法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 人間

AIと教科書が読めない子どもたち

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 新井 紀子 、 出版  東洋経済新報社
一橋大学法学部を卒業したあと、アメリカのイリノイ大学で数学科を学んだ数学者という著者の経歴は、私には驚きです。というのも、私は高校では理系クラスにいたのですが数学の才能がないことを自覚して、法学部に志願を切り替えたからです。
そして、著者は、「東ロボくん」と名付けた人工知能(AI)を我が子のように育て、東大合格を目ざしてチャレンジしてきた。そして、この「東ロボくん」は、東大には合格できないが、MARCHレベルの有名私立だったら合格できるほどの偏差値に達している。
AIはコンピューターであり、コンピューターは計算機であり、計算機は計算しかできない。
なので、ロボットが人間の仕事をすべて引き受けてくれたり、人工知能が意思をもち、自己生存のために人類を攻撃したりするという考えは、まったく妄想にすぎない。
つまり、AIが人間にとって代わるころはありえない。
コンピューターができるのは、基本的に四則演算だけ。
「東ロボくん」につかった予算は、年間3000万円。このチームはのべ100人以上の研究者が参加した。半分が大学、残る半分は企業からの参加者。
AIがすすむと、かなりの職業がなくなってしまう。たとえば、電話販売員(テレマーケター)、保険業者、融資担当者、銀行の窓口係、スポーツの審判員。
アメリカの職業702種について、その半分が消滅し、全雇用者の47%が失職する恐れがある。
大学入試では、ビッグデータは集めようがない。
ツイッターは、脅迫などの不適切ツイートや残酷画像やアダルト画像などの不適切画像の削除に常に追われている。適切と不適切をAIが自動判定できるか否かが、ツイッターの存続そのものを左右する。
国語と英語の二つは、「東ロボくん」の数式処理では克服できない。行く手を阻んだのは「常識」の壁だった。
AIには、意味を理解できる仕組みが入っているわけではなく、あくまでも「意味を理解しているようなふり」をしている。
AIが計算機であることは、AIには計算できないこと、基本的には、足し算と掛け算の式に翻訳できないことを意味している。
AIはロマンではない。
日本の中学生・高校生の多くは、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できない。これは、とても深刻な事態だ。日本の中高校生の読解力は危機的と言ってよい。その多くは、中学校の教科書の記述を正確に読みとれない。大学教員の多くが、学生の学力の質の低下を肌で感じている。学生との会話が成立しないことがあまりに多いし、増えている。
就学援助の率が高い学校ほど読解能力値の平均が低い。貧困は、読解能力値にマイナスの影響を与えている。
ある中学校では、社会科の教科書の音読を授業中にさせている。文章を正確に、しかも集中してすらすらと読めなければ、スタート地点に立つことさえできない。
東大に入れる読解力が12歳の段階で身につけていると、東大に入れる可能性は圧倒的に高い。
なるほど、そうですよね。日本文の問題を素早く理解することが解決の第一歩です。
なるほど、なるほどと思いながら読みすすめていきました。
(2018年12月刊。1500円+税)

