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カテゴリー: 生物

ペンギンの楽園

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 水口 博也 、 出版  山と渓谷社
 パンダも大好きですけど、ペンギンもまたいいですよね。
 旭山動物園の冬のペンギンの大行進をぜひ間近に見てみたいと思います。
 ペンギンと言えば、あのコウテイペンギンの子育てのすさまじさには泣けますよね。3ヶ月も飲まず食わずで、足の上でヒナを育てる。そして、極寒の地で、ブリザードを浴びながら身を寄せ集まって耐え忍んでいる光景なんて、まったく感動するしかありません。
海から帰ってきた親は、大勢のヒナ集団の中から、自分のヒナを声で見つけ出して、エサを与える。親が事故にあったら、ヒナは餓死するしかないのですね・・・。
 ジェンツーペンギンが大勢そろったところで、一斉に氷上に飛びあがるのは、氷縁に恐ろしいヒョウアザラシが潜んでいるから。危険地帯をみんなで一気に乗り越えようというのだ。
 アデリーペンギンが個体を減らすなかで、ジェンツーペンギンは圧倒的に個体を増やしている。その原因は、温暖化。雪による影響をアデリ―ペンギンは受けやすく、しかも、前シーズンに営巣した場所にアデリ―ペンギンはこだれるので、子育てがむずかしくなっている。
 ジェンツーペンギンは、場所のこだわりが少なく、エサにも融通性がある。
 ペンギン尽くしの楽しい写真集です。とても行き届いた解説があり、勉強になりました。
(2016年8月刊。1800円+税)

進化

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 カール・ジンマー 、 出版  岩波書店
生物の進化に関する面白い興味深い話が盛りだくさんの大型本です。
ダーウィン・フィンチの写真があります。ガラパゴス諸島に生息するフィンチのくちばしが、こんなに異なっていることに驚かされます。ダーウィンは、これによってすべての生物は進化したのだと結論づけたのです。
人間が音を聞くのに使っている骨は、かつて人間の祖先がものをかむのに使っていた骨である。
化石から、鳥がどのようにして恐竜から進化してきたのかが分かる。羽は、恐竜の子孫たちが空を飛べるようになるはるか以前に、恐竜のからだに進化し、単純なトゲのようなものから、ふわふわした羽毛になり、最後には飛行中の動物を支えられるようになるまで、徐々に進化してきた。
羽毛をつくっている遺伝子は、もともとウロコをつくっていた。その後、皮膚の一部は、羽毛をつくるために使われるようになった。
光が眼に入ると、オプシンというタンパク質にぶつかる。オプシンは光受容細胞の表面にあり、それが光子をとらえると、一連の化学反応の引き金を引いて、光受容器が脳に向かって電気信号を送ることになる。
初期の眼は、おそらく明るいか暗いかが分かるだけの、実に単純な眼点にすぎなかった。ずっとあとになって、いくつかの動物に、光の焦点を合わせて像が結べる球状の眼が進化した。像が結べる眼にとって決定的に重要だったのは、光の焦点を合わせるレンズの進化だった。レンズは、クリスタリンとよばれる驚くべき分子でできているが、クリスタリンは、からだのなかでもっとも特殊化したタンパク質のひとつである。透明だが、入ってくる光線を曲げ、網膜に像が結ばれるようにする。クリスタリンは、また身体のなかでもっとも安定なタンパク質であり、その構造は何十年と変化しない。ちなみに、白内障は、老年期にクリスタリンが固まることで生じる。
古生物学者は、かつて存在したすべての種の99%が、この地球上から絶滅したと推定している。今日存在している昆虫のすべての料の50%が2億5000万年前にも存在していた。2億5000万年前に存在した四足(しそく)類のどのひとつの料も、現在は存在しない。
植物を食べる能力は、昆虫に大量の食料を提供する。植物を食べることが昆虫の多様性を爆発的に増やした。
動物はカンブリア紀に突然この地球上に降ってわいたのではない。進化してきたのだ。
鳥のメスは、単純なさえずりのオスよりも、複雑なさえずりを歌うオスを好む。カエルのメスは、夜間に小さな声で鳴くオスよりも、大きな声で鳴くオスを好む。
つがいを形成する鳥たちの多くは、見た目ほどには互いに対して忠実ではない。つがいを作っている鳥たちの巣にいるヒナのDNAを分析すると、しばしば、そのうちのかなりが、母親のつがいのDNAでないことが判明している。母親は、つがい相手以外のオスと交尾しているのであり、つがい相手は一生けん命そのヒナを育てている。
カモなどの水鳥の交尾の3分の1は強制交尾だ。ところが、望まれないオスが実際にヒナの父親になるのは、わずか3%でしかない。メスは、体内で精子をコントロールし、侵入者の精子よりもつがい相手の精子を優先させている。
夜の照明と飛行機による長時間の飛行は、ともにガンのリスクを上昇させる、ホルモン周期を撹乱させるからだろう。
学習した頭の良いハエは、15%も寿命が短くなる。より長く生存するのは愚かなハエのほうだ。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。
(2012年5月刊。5600円+税)

