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カテゴリー: 生物

スズメはなぜ人里が好きなのか

カテゴリー:生物

著者  大田 眞也、  出版  弦書房
 日本のスズメは、1990年ごろの半分以下、1960年代に比べると10分の1にまで減ってしまった。そうですよね、すごく減ってしまいましたね。我が家の庭のスズメも、軒下のスズメも、めっきり少なくなってしまいました。この本は身近な存在であるスズメをよくよく観察して、豊富な写真とあわせて、その生態が細かく紹介されています。
スズメは田んぼの稲などを食べる害鳥のように思われている。そのため、中国では文化大革命のときに、スズメを全国一斉に駆除した。その結果、中国の農村は百年来の大凶作に見舞われた。それというのも、スズメは春から初夏にかけて繁忙期には農作物の有害虫を大量に食べてくれている。そのおかげで、秋の実りも保証されている。だから、実りの時季だけをみて、有害鳥と決めつけて大量に駆除するのは愚かな行為でしかない。ふむふむ、スズメは益鳥でもあるのですね・・・。
スズメは雑食性であり、穀物だけでなく昆虫類も食べている。スズメは年に2回、ときに3回繁殖する。スズメの食性による農林業上の経済効果は計り知れない。
スズメが人里に住むのは、人間よりも怖いカラスやタカ、ハヤブサ、そしてモズなどのような天敵が多いため、苦肉の策として人の懐に飛び込んで、その威を借りて営巣している。つまり、人間を用心棒がわりに利用してヒナを育てている。だから、人の出入りが必要だし、それもなるだけ多いほうがいいのだ。
スズメは、一夫二妻も多く、雄は早く孵化したヒナを育てる。そこで母親のメスは、競争相手のメスの巣に入りこんで、盗み出しては壊滅的なダメージを与えようとする。これは、スズメの子殺しです。巣立ったスズメのヒナの4分の3は、1年以内に死んでいる。
スズメのオスは生まれ故郷に留まるのに対して、メスは生まれ故郷を離れて分散して繁殖する傾向がある。これによって、近親交配が避けられる。スズメのオスとメスの番関係は1年契約である。
スズメは野生では2~3年生き、上手に飼育すると10年以上も生きる。
スズメのルーツも人間と同じくアフリカにある。うへーっ、スズメってこんなところまで人間と似ているのですね。
身近なスズメの生態がよくよく観察されている面白い本です。それにしても夕方になると駅前の街路樹に無数のスズメが集まってうるさいのですが、いったい彼らは何を話しているのでしょうか・・・。スズメの会話を翻訳してくれたら、とても面白いと思いますよ。誰かやってくれませんかね。きっと他人が聞いたら何ともない他愛のない話で盛り上がっているだけなのでしょうね。
 
(2010年10月刊。1900円+税)
 
 大変な地震でした。被災者の皆様に対して心よりお見舞い申し上げます。地震そのものもすごい破壊力をもっていますが、津波の恐ろしさを映像を通じてまざまざと見せつけられました。家や車が怪獣映画のミニチュアセットのように押し流されていく様子に身震いしました。さらに、原子力発電所の安全神話がやっぱりあてにならなかったわけで、地震国日本に原発はふさわしくないと痛感します。
 被災者の皆様へ一刻も早く救援活動の手が届くことを祈念しています。
 庭にサクランボの花が咲きはじめました。

