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カテゴリー: 人間

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カテゴリー:人間

著者 サイモン・イングス、 出版 早川書房
 イカやタコ(頭足類)の眼と人間の眼は、まったく関係がない。人間の眼は皮膚の一部が特化して発達し、頭足類の眼は神経組織から発達した。
 チョウゲンボウ(ハヤブサの一種)は、上空から地上のハタネズミを発見する。ハタネズミは尿の痕跡でコミュニケーションしており、この尿が紫外線を反射する。チョウゲンボウは、矢印に沿って進むように簡単にハタネズミ狩りができる。
 映画もテレビもみなファイ現象を利用している。どちらも静止画像を次々に表示しているが、人間の眼がそれを動く映像として読みとっている。互いにそう遠くないところにある二つの静止した光が点滅すると、一つの点が動いているように見える。静止した点を融合させて動いていると判断する習慣は、自然界にいる動物にとって便利だ。
 夜盲症は、文字記録の前からエジプト・インド・中国で知られていた。そして、この三つの文明のいずれでも、治療薬は焼くか油で揚げるかした動物の肝臓だった。現代の歴史家も、これにはびっくりした。というのも、肝臓はビタミンAのすぐれた供給源であり、ビタミンAは視覚に中心的な役割を果たすものである。
動物は、2億年間、眼無しでも十分にやっていけた。藻類を食べ、海底に沈み、脈動していた。しかし、眼が出現すると、事態は俄然おもしろくなった。
 多くの昆虫は上空を驚くべき精度で見ている。アメリカギンヤンマは、2万8500個の個眼をもつ。像そのものはどうでもよく、空をレーダーのように偵察して動くものを探す。
脊椎動物の眼は海中で進化し、乾いた陸地に上がったときには、海のかけらも一緒に持って行った。脊椎動物の眼をつくっている組織は、生き延びるためには濡れていなくてはならない。水中にいたときでさえ、脊椎動物の眼はいろいろな保護策を講じていたし、水から上がったときにも、その保護策は眼を守り清掃するのに役立った。
 顔は二つのこと、何を感じているか、何を意味しているかを同時に表現できる。何を意味するかを優先して、感情を隠す。
 進化という観点からすれば、喜びを表す信号が大きな重要性を持ったことはなかった。人間の眼は自分が望んでも望まなくても、内心の状態を曝露する。
  人間の網膜には1億2600万個の光受容体がある。視神経の繊維は100万程度。すべての光受容体が神経線維によって脳と結ばれていたら、視神経は眼球と同じくらいの厚さになるだろう。網膜から入る情報がめりはりのきいたものであれば、情報は少なくて済む。上手に編集された100万の信号のほうが、混沌と化した1億2600万の情報より優れている。
 網膜には二つの視覚メカニズムが備わっている。一つは夜間用、一つは昼間用。
 夜間用はほんの小さな光でも収集、記録される。その代わり、鮮明には見えない。できるイメージは粗い。昼間の視覚では、視野の中心の情報が優先される。網膜表面の0.5%しかない中心窩が生み出す情報は、脳の第一次視覚野が受け取る情報の40%を占めるほどの重要性をもつ。
 人間に眼があることの由来と意義を考えさせられました。
 
(2009年1月刊。2600円+税)

