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カテゴリー: 社会

官房長官、側近の政治学

カテゴリー:社会

著者 星 浩、出版 朝日新聞出版
内閣総理大臣(首相)が「主任」であるのが内閣官房であり、その内閣官房の「事務を統轄する」のが官房長官である。
 官房長官は、首相の「補佐役」「女房役」といわれる。
 首相という強大な権力を支え、時には利用していくのが、官房長官の役割であり、力の源だ。
 では、なぜ首相は強いのか?
 第一に解散権をもっている。衆議院を解散する権限を有している。
 第二に、多くの人事権をもっている。大臣、最高裁長官、日銀総裁、東電会長、NHK会長も首相が決定する。
 第三に、予算編成権をもつ。
 官房長官は、明治憲法下では「内閣書記官長」と呼ばれていた。
 現憲法下では、はじめは天皇の認証の対象ではなかった。1963年の池田内閣から認証官となった。それまでは大臣よりも格下のポストだったが、大臣待遇となった。
 官房長官の仕事は、三つある。
 第一に、記者会見。実質的に権力の中枢にいて、実際の政策決定にも関与している政府首脳が、定例で記者会見しているところが、諸外国とは異なる。
 第二に、霞が関全体の調整役という役割を果たしている。そして、いわゆる危機管理の中心になる。
 第三に、政権与党との調整をしている。
 子分型の官房長官は、大先輩である首相から宰相学を学び、その経験をステップにして幹事長などの実力者を目指す。
 毎日、首相を近くから見ていて、「俺もいつかは首相に」「このくらいの首相なら、俺にだってつとまる」と考えるようになる。
 しかし、首相と官房長官との間には目に見える距離からは考えもつかない「大きな距離」がある。
 官房機密費というものがある。領収書なしで内閣が支出できる14億円もの予算だ。正式には、「内閣官房報償費」という。この官房機密費の支出は、官房長官の専権事項だ。
 かつては、外務省分の20億円とあわせて、総額30億円もの官房機密費があった。毎月1億円が野党などへの国会対策費につかわれている。要するに、野党を買収・接待する費用だ。もちろん、税金である。
 もう一つ政権中枢に対する批判的コメントが欲しいところだと思いました。
(2014年7月刊。1200円+税)

黒部の山賊

カテゴリー:社会

著者  伊藤 正一 、 出版  山と渓谷社
 昭和39年(1964年)に刊行された本の復刻本です。ですから、この本で最近とか現在とあるのは、1960年代前半のことになります。つまり、今から50年も前の日本アルプスの山々の情景が描かれているのです。
 山小屋をつくり、道をつくり、熊に出会い、山賊のような人々がアルプスの山々を歩いている時代です。大勢の凍死者も出しています。救援活動も命がけでした(これは今も同じなんでしょうが・・・)。
 そして、モノノケに驚き、脅かされます。死んだ人が山小屋に顔を出すのです。
 北アルプスの尾根筋は、真夏でも最高14~18度。朝には氷が張ることがある。高度3000メートル。晴れた日でも秒速30メートルの風が吹く。荒れると秒速70メートルにもなって、小屋が土台ごと舞い上がって空中分解してしまう。
 人体の感じる温度は、風速1メートルにつき、1度下がったのと同じ。雨で身体が濡れていると、気化熱のために体温が奪われるので、その何倍にもなる。こうして、体温が28度ほど下がって、真夏でも簡単に凍死してしまう。
 凍傷の場合は急激に温めてはいけない。しかし、凍死寸前の場合には、一刻も早く温めるのがよい。温まると、忘れたように治ってしまう。
 ゴアテックスが発明される前は、山で雨が降ると、凍死寸前の人々が2~30人も山小屋に飛び込んできた。うへーっ、こ、こわいですね。
 熊は耳と鼻は非常に敏感だが、目はあまりよくない。したがって、風下から、音を立てないようにして近づくのが熊狩りのコツである。熊を殺して、大きな鍋で肉を煮て食べる。熊の腸を鍋の中に入れる。腸の中には、排泄寸前の糞がぎっしり詰まっている。これを入れなければ味が出ない。これが山賊たちの食事だ。うへーっ、こ、これはなんとも食べたくありませんよね・・・。最後に、熊の足の裏を薄く切って焼いたのを食べる。どんな味がするのでしょうか。
 健全な者でも、山小屋に入って20日間もすると、ぐっと能率が低下する。忘れっぽくなり、計算も出来なくなる。最盛期を過ぎてひまになってくると、ボケかたがひどくなり、しまいには気力がおとろえてくる。そして、山々が新雪におおわれることになると、底知れない孤独感と人間社会に対する限りない郷愁におそわれる。これは、奥地の小屋ほど、人数が少ないほど、そして未経験者ほど、強くあらわれる。
 山で熊に出会ったら、恐れずににらみあっていること。背中を見せて逃げてはいけない。背中を見せたら、飛びかかってこられる。ピッケルで殴ったりしても熊に致命傷を与えられず、かえって熊を怒らせてしまう。身をかわしているうちに、熊のほうがやめてしまうだろう。
戦後まもなくの、のどかな時代でもあったようです。写真もあって、当時の雰囲気をよく忍ぶことができます。貴重な山の本だと思いました。
(2014年4月刊。1200円+税)

