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カテゴリー: 生物

タコの才能

カテゴリー:生物

                               (霧山昴)
著者  キャサリン・ハーモン・カレッジ 、 出版  太田出版
 オクト・パスは受験生必勝グッズです。
 タコは8本の足に3つの心臓をもち、変幻自在に皮膚の色を変えることができる。血液は青く、賢い生物。
 タコは、一生のほとんどをひとりぼっちで過ごす。タコは繁殖のときのほかは、仲間と付き合おうとはしない。タコは単独行動で、引っ込み思案のうえ、夜行性である。
 タコは、タラやイカとちがって群れない。巣穴にひとりで暮らし、ひたすら人目を忍んで自分の居場所を確保する。タコには、縄張り意識はあまりない。
 タコのスミには、チロシナーゼという成分が含まれている。敵の目をひりひりさせ、嗅覚や味覚を混乱させて追っ手をまくためのもの。
 タコはアメリカの食卓では、めったに見かけないにしても、世界じゅうでは何百万人もの人々が口にしている。アジアや地中海では、何千年もの前からタコは定番料理になっている。
 タコは、ほぼ全身が筋肉と言ってよい。だから、タコを捕まえたら、石で30~40買いたたくべきだとも言われる。タコは冷凍すると、食感が良くなる。冷凍されると、いちだんと身がやわらかくなる。
タコを解剖すると、青い血が出る。タコの血は、酸素を含んでいるときには青く、酸素が欠乏してくると、だんだん色味が薄れて透き通ってくる。
 タコは、横歩きするカニや逃げようのない二枚目が好物だ。
 太平洋のタコは、1時間のうちに177回も色や模様を変えることができる。
 タコには、3億個の神経細胞がある。人間は1000億個だ。
 タコは、おもちゃと遊ぶのを好む。
 タコって、賢いのですね。バカには決して出来ません。それにしてもタコ焼きって久しく食べていませんが、おいしいですよね。タコの見直しを迫られる本です。
(2014年3月刊。2300円+税)

ネムリユスリカのふしぎな世界

カテゴリー:生物

                              (霧山昴)
著者  黄川田 隆洋 、 出版  ウェッジ
 生物とは何か、死ぬとは、生き返るとは何のことか・・・。
 いろいろと根本的なことを考えさせてくれる生物がいることを知りました。それも、アフリカの灼熱の地に生きる小さなユスリカの話です。
 カラカラに干からびても、水をかけるだけで、たちまち息を吹き返す。100度に近い高温にも、マイナス270度という超低温にも、人が耐えられる1000倍近い放射線にも、アルコールに1週間浸しても、全然平気。宇宙に放り出しても死なない状態で存続し続ける。
 ネムリユスリカは、アフリカにしか生息しない昆虫だ。ナイジェリアに多く見られる。
 ネムリユスリカは、卵の時期から2~3日間、幼虫の時期が1ヶ月間、さなぎが1~2日間、成虫が2~3日間。幼虫の時期が一番長く、その本来の姿だと言ってよい。
 成虫は口がなく、血も吸わない。エサを食べられないので、成虫になったら、すぐに交尾をして、卵を産む。
 幼虫のときに、乾燥耐性(アンヒドロビオシス)の能力が発揮される。卵やサナギ、成虫の時期には、この乾燥耐性は発揮できない。
 ネムリユスリカは、身体を構成するさまざまな細胞のすべてが乾燥という情報を受けとり、乾燥の準備をする。細胞のなかだけの自己完結的なメカニズムで乾燥耐性が実現できている。
 水がなくなったとき、水があった場所と置き換われるように、たんぱく質の表面にトレハロースがくっつくことで、タンパク質が形を変えずにすむ。つまり、体のいろいろな成分の元々の状態を維持させることができるので、水がなくなっても細胞が壊れることがない。
 トレハロースには、2つの特質すべき能力がある。たんぱく質や細胞膜、油の成分の表面にとりついて、水の変わりの役割をするだけではなく、水が元々あった空間の領域も、自分がガラス化することで空間を埋めてやる。
 乾燥というシグナルあるいはストレスが来て初めてグリコーゲンを分解してトレハロースに変える。グリコーゲンを全部分解して、トレハロースに入れかえるのに、2日間かかる。
ネムリユスリカは、乾燥すると、大量のレアたんぱく質をつくる。
 ネムリユスリカでは、27個のさまざまなレアたんぱく質がたまることによって、全たんぱく質の10%以上を占め、それが乾燥耐性に寄与している。
 たんぱく質は、温めたり、干からびたりさせると固まりやすくなる。
 乾燥した時期に、レアたんぱく質とトレハロースが一杯たまることによって、体の細胞の中味を保護している。凝集しないように保護することで、水に入れたときにすぐに元に戻るようにしている。
 ネムリユスリカは、劣化してしまったアスパラギン酸になったものを治す酵素があるおかげで、イソアスパラギン酸に戻すことができる。
 本当に不思議きわまりない生き物です・・・。しかし、よくもこんなことを発見したものです。
(2014年7月刊。1600円+税)

