法律相談センター検索 弁護士検索

ルポ・下北核半島

カテゴリー:社会

著者   鎌田 慧・斉藤 光政 、 出版   岩波新書
 青森県は、日本でもっとも危険な県である。
こんな文章で始まります。ええーっ、そうなんですか・・・。いったい、何が青森県にあるのでしょうか?
 アメリカ軍の三沢基地は、米ソ冷戦時代には「核攻撃基地」だった。今なお、アメリカによる世界軍事支配の世界戦略を支えている。
 この三沢基地に隣接して天ヶ森射撃場がある。戦闘爆撃機が模擬爆弾を投下する直下に、六ヶ所村がある。猛毒プルトニウムや使用済み核燃料を収容したプールや再処理工場がそこにある。さらに、航空・陸上・会状の各自衛隊の基地が配置されている。
 青森県は軍事と各産業の集中地帯なのである。
 猛毒のプルトニウムを生産する「再処理工場」は、一基の原発が1年間に搬出する放射能をたった一日で環境中に排出する。六ヶ所村の核燃料再処理工場は、事故続きで2008年末から停止したまま。世界でもっとも危険で、技術も安定していない。1993年に着工されて以来、トラブルが続いて、既に18回も施工延期を発表している。
 六ヶ所村の核基地化は、政府と電力会社が新全総当初から方針化していた。
 再処理工場だけで2兆円の工事、5施設の全部をあわせると3兆円近い工事費となる。
 原発を誘致したら、出稼ぎに行く必要がなくなるという宣伝がなされた。たしかに仕事は増えたが、技術的な資格がなければ日雇い仕事だけだった。人口の推移を見ると、1960年に東通村は1万2500人だったのが、2009年には7500人になった。第一原発が稼働しはじめた2005年の人口は8000人だったから、原発が動き出しても、人口は下げ止まりとはなっていない。
 1基で3000億円とか4000億円という原発の建設工事は、「地域開発の起爆剤」「過疎地経済のカンフル剤」と言われたことがあった。しかし、7ヵ年限定の交付金が切れると、禁断症状が出て、もっと新たな原発を、と要求するようになる。
 使用済み核燃料は「キャスク」と呼ばれる、高さ5.4m、直径2.5mの金属製、重さ120トンのドラム感情の円筒に、10トン分が収納され、50年間、保有される。保有は地中にではなく、地上の平屋建て倉庫に縦に並べられる。26ヘクタールの土地に幅60m、奥行き130mの建物がつくられ、その床に3000トンの使用済み核燃料が貯蔵される。最終的な貯蔵量は5000トン。建屋の建設費は1000億円。そのうち7~8割は金属キャブクの費用。50年間寝かせておいて、それから再処理工場へ搬出される。
 福島第一原発の4号炉に使用済み核燃料がありましたよね。そして、この核燃料がどうなっているのかは、事故から7ヵ月たった今でもまったく分からないというのです。
 放射能が30年とか50年で消え去るはずはありません。「地域振興」の名のもとで絶対に原発を建設してはいけません。
 危険を直視すべきです。わずか100年程度しか稼働しない非効率な工場が排出する、何十万年後の世代にまで放射能の悪影響を及ぼす危険があるものを扱うなんて、子孫に対して申し訳ないですよね。ノーモア原発をご一緒に叫びましょう。
(2011年10月刊。1900円+税)