校閲ガール

カテゴリー:社会

著者  宮本 あや子 、 出版  メディアファクトリー
 とても面白い本でした。『舟を編む』のパロディー本かと錯覚してしまいました。あちらは辞書を編集する現場の変人たちの話でしたが、こちらは編集の下に位置づけられる校閲部の変人たちのオンパレードです。
 校閲(こうえつ)とは、文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり、構成したりすること。
 私はモノ書きを自称すると同時に、編集も業としてきました。他人の書いた文章を反復継続して手直ししてきたということです。ほとんどペイしていませんので、「対価」がなければ「業」とは言えない・・・。それでも他人の変な文章を見ると、すぐに赤ペンを入れたくなります。
カギカッコの直前に句読点はつけないという不文律があります。しかし、このことは意外に、多くの人が知りません。そして、エッセーの小見出しに数字を付すのもやめてほしいです。
 まあ、それはともかくとして、好きでもない校閲部にまわされ、泣く泣く嫌な校閲の仕事をしている独身女性の悦子が主人公です。
 平凡でお気楽な女子大生だった悦子は、気合いと根性だけで難関の景凡社の入社試験を乗り切った。ファッション雑誌の編集者になることを夢見て入社した悦子が配属されたのは、地味な裏方仕事の校閲部。がーん。・・・・。
通常、仕事に慣れた校閲者が一日で完璧にできるのは、1日25頁ほどだとされている。
 私も、他人のあらを探すのは得意なのですが、自分の書いた準備書面を裁判所に提出したあとに読み返すと、たくさんのボロを見つけてしまい、赤面の至りです。そうなんです。思い込んでしまうと、あらは見えなくなるものなのです。
 表に出ないはずの閲覧部の悦子がなぜか作家本人と直接話すようになり、果てはその作家が「逃亡」すると、その所在探しにまで駆り出されるのでした。そのあたりには謎解きも入って、ちょっとしたミステリー小説の気分を味わうことが出来ます。
 今どきの女性の乱暴な男言葉が、話の展開を軽快なものにしています。
 軽いタッチでテンポよく話が展開していきますから、ふむふむ、この次はどうなるのかなと、おもわず話に引きずりこまれてしまいました。軽い気持ちで読める、うさ晴らしにもってこいの本です。
(2014年3月刊。1200円+税)

集団的自衛権の何が問題か

カテゴリー:社会

著者  奥平 康弘  、  山口 二郎  、 出版   岩波書店
集団的自衛権の問題点について、いろんな人が多角的に明らかにした本です。とても時宜にかなった内容です。
 個人を離れた実体としての国家の権威を個人の上に置きたいと考える国家主義者にとって、国民に死を強いることのできない国家は、欠陥国家である。
 日本をそのような欠陥国家にした最大の元凶は、敗戦後に押し付けられた憲法9条であり、これを改正することによって日本はまともな国家に復権できる。安倍首相は、このように考えている。
 安倍は、政治家の名門であるが、祖父や父と違って、学歴エリートではない。だから、若いころから、祖父や父に対して劣等感を持っていたに違いない。
 安倍とその取り巻きの政治家は、「つよい劣等感をもった少年兵」である。彼らは、実際の戦争も戦闘も知らないゆえに、戦争を封印してきた政治体制に対して過剰に暴力的になっている。
  安倍首相は、1990年代以来の日本民主化の試みから生まれた鬼子である。安倍や橋下にとって、民主主義とは「決める人を決める」手続に矮小化されている。
 民意の絶対化、政治主導の絶対化は自分自身が要するに民意そのものであるから、自分に反対するものは民意に反するという権力の絶対化につながる。
 安倍首相の手法は、「必要は法を知らない」、目的を達成するためにはルールにかまっていられないという国際法の発想である。
 安倍首相の言葉の裏に、「戦争の火種」を小さく生んで大きく育てようという騙しの手口が見える。
 防衛省には、1993年につくられた、朝鮮半島有事に際して、日本人を救出する極秘計画がある。自衛隊は、米軍には一切頼ることなく、自衛隊だけで海外邦人を救出できることになっている。
 集団的自衛権とは、自衛ではなく、「他衛」を指している。売られていないケンカを買ってでる。そうなんです。自衛ではないんです。
 安倍首相の記者会見における発言は、
①戦争は突然に起きると思い込んでいる。
 ②日米の権力が同等だという前提に立っている。
 ③軍事技術の限界を無視している。
 まさに、安倍首相は軍事オンチである。安倍首相のいう「限定」容認論とは、結局のところ、日本が本格的な戦争に巻き込まれる入口に過ぎない。
 いま、日本人は、保守政治を自認する安倍首相の憲法破壊によって戦場に駆り立てられようとしている。「国民の戦死」と「戦費の増大」という巨大な負担は、日本人に重くのしかかる。21世紀の日本は、狂信的な首相の登場によって、世界が注視するなか不幸のどん底に転げ落ちようとしている。
 安倍首相は、いまが千載一遇のチャンスだと考えている。彼は、自分が自民党の中で、多数派でないことを自覚している。
 今の天皇は、戦後デモクラシーを全面的に容認している。
安倍首相は、集団的自衛権を本来の目的にそくして行使したとき、日本が戦争当事国となることにともなうリスクをまったく説明していない。
 抑止力というのは、相手より強いことが前提となって成り立つ概念である。相手国だって、抑止されまいと強くなるはずで、安全保障のジレンマに陥る危険がある。
 日本が攻められていないときに、集団的自衛権を行使すれば、日本が先に戦争の火ぶたを切ることになる。
 今の日本社会には漠然とした「脅威」を共有する空気ができつつあるのではないか・・・・。陸海空すべての司令部レベルで米軍との一体化がなされることになった。
 もし日本政府が歯止めを設けられないとなると、自衛隊を用いるにあたっての歯止めが国内には存在しない。それは、文民統制がきかないことを意味している。
 安倍首相は、集団的自衛権を行使した「後」のことについてはまったく言及しない。日本が攻撃すれば、日本本土への報復攻撃を行われるだろう。
 国の安全保障中心は、「攻められない」ようにする条件をいかにしてつくりあげるか、にある。
 「怖いのか、臆病者め」と言われたとき、「はい、怖いです」と答えられる社会は健全だ。「平和ボケ」より、「軍事中毒」のほうが、はるかに有害だ。
 憲法9条を集団的自衛権を認める意味に解釈変更することは、解釈の限界をこえ、立憲主義に対する挑戦である。
何度も、そうだ、そのとおりだと叫んでしまいました。
(2014年7月刊。1900円+税)