腸で寿命を延ばす人、縮める人

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 藤田 紘一郎 、 出版  ワニブックス新書
免疫と腸内細菌は、相互に頼りあう関係。
腸内細菌の世界の多様性が豊かになるほど、免疫力も高まっていく。赤ちゃんが、人の指でもおもちゃでも、道に落ちているものでも舐めたがるのは、腸内フローラを豊かにして強い免疫力を築こうとする本能のようなもの。
腸は、人が食事をし、排便する日中はもちろんのこと、人が眠っているあいだも活動を活発に続けている。生まれてから死ぬまで片時も休むことなく、フル活動できるだけの持続的で膨大なエネルギーを求めている。
腸内細菌は、ホルモンの合成にも働いている。セロトニンやドーパミンなど、幸せホルモンの前駆体を脳に送り出すのも腸。
悪玉菌には免疫細胞を刺激する作用がある。悪玉菌がまったくいないと免疫もまた育たない。
腸内環境を整えるためには、毎日の食事で水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよくとることが大事。それにはキャベツを食べること。キャベツには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれている。1日に身体が欲するビタミンCは、キャベツの葉を4枚食べたら摂取できる。酢キャベツは、とくにおすすめ。
肉をまったく食べないと、たんぱく質が不足して、新型の栄養失調を起こしてしまう。
菌を敵視していては、決して健康にはなれない。まずは、抗菌グッズの使用をやめよう。テーブルの上やその周辺の床に落ちたものは、食べたほうが免疫は強くなる。家庭内に落ちたものならば、腸内フローラが対応できないほど困った菌が付着する心配もない。
がんを防ぐには、1に、糖質の摂取を控える。2に、食べ過ぎない。3に、ミトコンドリアエンジンをもっと意識して使う。4に、身体を温める。
毎日風呂に入って、身体を温かく保ち、免疫細胞を鍛える。運動は好きなことをする。
著者は週1回、プール通いを実行しています。私も同じです。週1回、夜に30分間で1キロを自己流のフォームで泳いでいます。
がんになると、冷たいものや甘い物が欲しくなる。冷えていて、糖分の多い飲料は、がん細胞の大好物だ。
としをとってきたら、「おいしくない」と感じる食品を無理してとる必要はない。
とても実践的で、大変わかりやすいので、即実行できるものばかりです。
さあ、今日からやってみましょう。
(2018年12月刊。880円+税)
 日曜日の朝、仏検(準一級)の口頭試問を受けました。この1ヶ月ほど、頭のなかは、それで占められていて、落ち着きませんでした。なにしろ、何が出題されるか分かりませんが、3分前に与えられたテーマについて、3分間スピーチをするのです。事前に私が予想したのは、人工知能(AI)は仕事を奪うかと、黄色いベスト現象をどう考えるか、でした。ところが、当時医学部受験で女性が不利に扱われたことが発覚したが、どう考えるか、でした。もう一つは、動物保護の問題です。医学部受験で女性が不利に扱われていたことは、私には驚きでしたので、そのことをまず言って、大学の弁明は理解できなかった、女性医師の労働条件の改善が必要だと述べました。ところが、なにしろフランス語で話すのです。単語がスムースの頭に浮かびません。そして、何が問題の本質なのか、解決のためにどうしたらよいのか、うまく展開できません。3分間スピーチなのに、2分あまりで終了し、あとはフランス人試験官の質問に答えます。質問は分かりますが、うまくフランス語で答えられません。あっというまに7分が終わって、冷や汗がどっと吹き出しました。
 受付の女性は顔見知りですので、「どうでしたか?」と尋ねられ、「いやあ、いつも緊張します。ボケ防止なんですけど・・・」と答え、そそくさと試験会場をあとにしました。1年に1度の口頭試問が終わり、肩の重荷をおろして天神に向かうと抜けるような青空が広がっていました。