森にすむ人々

カテゴリー:生物

                               (霧山昴)
著者  前川 貴行 、 出版  小学館
 森にすむ人々というので、ジャングルのなかに今も生活している集落を紹介するのかと思うと、まったく違います。サルやチンパンジー、ゴリラや、ボノボなどを紹介した大判の写真集です。
 「彼らと我々は、同じヒトの仲間である」
 このように表紙に書かれています。本当に私もそうだと思うのですが、現実には、「彼ら」は絶滅しかかっています。人間(ヒト)が彼らの安住できる環境を大々的に奪いつつあるからです。諸悪の根源は、まさしく人間なのです。
 ジャングルのなかの彼らの生態が、こんなによく撮れるものかと、思わず驚嘆してしまうほど、よく撮れています。
 オランウータンは、雨が降ると、濡れるのをいやがり、葉の茂った枝をかき集めて、頭に載せます。
 ゴリラの子どもたちが仲良く遊んでいる様子も可愛いですね。
オスの大人のゴリラは、シルバーバックと言われるように、でっかい体格をしていて、背中が白くなっています。ところが、平和主義者で、草食なのです。ヒレアザミが鉱物なので、大きな口を開けてかじります。
チンパンジーは、イチジクの実が大好物です。そして、アカンボウを背中に乗せて、母チンパンジーは森の中を自由に移動します。
 森の中の大型類人猿の迫力あるアップ写真を眺めると、彼らにも個性があり、「人格」というか威厳があることがよく分かります。
 たかがサルなんて言うことは絶対にできないド迫力の写真集です。せめて図書館で手にとって眺めてください。
(2015年3月刊。2700円+税)

新世界ザル(上)

カテゴリー:生物

                                (霧山昴)
著者  伊沢 紘生 、 出版  東京大学出版会
 学者って、本当に偉いと思います。南アメリカのジャングルの中に入って、毎日、サルをじっと観察し続けるのです。すごいです。その大変な苦労のおかげで、居ながらにしてサルのことを知り、人間とは何者なのかを少しずつ理解できるのです。
 アマゾンのジャングルでの調査を30年も続けてきたということに、まず感嘆します。私も、いつのまにか弁護士生活40年を過ぎてしまいました。私も現役ですので、判決も勝ったり負けたり悲喜こもごも毎日を過ごしています。人間相手の仕事ですので、アマゾンのジャングルではありませんが、人間ジャングルの中でもがいているという実感はあります。
 新世界ザルは、熱帯雨林の樹上をもっぱらの棲みかとして、ゆっくり進化していった。ないし、長い時間をかけて森林の樹上になじみきってしまったサルたちだ。
 熱帯雨林こそ、サル類を誕生させ、進化させた元々の環境なのである。
ホエザルは、新世界ザルのなかでは、とりわけ神経質なサルである。人への警戒心も強い。林床からは決して見えない樹々の茂みに逃げ込んだら、1時間でも2時間でも隠れ続け、出て来ない。
 そのホエザルを著者は追い続けるのです。
 水平に延びるツタの中ほどで止まる。ホエザル8頭全員が身体を寄せあって、来た順に横一列に並ぶ。そして、次の瞬間、一斉に大量の小便をし、続いて大量の糞を排泄する。
 ホエザルは、早寝遅起のサル。朝8時過ぎに起き、夕方は、まだ森の中が明るい午後4時ころには寝てしまう。
 まさか、一日のうち16時間も寝ているなんて・・・。おどろきです。
 ホエザルは、移動ルートを3日から5日で一周する。かなり規則正しい生活を送る。
 ホエザルは大声で吠える。しかし、それ以外は、めったに鳴かない。お互いの毛づくろいをほとんどしない。
 ホエザルに表情の変化はほとんど見られない。喜怒哀楽が、表情から伝わってこない。
 ホエザルは葉っぱ食いの道を選んだ。葉を食べて生きるには、直接消化できないセルロースをバクテリアによって発酵させなければならず、そのぶん休む時間が長くなる。それに発酵によって熱が発生するため、体温調節からいっても、できるだけ緩慢に動くほうがいい。
 ホエザルのオスの寿命は、20年ほど。オスにとっては、生きのびるのも大変、中心オスになるにも大変、子孫を残すのも大変な社会だ。
 フサオマキザルは、新世界のなかで、これほど表情豊かなサルはいない。
 フサオマキザルは、介護サルとしても活躍している。手足が不自由で、車いす生活を送る人の日常生活を手助けする。フサオマキザルは、動物園では、最長47年も生きる。
 すごいですね。ずっとずっとアマゾンのジャングルで寝泊まりしていたなんて・・・。
(2014年11月刊。3600円+税)

