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カテゴリー: 生物

おしゃべりな絶滅動物たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 川端 裕人 、 出版 岩波書店
 絶滅した生物といったら、なんといってもアメリカのリョコウバトですよね。数十億羽いたというのに今ではゼロになってしまったのです。信じられません。もちろん、絶滅させた犯人は、人間です。
リョコウバトは19世紀まで、北アメリカでは普通に見られていたハト。全長40センチで、「金、緑、紫がかった深紅」という派出な体色。目は鮮やかな炎のようなオレンジ。日本のカワラバトより一回り大きい。
種としての特徴は、巨大な群れとして行動するところにあった。リョコウバトの飛行速度は時速60マイル(1マイルは1.6キロ)で、とても力強く速く飛ぶ。それが1マイルの幅で、4時間にわたって頭上を通過していくという目撃談がある(1812年ころ)。この目撃談から逆算すると、22億羽になる。最大で37億羽と推計された。
なので、リョコウバトの通過する森は、いわば破壊され尽くす。
人間は、リョコウバトのヒナを捕獲した。ヒナは非常に太っているので、バターやラードの代用品として、脂肪を融かして家庭用に使った。リョコウバトの羽毛を使った羽毛布団は寿命を延ばすと信じられた。1890年代になると、リョコウバトは激減した。人間が食肉のためなどで大量捕獲したことによって、リョコウバトは、わずか20~30年で、数十億羽いたのがゼロになった。これは恐ろしい現実です。
 「人魚」のモデルとされているのがステラーカイギュウ。カムチャッカ半島沖のベーリング島で、1768年に最後の1頭が狩られて絶滅した。ステラーカイギュウが発見されたのは1741年なので、早くも27年後に絶滅してしまったのです。
 ステラーカイギュウは、コンブなどの海藻を食べる。巨大だけど温和な「人魚」。いつも群れで生活していて、コドモやワカモノが常に群れの真ん中にいるように気を配る。浅い海で、静かにコンブを食べる。ステラーカイギュウは、最大10メートルの大きさ。その消化管は152メートルもあり、体長の20倍以上になる。
 コンブを消化して栄養にしていくために必要な長さだった。
ステラーカイギュウには社会性がある。仲間が人間に襲われたとき、逃げるのではなく、むしろ助けようとして、留まってしまう性質がある。メスが人間に捕まると、オスは近づいてきて、人間が何度も殴りつけても、全力でメスを逃がそうとする。それがムダに終わっても、岸まで追いかけてくる。メスが死んだら、オスは矢のようにメスに近づいてきた。
ステラーカイギュウのミルクは非常に濃厚で甘く、粘性がある。肉は牛肉よりやや硬いが素晴らしい味。ゆでるとすぐに柔らかくなる。脂肪は匂いも味も、とても良い。ステラーカイギュウの1頭を仕留めると、3トンの肉が得られ、数十人の船員が2週間は食べ続けることが出来る。
こうやって人間が絶滅させたリョコウバトやステラーカイギュウを知ると、種の多様性を保持することの大切さが実感されます。
 アメリカのトランプ大統領は、まさしく、逆コースに突き進んでいます。悲しい、野蛮な行いです。関税問題だけがひどいのではありません。
(2025年1月刊。2860円)

タコ・イカが見ている世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 吉田 真明・滋野 修一 、 出版 創元社
 私はタコもイカも大好きです。もちろん、食べるのが…。イカは呼子ですよね、やっぱり。予約していかないと、何時間も待たされてしまう店ですが、ともかく美味しいのです。イカ刺しも美味ですが、最後のイカのテンプラなんか、思い出すだけでもヨダレがしたたりそうです。
 そんなイカもタコも、実は賢い生物で、切られる痛みも分かっているのではないかと想像されています。なので、欧米では、研究倫理が厳しく、要するにむやみに殺してはいけないというルールが確立しているそうです。日本では、ちょっと無理かな…。
 アオリイカは群れをつくる。異性との駆け引きが興味深い。オスは体と腕全部の模様を変化させてメスに近づき、アプローチする。と同時に、近くにいるライバルとなるオスに対して威嚇する。威嚇の対象は1匹ではなく、多数。つまり、アオリイカのオスは、眼でオスかメスか、攻撃するか守るか、愛のシグナルを送るかを判断している。
 タコやイカの寿命は一般に1年ほど。最大のダイオウイカは全長10メートルをこえるが、一番小さいのは1センチほどのヒメイカ。
 イカは新鮮で活きのよい餌しか食べないという美食家であり、また大いに食い散らす大食漢。
イカやタコを頭足類というが、間違った呼称だ。タコの「頭」は頭ではなく、頭から足や腕が生えているわけではない。タコの「頭」は、人間の頭とは別物。
タコ・イカには、もちろん肛門があるが、外からは見れない。胴体の中に肛門の開口部がある。
 オウムガイは、頭足類の祖先。タコ・イカが出現したのは、恐竜が栄えていた中生代。
 タコ・イカにも貝殻の名残(なごり)がある。プラスチックのように見える透明な軟甲や、タコのスタイレットという釘状の骨が、それ。
タコやイカは3つの心臓をもっている。サブ心臓が2つある。タコやイカの脳は9個ある。うち8個は、腕神経節と呼ばれる。腕を制御する神経の塊。タコの腕には、脳と同じ数の神経細胞がある。
 イカもタコも知能が高い。眼と視力が良い。他者をじっと見つめて、考える時間が長い。敵か味方か、異性か、慎重に判断する。
 体全体に知的な表現力がある。色素で変化自在の模様をつくり出す。
 学習力と記憶力がある。1日に3回、シンボルを提示すると、3日間も記憶でき、長期では50日も記憶できる。学習のやり直しもできる。
 タコもイカもアルコールに酔い、麻酔がきき、眠る。ドラッグ(MDMA)をタコに投与すると、タコは穏やかになる。
チャットGPTとタコの脳は、実は似ている。ええっ、ど、どういうこと…。
 人間だけが賢い生物だなんていうのが、単なるひとりよがりだと思わせる本でした。
(2025年4月刊。1980円)

