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日米同盟と戦争のにおい

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著者 新原 昭治、 出版 学習の友社
 1945年9月8日、サンフランシスコで対日平和条約の調印式があった。日本からの全権団6人が出席した。ところが、同じ日の午後、アメリカ軍基地内で日米安保条約の調印式もあったが、そのときには、全権6人のうち2人(苦米地義三と徳川宗敬)は出席を断った。日本側で調印したのは、当時の吉田首相ただ一人だった。それは、日米安保条約の内容が吉田首相以外には知らされていなかったからである。
 いやあ、これって私は知りませんでした。日米安保条約って、発足当初からこんなに胡散臭いものだったのですね……。
 アメリカの軍事費は世界中の軍事費120兆円の約半分(48%)、57兆円を占めている。2005年の世界の軍事費の増額分は、330億ドルだったが、このうちアメリカが8割260億ドルを占めている。
 アメリカ軍の現役兵力は140万で、このうち20%が常に海外に駐留している。地上戦闘兵力についてみると、3分の1が海外に配備されている。そして、イラクに派兵されている16万人のアメリカ兵のうち、4割が予備役と州兵によって賄われている。
 アメリカの海外基地で、一番多いのはドイツで275か所。その次が日本で97か所。そして3番目が韓国で95か所。ところが、日本だけ、アメリカの陸軍、海軍、空軍、海兵隊四軍のすべての主要基地が存在している。しかも、海外にある価値ある主要なアメリカ軍基地のうち、最上位5大基地の4基地は日本にある。横須賀基地が世界のトップであり、嘉手納基地、三沢、横田と続く。
 さらに、一国の首都圏に大規模なアメリカ軍基地があるのは日本だけ。それは、たとえて言うと、ニューヨーク大都市圏に3万人の外国軍部隊とその家族が常駐し、3つの航空基地と1つの海軍基地、3つの補給基地と4つの外国軍人専用ゴルフ場、さらに繁華街にアメリカ人立ち入り禁止のホテルを構えているのと同じ。
 うへーっ、日本って、あまりにもみじではありませんか。みじめ過ぎます。悲惨です。独立国家・日本って、どこへ行ったんでしょうか。これで主権を有する独立国と言えるのでしょうか……。
 日本の自衛隊は、練馬区内の朝霞駐屯地に中央即応集団(3200人)を2007年3月に発足させた。これは、アメリカ軍との共同作戦が期待されている。
 憲法9条2項を廃止せよという声も、結局のところアメリカの要求に応じたものです。ひどいものです。もっと日本は主権国家としての誇りを取り戻すべきではないでしょうか。いえ、何もアメリカとケンカしろと言っているのではありません。せめて、ヨーロッパ並みに、いえいえ、フィリピン並みに、日本も対等の立場でアメリカに対して基地撤去を要求すべきだと思います。それに、年間2300億円もの思いやり予算なんて、法的義務のないムダな支出の典型ですから、直ちに廃止すべきです。そして、それを福祉予算に回したらどうでしょうか……。
 選挙のとき、このことが争点にならない、マスコミも報道しないなんて、おかしなことです。
 処暑を過ぎても残暑厳しい夏の日曜日。夕方から庭に出て、少しだけ草刈りもしました。伸び放題で見苦しかったところをスッキリさせ、風通しも良くしました。
 見上げると、ナツメの実がたわわに成っています。長く延びる枝刈り機を引っ張り出して、枝ごと切り落とします。たくさんのナツメの実がとれました。日干しにして、ナツメ酒を造ります。1年たったら飲めるでしょう。朝鮮人参酒には、ナツメの実がいつも入っています。
 芙蓉がピンクの花を咲かせています。酔芙蓉のほうはまだ花を咲かせていません。足もとにリコリスの淡いピンクの花が咲いていました。彼岸花が咲くようになると、秋です。庭には一足先に秋の気配が漂い始めました。
 
(2007年8月刊。1500円+税)

