歩いていた。サブプライムローンの貸し手の40%以上は、カリフォルニアで設立された企業だった。当時は、新車のローンを組むよりも、新居のローンを組むほうがたやすく、マンションを借りるよりも、住宅を買う方が安くついた。住宅ローンのセールスマンは、史上空前の報酬を得ていた。
 収入も仕事も資産もない人が借りられるローンを、ニンジャ・ローンと呼ぶ。
 買い主は代金の支払いを心配する必要はなかった。ニンジャ・ローンは、お金に困っている多くの家族にとっては奇跡以外の何物でもなく、たいてい住宅価格より10%増の融資が行われた。契約書にサインした人々は、100%分をローンの支払いに充て、10%分を自分のポケットに入れて新居での生活を始めた。
 住宅ローンのセールスマンの顧客の半分は、契約書を理解するどころか、読むこともさえできなかった。ニンジャ・ローンは当初の金利が1~2%と不自然なほど低いものの、数年後には5~10倍に跳ね上がる。これが、結局、住宅ローンの債務不履行の微増に繋がる。
 フロリダのマイアミ地区で10年間に建てられたコンドミニアムはわずか9000棟だった。ところが。最近たったコンドミニアムは2万7000棟。このほか、建設許可待ちが5万棟もある。
 ウォール街の労働者が受け取ったボーナスは、ニューヨークの非金融系労働者の2.5倍。年収額で見ると、2003年に比べて1.5倍となっていた。
リーマンブラザーズの社員にとっては、ボーナスが至高の重要性を持っていた。なぜなら、給与体系上、報酬の大部分がボーナスだったから。しかも、報酬の半分は自社株で支給されているため、生きていく糧を確保するには、会社に収益をあげさせ、株価を高く保たせる必要があった。そうなって初めて、自分たちの財政状況が向上する。
 社員はほぼ同水準の固定給をもらっていた。差がつくのはボーナスの部分だ。たとえば100万ドルのボーナスをもらうためには、会社に2000万ドルの収益をもたらさなければならない。
 倒産した会社の取締役たちが、とてつもない高額をとっていたことが何度も明るみに出ました。まさしく狂っているとしか言いようのないアメリカです。そのせめてもの救いは、こんな本で実態を教えてくれる人がいることでしょうか……。
 庭の紅梅が先に咲き、遅れて隣の白梅も咲き始めました。紅白の花は春の到来を告げてくれます。隣家の庭のピンクの桃の花も盛りで、メジロがチチチとせわしく鳴きながら花の蜜を吸っています。
 
(2009年9月刊。1800円+税)