人体は、こうしてつくられる

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 ジェイミー・A・ディヴィス 、 出版  紀伊國屋書店
もっとも身近な驚異の世界、ワンダーランド、それは私たちの人体です。
人間は体内で病気を治す薬まで合成しているのですから、本当に不思議な存在です。
生物が自らを構築するとき、発生に必要な情報は胚(はい)のなかにあり、それを胚自身が読みとって自らをつくりあげていく。外部の図面にもとづくものではなく、外からの指示によるものでもない。
生物構造の場合は、構築にかかわる全要素が責任を共有する。DNAは、いわゆる設計図ではない。そこには詳細な設計図はなく、現場監督もいない。ましてや既存の機械や工具を使えるわけでもない。
生物の材料は三つ。タンパク質、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNAの三つだ。
成人の細胞は、数十兆の単位で(37兆個か・・・)、これは銀河系の星の数の10倍以上だ。
細胞には厳密に定められた形がない。ほとんどの細胞は、周囲の環境に応じて形が決まる。ヒトの典型的な体細胞は直径が0.01ミリ。
当初の細胞は、どれも同じ能力をもっていて、人体のどの部分にでもなりうる。たとえば頭部となると決められた細胞が初めからあるわけではないし、指令塔のような細胞が最初からあるわけでもない。
細胞はとても小さいが、細胞内の反応を担うタンパク質はもっと小さく、10万分の1ミリメートルほど。そのタンパク質が溶け込んでいる液体の水分子は、さらに小さい。
胚は、最初の血液細胞を大動脈の壁だった細胞からつくる。これは血管のなかにいる細胞なので、どうやって血管のなかに血液細胞を入れるのかという「難問」は考える必要がない。
人が学習するとは、脳のニューロン同士がシグナルのやりとりを介して結合を変えること。大脳には、数百億のニューロンがあり、成人では一つのニューロンが1000ほどのシナプスをもつので(子ども時代はもっと多い)、大脳全体のシナプスはまさに無数にあると言える。
健康な腸には、組織1グラムあたり10億から100億の微生物がいる。
腸内細菌は、酵素を分泌して、消化や代謝を助けてくれる。
腸内細菌は、毒素あるいは発癌物資になりうる食物分子を細菌酵素によって攻撃してくれるので、食物を安全なものにする役割も果たしている。
人体に有益な菌が豊富な環境として女性の膣もあげられる。
共生細菌は、ヒト細胞とシグナル伝達による会話をする。
腸の共生細菌は、シグナルを出すことで、自らの生存を確保する。
ヒトと腸内寄生虫は、長いあいだ、ともに進化してきた関係にある。
ぜん息は、免疫系のバランスが崩れ、ほこり、動物の毛、花粉といった無害な物質に過剰に反応してしまうのが原因だ。
目のレンズ機能の3分の2は角膜が担っていて、「目のレンズ」と呼ばれる水晶体は3分の1でしかない。
どの動物も、メンテナンス重視で長生きするか、それとも精力的に短く生きるかという選択肢のあいだでバランスをとっている。たとえば、マウスは捕食されるリスクが非常に高いので、短期間で繁殖することに注力する。
ヒトの活力と長寿への投資配分は、祖先がアフリカの平原でさらされていた捕食リスクによって決まったもの。ヒトが生まれながらにもつメンテナンスシステムは、100歳をこえる人はごく一部という仕様だ。
人体の不思議な仕組みの一端を知ることのできる興味深い本です。
(2018年11月刊。2500円+税)

