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カテゴリー: 生物

おつかれ!毎日パンダ

カテゴリー:生物

著者  高氏 貴博 、 出版  飛鳥新社
 上野動物園で「働いている」パンダの行状記です。
よくぞ、毎日毎日、パンダの百面相を写真として残したものです。いかにもヒマ人、よほどの物好きとしか言いようがありません。ところが、どうやら著者は会社勤めのようなんです。
ええーっ・・・今どき、こんな趣味のために労働時間を自由にやりくりすることが出来るなんて、まるで夢の世界です。
 パンダは面白い寝相をします。思わず拍手をしたくなります。中に入っている、ぬいぐるみ師に、早く出てきて挨拶しろよ、白状してしまえ、などと呼びたくなります。
 リーリーはオスのパンダ。メスのシンシンがとても気になります。メスのシンシンは、顔も体も耳もまんまるで、パンダのお手本のような美人パンダだ。
 シンシンは高いところが大好き。大きな音を聞いたり、怖いことがあると、木に登る。ところが、降りるのは苦手だ。
 リーリーは、木登りが苦手。リーリーは、シンシンが気になって仕方ない・・・。
 リーリーとシンシンの百面相ポーズが紹介されています。思わず吹き出してしまいます。
仰向けにひっくりかえって、バンザーイしたり、さかだちの格好をしたり、変な格好で寝てみたり・・・。ともかく、その様子のすべてが可愛いのです。
 なんて不思議なパンダでしょう。パンダの楽しい写真を満喫できる本です。
(2013年6月刊。1048円+税)

ペンギンが教えてくれた物理のはなし

カテゴリー:生物

著者  渡辺 佑基 、 出版  河出ブックス
 不思議な信じられない話のオンパレードです。世界は不思議とミステリーに満ち満ちているんですよね・・・。
 バイオロギングによって明らかになったこと・・・。
・アホウドリは46時間で地球を一周する。
・ウエッデルアザラシは、1時間ほど息を止める
・クロマグロは太平洋のハシからハシまで横断し、また戻ってくる
・グンカンドリは、3日3晩、着地することなく、ふわふわと舞い続ける。
 ええーっ、みんな、それってホントなの?と、問い返したいことだらけですよね。
 アホウドリは2年に1度しか子育てをしない。アホウドリのヒナは大きいので、ヒナが要求するだけのエサを運ぶのは親鳥にとって肉体的な負担が大きすぎるので、1年働いたら、翌年は休憩するというサイクルになっている。アホウドリが東向きに地球を一周するのは、偏西風に乗っているため。
 青森県の大間(おおま)で水揚げされる体重100キロ以上の大きなクロマグロは、日本の近海で生まれ育って、アメリカ留学を経験した、インターナショナルなクロマグロだ。
 体重250キロの大きなクロマグロは、平均時速7キロで泳ぐ。
 マグロの体温は高い。マグロは、まわりの水温よりも10度ほど高い体温を常に保っている。体温が高いと筋肉の活性が上がるので、マグロは尾びれをすばやく振り続けることができる。尾びれの振りの速さは、そのまま遊泳スピードに直結するので、マグロは他の魚に比べて早く、持続的に泳ぐことができる。
 しかし、クロマグロがなぜ太平洋を横断するのか、その理由は今も判明していない。
 ペンギンは生態系の頂点に立つ捕食動物である。だから天敵はいない。その代わり、種内の争いが熾烈だ。
ペンギン、アザラシ、クジラ、みな時速8キロがいいところだ。いずれも、バイオロギングの成果である。
 つまり、マグロの時速80キロ、カジキの時速100キロというのは、まったくの間違いだ。ええっ、そ、そうなの・・・、と思わずうなってしまいました。
 あの大きなマンボウは、浮き袋なんか持っていない。では、どうやって浮いていられるのか・・・?
 特殊なゼラチン質の皮下組織から浮力を得ていた。ウェッデルアザラシは、東京タワーをすっぽり包むほどの300~400メートルの深さまで、毎日、繰り返し潜っている。1回の潜水は20分ほど。深さで741メートル、長さ67分というのが最高記録。ゾウアザラシはもっとすごくて、その最深潜水は、1日35メートル。
 マッコウクジラがより深く潜水するのは、体が大きいから。体重が50トンもあり、長く息を止めることができる。酸素保有量に対して、酸素消費量のきわめて大きいシロナガスクジラは、実はまめまめしく水面に出て呼吸している。
 日本の近海でみられるアカウミガメは、潜水時間10時間という記録がある。アカウミガメは、変温動物である。恒温動物よりも省エネだ。
 アザラシは、息を吐き出してから潜りはじめるのは、潜水病という地誌的な病気を避けるため。アザラシが体内に持つ大きな酸素ボンベは、肺ではなく、血液と筋肉なのである。ヘモグロビンは、酸素の運搬装置としてだけではなく、酸素の貯蔵庫としても機能している。
 アザラシは、赤血球の量が多い。濃い血をたくさんもっているから、血中にたくさんの酸素を貯蔵できる。そして、筋肉、赤黒い筋肉は、酸素と結合している。
 海中の動物について、こんなに研究がすすんでいるのですね。驚嘆しました・・・。
(2014年7月刊。1400円+税)