クマチカ昆虫記

カテゴリー:生物

著者 熊田 千佳慕 、 求龍堂  出版 
 
絵本ファーブル昆虫記のための勉強帖というサブ・タイトルのついた楽しい昆虫記です。地道な虫の勉強が支えた驚異的な細密画だと紹介されていましが、単に細かいところまで描けているというのではありません。生命力を感じさせる躍動感が絵から見事に感じ取れるのです。ぜひぜひ、実物を手にとって眺めてみてください。
 それにしても、ここに紹介されている昆虫のさまざまな生態もまた驚異的です。大自然のなせる技は、神秘的としか言いようがありません。それを観察し、文章にした著者も、普ファーブル同様、偉いものです。
 ミツカドセンチコガネ(糞虫)は、春のはじめか秋の終わりころ、メスが場所をえらんで巣づくりをはじめる。ある程度まで巣穴が掘れたころ、オスが訪ねてくる。二匹も三匹も。メスは、その中からオスをえらぶ。そして長いあいだ共に生活する。
 キンイロオサムシは、結婚が終わると、メスがオスを食べる。メスはオスより少し大きい。オスは抵抗もしないでメスに食べられる。ええーっ、なんということでしょう。カマキリのオスはなんとか逃げ出しているようなのですが・・・・。
 ベッコウバチは、クモ狩りがとてもうまい。はじめにクモを怒らせて、その前足をあげさせ、ひらいた毒のキバとキバのあいだにさっと飛び込み、毒針を刺して相手をしとめる。このやり方で、自分の何倍もあるクモをしとめる。いやはや、すごい狩りですね。
 ミツバチハナスガリの母バチは、自分の食事としてはミツバチを殺し、そのミツを吸いとってしまい、ミツバチは捨てる。タマゴは死んだミツバチの胸に産みつける。ミツは幼虫にとって生命とりになる。だから母バチは狩りのとき、ミツバチからミツを全部抜きとってしまう。ハチの仲間はみな花のミツを舐めて生きているが、このハチは、自分の食事のために生き餌を漁る。ミツも舐めるが、生き血も吸う。なんとなんと、こんなところまで観察して明らかにしているとは・・・・。その観察力には脱帽、いえ降参です。
(2010年11月刊。1800円+税)

たかがハチ、されどミツバチ

カテゴリー:生物

著者 桑畑純一 、出版 鉱脈社 
 団塊の世代の著者が定年過ぎてから日本ミツバチを飼い始めたのです。さてさて、うまくいくことやら…。ところがどっこい、うまくいったようです。たくさんのミツバチたちが楽しく生き生きと働いている様子が写真で伝わってきます。
 ハチの寿命は60日。人間と比べると一日を一年として働いている。60日が定年であり、還暦であり、また寿命でもある。ハチは一日たりとも無駄にはできない。
 休む間もなく一日中働いても、ハチは生き生きと楽しそうである。天気の良い日には活発に何回でも外に出かけるが、雨の日や寒い日には機嫌が悪い。ミツバチは集団で生活し、社会を構成する賢い昆虫である。
 ハチの分封。女王バチが半分の仲間を引き連れて、巣から出ていく。この一大事業も、実は女王バチが引き連れていくのではなく、働きバチが新しい女王バチにすみかを譲って出ていくことを旧女王バチに催促している。
 人間にとっての経済効率は西洋ミツバチの方が優れている。 しかし、日本ミツバチは性質がおとなしく、寒さに強く、病気にも強い。ただ、住み心地が悪いと逃亡する。できるだけ箱にさわらず、刺激を与えないのが第一。
 ハチ毒はガンの予防効果があるという。養蜂業者のガン発生率は他業種に比べてとても少ない。うひゃあ、そうなんですか。ハチに刺されても痛いだけではなくて、いいことがあるんですね。
 日本ミツバチの蜜は、西洋ミツバチとは比べものにならないくらいのに濃くて美味である。 日本ミツバチは西洋ミツバチが特定の花から蜜を集めるのに対して、百花蜜と言われるように木の花を主として何の花からでも集めてくる。昼間は蜜を集め、夜は集めたばかりの水分の多い蜜を、羽を振るわして糖度を上げる作業に従事している。
 日本ミツバチの行動範囲は2キロから3キロほど。一匹の日本ミツバチが一生に集める量は、小さじ一杯程度でしかない。
 ミツバチ社会は徹底した年功序列で、リストラもない終身雇用社会である。働きバチは生まれてから20日のあいだは幼虫、さなぎとして巣穴で暮らし、先輩働きバチの運んでくる蜜や花粉をもらって、その保護のもとに成長していく。
20日を過ぎると、巣穴から出てきて、一人前のハチの格好をしているが、すぐには巣箱から出ることはしない。まずは巣穴を掃除し、巣穴にいる赤ちゃん世話をする。そのあと蜜を倉庫に貯める倉庫係、そのあと門番の役目をする。門番は敵を見分けて、戦わなければならない。そして、ついに蜜や花粉を集める外勤となり、働きバチとして一生を終える。働きバチは一匹だけ飼ってもすぐに元気がなくなりせいぜい2、3日しか生きていけない。ハチって、あくまでも集団の中でしか生きていけない生き物なんですね。
わが家の庭にも、たくさんのミツバチがやって来ますが、日本ミツバチなのか、残念ながら見分けがつきません。でも、ミツバチが花をめぐってせっせと働いている姿は見飽きることがありません。
(2010年3月刊。952円+税)

