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カテゴリー: アメリカ

ケインとアベル

カテゴリー:アメリカ

著者  ジェフリー・アーチャー 、 出版  新潮文庫
イギリス人の著者が20世紀前半のアメリカ社会の断面を見事に小説化して描いています。驚嘆しながら、手に汗を握る思いで、上下2冊の文庫本を息を呑みつつ、頁をめくるのももどかしい思いで読みすすめていきました。たいした筆力です。
 なにしろ、ポーランド社会から始まり、収容所の厳しい生活、アメリカへの移民、アメリカの銀行とホテル業界の内幕、これらがこと細かく描写されていくのです。その迫力にはただただ圧倒されてしまいます。
そのうえで、若い男女の物語が変貌を遂げ、新たな恋愛物語に変転しながら結実していくのです。そのスケールの大きさには息を呑まざるをえません。
歴史をよく調べ、経済構造を頭にたたきこみつつ、やはりストーリー展開の素晴らしさです。
 気分転換にはもってこいの一冊です。旅行のおともにいかがでしょうか・・・。
(2008年8月刊。705円+税)

アメリカの危ないロイヤーたち

カテゴリー:アメリカ / 司法

著者  リチャード・ズィトリンほか 、 出版  現代人文社
弁護士という職業は、日本もアメリカの共通するところが大きいと思います。ところが、アメリカでは弁護士の社会的評価がとても低いというのです。といっても、オバマもクリントンもヒラリーも、みんな弁護士なんですけれど・・・。
アメリカ人は、ずっと永く、弁護士を疑いと批判の眼で見てきた。150年前、エイブルラハム・リンカーンは、「一般の人が抱いている、弁護士はすべからく不正直だという考え」に言及した。多くの人は、典型的なアメリカの弁護士とは、不道徳であるか、あるいは道徳に無頓着であると考えている。
 弁護士は、しばしば依頼者の視点から事実をねじ曲げてみる。公衆は、法制度を正義に奉仕するためのものであると期待するのに対し、弁護士は「誰にとっての正義か?」と問い、何よりも依頼者の視点からみた正義を実現するという自らの義務を指摘する。
日本の弁護士の一人として、これは違うぞと私は叫びたくなります。
 弁護士は、決して故意に裁判所に対する偽もう行為に関与することがあってはならない。しかし、刑事弁護人は、その承認が真実を語っていると知っているときでも、「検察側の主張する真実をテストするために利用可能な合法的な手段すべて」を使用しなければならない。
 1960年代初め、50人以上の弁護士を擁する法律事務所は、ほんの数えるほどだった。30年後、このサイズの法律事務所は500をこえた。1978年には、300人をこえる弁護士を擁するアメリカの法律事務所は一つであり、200人以上は15ほどだった。1996年までに、200人の弁護士を擁する法律事務所は161となった。
 1970年代の後半、上位100の大規模法律事務所の多くは単一の大都市に単一の事務所を構えていた。そして、同じ州のどこかに臨時の出先機関をもっていた。1997年には、最大のベイヤー・アンド・マッケンジー法律事務所は国内に9ヶ所の事務所を構え、海外にはサウジアラビア、ベトナムからカザフスタンまで47の事務所をもつに至った。他の30の法律事務所は500人をこえる弁護士を擁し、平均して、全世界に12の事務所を構えていた。
 スラップ訴訟とは、公衆の参加を断念させるために戦略敵に提起される訴訟のこと。この訴訟は大企業によって提起され、十分に資力のない人を相手どって巨額の賠償を請求する。この訴訟は被告側の防御費用が多額になるように考案される。この訴訟は提起する側の利益を想定していない。この種の訴訟の80~85%は結果として敗訴する。しかし、多くのケースで、被告側が費やす時間と費用の点で、そして被告と第三者の言論の自由に及ぼす萎縮効果によって損害は生じている。
 日本でも、かつての巨大サラ金の武富士がフリージャーナリスト相手に起こした訴訟がこれにあたりますね。
 アメリカでもっとも裕福な法律事務所の一つである370人の弁護士を擁するクラバスは、パートナー弁護士の一人あたりの年間総売上は250万ドル以上であり、パートナー弁護士一人あたりの平均利益は100万ドルを超えている。また、250人の弁護士を擁するウィルマー・カトラーでは、パートナー弁護士一人あたりの総売上は100万ドル以上であり、パートナー弁護士一人あたりの実利益はその半分の50万ドルである。25歳の新人弁護士でも、年俸8万5000ドル。初任給7万500ドルの弁護士の労働について、1時間あたる150ドルを依頼者に請求するので、事務所にとって30万ドルの価値がある。
 年間1800時間という請求可能時間のノルマを達成するためには、自分自身を殺さなければならない。
 アメリカの弁護士の10%、8万人から10万人が企業のなかで働いている。
 最高の法廷弁護士は誰でも、役者として法廷では、少しばかりの人間性を示すのが重要な意味をもつことを意識している。法廷弁護士の多くが、服装が弁護士像を形づくることに同意する。
カーター大統領は、1978年にこう言ったそうです。
 弁護士の9割は人民の1割に奉仕している、私たちはあまりに多くの弁護士をかかえながら、十分に弁護の恩恵を受けていない。ロースクールは、アメリカの大学にとって利益のあがる事業体である。
 カネと権力のすべてを手中に収めながら、弁護士自身は、今日ほど、その専門職に満足していない時代はない。
 こんなアメリカ、そして弁護士にはなりたくないと思った本でした。
(2012年7月刊。2200円+税)

なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか

カテゴリー:アメリカ

著者  ロメオ・ダレール 、 出版  風行社
 著者はカナダの軍人として、ルワンダに駐留していました。
 運命に委ねられ、なぶり殺しにされた何十万ものルワンダの人々に捧ぐ。
 この本のはじめに書かれている言葉です。なるほど、目の前で無数の罪なき人々が当局に煽動されて暴徒化した人々によって虐殺されていくとき、精神がおかしくならないはずはないでしょうね。
 そして、著者はこの本を「私の命令に従って平和と人間性のために勇敢に死んでいった15人の国連軍兵士に捧」げています。著者はルワンダから帰国したあと、外傷後ストレス障害(PTSD)にかかったのです。
 1994年にルワンダに起きたこと。裏切り、失敗、愚直、無関心、憎悪、ジェノサイド、戦争、非人間性、そして悪に関する物語だ。
 カナダに帰国してから気力、精気を取り戻すまで7年も要した。
 アメリカ、フランス、イギリスなどの国は何もせず、すべてが起こるのをただ傍観していた。部隊を引き上げる、そもそも最初からまったく部隊を派遣しなかった。
 ラジオは、聴衆にツチ族を殺すように呼びかけ、穏健派のフツ族の死を求め、彼らを裏切り者と呼んだ。この声明は、人気歌手の録音された音楽とともに流された。その音楽は「フツが嫌いだ。フツは嫌いだ。ツチを蛇だと思っていないフツは嫌いだ」といった歌詞で、暴力を煽りたてるものだった。
 マスコミを握って煽動すると、フツーの人々が鉈(マチェーテ)をもって人を簡単に殺すようになるのですね・・・。これは日本だって決して他人事(ひとごと)ではありません。
 マスコミの一致した消費税増税、TPP参加、比例定数削減キャンペーンは本質的には同じようなものではありませんか。生活保護バッシングにしても同じです。怖いです。
 どの国連機関のある敷地にも、恐怖にかられたルワンダ人が何千人も囚われていた。虐殺は自然発生的な行為ではなかった。それは、軍・憲兵隊、インテラハムウェ、そして公務員を巻き込んで周到に実行されたものだった。
 ルワンダで金もうけし、多くのルワンダ人を召使いや労働者として雇ってきた白人が、彼らを見捨てた。そこには自己利益と自己保存があった。
 アメリカ、フランス、イギリスに率いられたこの世界がルワンダでのジェノサイドに手を貸し、そそのかした。いくら現金と援助を積んでも、決してこれらの国の手に染みついたルワンダの血は落とせない。
 これは痛切な叫びです。厳しく「人道的」大国を糾弾しています。ルワンダに天然資源があったら、これらの国も、もっと真剣に軍隊を派遣していたことでしょう・・・。
 アメリカ(ペンタゴン)の判断は、ジェノサイドによって、1日に8000人から1万人のルワンダ人が殺されていても、その生命には高い燃料代を払ったり、ルワンダの電波を妨害したりするほどの価値はないということだ。
死者の数は4月来に20万人と見積もられていたのが、5月には50万人となり、6月末には80万人に達した。
 ルワンダのネズミは今やテリアと同じサイズにまで肥大化した。ネズミは無尽蔵に供給される人間を食べたり、信じられないサイズにまで成長したのだ。
 飢えた子どもたちは生のトウモロコシを食べた。ごつごつした粒は、子どもたちの消化器官を傷つけ、内出血を起こした。子どもたちは、それが原因で腸から出血して死んでいった。
 誰もがジェノサイドで誰かを亡くしていた。紛争前の人口の10%近くが100日間に殺害された。少なくとも1人も家族を失わなかった家族はほとんどなかった。ほとんどの家族がもっと多くの人を失った。
ルワンダで生き残った90%の子どもたちは、この期間に自分の知っている人間が暴力的な死を迎えるのを目の当たりにしたと推定されている。
 ルワンダの悲劇をくりかえしてはならないと思いました。それにしてもアメリカ、イギリス、フランスの御都合主義な「人道支援」には、言うべき言葉もありません。
          (2012年8月刊。2100円+税)