夜間保育と子どもたち

カテゴリー:社会

著者  櫻井 慶一 、 出版  北大路書房
 夜間保育と聞くと、なんとなくマイナス・イメージがありますよね。でも、この本を読むと、これがすっかりプラスイメージに変わってしまいます。やっぱり、体験者の話には耳を傾けるだけの価値があります。
 「夜間保育は、子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすだろう」
 この予言が、実はあたっていないことが、長年にわたる調査・研究によって明らかにされた。夜間保育は、現実には、決して子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすものではない。むしろ、こどもの成長・発達に悪影響を及ぼす環境を改善し、子どもの健全育成に資するものである。
 夜間保育が望ましくないのではなく、夜間保育を必要とする子どもの置かれた環境が望ましくないのであり、その厳しい環境に置かれた子どもを夜間保育によって、少しでも望ましい状態に替えることが児童福祉の精神なのである。まことにそのとおりだと思いました。
 全国にある認可保育園は2万3700カ所。そのなかで認可された夜間保育園は、なんとわずか80カ所。全国のベビーホテルは1830カ所、3万3000人ほど。
 夜間保育園は、夜間のみではなく、夜間まで開いている保育園。24時間いつでも預かれる保育態勢にあるということ。
夜間保育で育った子どもたちは社会のために役立ちたい、人とのつながりを大切にしたい、前向きに一生けん命努力したい、誠実で人から信頼される人になりたいと思う子が全国平均よりも高くなっている。
これには理由がある。子どもたちは、乳幼児期に保護者のがんばっている姿を見て育ち、夜中まで保育士が自分を支えてくれたという体験をしていることが大きい。
 夜間保育園で、子どもが昼夜二食、安全でバランスがとれ、おいしい食事をとっていること、園によっては、入浴・寝かしつけも担っていることが、親の安心とストレス解消につながり、逆に短くても子どもとの時間を満喫し、楽しめるようになっている。
 入眠時に、深い安心のなかで眠りにつける、そのためのゆとりある体制が必要。
 眠りの途中で目覚めた子どもが、そのときいつでも大人がいることを感じて安心し、再び眠りにつくことのできる体制を確保する。
 あわせて、仕事が終わってホッとしている、お迎えの保護者から雑談的に子育てや生活の悩みが聞ける体制が必要。
 そうなんですよね。そこまでゆとりある夜間保育園なら、かえって安心ですよね。イライラするばかりの親と一緒よりも・・・。
 福岡の宇都宮英人弁護士からすすめられて読みました。生活が困難ななかで、子どもと一緒にがんばっている親をしっかり支えている夜間保育所について、認識を改めることができました。全国夜間保育園連盟の創立30周年記念の本です。
 子どもの福祉行政の貧困さを告発する本でもあります。読んでいて、なんだかうれしくなる、心が温まる体験記がたくさんある、いい本です。ぜひ、ご一読ください。
(2014年3月刊。2000円+税)

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