法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

ニワトリ、人類を変えた大いなる鳥

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 アンドリュー・ロウラー 、 出版  インターシフト
JR久留米駅にある美味しい鶏の唐揚げの店で読了しました。この店は大量生産のブロイラー(鶏)ではないと表示されていますが、なるほど肉質が違います。かみしめると、味わい深さに舌が驚いてしまうのです。
ニワトリは恐竜の子孫です。では、なぜ恐竜が絶滅したというのに、ニワトリだけは生き残っているのでしょうか・・・。
鶏肉は、豚肉や牛肉より風味が付けやすいので、ファストフードにぴったり。
2001年までのアメリカ人は、年間36キロの鶏肉を食べていた。これは終戦直後の1950年当時の4倍。今では、年間45キロに近づいている。
アメリカのタイソン社だけで、売上高は3000億ドル、週間生産高は60の工場で、4100万羽を突破した。
ブロイラーの80%以上を三大育種企業が管理していて、そのうち2社はアメリカの企業。
2010年に、アメリカの育種企業の孵化場300ヶ所で90億羽のブロイラーが生産された。
1950年には平均して70日かかり(体重1ポンドあたり)、体重1ポンドあたり3ポンドの飼料を必要とした。これが2010年には、わずか47日間で育った。必要な飼料は2ポンドですんだ。ヒヨコは生後1週間で、体重が4倍に増える。
ニワトリの寿命は10年で、20年も生きることさえある。
ニワトリの原種は、ビルマ(ミャンマー)の原生種であるセキショクヤケイだ。
人間のいる至るところにニワトリがいる。その数は200億羽にのぼる。ニワトリがこの世からいなくなったら、きっと各地でパニックが起きるだろう。
ニワトリは食材でありながら、かつ、インフルエンザのワクチンをつくる入れものとして、人類に貢献している。
子どものころ、我が家でもニワトリを飼っていました。エサのために草をとってきていました。父がニワトリを殺し、腹をさばいて卵が出来ていく過程を見て、たまげました。
(2016年11月刊。2400円+税)

オランウータン

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 久世 濃子 、 出版  東京大学出版会
オランウータンは、ヒト科です。
チンパンジーやゴリラとともに「大型類人猿」というグループに属している。1800万年前ころに人類の祖先と袂(たもと)を分かち、独自の進化の道を歩んできた。
オランウータンは、巨体だ。オス80キログラム、メス40キログラム。完全な樹上性で、昼行性霊長類としては、唯一の単独生活者だ。
オランウータンは、ヒトにもっとも遠縁の大型類人猿だ。
オランウータンは遠いアジアで生まれ育った従兄弟だ。
チンパンジーやゴリラの乳児は尻に白い毛が生えていて、「アカンボウのしるし」とされている。白い毛が生えているうちは、何をしてもオトナに怒られることはないが、白い毛が抜けると、群れのリーダーや上位の個体に挨拶をしないと怒られるなど、群れのルールに従わなければならなくなる。
オランウータンのアカンボウは尻に白い毛がなく、目と口のまわりの明色部分が「尻の白い毛」の代わりをしているのだろう。
オランウータンの子どもは、レスリングをして遊ぶ。
オランウータンは、一斉結実期に非結実期の2~3倍のカロリーを摂取して、体脂肪として蓄えている。オランウータンは果実が多いときに「食いだめ」ができるかどうかで生死が分かれる。
オランウータンは、20歳をこえても成長期かと見まがうような右肩上がりの体重増加を示す。
オランウータンは、大きな体で樹上生活をするために進化してきた、多くの特徴がある。たとえば、手首の構造はフック状になっていて、意識的に手足を開く動作をしないと、手足は握り込んだかたちをとるようになっている。つまり、意識を失うと、むしろ手足は閉じてしまう。
オランウータンが地上に下りない理由の一つは、地上には食べものがほとんどないこと。大きな体で樹上を移動するということは、常に「次の一歩が死への一歩」につながりかねない。
試行錯誤の余地の少ない、厳しい世界だ。飼育下でも、オランウータンは慎重で、試行錯誤することが少ない。
オランウータンの寿命は、オスでも50~60歳をみられている。
オランウータンは、全般にチンパンジーに比べて乳児死亡率が低い。
オランウータンでは出生から死亡まで記録された野生個体は1頭もいない。一生放浪し続けるオスがいるのか、ほぼ定住し続けるオスがいるのか、まったく分かっていない。
オランウータンのオスには、フランジ雄とアンフランジ雄の二型がいる。フランジ雄は、顔の両側に張り出し(フランジ)があり、大きな喉袋、臭腺(特有のカビくさいにおいを発する)などの特徴があり、喉袋をつかってロングコールと呼ばれる音声を発する。フランジ雄にはメスのほうから近づき、親和的に交尾することが多い。
フランジ雄とアンフランジ雄では、メスとのつきあい方が異なるだけでなく、オス同士のつきあい方にも大きな違いがある。通常、フランジ雄どうしは、お互いに出会わないよう避けあっている。ロングコールでお互いの位置を把握して、出会わないようにしている。フランジ雄どうしが出会うと、殺しあいになりかねない。
アンフランジ雄は、基本的にフランジ雄を避けているが、フランジ雄がアンフランジ雄と出会っても、激しい闘争は起きない。アンフランジ雄どうしは、複数で連れだって行動することもある。
フランジ雄は、出産経験のない若いメスと交尾することは、ほとんどない。近づくことすらない。オランウータンでは、若いメスはフランジ雄から相手にされないため、若いオスやアンフランジ雄が交尾の相手になるが、若いオスたちも若いメスより経産メスを好む。オランウータンの社会では、オス、メスともに「モテ期は中年」なのだ。
オランウータンは、繁殖のスピードがとても遅い。野生での初産年齢は15歳前後、出産間隔は7年。基本的に1回の出産で1頭しか出産しない。
オランウータンの孤独な子育ては、出産から始まる。野生オランウータンでは、チンパンジーやゴリラと異なり、子殺しの報告はほとんどない。オランウータンの母親は1頭のアカンボウのみとともに過ごす時間が圧倒的に長く、文字どおり「孤育て」に徹している。
絶滅が危惧されているオランウータンをインドネシアの原生林に入って密着観察している女性学者のレポートです。その地道で粘り強い努力には頭が下がります。
日経新聞でも紹介されています。ありがたい研究成果です。
(2018年7月刊。3000円+税)