からだの一日

カテゴリー:人間

著者 ジェニファー・アッカーマン、 出版 早川書房
 人間の体は、ほんの1%がヒトで、あとの99%は微生物から出来ていることが分かった。
 朝。人間は心にセットされた小型の目覚まし時計を体内にもっている。寝ている間も体内で無意識のうちに注意深く時間が計られており、脳は起きているときと同じように、起床など時間の決まっている予定を予期して、化学物質を放出し、私たちが起きて活動し始めるように動く。そのせいで、決まった時間になると目覚める。
 私は7時に妙なるシャンソンが聞こえるようにセットしています。先日コンセントを差し込むのを忘れてしまい(ボケが始まったのでしょうか……?)、7時40分に起きました。おかしい、おかしいと思いながらそれまで寝ていたのです。
 起床後30分内の脳の能力は、24時間使った後より劣る。
 アメリカ空軍は1950年代にジェット戦闘機のなかにパイロットを待機させ、睡眠をとらせた。パイロットは睡眠中を叩き起こされて離陸を命じられた。しかし、事故率が激増したので、これは禁止された。睡眠慣性の影響は、2時間後にまで及ぶ。
レム睡眠と呼ばれる段階で目覚めた人は、周りの状況にすぐなじみ、心の動きも俊敏で、話にも活発に応じる。レム睡眠は覚醒にいたる導入部であり、目覚めをより円滑にしてくれる。
 大抵の人は、目覚めてから2時間半から4時間のあいだが一番頭がさえている。ということは、早起きの人は注意力のピークが午前10時から正午になってくることになる。この時間帯には、論理的な推論能力や複雑な問題を解く能力が高まる。
 体温は1日のうちに2度近く変動する。平均体温は女性36度9分、男性は36度7分である。
 慨日時計の遺伝子の持つ僅かな違いによって、早朝に目覚める人と、フクロウのように夜が好きで、朝のうちは頭がすっきりせず、真夜中に一番ノリのいい人とに分かれる。
 私は、どちらかというと朝方ですが、かといって早朝型でもありません。
 カフェインは、人間のニューロン(神経細胞)を興奮させるのではなく、沈静化プロセスを阻害することで覚醒作用を発揮する。
 人間は、350種にものぼる異なる受容体が、数千もの匂い物質をかぎわける。匂い
の記憶は、他の感覚に比べてなかなか薄れるということがない。匂いの中には、かつての記憶そのままの世界にどっぷり浸らせるものがある。
 そうですよね。たとえば古い麦わらの匂いをかぐと、子どものころ田んぼに積み上げてあった麦わらの山を思い出し、それは魚釣りとか田舎のおじさんの顔を連鎖的に思い出させます。
 話すなり歌うなりして声を出すとき、人間の脳は聴覚ニューロンの発火を停止し、耳の中で自分の声で大騒ぎにならないようにしてくれる。
 時間間隔タイマーを撹乱するものは、なんといっても集中力の欠如だ。何かの作業をしながら60秒を数えるよう指示されたとき、その精度はとんでもなく低くなる。
 なにかに没頭していると、時間は長く感じられる、一方で、二つのことを同時にしようとすると、時間は短く感じられる。脳が体内時計のカチコチと刻むパルス音を一部聞き逃してしまい、時間が短くなるのだ。運転中に携帯電話をかけるのは危険だと言うのは、まさしく、この理由による。
 ケータイで話しているときの事故の確率は1.3倍。電話番号を入力していたりすると、そのリスクは3倍にもなる。いやはや、すごいことですね。そうなんですか。でも、ケータイで話しながら車を運転しているのはよく見かけますよね。
 脳の細胞は10%しか使われないというのは間違いである。ニューロンのほとんどは一日のうちのどこかで活性化する。
 あくびに、どのような機能があるのかは、いまだに大きな謎のままである。
 あくびは、社会的な信号でもある。あくびは自分の考えや状態を言葉以外の手段で知らせる原始的な方法なのである。
 離婚、失業、家族を亡くしたといったストレスに1ヶ月以上もさらされた人は、そうでない人に比べて風邪をひきやすい。ワクチンを打っても免疫反応が弱いことが多い。蓄積したストレスは、創傷の治癒も遅らせる。不断のストレスと不眠は、学習、記憶力、そして脳の構造そのものに悪影響を与える。
 ストレス緩和方法のうちでもっとも有効なのは、ユーモアと仲間づきあいの二つだ。強い社会的なつながりを持つ人は、ストレスにうまく対処できる。楽しい笑いもそうだ。
 交代勤務する労働者の乱れた時計は、記憶力、認知能力、その他さまざまな身体部分に影響を与え、高コレステロール他、高血圧、気分障害、不妊、心臓発作やがんの高罹患率につながる。
 正しい慨日リズムの位相で寝ることが肝心で、体温が下がってから、生物学的な昼に寝ようとすると、睡眠の質は低くなる。
 睡眠中の修復は脳に取ってとても重要である。脳は睡眠によって自信を修復し、タンパク質の再貯蔵やシナプスの強化などの身体維持機能をする機会を得る。これらの作業をするためには、脳は休止してニューロンの代謝活動が作業の邪魔をしないようにせねばならない。深い眠りになると、脳の温度と代謝率が下がるために、酵素が修復を行って細胞を回復させることができる。
 すぐに寝付けないのは、主として不安感とストレスによる。よく眠るためには、決まった時間にベッドに入り、時計を覆い隠し、夜遅くに運動しないこと。寝る前に頭を酷使してはいけない。
 人間の一日を振り返りながら、人体の構造と生理をとても分かりやすく解説してくれています。還暦を過ぎた今、私の身体は30代、40代とはずいぶん違うという点をいろんな形で自覚せざるをえません。たとえば、今、左膝が痛くてたまりません。かなり良くなりましたが、まだびっこをひきいながら歩いています。若いころには考えられもしないことです。老化現象って、つくづく嫌なものです。
 
(2009年10月刊。2200円+税)