小さき生物たちの大いなる新技術

カテゴリー:生物

著者  今泉 忠明 、 出版  ベスト新書
 バイオテクノロジー(生物工学)というのは、よく聞かれる言葉ですが、バイオミミクリー(生物模倣)という言葉は聞いたことがありませんでした。自然をよく観察してヒントを得て、その優れた点を真似することで効率のいい進んだ技術を生み出すというものです。
 新幹線の先頭車両の形状は、カワセミのくちばしから頭部にかけての形状に似せている。
 フクロウが音を立てずに飛ぶことのできる秘密は風切羽にある。端が綿毛のようにほつれているため、翼を羽ばたいて飛ぶときにも音がほとんど出ない。そこで、新幹線のパンタグラフの支持装置に風切羽をまねたギザギザを付け、30%の騒音削減に成功した。
 フンコロガシは、糞球の頂上にのぼって「ダンス」をすることによって、どの方向から光が来ているのかを認識して自分の進むべき方向を定めている。
 暗い夜には、脳は小さく、視力の弱いフンコロガシは、天の河の星々の光を頼りにまっすぐに糞をころがして進んでいく。これが、自動車の夜間運転支援システムのヒントになった。赤外線カメラでとらえた映像をディスプレイに表示し、夜間の視界を拡大することによって安全走行に寄与しようというもの。
 カメレオンの体色が代わるのは、皮膚細胞に白・赤・青・黄・黒の粒があり、紫外線を浴びると、その粒の大きさに変化が生じて、体色が変化する。
 温度によって光る色が変わる染料を開発した北大チームは、紫外線をあてると光る希土類(レアアース)に着目した。温度によって色が変わる「カメレオン発光体」は、宇宙船の開発に大いに役立っている。この塗料を機体表面に塗って、その色の変化によって温度を正確に検知できるというわけである。
 ガラガラヘビは、ピット器官における温度センサーが、0.002度の変化を感じるほど敏感なため、狙った動物の体温によって捕まえることができる。この熱追尾装置が追突空ミサイル「サイドワインダー」に応用されている。
 クモの糸を鳥もちの代用品として使うのが紹介されていますが、私も実際、鳥もちの代わりにクモの糸を二又の枝先にからませて、子どものころセミを捕まえていました。
 クモの糸(縦糸)は、同じ重量で比べたら、鋼鉄の5倍もの強度をもつ。人間の毛髪の10分の1の太さしかないのに、時速30キロをこえる速さでハチが飛んできても破れることなく捕まえる強度がある。
 ヤモリが窓ガラスに張り付いているのは、ヤモリの足の裏の微細な毛の先端と壁面の凹凸が分子レベルで吸い付いて、粘着力が生まれるから。
 カタツムリの殻がいつも汚れずにきれいなのは、その殻にとても細かいミクロの「溝」が刻まれているから。その溝に水が入り込んで、殻の表面にごく薄い水の膜が張られている。汚水は、殻の本体には付着せず、水にくっついているから、簡単に流れ落ちる。
 そこで、空気中の水分になじみやすい外壁タイルを開発し、雨が降ったら自動的に汚れが落ちる外壁システム「ナノ親水」をつくった。
 知らないことがたくさんあり、生物の隠れた能力を人間が少しずつ生かしていることも教えられました。生物の多様性を尊重したくなる本でもあります。
 ということは、自然をむやみに破壊してはいけないということです。大型公共工事、辺野古の埋め立てなんて、とんでもありませんよね。
(2014年2月刊。819円+税)