脳の誕生

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 大隅 典子 、 出版  ちくま新書
身体を構成する細胞は、基本的に70%が水分。その水分を除いた乾燥重量のなかで、脳の脂質は55%を占めていて、タンパク質(40%)よりも多い。脳のなかでも脂質が多いのは「白質」と呼ばれる部分。白質は灰白質に比べてコレステロールが2倍、糖脂質が6倍程度多い。
脳は重量でいうと体重の2%ほどしかないのに、血液量としては心拍出量の15%を占め、安静時の酸素消費量では身体全体の20%を消費する。
このように脳は、すべての臓器のなかでもっともエネルギーを消費する贅沢な臓器だ。
脳は活動するために多量のエネルギーを必要としている。脳に存在するニューロンのほとんどは、胎児期に産生されて生涯働く、非常に長生きする細胞だ。したがって、脳のエネルギー産生には、なるべくカスの出ないクリーンな栄養が必要で、これに最適なのがグルコース(ブドウ糖)。グルコースは余分な燃えカスが出ない。グルコースはグリコーゲンという貯蔵のための糖質から供給される。グルコースやグリコーゲンは脳に蓄えることができないので、血中のグルコース濃度(血糖値)は、一定に保たれている必要がある。
グルコースから効率よくエネルギーを生成するには、ビタミンB1、B2などの微量栄養素が必須となる。
不思議なことに、ニューロンは最終的に配置されるところから離れたところで産生され、場合によっては非常に長い距離を移動する。
ヒトの脳には1000億にも及ぶ膨大な数がつくられるニューロンは、すべてが生き残るのではない。標的(パートナー)と正しく結合できて神経活動をするニューロンは生き残るが、それができなかったニューロンは死んで排除されていく。その量は、脳の領域によって20%から80%にも上る。
運動の制御に関する領域の成熟がもっとも遅く、その変化は21歳まで続いていた。
このように、「ヒトの脳は3歳ころまでに出来上がる」という「3歳児神話」は事実ではない。
前頭葉の発達が遅いことは、思春期の子どもたちの価値判断や意思決定が大人並みになるには、かなりの時間がかかることを意味している。
現在では、脳の特定の領域では、生涯にわたって脳細胞が産生されることが分かっている。
突然変異があったからこそ、地球上に人類が存在している。脳の進化についいていうと、遺伝子の重複が生じ(過剰コピー)、さらにその遺伝子に変異が生じる(コピーミス)ことが繰り返されることによって、人類はより高度な脳を獲得することができたと言える。
人間を人間たらしめている特徴の一つは「言語」を操ること。ネアンデルタール人も舌骨が発見されていて、言語をもっていたと思われる。
脳について最新の知見を得ることができました。
(2017年12月刊。860円+税)

子育てがおもしろくなる話②

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 土佐 いく子 、 出版  日本機関紙出版センター
私と同じ団塊世代の著者は長く小学校で教員をしていました。その体験にもとづく話ですから読ませます。私は電車の中で一気に読みあげました。
学校は、子どもたちに生きていく希望を届けるところであってほしい。学校へ行けば賢くなれる。そして、「よく来たね」と声をかけてくれる教師がいて、「遊ぼう」と誘ってくれる友だちがいる。やっぱり人間って、あったかいなと人への信頼を届ける所であってほしい。
学校は安心の場、自分の居場所のあるところでありたいもの。ところが、現実にはピカピカの1年生ですら、笑わない子、目を合わさない子、抱かれない子、そして、「どうせ、オレ、アホやもん」、「生まれてこなかったら良かった」と吐き捨てるように言う子がいる。
子どもは、親の失敗談を聞くのが大好き。ほっとするからだ。明日もがんばってがんばって立派にしなければと追い込まれないから。ほっとすることで、今の自分でいいんだという安心感が生まれる。その安心が自分づくりを支えてくれる。そして、明日も生きていけるという元気や意欲をはぐくんでくれる。
子どもたちの友だちづきあいがうまくいかなくなったと言われているが、実は、大人たちの人間づきあいが下手になっている。
私の依頼者には中高年の一人暮らしの人がたくさんいます。それは男性も女性もです。その一人は新聞配達を仕事としています。「大変ですね、何時から仕事ですか?」と尋ねると、なんと夜中の1時半から5時まで配達しているそうです。頭が下がります。「睡眠時間は大丈夫ですか、ちゃんと休めてますか?」と重ねて問いかけると、そちらはどうやら大丈夫のようです。夜、人が寝ているときに働いて、昼間は寝ているという、昼と夜が逆転した生活を何年もしているとのこと。「なぜ、ですか?」その人は、人とあまり接したくないからだと答えました。60歳代の男性です。大きなモノづくりの工場で働いたこともあるそうですが、そんなところにいると息が詰まりそうで、早々に逃げ出したと語りました。
人づきあいを苦手とする人が前より増えた気がしてなりません。そして、スマホ万能社会は、ますます人を孤立化させるのではないでしょうか。
人が人とぶつかりあい、励ましあい、支えあってこそ人間です。この本を読みながら、その基礎づくりを子どものころにちゃんとしてほしいと思ったことでした。
(2015年11月刊。1524円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.