セブン・イレブンの罠

カテゴリー:社会

著者 渡辺 仁、 出版 金曜日
 最近はコンビニ神話にも少々かげりが出ているようです。私は原則としてコンビニを使わない主義ですが、出張したときには水と朝食用の野菜ジュースを買うために利用せざるをえません。
 このコーナーでたびたび鈴木敏文会長(創設者であり、CEO)の本を好意的に紹介しましたが、この本は、セブン・イレブンの裏の貌(かお)を鋭く暴いています。なるほど、というより、ええっ、まさか……と驚いた点がいくつもありました。セブン・イレブンって、前近代的な圧政支配で成り立っているんですね。ほとほと嫌やになってしまいました。
 セブン・イレブンは日本全国に1万2000店舗あり、本部直営店は、そのうち1000店しかなく、残る1万1000店はフランチャイズ加盟店。だから1万1000店はオーナー経営者が存在しているはずです。ところが、ところがです。
第1に、毎日の売上金全額をセブン本部の指定口座に送金する。
第2に、オーナー経営者には仕入原価が知らされず、知る手段もない。
第3に、たとえ親が死んでも24時間365日、営業しなければならず、閉店することは許されない。
 ええっ、ええっ、これではオーナーなんてものじゃありませんよね。売上金の一定割合をロイヤリティーとして本部に送金するのなら分かりますが、売上金全額を毎日、本部へ送金するというのでは、まるで直営店ではありませんか。どこが違うのでしょうか?
 本部には、全国から毎日76億円ものお金が送金されているとのことです。これって、おかしな仕組みだと思います。しかも、商品の仕入れ原価は公表されていないというのですから、経営者がオーナーだなんて、とてもとても言えません。
 セブン・イレブンは売上5407億円で、営業利益1780億円(2009年2月)というのです。3割もの粗利なんて、これまたびっくりですね。
 年間2兆7626億の総売上高を本部がどう運営しているか、ブラックボックスだというのですから、これではまるで江戸時代の鈴木敏文商店ですとしか言いようがありません。21世紀の日本で許されていい商法とは思えませんね。
 セブン・イレブンの客単価は平均700円。客一人当たりの粗利は150円ほど。
一店舗の売上高は、1日でよくて80万円、悪いと40万円。それでオーナー夫婦は年収1000万円。日販40万円だと、わずか2~300万円にしかならない。24時間、年中無休でこれでは、泣けてきます。
ところが、セブン本部には、日販80万円だと年4000万円、日販40万円でも年1200万円ものチャージ収入が入ってくるというのです。これでは、あまりに不公平です。他人事(ひとごと)ながら、読んでいて腹が立ちました。
 便利なコンビニですが、こんな不法な商法は、長続きさせてはいけないのではないでしょうか・・・・・・?
 
(2009年10月刊。1500円+税)

欠陥捜査

カテゴリー:司法

著者 三浦 良治、 出版 毎日新聞社
 実際に起きた交通事故について、警察の捜査がいかに杜撰であるか、また、検察庁はそれを追認するだけのお粗末なものだということを、なんと現職の検察事務官が告発している本です。
 この検察事務官は、大学生の息子さんがオートバイに乗って走行中にバスにはねられて即死したのです。その事故で、息子さんは一方的に悪い、バスに対して加害者だと決めつけられ、バスの運転手は何のおとがめもなかったことに憤慨しておられます。
 この本を読むと、なるほど、オートバイに乗っていた息子さんだけが『死人に口なし』として一方的に加害者だと決めつけられるのは納得できないと思います。
 警察の交通事件捜査についての対応は、事件処理を急ぐあまり、十分な捜査をしないことがある。殺人事件や汚職事件などに比べて、交通事件は件数が多いこともあるが、どうしても軽んじられる傾向が強い。
 この事故では、死亡したオートバイの運転者のみを被疑者とする実況見分調書が作成された。しかも、調書の作成は、実況見分をした日のうちに終わっている。通常なら、数日から数週間たってから完成されるものであるのに……。
 しかしながら警察官は、刑事訴訟法によって、罪とならないことが明らかな事件であっても、犯罪の嫌疑がないことが明らかになった事件であっても、これを検察庁に送付することになっている。ところが、バス運転手については、被疑者として扱われておらず、その結果として、当然のことながら検察官に送致もされていないため、捜査に不服があってもそれを訴える手段はない。
 ないと言われても、著者はめげることなく民事訴訟を提起しました。バス会社を訴えて敗訴し、さらに県警(つまり国)を捜査不十分で訴えたのです。すごい執念です。しかし、残念なことに結局のところ、民事裁判で認められることはありませんでした。
 私もオートバイに乗っていた青年の死亡事故を頼まれて2件ほど担当したことがあります。どちらも東京での事故でした。オートバイというのは、ちょっとしたはずみで死亡などの重大事故になると、刑事記録を読みながら思ったものです。
 その事件では、遺族が1億円を請求していました。私はそれを知って、とてもそんな金額は認められません。印紙代がもったいないので、3分の1くらいにしましょうと提案しました。しかし、遺族からは即座にノーという返事が返ってきました。
 そうなんです。遺族にとってはゼニカネの問題ではないのです。この検察事務官の指摘するとおり、原則として、刑事記録を誰でも(訴訟関係者は当然のこととして)見られるようにしてほしいと思います。
 陽の暮れるのが遅くなり、日曜日は膝の痛いのも忘れてジャーマンアイリスの植え替えに励んでいたところ、なんと夕方6時を過ぎていました。
 ジャーマンアイリスはいつも華麗な花を見事に咲かせてくれますが、とても丈夫で世話要らずの花です。球根がどんどん増えていきますので、株分けして知人に配って歩きました。
 いま、庭にはたくさんの白水仙のそばに黄水仙が咲き始めました。ネコヤナギの白い綿毛のような花がつくと、春到来を思わせます。
 チューリップの芽が少しずつ出ています。
 