三重スパイ

カテゴリー:アメリカ

著者  ジョビー・ウォリック 、 出版  太田出版
アメリカ映画『ゼロ・ダーク・サーティー』をみました。深夜0時半を意味する言葉です。アメリカ軍の特殊部隊ネイビーシールズが2011年5月1日、パキスタンに潜んでいたビン・ラディン邸宅を急襲し、ビン・ラディンを殺害した事件が映画化されたというので、さっそくみてきました。
 アメリカという国は、本当に野蛮な国だとつくづく思います。よその国の主権を踏みにじっても一向に平気なのです。しかし、それにしてもアメリカのすごいところは、いわばアメリカの恥部が堂々と映画化されるところです。CIAの女性調査官がCIAから裏切られ、CIAとたたかう話も映画化されました(『フェア・ゲーム』)し、FBIの捜査官が実はソ連のスパイをしていた(『アメリカを売った男』)というのも映画になりました。
 それはともかく、この『ゼロ・ダーク・サーティー』のなかに、2009年12月30日、アフガニスタンのCIA基地でアルカイダのヨルダン人医師の自爆テロによってCIA要員7人が即死するというシーンが登場します。この事件はオバマ大統領にも大変なショックを与えたようで、この事件の後は無人機を活用するように変えたといいます。
この映画では、ビン・ラディンの所在をCIAが追いかけて10年間、何の成果も上げられなかった苦労がずっと紹介されています。アルカイダの人間を捕まえて拷問にかけるのですが、しまいには拷問したCIA要員のほうが心を病んでしまうのです。
パキスタンやアフガニスタンの町の様子が紹介されます。たくさんの人々であふれかえって活気のある町です。軍隊と兵器だけでアメリカが勝てるわけはないと確信させる映像です。無人機をつかってアルカイダの幹部を殺害したり、ビン・ラディンを殺しても、第2、第3どころか、第100、第1000、どんどん次から次に代わりの活動家が生まれることでしょう。人を殺したら、その反作用があることを一刻も早くアメリカは悟るべきだと思います。
 2時間半という長い上映時間でしたが、最後まで身を固くしてスクリーンに釘付けになりました。だから、肩がこりました。
12月30日、パキスタンのCIA基地の司令官は45歳の女性だった。それにCIA屈指のターゲッターが一緒にいた。ターゲッターとは、テロリストの隠れ場所を発見し、追跡するエキスパートで、CIA暗殺部隊に目ざすべき場所を教えるのが仕事だ。
CIAのパネッタ長官はジレンマに陥っていた。CIAのミサイルは標的を片づけていくが、それだけでは十分ではない。司令官が殺されれば、また代わりが現れる。しばしば前の者より若く、さらに過激な思想を持ち、世界に打って出る野心を燃やす司令官が登場する。アルカイダは、そうした状況に適応している。地域のさまざまな部族組織のなかでアルカイダに従おうとする者たちがネットワークを広げていく。その一方で、アルカイダの頂点に立つ指導者は、安全な隠れ場所にいて、全体の戦略を立てる。