生命の惑星・青島

カテゴリー:生物

著者  芥川 仁 、 出版  鉱脈社
 8月の初めに久しぶりに宮崎の青島に行ってきました。ところが、あいにくの大雨で、飛行機すら引き返すかもしれないという事前アナウンスが流れる始末でした。少しばかり揺れたものの、宮崎には無事に到着しました。しかし、青島のホテルについても、雨はやむことなく、せっかくデジカメを持参していったのですが、あえなく断念してしまいました。
 そんな悔しい思いを吐露していたところ、先輩の成見弁護士夫妻から送られてきたのが、この写真集です。
 宮崎日日新聞の文化欄に連載された写真と文章を本にまとめたものです。さすがに20年以上も宮崎に住んでいる写真家によるものですので、写真の質が違います。
 青島にすみつく小動物、そして植生が生き生きと紹介されています。写真の説明がまた克明です。青島が隅々まで手にとるように分かります。
 私の中学校の修学旅行先の一つが宮崎・青島でした。かつては、日本中の新婚旅行客があこがれ、集中していた、宮崎・青島は、今では見る影もなく衰退しています。それでも、気候温暖な宮崎、そして風土豊かな青島の魅力をたっぷり楽しめる写真集です。
 成見正毅・幸子の両先生、ありがとうございました。
(2014年5月刊。760円+税)

象にささやく男

カテゴリー:生物

著者  ローレンス・アンソニー 、 出版  築地書館
 アフリカで野生のゾウの保護のために奮闘した男性の話です。
 残念なことに、1950年生まれの著者は、2012年に心臓発作のために亡くなっています。
 そのとき、ゾウたちが長い道のりを後進して、「弔問」にやって来たそうです。ゾウは超能力をもっているのです。
アフリカ象は40万頭から65万頭ほど。ところが、2011年だけで2万5000頭が殺された。象牙のために密漁団が暗躍している。日本も印鑑のために、その象牙の密輸入国です。
 オスのゾウはメスよりも人間に近づかれても平気だ。その理由は簡単。大きなオスは、自分を守る能力に大変自信をもっているから、人間が近づいても、その分、大丈夫なのだ。ゾウが小さくなればなるほど、自信がなくなるので、より大きな空間を要求する。ゾウは、自分のことを皇帝のように偉い存在だと思っている。
 野生のゾウとつきあいたいのなら、こちらから近づいていってはならない。ゾウのほうから近づいて来るのを待つべきだ。ゾウが近づいてこないのなら、あきらめるしかない。
 ゾウにとっての不変の原則は、すべての生き物は、自分たちに譲るべきだということ。
 アフリカの野生の生き物は、最初はぐらつくにしても、生後すぐに歩き始める。地面に赤ん坊が横たわっているのでは、どうぞ召し上がってくださいとお願いしているようなもの。捕食動物の格好のおやつになってしまう。身体の大きいゾウにしても、生まれたら、出来るだけ早くその場をあとにする。胎盤の臭いで、肉食動物が集まってくるから。
 ゾウの仲間(家族)が死ぬと、ゾウたちが周囲をぐるりと取り囲む。そして、遺骨になってしまったあとも、近くを通りかかると歩みを止め、臭いをかぎながらその骨を突っつきまわし、おもちゃのようにして戯れる。それは、ゾウの亡き者を偲ぶ一つに儀式だった。
ゾウは、地球上で唯一、飛び跳ねることのできない動物である。だから、飛びおりることもできない。
 ゾウは人間の可聴周波数帯よりはるかに低いゴロゴロという音を胃のあたりで発し、数キロ離れた先からもそれを聞きとることができる。
 ゾウは金属の肌触りが好きらしく、放っておくと、何時間も自動車の車体に触り続けている。エンジンの発する熱も大好きで、とくに寒いときがそうだが、鼻をボンネットの上に長いことくっつけたままにしている。
 ゾウは、人間のゆっくりした落ち着いた動きを好む。人間が近づくときには、わざとらしく草を手で折ったり、止まって木の様を調べたりして、時間をかせぎながら、ゆっくり近づいていく。すると、鼻が伸びてきて、人間の身体に優しく触れる。
 ゾウと心を通わせるまでの苦労、そして、ゾウたちの集団との関わりが、てらいなく紹介されています。仔ゾウに、一度は触ってみたいものだと思いました。
ゾウの賢さを改めて認識させられる本でもあります。
(2014年2月刊。2600円+税)

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