土、地球最後のナゾ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 藤井 一至 、 出版  光文社新書
土って、生物と切っても切り離せない存在なのだということを、この本を読んで初めて認識しました。
土は地球にしか存在せず、月や火星にはない。
土壌とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったものを指す。したがって、動植物の存在を確認できない月や火星に土壌はない。あるのは、岩や砂だけ。
地球の岩石は、水と酸素、そして生物の働きによって分解する。風化という。
粘土は、水の惑星が流した”血と汗”の結晶だ。
月でも岩は風化する。しかし、水や酸素や生物の働きがないと、岩石は粘土にはなれない。月には粘土はない。粘土の有無が地球の土壌と砂を分かつ。
火星には粘土がある。しかし、腐植はない。火星には粘土が存在する点では、月の砂よりも地球の土に近い。しかし、火星には腐植がない。
腐葉土には、高度に発達した現代の科学技術を結集してもなお、複雑すぎて化学構造も部分的にしか分かっていない驚異の物質である。土の機能を工場で再現できない理由もここにある。
500年前、レオナルド・ダ・ヴィンチは次のように言った。
「我々は天体の動きについてのほうが分かっている。足元にある土よりも・・・」
ええっ、本当にそんなことを言ったのでしょうか・・・。
ミミズの粘液のネバネバがバラバラだった土壌粒子を団結させる。これによって、土壌は単なる粉末の堆積物ではなく、無数の生物のすむ、通気性、排水性のよい土となる。これが地球の土だ。
世界の土は、実はたったの12種類しかない。ええっ、ウソでしょ、そんなに少ないはずないでしょ、そう叫びたくなりますよね。
日本中どこを掘っても、土は酸性だ。
泥炭土は、地中深く数千万年も眠れば石炭に化ける。それはジーンズを染めるインディゴの原料にもなっている。
日本では、山の土を通過した水はケイ素を多く含み、稲を病気に強くする。稲だけでなく、ケイ素の有無でニワトリの成長が大きく変わることも報告されている。
ケイ素は必須養分ではないが、骨をつくる活動を促進する働きがある。
インドネシアのボルネオ島ではケイ素がないため稲が実らない。
足元の土というもののありがたさを初めて認識することができました。
(2018年12月刊。920円+税)

道具を使うカラスの物語

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 パメラ・S・ターナー 、 出版  緑書房
カラスは賢い鳥だということはよく知られていますが、カレドニアガラスは道具をつくってエサを取るほどの賢さです。そして、親鳥が赤ちゃん鳥に道具を使って木の中の虫を取り出す技術を伝授するのです。なにしろ、その証拠写真がバッチリありますから知能の高さを疑いようがありません。
この本で観察されているカレドニアガラスには、それぞれ名前がついています。
人間はカラスの個体を識別するのは大変むずかしい。けれども、カラスのほうはきちんと人間の個体識別をしている。
カレドニアガラスは、股状の枝を折ったり、形を加工したりすることで、フック付きの道具をつくる。フックの先を鋭くするため、削る。
赤ん坊カラスは、すべてのものに興味を抱く。新聞を与えると、ズタズタにしてしまう。どんなエサも必ずもてあそぶ。
1羽のカラスが何かを持っていると、他のカラスはそれを欲しがる。カラスたちは、恐ろしいほどイタズラが好きだ。
カレドニアガラスは、「ワァー、ワァー」あるいは「ワァッ、ワァッ」と鳴く。「カァー」とは鳴かない。
カレドニアガラスをめぐる楽しい写真集のようなカレドニアガラスの紹介本です。
(2018年2月刊。2200円+税)