ある小さなスズメの記録

カテゴリー:生物

著者 クレア・キップス、  文芸春秋  出版 
 
 不思議なスズメの話です。戦前のイギリスで実際にあった物語なのです。芸をするスズメ、トイレット・トレーニングを受けたわけでもないのに室内でベッドを汚さないスズメ、そして歌うスズメの話というのです。まさか、まさかの連続です。
 1940年7月1日、自宅の玄関前に生まれて数時間後、丸裸で目も見えていない瀕死の仔スズメを発見。まさか助かるまいと思いつつ、温かいフランネルに包んで介抱すると、やがて生き返った。ところが、この仔スズメは、右翼が正常でなく、飛べないのです。左足も正常ではありませんでした。だから、著者はスズメを飼い始めます。なんと、12年間も・・・・。ええっ、スズメって犬と同じほど長生きするのですね。私は、スズメの寿命は2年から3年だと思っていました・・・・。
 スズメは著者(女性)のベッドで同じ羽毛布団のなかで眠ります。首のところにぴったり寄り添って寝るのです。そして、ベッドを汚すことはしませんでした。
 賢い鳥は、決して自分の巣を汚さない。いやはや、すごいことです。
 スズメは著者の言ったことを、その声の調子でだいたい理解していた。
 鳥は嗅覚を持たないと言われているが、このスズメはタマネギの風味だけはひどく嫌がった。
 スズメのお気に入りのおもちゃは、ヘアピンとトランプの札、マッチ棒だった。何時間もそれを籠の中で運んで回っていった。
 スズメは、人々の前で芸を披露した。著者とヘアピンで綱引きをする。くちばしでヘアピンをしっかりとくわえて力の限り引っぱる。トランプのカードをくちばしにくわえて、10回ほど、落とすこともなくぐるぐると回し続ける。
 スズメにはクラレンスという名前がつけられた。しかし、スズメは坊や(BOY)という呼びかけのときだけ返事するのだった。自分の名前も本人が選んだというわけです。
 スズメは歌を歌った。荘重で印象的な出だしに始まり、次第に調子を力強くしていき、やがて火を吐くように熱烈なクライマックスへと高まっていく。八分音符のリトルで始まり、その後高く甘く、哀切に満ちた音色が続く。
 スズメは心臓の病気をもち、便秘になった。そして、治療薬の変わりにシャンパンを飲ませられた。ティースプーンに入ったシャンパンを少しも嫌がらずに飲んだ。うひゃあ、なんとなんと、そんなことが・・・・。
 12歳になってから、このスズメは老衰によって死亡しました。すごいスズメがいたのですよね・・・・。わが家に棲みついているスズメは、最近あまり姿を見せなくなり、心配しています。スズメの棲める純和風の家が少なくなったことも影響しているとのことです。それにしても面白いスズメがいたものですね。
 
(2010年12月刊。1429円+税)
 先週の水曜日、日比谷公園を歩いてきました。バラの木が剪定され裸になっていました。花の少ない季節で、葉ボタンと黄色のパンジーの花くらいしかありません。大型カメラを構え、池のあたりを狙って風景写真をとろうとしている男性を何人も見かけました。カメラ同好会の人たちなんでしょうね。そのそばに猫が寝そべって陽だまりを楽しんでいました。
 ミュプレヒコールが聞こえてきました。年金の切り下げ反対という威勢のいい女性の声です。本当にそうですよね。消費税率の値上げが既定方針のようにすすめられていますが、年金こそ引き上げてほしいものです。年金受給年齢が近づいてきた私も同じように叫びたいと思いました。年金者組合の人たちが叫びながらデモ行進に出かけるところでした。