心と脳

カテゴリー:人間

著者   安西 祐一郎 、 出版   岩波新書
 自分はいったい何者なのか。どんな存在なのか。死んだら、一切は無になるのか。眠っているあいだも生きているというのはどういうことなのか。無意識のうちに人は動き、動かされているというのは本当なのか。
 意識にのぼらない自我があるのか・・・。心は一体どこにあるのか、頭なのかハート(心臓)なのか。頭のどこに心があるというのか。
 考えてみれば、このように次から次へ疑問が湧いてきます。
 虹の色は、いくつに見えるか?
 日本語を母語として、日本の社会で育った人は、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の7食に見える。フランスも同じ。ところがアメリカ育ちの人には藍色抜きの6色に見える。ドイツだと、さらに橙が消えて、5色に見える人が多い。虹の色が二つにしかない言語もある。へーん、いろいろ違って見えるものなんですね・・・。
 発汗や筋肉の収縮のような身体の反応にかかわる情報は主として大脳皮質を経ずに、意識にのぼることなく処理される。情報の処理は大脳皮質を経ない意識下の経路の方が速い。したがって、意識下で起こる身体的な反応のほうが、大脳皮質経由の意識にのぼる活動よりも、基本的に先に生じる。心の働きについても、意識下の働きのほうが自分に意識されるはたらきよりもずっと大きいことが分かっている。
 喧騒の中で自分の名前が聞こえるのは、自分にとって大切な意味をもつ情報を選り分けるメカニズムが意識下で働くからだと考えられている。なーるほど、たしかに、そんなことって、ありますよね。
コンピュータと違って、持ち運びや破損や特別なエネルギー補給にそれほど気をつかう必要がないのは、脳の優れた特徴である。
 脳は何億円もするスーパーコンピュータをはるかに上回る性能を有しているのですね。
情報処理がいろいろな機能について並行して進められ、それらが相互作用することによって心のはたらきが現れてくる。情報処理システムとしての脳神経系である。
 脳神経系が、脳幹、小脳、大脳辺縁系、大脳皮質の内部やその間を結ぶ密度の高い神経経路を通して相互作用していること、しかも、神経系が入り組んだ階層構造をなし、各層でも並行して情報が処理されるとともに、層の間でも相互作用が起こっていること、さらに、神経細胞がつながってループしている(もとの神経細胞に情報がめぐり戻ってくる)回路がたくさんあり、きわめて複雑なシステムを形成している。
 人が文章を理解しようとするときには、音韻、形態素、文法、意味、文脈などの情報をお互いに関係づけながら並行して処理し、全体の意味を理解しようとしている。本を読むというのは、単に目で文字を追っているというのではないのですよね。だからこそ速読術がありうるのでしょう。
 ふだんの買い物のような、何気ない意思決定でさえ、買うモノの特徴を考えたり、買い物経験を思い出したりする記憶や思考、どの品物が買うに値するかを決める選考評価、楽しめるとかつまらないといった感情など、多くの情報処理が意識のうえと意識下の両方で並行して行われている。
心のはたらきのほとんどすべては、脳のたくさんの部位の相互作用によるもので、脳のどこかと心のどこかが一対一に対応するわけではない。
 人は、意識して思考しているだけでなく、むしろ大脳基底核などのはたらきに支えられて、意識にのぼらず思考している部分が相当大きい。
 脳の本は、いつ読んでも本当に面白いですよね。
(2011年9月刊。860円+税)
 今年も500冊を読みました。面白そうな本、読みたい本、知りたいことが次々に出てきますので、速読はやめられません。まあ、完全なる活字中毒症であることは認めます。でも、本を読んでいるときの快感って、なにものにも代えがたいものがあります。背筋がぞくぞくするほど知的興奮したときなど、心を静めるのにしばらく時間がかかることがあります。どうぞ、新年も引き続き、お付き合いください。チョコさん、誕生日プレゼントありがとうございました。

みえない雲(コミック)

カテゴリー:ヨーロッパ

著者   グードルン・パウゼヴァング、アニケ・ハーゲ 、 出版   小学館文庫
 ドイツを脱原発へ導いた話題の小説をコミック化したものです。映画にもなっているようです。恐ろしいマンガです。背筋がひたすら寒くなってきます。
 ドイツにも原発があります。そこで事故が起きて放射能が漏れ出します。付近住民は避難を命じられますが、道路はどこもかしこも渋滞します。
 両親が留守だったので、14歳の少女は小学2年生の弟を連れて脱出を図ります。自転車に乗って、ひたすら遠くを目ざします。ところが、弟は猛スピードで走る車にはねられて死んでしまうのでした。
放射能は臭いもせず、色もないので、不気味さばかり漂っています。
 大勢の人が逃げまどう様は哀れとしか言いようがありません。病院は、既に病人で満杯です。
 頭の髪の毛が抜けていきます。放射能で汚染されてしまったのです。学校では、そのことで、差別され、いじめられます。子どもたちから将来を奪ってしまうのが原発です。
 私は東電の歴代の社長を実刑にして刑務所に入れられないようでは、日本の司法の力って、口ほどのこともなく、たいして機能していないようにしか思えません。
 わずか1000円足らずの万引きで懲役1年の実刑という事件が珍しくなくなっています。何万人もの人々を突然家から追い出し、慣れない仮設住宅などでの生活を余儀なくさせているのは東電です。予見可能性はありました。予見する能力も十分です。単に利潤第一主義に走って、それらを怠っただけです。それなら、当然、東電の歴代の社長は懲役10年程度の実刑に処すべきではないでしょうか。東電の会長は居座ったままですが、それを許していて、この社会の秩序は維持できるのでしょうか。社会正義はどこへ行ったのでしょうか。いまこそ東京地検特捜部への出番なのではないでしょうか。
東電の社長がいなくても補償対策は十分にできると思いますし、原発事故対応も可能だと思います。
 皆さん、東電の歴代社長の刑事責任を問わなくていいと思いますか、おたずねします。
(2011年10月刊。543円+税)

