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カテゴリー: 生物

クモのイト

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中田 兼介 、 出版  ミシマ社
わが家のなかには、大小いろいろのクモが出没します。芥川龍之介の「くもの糸」を読んで以来、自分だけは助かりたいという思いから私は決してクモを殺すことはしません。あまりに大きなクモはホウキで外へ掃き出してしまいます。でも、その姿は少し気味悪いですよね。
セアカゴケグモはともかくとして、クモの毒は人間には効かないことを本書で知って安心しました。
クモは、成功した生物の一つ。陸上のあらゆるところに住んでいる。
クモは空を飛び、水中にすむクモだっている。
「朝のクモは殺すな」と昔から言われてきたように、昔の日本人はクモをありがたがっていた。
クモのオスは、大人になると網を張らなくなり、エサも食べずにメスを探して子づくりに全精力を注ぐ。クモは他の動物をエサにする肉食動物だが、異性に対しても猛烈な肉食性。
メスは交接相手のオスを食べてしまうことがある。うひゃあ、カマキリと同じですね・・・。
クモの魅力は、その賢さと複雑さにある。
クモの糸は直径数マイクロメートル(1ミリメートルの数百万の1)しかないにもかかわらず、自然界で最強。
クモのほとんどは孤独に生き、好き嫌いのあまりない肉食動物。
クモの糸で服をつくった。4年以上の月日と30万ポンド(4000万円強)のお金、6000人時の労力、のべ100万匹をこえるジョロウグモが使われた。
これまで16個体のクモが宇宙旅行した。日本人で宇宙を飛んだのは12人のみ。
クモの祖先が出現したのは3億8000万年前。クモの化石は3億年前のものが最古。
網を張ってエサをとるクモの種類は半分ほど。
クモの糸はタンパク質でできている。
母グモは子グモにエサを与えていて、自分が弱ると、自分の身を子グモに食べさせる。
クモが空を飛べるのは、地球の表面がマイナス電気を帯びていて、クモの糸もマイナス電気なので、お互いに反発しあって、空中に浮かぶことになる。
長生きするクモの寿命は40年というのもいる。ジョロウグモやコガネグモは1年。
クモは、からだを分解する酵素をたっぷり含んだ消化液を口から出して、哀れなエサの中に注ぎ込む。しばらく待つと、溶けてどろどろになるので、それをクモは飲む。
からだの外で消化が起こるおかげで、クモは自分よりずっと大きな動物でもエサにできる。
クモは毎日、網を張り直す。古い網は食べる。これはリサイクル。
クモは地球上に12万種いると見込まれている。150種近くが絶滅危惧になっている。
クモは、ほとんど昆虫を食べている。
世界中で4億トンから8億トンのエサを食べている。
身近なクモについての面白い話が満載の本です。
(2019年11月刊。1800円+税)

深海―極限の世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 藤倉 克則・木村 純一 、 出版  講談社ブルーバックス新書
太陽光のうち赤っぽい光は水深3メートルまでにその大半が吸収され、それより深くには届かない。短い波長の光も水深200メートルまでに吸収されて、ほとんど人間の目で見えなくなる。ただ450ミリメートル前後の波長の青色領域の光のみが水深1000メートル付近の中層まで達している。水深1000メートルより深い海は暗黒の世界であり、自ら光を発する生物(発光生物)以外に光を見ることはない。
深海では、光が届かなくなるうえ、水圧が上昇する。
今では、海底下2.5キロメートルにまで微生物が存在していることが判明している。
地球表面の7割は海、水深200メートルより深い海が深海、海の平均深さは3800メートル。水深200メートルの水中には、植物プランクトンや動物プランクトンの死骸、生物の排泄物が凝縮し、埃(ホコリ)のかたまりのようになって沈降する「マリンスノー」が見える。このマリンスノーは、深海に降り注ぎ、深海生態系を支える食物となる。
深海の暗闇では、発光は生存に有効。発光の役割は、エサをおびき寄せるため、捕食者に襲われたときの威嚇、同種間のコミュニケーション、カウンターイルミネーションで姿を消して捕食者から見つかりにくくするため・・・と考えられている。
深海は水圧が高いため、100度以上になっても海水は沸騰せず、水深1000メートルでの沸点は300度以上になる。
深海では有機物の量が少ないため、一般に生物群の生息密度は低く、生物の種の多様性は高い。
海底にある湧水域はプレートの沈み込み帯で、沈み込むプレートの上側のプレート上に存在する。
世界中の海底の95%は太陽の光が届かい深度にあり、温度は4度以下、圧力は数十気圧から100気圧になる。そして、酸素がないところがほとんど。大気中に放出された二酸化炭素は、2分の1が大気中に残り、4分の1は陸上の森林が吸収する。最終的に残った4分の1は海洋に吸収される。
海中のプラスチックが海洋生物にどのように影響しているのか、少しずつ究明されている。しかし、マイクロプラスチックが深海に堆積していることの研究は遅れている。
プラスチックは大変便利なものなので、私もずっと使ってきましたし、使っています。ところが、生態系に大きな悪影響を与えていることを知り、なんとかしなくては・・・と思いはじめました。
深海にうごめく生物に光をあてた貴重な新書です。私が大学生のころは、まだプレートテクトニクス現象について、そんな馬鹿なと一笑に付されていました。今では、大陸が動くものだというのは完全に定説になっています。これで世の中の見方が私のなかでも、すっかり変わってしまいました。
「しんかい6500」に乗ったら水深6500メートルまで潜航できるそうですが、暗黒な闇のなかにずっといたら気が変になってしまいそうです。学者はえらいですね。
(2019年5月刊。1100円+税)