「戦地」派遣

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著者 半田 滋、 出版 岩波新書
 自衛隊の海外活動はおろか、国内での活動でさえ、日本人は知らない。実にそのとおりです。その莫大な予算規模に反比例して、毎日のニュースには、まったく登場してきません。
 自衛隊は、ソ連と戦うことを想定した重厚長大な訓練を自讃しながら、もっぱらしているのは、軽妙な市街地戦闘訓練である。演習場への移動費を少なくして簡単にできるからだ。予算節約のためだというのです。笑わせます。凍った笑いです。
 歴代の日本政府は、武力行使や集団的自衛権の行使を禁じた憲法9条に反するものを、適当な理屈をつけては自衛隊を海外に送り出してきた。政府与党にとっては、自衛隊の海外派遣そのものが目的だから、法律と活動のズレを気にする人はいない。
 自衛隊の海外活動は、でたらめなシビリアンコントロールのもとに行われ、事実上、無法状態に近い。それでも、さらなる海外派遣を求める日本の姿は、正常な国家といえるだろうか。ホント、ホント、まさにそのとおりです。
 海外へ派遣された自衛隊は、まるで糸の切れた凧のような存在である。シビリアンコントロールの届かないところで、自衛隊は経験を積み、確実に力を増している。
 うむむ、これって、なかなかに恐いことですよ……。
 戦車1200両、護衛艦60隻、戦闘機300機、定員24万人。日本の自衛隊は一見すると強そうに見えるが、実は張りぼての「張り子のトラ」である。
 ええーっ、なんで……かな。世界有数の実力装備を誇っているんじゃないの……?
 日本の防衛費は、4兆7000億円と高額だ。しかし、その装備は旧式化しつつある。なぜなら、防衛費の4割は、24万人の自衛隊員の人件費と糧食費であり、4割はこれまで買った高額な装備費のつけ払いに充てられる。残り2割の9000億円のうち、燃料費や研修費に充てるほか、最新の武器の購入に充てられるお金は限られてくる。だから、今や老朽化してしまっている。うむむ、そ、そうなんですか……。考えさせられます。
 イラクで自衛隊員が戦死したとき、制服組は政治家を操って国葬を計画していた。遺体を自衛隊が陸路または空路でイラクからクウェートまで搬送する。政府の代表として、首相でなくても官房長官がクウェートで遺体を迎える。そして、政府専用機で帰国する。葬儀は防衛省を開放し、一般国民が弔意を表せるように記帳所をつくる。何という手際の良さでしょうか……。そんな事態にならなくて幸いでした。
 湾岸戦争のとき、日本は一兆円を超える戦費を負担した。そのお金はほとんどアメリカに差し出された。クウェートに渡されたお金は、わずか6億円のみ。日本人は、アメリカのために1人あたり1人1万5000円を負担したことになる。
 今度のイラク戦争で自衛隊が行ったのはサマワだったが、サマワに決まるまで、場所も時期も二転三転した。現地情報が不足していたからである。
 当初は、1000人の旅団が派遣されるはずだった。しかし、首相官邸から「大げさになりすぎる」というクレームがついた。500人でいいという官邸案とのつな引きがあって、600人に落ち着いた。すると、部隊を守る警備隊は減らせないので、復興支援隊員を削るしかなく、600人のうち、わずか100人足らずしか復興支援活動に従事することができなかった。その内訳は施設隊50人、給水隊と医療隊が各20人だった。
 サマワの自衛隊は、13回も攻撃され、22発のロケット弾などの攻撃を受けた。そして、路上の仕掛け爆弾による襲撃も1回だけ受けている。まさにサマワは「危険地域」だった。
 戦争という破壊行為でこそ機能する武装集団に、町づくりを期待する方が筋違いだ。
イラクの土を踏んだ自衛隊員は5500人にのぼる。
 陸上自衛隊がイラクから引きあげたあとも、航空自衛隊は空輸活動を続けていた。いったい何を運んでいたのか……?その8割以上がアメリカ軍兵士を運んでいた。運んだ4万6500人のうち、3万人はアメリカ兵である。まさに、自衛隊はアメリカ軍の兵站活動を担っていたわけです。
 そして、海上自衛隊は、アラビア海で海上給油等の活動に従事した。日本の税金で買った水や石油を、アメリカやパキスタンの軍隊にタダで提供する活動である。タダだから、もちろん喜んでもらえた。なんと、なんと、日本はこんなことをしていたんですね。金持ち日本の大いなる愚行ですよ。信じられませんね。これでは福祉予算がバッサリ削られるはずです。
 防衛費の配分比率は陸海空ごとに1.5対1対1に固定化されている。陸1兆7000億円、海1兆1000億円、空1兆1000億円である。
 日本の自衛隊がアメリカの主導で、アメリカのための軍事組織になることは、日本人も国際社会も望んではいない。
 本当にそのとおりです。日本人は私をふくめて、自衛隊のこと、その能力、装備、予算を知らなさすぎると、痛感させられました。
 