シマエナガちゃん

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小原 玲、 出版  講談社
これは可愛い。まさしく雪の妖精です。北海道でフツーに見られる小さな小鳥の写真集です。
シマエナガは北海道に暮らすエナガの亜種で、真っ白な顔ころんとした小さな体が特徴。
ほんとうに真白い、丸々とした小鳥です。つぶらな黒い目と小さな鼻があるだけ。まるで白いマシュマロです。
体の長さは14センチ。体重8グラム。日本最小の鳥。冬には樹液のつららをなめています。大好きなのです。
飛ぶときにはロケットのように!まさかと思いますが、羽を広げているのではなく、羽を閉じたまま昇ったり、降りたりする姿が写真にとらえられています。もちろん、羽を広げても飛んでいます。
冬のあいだは群れで過ごし、冬が終わるころにつがいになる。
シマエナガは、コケやクモの巣をつかって、木の幹の二又に分岐しているところに大きな卵形の巣をつくる。見た目は草や葉の塊のようになって外敵の目を欺く。
小さな卵を10個ほど産み、2週間でかえってヒナとなる。しかし、1年後まで生き残っているのは一羽か二羽ほど。エサがなかたり、冬の寒さに耐えられなかったり、タカや昆虫に食べられたりする。寿命は長くて3年から5年ほど。
それにしてもヒナたちが木の枝に一列に並んでいる様子は愛らしくてたまりません。
シマエナガは人里に近い環境を好むので、札幌の大通公園など、緑の多い公園や緑地で普通に見られる。
いやあ、こんな可愛い小鳥が身近に見られるなんて、北海道の人は幸せです。
今朝(12月28日)、この冬一番にジョウビタキを見かけました。御用納めの日に出勤する寸前の我が家の庭です。このジョウビタキも愛嬌たっぷりの小鳥で、可愛いですよ。
(2016年12月刊。1300円+税)

ライオンは、とてつもなく不味い

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 山形 豪 、 出版  集英社新書ヴィジュアル版
アフリカで育った日本人がいるのですね。そんな野生児は、現代日本社会では住みにくいと感じるのも当然です。その野生児は、大人になってフリーのカメラマンとして、主としてアフリカやインドで野生動物の撮影をしています。
被写体となった野生動物の表情が、みな生き生きとしています。カメラマンに向かって突進寸前のものまでいて、ド迫力満点です。
タイトルは、まさかと思いました。ライオンの肉を食べるなんて、そんなことはありえない。何かのたとえだろうと思っていると、なんと、本当にライオンの干し肉を食べたというのです。
家畜を襲ったライオンは害獣として駆除してよいという法律があり、駆除されたライオンは殺された牛の持ち主に所有権がある。毛皮は売って、肉は干して食用にする。味付けをしていないただの干し肉だったせいもあるかもしれないが、今まで食べたどの肉よりもマズかった。とにかく生臭いうえに、猛烈に筋っぽかった。
人間にとっては牛のような草食動物のほうが美味しいのですよね。肉食動物の肉は一般に人間の口にはあわないようです。
ライオンから人間が襲われる事故は決して多くはない。それは、そもそもライオンは総数4万頭以下と個体数が決して多くはないから。人と接触し、事故が起きる確率が低い。
これに対して、カバによる事故は多い。カバの気性が荒いというだけでなく、水辺を好むカバと人間とは接触する機会が多いからだ。
現実世界の「草食系」動物は、決して優しくもないし、おっとりもしていない猛獣たちなのである。
テントの周囲にライオンやハイエナがうろついていても、テントの中にいて寝込みを襲われたという話は聞いたことがない。テントを破って中身を食おうという気にはならないのだ。
しかし、テントのフラップを開け放して寝ていた人間がハイエナに食べられたというケースはある。
アフリカで食べられないように注意しなくてはいけないのは、ナイルワニ。カバの次に多くの人の命を奪う動物は、ワニである。
しかし、もっとも恐ろしいのは、なんといっても、人間である。他の動物にはない、悪意や物欲というものを持っている。しかも、刃物や銃をもっているので、危険きわまりない。
写真と文章で、しっかりアフリカの野生動物たちの生態を堪能できる新書です。東アフリカの野生動物の写真といえば、小倉寛太郎氏を思い出しました。『沈まぬ太陽』のモデルとなった人物です。小倉氏は大阪の石川元也弁護士の親友でしたので、その関係で一度だけ挨拶しました。大人の風格を感じました。
(2016年8月刊。1300円+税)

クモの糸でバイオリン

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大﨑 茂芳 、 出版  岩波書店
すごい話です。庭にいる普通のクモから糸を取り出し、それをより集めてバイオリンの弦にして音楽を奏でたというのです。
クモの糸だって体重100キロの人を吊り上げることが出来るのです。その話は、前に、著者の本で紹介しました。ところが、今度は、クモの糸が強いというだけではなくて、バイオリンの弦にすると柔らかくて深い音色を出せるというのです。
問題なのは、そのクモの糸をどうやって集めるのか、ということです。クモがカイコのように簡単に糸を吐き出してくれるとは思えません。その涙ぐましい努力の過程が、この本で紹介されています。
いったい、著者は何を職業としているのでしょうか・・・。医学部の教授ですが、医師ではなくて、生体高分子学を専門としています。そんな著者が40年間にわたってクモの糸の性質を調べてきた成果が結実したのです。著者は、私より少しだけ年長の団塊世代です。心から尊敬します。
クモは世界に4万種いて、日本には1500種いる。
日本のクモの半数は、獲物を探し歩く徘徊性のクモ。残る半数が網を張って獲物を獲る造網性のクモ。
クモの糸の縦糸は巣の骨格をつくり、粘着性はない。粘着性があるのは、横糸だけ。横糸には、粘着球が等間隔にくっついている。
クモから糸を取り出すには、クモが元気な状態でないといけない。ところが、クモはヒトの足元を見る。優しく扱っても、それが過ぎるとなめられてしまう。厳しすぎると、へそを曲げて、言うことをきかない。
クモの糸の第一の特徴は、非常に柔らかく、曲げやすいこと。
クモの糸を弦とするバイオリンで、「荒城の月」や、「アメージンググレース」を著者がひいている様子がネットで公開されているそうです。いやはや、たいしたものです。あくことなくクモの糸に挑戦して立派な成果をあげられたことに心から敬意を表します。
(2016年10月刊。1200円+税)

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