生物の進化大図鑑

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著者  マイケル・J・ベントン、 河出書房新社  出版 
 
 文字どおりの大図鑑です。地球上に生物が誕生し、恐竜が反映するようになって、隠れすむようにして生息していた哺乳類がやがて大きな顔をしはじめ、人類がアフリカに生まれ全世界へ旅だっていく。その全過程が写真と図版で克明に解説されています。私は正月休みに、じっくり眺めて楽しみました。1万円もする高価な本ですが、正月3日間どこにも出かけませんでしたので、それを思えば安いものです。
 アメリカの恐竜発掘現場の写真があります。二人の男性が骨にしがみついて発掘作業中なのですが、人間は足の骨の一本分ほどでしかありません。恐竜の巨大さを如実に示す写真です。
 カンブリア紀には、奇妙奇天烈な生物のオンパレードです。突き出た5つの眼を頭に持ち、口のあたりからにょろっとヘビのようなものが出たオパビニアという生物(節足動物)が海中にいました。失礼ながら、とても笑える姿です。
 ペルム紀には史上最大の大量絶滅があった。火山の噴火による海洋と大気の有毒化の結果、海洋種の95%、陸生種の70%が死滅した。ええっ、これって恐竜絶滅のことかしらんと思ったところ、まだ恐竜が本格的に出現する前のことでした。
 ペルム紀前期にいたディメトロドンは、恐竜そのものではないようですが、背中に大型の帆を持ったワニのような形をしています。赤く塗られていますので、いかにも恐ろしげです。この赤い色には根拠があるのでしょうか。化石に色素は残らないように思いますが・・・・。
 恐竜が出現したのは、三畳紀後期の2億3000万年前のこと。ペルム紀末の有毒な大気が平常に戻って生態系が安定化するなかで、恐竜のような大型のグループがあらわれてきた。
 今ではよく知られているように、とりは恐竜の一部の末裔です。でも、可愛い鳥を見ていて、あれが巨大恐竜の仲間だとは、ちょっと想像できませんよね。
カバに似たディキノドン類であるプラケリアは2000キログラムもありました。なんと2トンです。
 それに対して哺乳類の生まれはじめは、なんと全身9センチ足らずのネズミによく似た動物でした。私たち人間の違い祖先がネズミだったなんて・・・・。ちなみに私はネズミ年の生まれです。それで、いつもチョロチョロ動いていると、小さいころから言われ続けてきました。
 ジュラ紀はまさしく恐竜の世紀です。アロサウルスは身長にして1メートル、体重1800キログラム、恐ろしい捕食動物でした。こんなのに追いかけられたら、それだけで命が縮まりそうです。
始祖鳥はジュラ紀後期。体長30センチ。翼の風切羽なども化石に跡が残っている。
 グラキオサウルスは、高さ23メートル。その重さの大部分は、巨大前肢で支えられていた。アフリカ・タンザニアで発見されたケントロサウルスは、剣竜類にふさわしく、背中に光ったとげを9本も持っていた。
 白亜紀は恐竜の進化の頂点だった。そして、恐竜は絶滅した。6500万年前、大きな小惑星がメキシコのユカタン半島を直撃した。この衝撃が津波や酸性雨のような環境の混乱の連鎖反応を呼びおこして、恐竜の終わりを推進した。
 大小さまざまの恐竜の化石が写真で紹介され、また恐竜の雄姿の想像図があり、ここらの頁を眺めているだけでも楽しく時間を過ごせます。映画『ジュラシックパーク』を思い出します。でも、その隣で一緒になんか生活したくありませんよね。
 頭にコブがあるので有名なパキケファロサウルスは、このコブを利用して、オス同士が戦ったのだと思っていましたが、この本によると、その首はケンカを支えるだけの強さはないので、それはありあないことだとされています。
そして、人類の起源です。アフリカが人類発祥の地であることは定説です。そこから、ヨーロッパにも、アジアにも放散していったというわけです。しかも不思議なことに、ネアンデルタール人も、クロマニョン人も、同じようにアフリカ起源だというのです。ネアンデルタール人がクロマニョン人に進化していったわけではないというのが、なんだか不思議でなりません。
 あなたもぜひ一度この大図鑑を手にとって眺めてみて下さい。この世は面白い生物にみちていたのです。いえ、過去形ではなく、現在進行形です。
(2010年10月刊。9500円+税)

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