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 マット・ウィルキンソン 、 出版 草思社
生物が長く生きられるようになったのは、ひとえに移動運動のおかげである。移動運動が生物圏に登場して初めて、生命体の世界は十分に発達し、たんなる生化学以上の何かになるのだ。自己推進力が進化してこなかったら、生命は、数個の散在した、短命の、ひどく複雑な化学物質の破片でしかなかっただろう。
大人の典型的な歩行速度は時速4.8キロ(秒速1.4メートル)。上限速度は時速10.8キロ(秒速3メートル)。これ以上は速く歩けない。競歩の世界記録は時速16キロ(秒速4.6メートル)。いま、トップの長距離走者は時速23キロ、アマチュア選手だと時速11~15キロ。
汗をかいて身体を冷却できるのは、人間のみ。ほとんどの哺乳類は汗をかかない。これは、毛皮に含まれている脂が水分の通過を妨げるから。
チンパンジーの身体は、頭のてっぺんから足のつま先まで、二足歩行するようにはまったくできていない。チンパンジーの身体構造は、樹上生活のための運動機能が、地上生活向けの運動機能よりも優先的に備わっている。長く力強い腕と手は、広げるとかなりの幅になり、最小限の筋力で、木の幹をしっかりとつかんでよじ登ることができる。
鳥類は、コウモリや翼竜と同じように、森林で飛び方を習得したのだ。地上起源説は誤っている。鳥は、その羽毛のおかげで飛行できるようになった。祖先である恐竜たちは、前適応として備えていた木登り能力、樹上性の祖先たちが好条件の森林に住み、たまたま滑空性を獲得する道が開けていた。そして、独特の羽毛ベースの原始的な構造のおかげで、羽ばたき飛行を手に入れた。
ハエトリグサは、植物が昆虫を食べる。ハエトリグサは、動物は動き、植物は動かない、というあたりまえの考えにショックを与える。ハエトリグサは、この法則の例外だ。
固着性動物は、どれも幼生のときは移動する能力がある。幼生たちは、ただ水中を漂うのではなく、推進力を起こして活発に動き回る必要がある。
植物のとった対策は、水中浮遊性の精子を空中浮遊性に変えることだった。
また、動物の身体に糊か面ファスナーのようなものでくっつけて種子を拡散させている。
生物の進化の過程を明らかにし、生物の移動の意義を深く掘り下げている本です。生命の神秘を深く実感することのできる本でもあります。
(2019年3月刊。2800円+税)

愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 マーク・ベコフ 、 出版  エックス・ナレッジ
私は犬派です。猫はわが家の周辺を絶えず巡回していて、ときに庭に無断侵入するので家人が大声を出して追い払おうとします。が、何してるの・・・とばかり、悠然と立ち去っていきます。そのふてぶてしさに家人はさらに腹を立てます。ところで、私の住む団地住人の高齢化がすすみ、犬を散歩させている人が以前に比べて目立って減りました。
車を走らせているとき、犬を散歩している人を見ると、どんな犬かと私は気になります。ひところはシベリアン・ハスキーが大人気でしたが、今はとんと見かけません。ラブラドール・レトリバーも最近はあまり見かけなくなりました。今は、なんといっても柴犬です。たまに、チワワとコーギー犬がいます。わが家でも、子どもが幼いときには雑種の柴犬を飼っていました。
犬が喜びや悲しみを感じるのは分かっているが、羞恥心や罪悪感といった複雑な感情があるかどうかはよく分からない。犬という素晴らしい動物にも、まだまだ分からないことがたくさんある。
犬はオオカミから進化して家畜化された種になった。すべての犬が生まれつき犬だ。家畜化されたオオカミだけが犬なのだ。
世界の犬の75%は自分で暮らしている。
犬は人間と同じく無条件に愛したりしない。犬も人間も選り好みする。
深刻な虐待を受けた犬は、人間やほかの犬への無条件の愛を与える信頼感を二度と取り戻せないことがある。
犬は人間と比べて、近くをはっきりと見ることができない。犬は静止しているものより、動いている刺激に敏感に反応する。
犬は、ときどき大はしゃぎで遊ぶ。犬は、文字どおり疲れきるまで遊びに没頭する。
犬は単独でも遊ぶ。遊ぶことは、それ自体がごほうびなので、必ずしも遊び相手のいる「社会的遊び」である必要はない。
多くの犬の得意なことは、友だちと遊ぶこと。
仔犬が社交性を身につける時期には、ほかの犬や人間と遊ぶことが大切だ。
遊びは滅多に本物の攻撃に発展しない。
犬社会において、順位はたしかに存在する。
ドッグパークなどで40年以上にわたって犬を観察してきた著者による犬解説の本です。
(2019年11月刊。1800円+税)

精霊の踊る森

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 嶋田 忠 、 出版  講談社
私は『ダーウィンが来た』を欠かさずみています。ふだんテレビはまったくみませんが、この番組だけは録画したものを週1回、寝る前にみています。世界各地の生き物たちの驚くべき映像に接して、大自然の営みの豊かさを実感させられます。
この写真集も『ダーウィンが来た』で紹介された鳥たちを見事に切り取っていて感動そのものです。
極楽鳥と庭師鳥について、「進化しすぎた鳥たち」と評されていますが、なるほどすごい色と形、そして求愛ダンスと愛の巣づくりのすばらしさに、ただただ圧倒されて声も出ません。
タンビカンザシフウチョウの求愛ダンスで示す色と形は神秘そのものです。誰が一体こんなデザインを考えついたのでしょうか、不思議でなりません。
カンムリニクシドリは、高さ2メートルにもなる求愛用のアズマヤのタワーを森の中に築き上げます。
オウゴンチョウモドキでは、若鳥たちは成鳥オスに見習って踊りを練習します。成鳥になるのに5年もかかり、その間、一生けん命に成長オスの踊りを見て学ぶのです。
真紅の円形の頭に白い目に黒い瞳がじっとこちらを見すえている写真が表紙を飾ります。ド迫力です。
写真をとった人は、私と同じ団塊世代(1949年生)。ニューギニア島に通い続けているのです。パプアニューギニアでは、今も昔ながらの原始的な生活をしている人々がいるようです。祭りのときには極彩色に顔と身体を飾りたてます。まるで鳥たちと競いあうようです。
極楽鳥の求愛ダンスは日の出前後にあるので、日の出前の暗いうちに機材をかついて森の中に入り、撮影用の特製テント(ブラインド)に入って、じっと待つのです。なんと5日目に決定的瞬間の撮影に成功したといいます。テントのなかに隠れてじっと音も立てずに待ち続けるのです。大変な根気のいる仕事です。おかげで居ながらにして、こんな素晴らしい写真を拝むことができます。ありがたいことです。
手にとって一見する価値が十分にある写真集です。3600円が高いと思う人は、ぜひ図書館に注文して手にしてみて下さい。世界観が大きく変わること間違いありません。
世界は生命の神秘にみちみちていることを実感させられます。ぜひぜひ後世にそのまま残したいものです。
(2019年7月刊。3600円+税)

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