時を刻む湖

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中川 毅 、 出版 岩波現代文庫
 若狭湾の近くに水月湖という小さな湖があります。私も近くをバスに乗って通過しました。今では、この水月湖から掘り上げられた年縞を展示している博物館があります。ここらは、周囲に森と泉があるくらいで、特に他に見世物があるのでもありません。ところが世界が注目している場所(湖)なのです。
この博物館のすごいのは、水月湖から引き上げられた7万年分の年縞の全部が45メートルにわたって展示していること。では、いったい、その年縞って、何なの…。
 福井県にある小さな湖(水月湖)が世界的に注目されたのは2012年10月18日のこと。
 「世界一精密な年代目盛り、福井・水月湖、堆積物5万年分」
 これは当初の記者発表によるものです。
水月湖の年縞(ねんこう)は、氷期の寒い時代には1枚が0.6ミリ、その後の暖かい時代には1.2ミリメートルほど。水月湖は埋まらない湖。
 水月湖の湖底には、季節ごとに違う物質が堆積している。水月湖は、周囲を高い山に囲まれているため、日本海の強風が直接吹きつけることはない。また、水深34メートルと深いので、通常の波では湖底の水までかき混ぜることは出来ない。つまり、波や風では、湖底に酸素を供給することができない。そこで、湖底にセ氏4度の水ができる。酸素のない死の世界。
湖底にパイプを突き刺して湖底の下の年縞を引き揚げる。パイプの外側に小さな金属の突起をつけて、回収率を劇的に向上させた。
 永らくメートル原器が使われてきた。しかし、金属の棒だと時間がたてば変質していってしまう。今では1メートルの定義はまったく異なってしまっていて、目で見ることはできない。
本書が発刊されたのは2010年のこと。それから10年以上がたち、さらに進展がある。水月湖の年縞は今では世界的な標準のモノサシになっている。そして博物館で年縞を目の前で見ることができる。
 それにしても7万年分のすべてが45メートルのステンドグラスごしに観察できるなんて、信じられませんよね。なにしろ目の前に7万年の歳月を示しているものが見れるというのです。まさしく地球は生きているということです。ぜひ現物を見てみたいものです。
(2024年12月刊。930円+税) 