フェア・ゲーム

カテゴリー:アメリカ

著者  ヴァレリー・プレイム・ウィルソン  、 出版  ブックマン社   
 映画もみましたが、アメリカ政府の卑劣さを改めて思い知らされる本です。
 そして、CIA検閲済となっているだけに、本のあちらこちらが黒塗りとなっているという異様な本でもあります。訳者は黒塗り前の文章を読んだのでしょうか・・・・。
 イラク戦争が、実は、何の根拠もないアメリカによる侵略戦争であることは、今や明々白々です。ところが、そのことがあまり問題になっていないのは、既成事実と大きな力の前にひれ伏す人間の悲しい習性によるものなのでしょうね。
 サダム・フセインのイラク政府が大量破壊兵器をつくったり、所持していた事実はないことをCIAは察知し、アメリカ政府トップに報告していました。しかし、それでは侵略の口実がなくなって困るブッシュ政府はその情報を握りつぶしてしまったのです。そして、アフリカまで調査に行った元大使が告発すると、逆に政府は元大使の妻はCIAのエージェントだと暴露して、マスコミの目がそちらに向くように操作・誘導しました。
 フェア・ゲームというから公正なゲームという意味かと思うと、さにあらず、格好の餌食だという、からかいの言葉なのです。
CIAの使命に忠実だった著者は、民主主義制度を信じ、真実が勝つと信じていた。しかし、ワシントンにおいては、真実だけでは十分だとは限らないことを知らされた。
ウォーターゲート事件で記者として名を上げたボブ・ウッドワードも厳しく批判されています。たしかに今では、ウッドワードの本を読んでも、かつての迫力は感じられません。
 同じく、日本によく来るアーミテージも分別のない政府高官とされています。要するに、自己保身ばかりを考えている、つまらない人物だということです。多くの日本人は今もアーミテージを大物として、あがめたてまつっていますけれど・・・・。
 映画をみて、黒塗りだらけの本を読むと、アメリカの民主主義も底が割れてしまいます。TPPにしても、アメリカの企業の権益擁護のためのものでしかありませんよね。アメリカって本当に偉ぶっているばかりいる、嫌味な国です。
(2011年11月刊。1714円+税)

パリ日記

カテゴリー:ヨーロッパ

著者   エルンスト・ユンガー 、 出版   月曜社
 1940年6月14日、パリはドイツ軍に占領された。以来、1944年8月25日までの4年2ヵ月あまり、その占領は続いた。
 エルンスト・ユンガーは、現代ドイツ文学の巨峰、100歳を過ぎてなお、執筆活動を続けた。そのユンガーは、1941年2月から1944年8月まで、途中の転出を除いても3年半のあいだパリに駐留していた。そのときの日記が本書で紹介されています。
 ユンガーは、ナチスとは距離をとり続けていたため、ゲシュタポから家宅捜索を受けたこともある。パリでは、参謀本部付きの将校としてホテルに宿泊していた。
 この本によると、ユンガーは文学サロンに出入りしていて、ジャン・コクトーなどの文人と広く付きあって文学論をたたかわせ、ピカソやブラックのアトリエも訪れています。当時、ユンガーは48歳、まさに男盛りでした。
 この日記には、何度もクニエボロという人物を批判する記述が出てくるので、誰のことかなと不思議に思っていたところ、巻末でヒトラーのことだと分かりました。つまり、著者は一貫して反ヒトラーだったのです。
 ただ、1944年7月20日のヒトラー暗殺計画には直接の関わりはなかったようです。それにしても、この日記には、ヒトラー批判派の人々が多く登場してきます。彼らの多くは7月20日事件で逮捕され、処刑されたのでした。
 ドイツ国防軍の上層部に反ヒトラーの気分が少なくなかったことが、この日記からも十分にうかがえます。たとえば、1944年までフランス派遣軍総司令官だったシュテルプナーゲルはヒトラーに反乱しようと失敗し、処刑されてしまいます。ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺についても目撃者となり、また、そのおぞましい真相を聞いています。
 ユンガーは1942年7月17日のパリでのユダヤ人の大量逮捕・移送についても、パリで見聞しています。先日、日本でも公開された映画が、この事件を扱ったものでした。
 両親がまず子どもたちから切り離され、悲嘆の声が町中で聞かれた。私は不幸な人たち、骨の髄まで苦悩に満たされた人たちに取り囲まれたことを一瞬たりとも忘れることができない。そうでなくても、私は何という人間、何という将校なのであろう。
 1944年6月の連合軍によるノルマンディー上陸作戦もパリにいて情報を得ています。
 1944年6月12日の日記にユンガーは次のように書いています。
 クニエボロ(ヒトラー)と彼らの一味は、まもなく戦争に勝つと予言している。再洗礼派の領袖とまったく同じである。賤民は、どのような人物たちの後ろについて走るのだろうか。一切を包括して衆愚になってしまったのは、どうしてだろうか。
 この日記を読んでいると、どこで戦争があっているのだろうかと思えるほど優雅なパリ生活をユンガーは過ごしていると思えます。それだけ、ドイツのインテリの頭脳の一端が分かる本として、面白く読み通しました。
(2011年6月刊。3800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.