(2009年2月刊。780円+税)

九州の一揆・打ちこわし

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著者 宮崎 克則、 出版 海鳥社
百姓一揆といえば、苛酷な年貢にあえぐ大勢の農民たちが発作的にテンデンバラバラに蜂起して藩権力と武力衝突したかのようなイメージがあるが、実態はそうではない。鉄砲などの武器を携えていても、それは武器としてではなく、合図の道具として用いられ、藩側との武力衝突はほとんど起きていない。年貢や夫役、商品生産への統制に反対して政策転換を求めて訴願する行為であり、代表を選出しての越訴(おっそ)や集団での強訴(ごうそ)などがある。つまり、権力へ訴えることを旨とする一揆は、農民たちによる異議申立なのである。
百姓一揆は江戸時代、3000件以上も発生した。久留米藩に起きた享保13年(1728年)の大一揆は、藩の年貢増徴策に反対するものである。
 享保一揆のとき、農民勢の動きに庄屋たちも同調した。5つの村が一つの組をつくって、傘型連判状、円を囲んだ放射状に名前を連ねて判をして、首謀者・発頭人が誰か分からないようにした。藩側の責任者2人は死刑となったが、ほぼ全面勝利を勝ち取った農民側には一人の処罰者もなく終わった。
 宝暦4年(1754年)に再び久留米藩で百姓大一揆が起きた。このときの参加者は16万人にのぼったと言われていますが、この本では2万人が妥当な人数とされています。
 このときの一揆の主力となったのは村役人層ではなく、貧窮化しつつあった中下層の者たちだった。処刑されたなかに大庄屋が一人いるが、これはくじ引きで選ばれたもの。
 宝暦一揆のときには、藩側は譲歩しなかった。
 天草は、全国平均11.2件(1万人あたりの発生件数)を超え、20.3件もある、一揆の激発地帯だった。ここでは、地主と小作の対立にもとづく運動が多いという特徴がある。
 江戸時代の中・後期には、全国的な傾向として、庄屋の公選や年番制が行われ、その交代が頻繁となった。そうなんです。庄屋といっても世襲制だけではなく、選挙で選んでいる地域も多かったようです。案外、民主的だったんですよ。
 打ち壊しの対象となるのは、都市部では両替商や米屋などの富裕層であり、農村部では庄屋や「徳人」などの上農層である。そして、必ず彼らの全員が打ち壊されるというのではなく、ある程度の施行をすれば、打ちこわしを免れることができました。打ちこわしによって没落した家はなく、明治以降の経済変動の中で没落している。打ちこわし勢自身の「私欲」は禁止されていて、金品の略奪やその場での分配はしない。つまり、統制がきいていたのです。
 共同体から抜き出ようとする庄屋や「徳人」を打ち壊す行為は、彼らを共同体から排除するものではなく、「徳」の実施を強要する一時的な制裁であり、制裁のあとは、ともに村の住民として居住していく。つまり、打ちこわしは、前近代の村落共同体が有していた「共生の技法」の一つなのである。
 百姓一揆なるものが、実に組織的なものであること、よく準備された、大規模なものが多いこと、それは村落共同体を守ろうとするものであったことなどが実証されています。
 370頁もあり、少々高値の本ではありますが、なべて日本人は昔からお上に従順だったなどという俗説の間違いも明らかにしていますし、江戸時代の実情を深く知ることのできる興味深い貴重な本です。
 3月末から3週間以上も次々に咲き続けてくれたチューリップも咲き終わりました。地上部を刈ってやり、すっきりさせました。彫り上げるのは先のことです。今はアイリスそしてクレマチスが花ざかりです。
 ちなみに私はチューリップを生花として花瓶に差し飾ることはしていません。地植えで咲いているチューリップの首を切るような気がして、なんだかそんな残酷なことはできないのです。花びらが落ちてしまうまでそっと眺め続けます。
 
(2009年1月刊。5700円+税)