(2009年11月刊。1500円+税)

消えた警官

カテゴリー:司法

著者 坂上 遼、 出版 講談社
 これは警察小説ではありません。実際に起きた事件を丹念に追って再現した本です。菅生事件についての本は何冊も読みましたが、私にとって決定版と言える本です。
 1952年6月1日の深夜、大分県菅生村(現竹田市)で駐在所が爆破され、現場付近で地元の共産党員ら3人が逮捕された。しかし、新聞発表によると現場で逮捕されたのは2人だけ。1人が消えていた。実は、この1人こそ現職の警察官であり、「爆破」事件を企図した張本人であった。駐在所の「爆破」自体が警察の仕掛けた「内部」犯行であり、共産党員2人はシンパを装った警察官に騙されて現場におびき寄せられただけだった。
 この本は、当時、中国共産党にならって無謀な軍事路線をとっていた日本共産党の内情をあきらかにし、裁判所の法廷において弁護人たちが苦しい尋問を続けていたこと、そして、犯罪を引き起こした張本人である警察官(市木春秋こと戸高公徳)を潜伏中の東京で発見するまでの経過が生々しく語られていて、実に読み応えがあります。
 いま、大分県弁護士会会長である清源(きよもと)善二郎弁護士の父親の清源敏孝弁護士が、地元の弁護人として登場します。まだ40歳の青年弁護士でした。私がUターンして福岡県弁護士会に登録したころも、かくしゃくとしてお元気でした。お酒が入ると、地元の神楽だったのでしょうか、見事な踊りを披露されていました。初めてお会いしたのは60代後半だったのではないでしょうか。
 もう一人、福岡の諌山博弁護士も登場します。諌山弁護士と一緒の法廷に立ったのは数回しかありませんが、それはみごとな、堂々たる尋問でした。諌山弁護士が法廷にいると、それだけで裁判官もふくめて緊張するのです。たいした弁護士でした。
 清源弁護士(父親)と一緒に羽田野忠文弁護士も弁護人として活動しましたが、この羽田野弁護士はあとで自民党代議士になったと思います。そして、検察官として鎌田亘検事が登場します。この鎌田検事は退官したあと福岡で弁護士になり、私も話したことがあります。温厚な人柄でした。
 駐在所「爆破」事件があると予告されていて、毎日新聞の記者は警官隊と一緒に現場付近で張り込んでいました。そこへ共産党員が2人やってきたわけです。
 ところが、この記者は、法廷ではあいまいな証言に終始してしまいます。
 駐在所「爆破」といっても、犯人とされた一人は背が小さくて、背伸びしても門灯に届かず、その電灯をとりはずすことはできなかったことが現場検証で明らかになった。
 さらに、「爆発」状況をよく見ると、内部に置いたものが爆発したとしか考えられないことが学者の鑑定によって明らかにされた。
 つまり、警官隊や記者を待機させていながら爆発が起きなかったというのでは警察に取って具合が悪いので、確実に爆発する仕掛けがなされていたのでした。
 市木春秋が実は戸高公徳という警察官だと判明するにいたった経過も面白いのですが、潜伏中の東京のアパートを見つけて張り込みをする状況も手に汗を握ります。
 このとき共同通信のキャップとして指揮した原寿雄記者には先日お会いしましたが、今なお元気にジャーナリズムの第一線で活動を続けておられます。
 戸高公徳の住んでいたアパートの電話番号は、警察幹部の女性秘書がこっそり教えてくれたというのです。人目をひくハンサムな斉藤茂男記者が得た情報でした。斉藤茂男の本もたくさん読みましたが、いつも感銘を受けました。
 戸高公徳は、事件後は潜伏していたが、それでも手厚い保護を受け、表に出てからはホップ・ステップ・ジャンプの上昇階段を駆け上がった。警察大学校研修所教官、四国管区警察局保安課長、警察庁人事課長補佐、警察大学校教授、警視長、警察共済組合常務。ノンキャリア組にはありえない異例の大出世です。共産党を「ぶっつぶした」ことをこんなに高く評価する日本の警察って、いやはや恐ろしいですね……。ただ、本当に幸せな人生を過ごしたのか疑問だと著者は指摘していますが、私も同感です。戸高公徳の顔写真がなかった(黒く塗りつぶされています)のは残念です。どんな顔をしていたのか知りたいと思いました。
 
(2009年12月刊。1700円+税)

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