忘れられない脳

カテゴリー:人間

著者 ジル・プライス、 出版 ランダムハウス講談社
 いやはや、こんな人も世の中にはいるのですね。日常のこまごまとしたことまで全部を覚えていて、忘れられないという人がいるなんて、信じられません。
 人間は「自分は何者なのか」という自己観念を形成するうえで、記憶は強く影響している。一般的に、人は膨大な記憶のなかから一部の記憶を抽出して、あるいは蓄積した膨大な記憶のかなりの部分を捨て去って、自己を規定していく。そして、その自作の物語を絶えず軌道修正し、巧妙に作り変えながら生きている。
 ところが著者は、すべての記憶を忘れることができないため、自在に自己修正することができない。自然な作り変え作業ができないのだ。
 その記憶は、さながら生活を再現するホームムービーのようだ。なにかのきっかけで記憶がよみがえる。次にどんなことがフラッシュバックしてくるのかは分からない。そして、走り続ける記憶を制止することもできない。その情景の一つ一つがあまりにも鮮明なので、楽しかったことも辛かったことも、いいことも悪いことも、記憶がよみがえるだけでなく、そのときの自分の感情も追体験させられる。当時の喜怒哀楽がそのまま乗り移ってくる。だから心を落ち着かせて生活するのが、とても難しい。
 うへーっ、すごいですよね。こんな人が世の中にはいるのですね……。
 著者は、特定の日を示されると、瞬時にその日のある時刻に行くことができる。そのとき、何をしていたか、そのころ何が起きていたか、ぱっと頭に浮かんでくる。
 これらの記憶は、日付や曜日と密接に結びついている。
 ところが、こんな著者なのに暗記はとても苦手だというのです。
 小学2年生のとき、掛け算の九九ができなくて、算数の家庭教師が必要だった。幾何学は特に苦手で、定理はまったく覚えられなかった。暗記が苦手なのは、絶え間なく浮かんでくる過去の記憶が頭の中を常に駆け巡っているため、物事に集中しにくいからだ。だから、成績はほとんど「可」であり、良と優はわずかだった。
 何でも忘れられない人が、実は暗記を苦手としているなんて、とても信じられませんよね……。不思議な話です。
 著者の記憶力の特徴のひとつは、どんなことでも優劣をつけずに、すべて保存していること。人生における出来事として、すべて同列・同格で記憶にとどめている。
 これは困りますね。やはり物事には優劣があるのですよね……。
 著者は、実は、忘れるという動作や状態自体を嫌っている。あの日に何をしていたのかをすべて思い出せることが気持ちいい。記憶の正確さは非常に重要なことなのだ。几帳面であることについて、強迫観念のようなものを持っている。
 驚異的な記憶力があり、いつでもそれを引き出すことが可能なのに、著者は日記をつけはじめた。それは、紙に書きとめると心が休まるからだ。日記をつけているときは、記憶が暴れまわる状態を自分でも驚くほど制御できる。書くことは、やはり意味があるわけですね。
 自分の記憶を他人に話すことによって他人と記憶を共有することになり、それが脳の活性化につながる。
 著者は44歳のユダヤ系アメリカ人です。いやはや、この世にはこんな変わった人間がいるなんて……。世界は広いですね。
 日曜日庭に出てエンゼルストランペットを根元のところから切ってやりました。霜にあたるとしおれて見苦しくなるのです。
 見通しが良くなったらロウバイが花盛りだったことに気が付きました。広い葉も黄色でロウができたとしか思えない小さな花も黄色です。においロウバイですのでふくよかな香りを漂わせています。
 玄関脇にチューリップを植えました。去年の球根を掘り上げると分球して小さくなっていました。捨てるのはかわいそうなので別のところにまとめて植えてやりましたが恐らく花は咲かないでしょう。チューリップの球根は10個入り280円と安売り中です。80個ほど植えましたので春が楽しみです。
 
(2009年8月刊。1900円+税)

癌ノート

カテゴリー:人間

著者 米長邦雄、 出版 ワニブックス新書
 かの有名な勝負師が、癌と宣告されてからの体験記です。かなり赤裸々に書かれていますので、ここで紹介するのもはばかられるほどです。ガンに関心のある人はぜひ現物を手にとってお読みください。きっと参考になると思います。
 著者のガンは前立腺癌ですから、女性には無縁です。でも、まったくなんの自覚症状もなかったそうです。
 ところが、ある日突然、「あなたは癌です」と宣告されたのでした。男性機能が喪失する。セックスができなくなる。著者はこの点を大いに心配します。私より5歳も年長ですが、さすが週刊誌を騒がせたこともある勝負師ですから、その点こそまさしく一大事なのでした。
 前立腺肥大症と前立腺癌は違う。場所から違います。尿道を取り囲んでいる部分が大きくなるのが肥大症。尿道から離れた外側にできやすいのが癌。前立腺は、胃とか肺と違って、取ってしまってもあまり困らない臓器。前立腺を取ってしまうと、射精できないし、子どもも出来なくなる。前立腺癌になるのは比較的高齢者に多い。
 前立腺癌の治療法として小線源療法がある。これは、前立腺の中に放射線が出る線源を埋め込む手法。その線源から1年くらいの時間をかけて放射線を放出し、癌細胞をやっつける。体内の線源は永久に残るけれど、別に困らない。
 小線源治療の中に、低線量率組織内照射と、高線量率組織内照射がある。低線量率組織内照射のとき、挿入する線源1個が6000円。それを70個ほど入れる。入院費を含め100万円かかる。患者負担を3割として、35万円かかる。
 医師を選ぶときは、運の良い医師を選ぶ。
 ねたみ、そねみ、うらみ、ひがみを持つと、その人の人生は終わる。そして、そういうものを持っている人と付き合うと、自分の運気も落ちる。運が良い人とつきあうのは大切だ。もう一つは、謙虚さがある人。医師を選ぶときには、絶対的な自信があって、しかも謙虚な人であること。なーるほど、ですね……。
 自分で納得のいくまで、よくよく調べつくして悔いのない選択をしたこと、手術のあと便漏れに悩んだことなどが率直に紹介されています。
 術後に、将棋連盟の会長に再び立候補するなど、以前と変わらぬ活躍をしています。たいしたものです。
 前立腺癌は自分で治療法を決められる。誰だって、「あなたは癌です」と言われたら嫌だし、落ち込む。でも、そんなときだからこそ笑いが必要である。治療を楽しむというわけではないが、医師や看護師と仲良くして、男の命をかける一局の治療にのぞむのがいい。
 なかなか実践的な本です。癌家系の私にも大変教訓に満ちた本でした。
 