イラク崩壊

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著者:吉岡 一、 発行:合同出版
 日本は今もアメリカのイラク侵略戦争に深く関わっています。一見、平和な日本は遠く離れたイラクの人々をアメリカ軍が殺しているのに加担していることは動かしがたい事実です。4月の名古屋高裁判決も、そのことを明確に指摘しています。ところが、多くの日本人は私を含めて、そのことの実感が持てないままでいます。無理もありません。イラクの実情がほとんど日本に伝えられていないためです。
 この本は、朝日新聞の元中東アフリカ総局特派員として、バクダッドにも駐在していた記者による生々しいレポートです。支局周辺だけでなく、イラクに住む普通の人々のナマの現実をもっと知りたいと思いますが、そうは言っても、この本だけでもすごい迫力があります。アメリカのイラク侵略戦争が間違いだということは、この本からも明らかです。ですから、少なくとも日本は一刻も早くアメリカのイラク侵略戦争に加担するのをやめるべきです。
 バグダッド陥落時にアメリカ軍が真っ先に占領したイラク石油省を、アメリカは2004年春に手放した。アメリカのつぎ込んだ戦費が91兆円(8,450億ドル)。アメリカの支払った代価の総額は324兆円(3兆ドル)をこえたと言われる今、石油利権だけでイラク戦争を説明するのは難しい。
イラクにいたとき、強盗に襲われることを考えて、1万ドルの現金を次のように小分けして身体に身につけていた。まず、4000ドルを二つにわけ、ビニール袋に入れて靴底に隠す。財布の中には800ドルを入れ、最初に強盗にくれてやる分とする。さらに1200ドルをウェストポーチの隠しポケットに入れる。強盗が「まだあるだろう」と言ってきたときに差し出す。さらに、腹巻の中に残る4000ドルを隠す。命を奪われそうな時にはこれを差し出す。
 うーん、な、なーるほど。ここまで小分けして次の手を繰り出して時間を稼いで、生命だけは助かろうというのですね。すごい工夫ですよね。
 イラク人は、武器を家庭に備える習慣がある。だから、一家に1丁や2丁は必ず拳銃がある。 
 大きな問題は、アメリカ軍がいい加減なタレこみ情報に基づいて「容疑者」宅を襲撃すること、そして、男ならだれでも捕まえてしまうやり方にあった。容疑者には、2500ドルの報奨金がアメリカ軍から支払われる。そして、アメリカ兵は家宅捜索のたびに、イラク人の持っている現金を持ち去る。
 アメリカ兵にとって、見えない敵、不気味な沈黙、突然の襲撃、というゲリラ戦の恐怖が次第に募った。それが、無実の市民の拘束や誤射による市民の殺害、デモ隊への発砲という不始末を積み重ねる要因となっていった。
 イラクの人は次のように言う。
 ここの人間は、今や誰でもアメリカと戦う。子どもも同じだ。いま、アメリカと戦う人間は2種類いる。直接に武器を持って戦う人間、そして、聖戦士に資金を援助する人間だ。
 アメリカ軍は、今なお、アメリカ軍に対する攻撃者をテロリストと呼んでいる。しかし、それはもはや、一部の孤立した武装集団による攻撃ではない。イラクの国民運動なのである。
 いま、イラク政府の腐敗はすさまじい。イラク国防省では、ヘリ購入契約を巡って250億円が闇に消えた。電力省は、2億ドルの発電所建設契約をアメリカの企業と結んだ。しかし、実際に支払われたのは3億ドル。しかも、発電所は完成されなかった。
 イラク復興資金は20億ドルを使ったというが、まともに使われたのは500万ドルもあるだろうか、という状況である。
 イラクでは、2005年の1月に月に2回、国政選挙があった。どちらもシーア派が過半数をとった。ところがアメリカが介入した。アメリカは敵国イランの強い影響下にあるシーア派政権を認めることが出来ない。そこで、多数党派の連立政権が誕生した。政党の間で内戦に突入していった。犠牲者は1日80人ペースにまでなった。
 挙国一致内閣は、身動きならず、なにも出来ないままだった。
 アメリカは、イラクだけでなく、中東全体で民文化の芽を摘んでしまったことになる。2008年時点で、500万人のイラク人が家そして故郷さらに国を追われて異郷の地をさまよっている。これはイラク人口の2750万人の20%に近い。
 イラクの自爆件数は、08年7月末まで658件。爆弾テロによる死者は1万6千人、負傷者はその2倍の3万4千人近い。爆弾テロのうち自爆テロが37%を占める。
 自爆攻撃で死ぬのは、常に若者であり、命じる年長者は最後まで死なない。
 殉教攻撃で死んだ者は天国に行くことができる。そこでは、一生72人の処女が付き従ってくれる。このように信じて死地に赴く。自爆テロを止めるには、アメリカ軍がイラクから撤退するしかない。
 イラクにアメリカ兵は16万人いる。基地業務などで働く民間人が15万人をこえる。民間軍事(戦争)会社の要因が1万3千人。そのすべてが、イラクの国内法の適用が除外される特権的な存在である。
 この本の最後に、私もよく知っている高松あすなろの会の鍋谷賢一氏の名前があがっていたのに驚きました。最初に原稿を読んで応援したのだそうです。えらいものです。
 日弁連会館前にある日比谷公園は、すっかり秋景色でした。皇居前広場の銀杏並木は見事に黄金色となっていました。晩秋になって寒さも一入、コート姿が目立つようになりました。皆さん、風邪などひかれませんように。
(2008年9月刊。1800円+税)