もしもハチがいなくなったら?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 横井 智之 、 出版 岩波ジュニア新書
 ハチが消滅するかもしれないと言われています。大変なことです。
 私の身のまわりで、スズメが少なくなりました。今年はツバメだって、昨年よりぐんと姿を見かけません。駅舎にいくつもツバメの巣があって、子育て中のにぎやかな巣の様子をいつも駅で見かけていたのに…、淋しい限りです。
 ハナバチの祖先は1億年も前の白亜紀に地球上に出現した。これは多くの被子植物が出現した時期とちょうど同じころ。恐竜が繁殖して、地球を歩き回っていた白亜紀の時代に、花とハナバチはお互いに多様な姿や形をもつようになった。
多くのハナバチでは、後ろ脚にスコーパが見られ、そこに花粉を集めていく。スコーパとは、運搬毛が密集している部分。
 ハナバチ自身は、植物のためを思って、花粉をせっせと運んでいる、というのではない。
 ハナバチも植物も、自分にかかる労力は小さくしつつ、相手を利用して最低限の利益を得ようとしている。ハナバチと植物はお互いに必要としているが、ときには相手をだまし、出し抜き、自分に得になるようにしている。
ハチにもたくさんの種類がいて、危険なハチは、ごくわずか。
オスは交尾するために生きている。多くのハナバチのメスは生涯に1回しか交尾しない。なので、オスは自分の仔を残すためには、誰とも交尾をしていないメスを探し出さないといけないので、必死だ。
 ミツバチの新女王は複数回交尾する。セイヨウミツバチの女王は、1日に1000~3000個の卵を産んでいる。平均的な寿命を3年とすると、生涯に100~300万個の卵を産む。
 メスは針をもっているが、オスはもっていない。なんだかほっそりしていて、か弱そうなスタイルのほうがオス。
 ハナバチの種の多くは、地中に巣をつくる。日当たりの良い裸地を好むことが多い。二ホンミツバチは、プロポリスをつくることがなく、蜜ろうだけを使って巣をつくりあげる。
 ミカンをはじめとするかんきつ類やブドウは、ハナバチに頼らない、風媒の作物。キュウリは、受粉しなくても実がなくなる。玉ねぎやキャベツの生産にもミツバチは関わっている。
昆虫全体が減少している。チョウは、1990年以降、ヨーロッパ16ヶ国で、39%も減少している。
 ゴキブリも家で見かけるチャバネゴキブリなどわずかな種を除くと、大半は草地や森林に生息していて、雑食性なので、落ち葉や樹木以外にも動物の死骸などを分解してくれる。
ハナバチのおかげで、野菜や果物が育っている。
 ハナバチの代わりにロボットやAIを使う、小さなドローンを飛ばすなど、いくつも挑戦されているが、そんなに簡単にとって代わるとは思えない。
ハナバチがいなくなったり、トマト、イチゴ、リンゴ、メロン、スイカ、カボチャが食べられなくなってしまうかも…。いやあ、それは大変なことですよね。
トランプ大統領は自然環境の悪化なんて、とんだフェイクニュースだと信じているようです。とんでもない間違いです。どうしてアメリカ人の半分が、あんな知性欠如の商売人を選んだのでしょうか…。
 ハチを大切にすることは、私たち人間を大切にすることと同じなんですよね。
(2025年3月刊。880円+税)

樹木医がおしえる木のすごい仕組み

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 瀬尾 一樹 、 出版 ペレ出版
 わが家の庭にもたくさんの木があります。紅梅・自梅は、今年は梅の実が豊作でした。ナツメの木はトゲが要注意です。サルスベリは前ほど勢いがありません。香りが弱まりました。モチの木は巨木になりました。グミの木は1本は枯れてしまいました。枯れたのは、マツのほかにもハナミズキもがあり、サクランボの木とキウイは切り倒してしまいました。酔芙蓉の木も枯れたのか切り倒してしまいました。あと、シュロがぐんぐん伸びています。私の背をとっくに越してしまいました。
木の年輪の幅が広くなっている方が南というのは俗説なのだそうです。年輪幅が広くなっている部分は「あて材」として、傾いた幹や枝を持ち上げようとしているのです。
 幹の内側の古い部分は心材と呼ばれていて、細胞は死んでいて。水も通していない。ただし、ここに抗菌物質が蓄積しているため、腐るのには時間がかかる。
木の幹にくっついている「こぶ」には外敵に対抗する物質が多く含まれているので、切らないほうがよい。
幹から生えるキノコの多くは、枯れ枝や幹の内部を食べて育ったもの。根元から出ているのは「ひこばえ」、幹の途中から出ているのは「胴吹き」と呼ぶ。
河口のアングローブは、塩分が入ってくるのを最小限に抑えたり、塩分を排出したり、体内の一部に塩分をため込んだり、種類によって違う方法で対処している。
 高山でかわいい花畑をつくっているチングルマは花ではなく立派な低木。
老木が倒れて、その周囲に太陽光が当たるようになると、多くの植物が育ってくる。暗いところでは育たないアカメガシワの木の種が土中で休眠している。
 気にしがみついて生きる着生植物は、樹皮に水を留めておく力があまりないため、乾燥に耐える力が必要となる。
 木の病気の原因で多いのはカビのような菌類。クリスマスの時期に登場する紅い花のポインセチアは、その多くが最近による病気にかかったもの。わざと病気にかけることで、観賞価値を高めている。うひゃあ、そ、そうなんですか…。知りませんでした。
 世界で一番大きな木は、北アメリカに自生するセンペルセコイア。私は小学校を卒業するとき、メタセコイヤの若木をもらいました。すぐに枯らしてしまいましたが、これも大きくなるようですね。
 日本で一番大きい木は鹿児島県の「蒲生の大クス」だそうです。樹高30メートル、幹回り24メートル。樹高だけだと、京都のスギの木で62メートルもあるとのことです。ソメイヨシノは50年から60年が寿命といわれていますが、100年をこえて生きているソメイヨシノも存在するそうです。
 世界的には長寿なのは、アメリカの松の仲間が4900年。そして、ポプラの仲間は、クローンとして8万年前から存在するとのこと。こうなると、寿命って何…、という不思議な気になります。
(2025年3月刊。1900円+税)

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