パンダ

カテゴリー:生物

                                 (霧山昴)
著者  倉持 浩 、 出版  岩波科学ライブラリー
 ネコをかぶった珍獣とされています。パンダのことです。
 上野動物園で10年以上もパンダの飼育係をしている人によるパンダ紹介本ですので、パンダの素顔、その正体を知ることができます。
 飼育員にとって、パンダは敬遠されがちだ。なぜなら、とても気をつかう動物だから。
 パンダは、基本的にただのクマだ。だから、パンダのいる部屋に一緒に入ったことはない。飼育係をしていると、かわいいと思うよりも、むしろ怖い思いをすることの方が多い。
 パンダは、昼も夜も寝ている。夜の方が寝ている時間が長いので、夜行性というのでもない。
 飼育されているパンダの寿命は25歳。野生では20歳ほど。
 パンダの赤ちゃんは100~200グラムで生まれ、大人になると100キロにまで成長する。
 一頭のメスが生涯に育てられる子どもはせいぜい6頭。
エサはタケ。毎日5~6種類を与える。副食としては、ニンジンやリンゴ、パンダだんご(トウモロコシや大豆の粉などでつくるエサ用の蒸しまんじゅう)。
 パンダの視力は、良くて0.3ほど。それでも、パンダは自分の飼育係は目で追っている。
 パンダは、おいしいか、おいしくないか、匂いで選び分けているようだ。
 金属音や震動音は嫌がる傾向が強い。
 パンダの足腰の関節は、とても柔らかい。
 パンダは高いところに登るのが大好き。幼いパンダほど、よく木に登る。もっとも、降りるのは苦手。驚いたり不安になったりしたとき、パンダは高いところに上がる傾向がある。
 パンダの主食のタケは、ほとんど消化吸収されないので、そのままの色で排泄される。だから、パンダのフンも多くはタケ色だ。フンは笹団子のような匂いがする。匂いも悪くはない。
パンダの食事の90%以上はタケなのに、盲腸はもっていない。
 パンダは、クマの一種であり、肉食を忘れてはいない。
パンダも鳴いている。お腹がすいた時、不満や要求がある時には、メーメーとヒツジのように鳴く。怒ったときには、「ワン」と、犬のように鳴く。
 発情期のオスとメスは、メーメーというヒツジ鳴きと、「キュッキュッ」というような鳥泣きでコミュニケーションをとっている。メスが雄を選ぶ時には、体格やルックスだけでなく、声にも好みがある。
 パンダにとっては、ひとりボッチのほうが性にあっている。パンダは単独生活で、孤独を愛する派なのだ。しかし、パンダは、3歳位までは共通の施設で育てている。
 パンダも病気になる。野生のパンダの多くは寄生虫に感染している。
 パンダの受精のチャンスは1年に1度しかない。
可愛らしいパンダの現実を知ることのできる新書です。
(2014年9月刊。1500円+税)

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