 全国クレサラ集会のとき、帚木蓬生氏と身近に話すことができました。氏の最新作『水神』は先日ご紹介しましたが、本当に感動的なものでした。氏は年間1作を書くとのことで、5,6年先までテーマが決まっていて、その5年ほどのあいだに資料を集め、1年かけて書き上げるとのことです。資料集めには神田の古書店が一番だということでした。一つのテーマで100冊の本を読むそうです。
 朝4時に起きて6時までの2時間を執筆時間にあてておられるとのこと。ですから夜は8時に就寝。
 そして、氏は、私と同じ手書き派です。清書する人がいて、出版社とも5回以上、校正段階でやりとりするとのことでした。
 大変勉強になりました。
(2009年10月刊。700円+税)

鉄学、137億年の宇宙誌

カテゴリー:人間

著者 宮本 英昭・橘 省吾・横山 広美、 出版 岩波書店
 いやあ、鉄って、人間にとってこんなにも必要不可欠のものなんですね。ちっとも知りませんでした。驚きました。
 人間は鉄を十分にとらないと、貧血になる。鉄欠乏性貧血を起こす。血液にふくまれるヘモグロビンは、呼吸で体内に取り入れた酸素を身体の隅々まで運搬するという重要な役割を果たしているが、これが不足すると全身が酸素不足になって、めまいがしたりする。
 このヘモグロビンは鉄を中心とした構造を持っている。
現在、地球で知られているほとんどすべての生物にとって、鉄は不可欠な元素である。地球が特殊な天体である重要なひとつの理由は、地球が十分に大きな鉄の核を内部にもっていることにある。
 宇宙空間は有害な放射線が容赦なく降り注ぐという生命にとって危険きわまりない状況にある。これが地表面に危険なレベルで届かないのは、地球の持っている磁場のおかげである。
 磁場は、地球内部の溶融した鉄の運動により電流が流れるために生じる。つまり、人間は、地球の奥深くにある鉄に守られているのだ。月や金星、そして今の火星は磁場を持たない。いやはや、まったく私は知りませんでしたよ、こんな大切なことを……。
 過去500万年のうちに20回、地球の磁場が逆転した。
 磁場が弱くなると、地球に降り注ぐ高エネルギー粒子の数が増加する。オゾン層を減少させ、地表に降り注ぐ紫外線量を増加させる。
 鉄は、いったいどこから来たのか?
そのほとんどが、地球の誕生する46億年前よりはるか昔に、太陽の10倍以上の大きな恒星の内部でつくられ、その星が死ぬ瞬間の大爆発(超新星爆発)によって、宇宙空間にまき散らされたものである。なんとなんと、そうなんですか……。
 鉄は、すべての元素のなかでもっとも安定した原子核を持つ。鉄よりも重い元素はできない。宇宙全体において、鉄は得意な存在である。
 地球を構成している元素の中で、最大の重量比をもつものは鉄である。地球の重量の3分の1は鉄である。重さで言うと、地球は「鉄の惑星」である。
 現在、地球全体でいうと、毎年10億トン以上の粗鋼が生産されている。全世界の金属生産量の9割以上を占める。鉄は、現代文明の基礎を築いている。
 純粋な鉄は比較的軟らかい。炭素成分を少し加えると、鋼鉄という強固な物質へと変わる。
 今でこそ、動物が呼吸するうえで必須の酸素も、かつてはその高い反応性のため細胞を壊す有害な成分だった。しかし、酸素の高い反応性は、うまく利用すると、有機物からエネルギーを非常に効率的に取り出せる。このことに気がついた原核生物がいた。有害な酸素が、有益な成分に変わった瞬間である。
 多様な原子核の中で、鉄はもっとも安定な原子核を持つ。この性質によって、鉄は校正での元素合成の最終到達地点となること、そのために宇宙で非常に存在度の高い元素になることが決定づけられた。ただ、なぜ鉄がもとも安定な原子核であるのか、現代物理学は解明できていない。
 いやあ、鉄って、まだまだわからないところもある不思議で大切な存在なんですね。面白い本でした。
 熊野古道では中辺道(なかべみち)を少しだけ歩きました。わたらぜ温泉のささゆりに泊まり、翌朝8時20分にバスで出発し、三元茶屋跡から熊野本宮大社までの下りのコース2キロを1時間ほどかけて歩きました。ガイド氏(かたりべ)が同伴して、各所で説明がつきますので、時間がかかったのです。静かな細い山道を歩くのは気持ちの良いものです。
 三軒茶屋というのは、昔はアリの古道というように参詣する民衆がアリの行列のように切れ目なく続いていたということです。なるほど、そのように描かれている絵を見ました。日本人は昔から旅行が大好きだったのですね。
(2009年8月刊。1200円+税)