細胞の意思

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著者:団 まりな、 発行:NHKブックス
 生命の神秘に迫る本です。私は神様の存在を信じていませんが、いったい何も考えているはずのない(?)細胞がどうして自主的に合理的な行動をするのか、不思議でなりません。それは神様が導いているのだと○○教信者なら言うのでしょうが、「神様の意思」がどうやってこのミクロの世界で細部にわたって反映されているのというのか、そこでまた謎が生まれます。
 細胞は直径10ミクロン(1ミリの100分の1)ほどしかないので、顕微鏡を使わないと見えない。だが、肉眼で見える細胞もある。たとえば、鶏の卵の黄身、イクラやスジコ、数の子やウニ。これらはすべて卵(ラン)である。
今は細胞内にあるミトコンドリアは、昔、独立のバクテリアだった。バクテリアのなかのあるものが大昔に、太陽の光からエネルギーを取り出すという特殊な能力を持つタンパク質を持った。そして、このエネルギーを利用して空気中にふんだんにある炭酸ガスから有機物を作るようになった。これが光合成細菌(シアノバクテリア)の出現である。
 いま、人間にとって必須不可欠の酸素は、この頃のバクテリアにとっては猛毒でしかなかった。この猛毒から身を守るため、あるバクテリアは地中深くに潜り込み、別のバクテリアは何匹か融合して身体を大きくし、DNAを細胞膜に付着させたまま体内に取り込んだ。これがミトコンドリアの祖先である。ミトコンドリアの祖先は、酸素を利用してブドウ糖から効率よくエネルギーを取り出す代謝経路を作り出すことに成功した。毒を薬に変えてしまったのである。ミトコンドリアを包む二重の膜が二枚とも完全に閉じているのは、ミトコンドリアがもともと「よそもの」だったからである。
 たとえば、自分が当面目指していることが成し遂げられないと悟った細胞は、しかるべき方法で自分の身体を退縮させ、「私を食べてください」という掃除屋細胞にあてた信号を細胞表面に出し、迷い込んだその場から潔く身を引いていく。
 受精卵が透明帯をかぶっているのは、一個の細胞としては身体が大き過ぎて、こうでもしておかないと、ちょっとした衝撃で破裂してしまう危険性が高いから。ちなみに受精卵は、普通の細胞に比べて2000倍もの体重を持っている。
 そして、1日に1回の分裂を繰り返し、3日目には8細胞となる。
 このように、細胞は単なる入れ物ではなく、原始のように小さく規則的なものでもなく、フツーの人間と同じように様々な状況を把握し、あの手この手で切り抜けていく生活者である。
 うむむ、細胞とは、生きた生活者というわけなんですか……!?
 庭の片隅にハゼの木があります。私が植えたのではなく、いつのまにか育って大きくなりました。細かった幹も、今ではずいぶんと太くなり、その時期になると毎年、見事に紅葉します。今がちょうどそのときです。
 実は、何の木か分からなかったのですが、近所の人にハゼの木だと教えてもらいました。
 私は小学生の頃、ハゼの木を手に持ってチャンバラごっこをして、その汁にかぶれて顔一面が腫れあがり、お岩さんのようなかさぶたができて一週間学校を休んだことがあります。大きくなりすぎて屋根の雨樋かかるので、切らなくてはいけないのですが、またかぶれてしまわないか心配しています。
(2008年7月刊。970円+税)

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