「おしどり夫婦」ではない鳥たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 濱尾 章二 、 出版  岩波科学ライブラリー
面白いこと、このうえない本です。鳥の本当の姿を知ることができるという以上に、生命とは何なのかについて考えさせられました。
人は見かけだけでは判断できない。その行動をよく見てから判断すべきだとよく言われます。そのとおりだと思うのですが、では鳥の場合には、どうやって行動を見て判断したらよいのか・・・。鳥を個体識別しないと何事も始まりません。でも、一羽一羽の鳥をどうやって識別するのでしょうか・・・。
ニホンザルやチンパンジー、そしてゴリラなら、じっと観察していたら一頭一頭(ゴリラは一人一人と数えます)の顔や体の違いが識別できるようになるそうです。でも、小鳥には無理ですよね。でも、不可能を可能にするのが学者の仕事です。絵の具を羽に吹きつけたりして、なんとか個体識別の努力をしているのです。頭が下がります。そうやって、一体、何が判明したか。驚くべきことが徐々に分かってきたのです。
オオヨシキリは一夫多妻。第1メスの子は58%がオスなのに、第2メスの子は46%がオスだった。第2メスは第1メスほどオスが子育てに協力してくれないので、質の高い子を育てられる保障がない。そこで、メスを産んでおけば一定の子は残せる。なので、第2メスになったら、産む卵はメスにしたほうがよい。
では、どうやって鳥はオスかメスかを産み分けることができるのか・・・。精子ではなく、卵細胞にメスになるものとオスになるものの2種類がある。しかし、それにしても、どうやって産み分けているのか、そのメカニズムの全貌はまだ解明されていない。
北米のツバメでは、巣立ちまでに死亡したヒナの1%が子殺しによるもの。それは、独身のオスがヒナをつついて殺して、被害者のメスを結婚相手として獲得しようとしている。繁殖に失敗したら、しばしばつがいを解消するからである。
鳥全体では一夫多妻の種は数%にすぎず、9%以上の種は一夫一妻で繁殖している。子育ての制約があるからだ。
一夫多妻といっても、一夫多妻のオスがいる一方で、メスを得られなかったオスがいるというのが実態。それはそうでしょうね。みんながみんな一夫多妻というのは、オスとメスの数に圧倒的な差がないと不可能ですから・・・。
鳥のオスは、つがい相手を得ることと、つがい外交尾を行うことの二つの手段を駆使して、自分の子を少しでも多く残そうとしている。
これって、人間の浮気にも通じる話ですよね、きっと・・・。
アマサギでは、34%の交尾が、つがい外のオスとメスによって起きていた。
一夫多妻のオスは、メスが「浮気」しないよう一瞬も気を抜かずにメスに張りついておかないといけない。体重が1割も減るほどの難苦です。
一部の種のオスは、メスが抱卵中につがい外交尾(一夫多妻)を目ざす。これって、人間の男のすることでもありますね。
鳥のメスは、少しでも優れたオス、たとえばよい縄張りをもつオス、捕食者から逃れる能力が高く、病気にも強いオスとつがいになろうとする。つまり、メスは繁殖に際してパートナーを厳選している。
アマサギのつがい外交尾は、メスはつがい相手より優位なオスだと交尾を受け入れ、劣位なオスだと攻撃して追い払う。
一夫多妻の鳥は少なく、全種の1%以下でしかない。
メスの死亡率は高い。それは、繁殖・子育ての負担。そして、捕食者に襲われやすいから。
托卵にしても、宿主となった鳥が卵を拒否することが20%ほどある。また、宿主が托卵鳥のヒナを拒絶することがあることも判明した。
こういうことが判明したのはDNA鑑定によって鳥の識別が可能になったからですが、しかし、その前に取りの識別が必要なことは言うまでもありません。そのためには、山中に何日も泊まり込んで観察を続けるなどの苦労を必要とするわけです。好きでないとやってられない仕事だと思います。でも、そのおかげで、居ながらにして、いろんな生命体の存在形態をこうやって知ることが出来るわけです。ありがたいことです。
(2018年8月刊。1200円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.