さとし、わかるか

カテゴリー:人間

著者 福島 令子、 出版 朝日新聞出版
 なんとなんと、すごい母と子がいたものです。感嘆、感心、感激の本です。
 目が見えないだけでも大変なのに、耳も聞こえなくなるのです。それも9歳のときに失明し、18歳で失聴したというのです。まさに思春期のときに、そんな重大な身体的ハンデを負いながら、明るくやんちゃに育っていったのです。その母親って、どんな人(女性)だろうと知りたくなりますよね。テレビでも出演されているようですが、私はテレビを見ませんので、分かりません。本の表紙にちらっと出ている顔は、失礼ながら、どこにでもいそうなフツーのおばさんです。だけど、この本を読むと、とてもとてもフツーのおばさんがここまでできるとは思えません。
 東大教授になった三男もすごいと思いますが、その上のお兄ちゃんたちも偉いと思いましたね、私は。だって、母親は障害を持つ三男につきっきりなんですよ。お父ちゃんは、残る二人のお兄ちゃんにスパルタ式で厳しく接していた気配です。よくもグレなかったものですね、二人とも……。障害を持つ弟の我がままにひたすら耐え忍んだ兄貴の辛さが、ちらっと出てくるところが愛敬です。
 どんどんと目が見えなくなり、ついに失明する。次第に耳が聞こえなくなっていき、ついにまったく音が聞こえなくなる。いやあ、とんでもないことですね。
 実は、うちの息子も思春期失明症にかかって、しばらく視力を失ったことがありました(今は見えています)。そのとき、関西のK病院に入院しました。この本に出てくるO病院と同じ療法です。完全生菜食療法をするのです。生体の本来持つ生命力を活性化させる療法なのです。今でも私は、これを決してインチキ療法だとは思いません。ただ、万能ではないことも確かなのです。著者の子についても、失明も失聴も防ぐことはできませんでした。
 失明し、失聴した我が子との会話は、偶然の機会にお互いの両手をとって、指点字で始まりました。
 智(さとし)の両手をとった。手の甲を上にして、前に出させた両手の人差し指から薬指までの6本の指先を点字タイプライターの6つのキーに見立てることにした。
 6つの点に対応させて、智の指をポンポンとたたいてみた。智の左手の人差し指、中指、薬指。右手の人差し指、中指、薬指。それが点字の1の点から6の点だ。
 そして、ゆっくり、はっきりと、智の指に点字の組み合わせでタッチした。向かい合っているから、じつは、智にとって左右逆の組み合わせになるけれど、それを考える余裕はなかった。
「さとし、わかるか」
 聡は即座に、「ああ、分かるで」と答えた。
 いやあ、泣けるシーンですよね。ヘレン・ケラーがサリヴァン先生との出会いで「ウォーター」を学ぶシーンに匹敵します。
 声をつかわなくても、言葉が智に通じた。私は有頂天になった。
 著者の夫は、まだ若いうちにくも膜下出血で倒れ、ついに亡くなってしまいました。教員でしたから、過労によるものかと想像します。惜しかったですね。
 現役の東大教授として活躍中の、福島智氏の母親がつづる子育ての記録です。感動の日々が語られています。ああ、お互い、それでも生きていて良かったと実感できます。
 
(2009年5月刊。1600円+税)

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