 アフガニスタンには、CIAの資金で創設された対テロ追跡の特殊部隊がある。訓練はCIAの特殊活動部が担当する。活動領域はアフガニスタンの東半分で、兵士の数は3000人。パキスタン生まれとアフガニスタン生まれのパシュトン人の混成国なので、部族の衣装を着て国境を越えて情報収集、テロリスト容疑者の拘束・暗殺をする。
 この本で自爆テロを敢行したヨルダン人医師はCIAのスパイになったふりをしていたようです。アルカイダのほうが、この医師をCIAのスパイとしてアルカイダの上層部に食いこんでいると仕掛けていたというのですから、何事も一筋縄ではいかないということです。
 CIA基地にやって来て、アルカイダのことを教えてくれるものと思ってCIA幹部たちが16人も出迎え、7人が即死したのでした。覚悟の自爆では防ぎようもありません。
 まさしく泥沼の世界です。憎しみが憎しみを生んで、報復の連鎖が続いています。
ペシャワールでがんばっている中村悟医師のような取り組みこそ応援したいものだと思いました。
(2012年12月刊。2300円+税)

ロボット兵士の戦争

カテゴリー:アメリカ

著者  P・W・シンガー 、 出版  NHK出版
戦場でアメリカ人が殺されないようにロボットを使い、無人飛行機を操作する。その結果、どうなるか。本当に「紛争」は解決するのだろうか?
この本を読むと、実は、その逆になる危険、つまりアメリカ本土での9.11並みの無差別大量テロを誘発する危険が高まるということが分かります。
 無人技術の使用は、大衆のアイデンティティーにもとづく政治的結束に拍車をかける。敵は機械を使って離れたところから戦っている。それに抵抗することは、自分の勇敢さ、人間らしさを示すことになる。不屈が新たなスローガンになっている。負けても反撃し続けろとね。
 普通の人間は、無人システムをイスラエル人とアメリカ人はやはり冷酷で残酷だというしるしと見なしている。自分たちと戦わせるために機械を送り込んでくる臆病者だと考えてもいる。男らしく戦おうとせず、戦うのを怖がっている。だから、自分たちが勝つには、イスラエルやアメリカの兵士を何人か殺すだけでいい。
 無人システムの使用が増大するほど、テロリストにアメリカ本土を攻撃する動機を与えることになる。
イラクの武装勢力は、自分たちの勢力地域を守ろうとしているのであって、占領者とみなす部隊に狙いを定めている。戦場で敵の兵士を殺すことができなければ、どこかよそで殺さざるをえない。戦場のアメリカ兵を減らすほど、武装勢力をアメリカ本土への攻撃に駆り立てるだろう。
 向こうが、こんなまったく不平等なルールでやるのなら、場所がアメリカであれ、こっちもこっちのルールでやらせてもらおう。
 アメリカが無人システムの使用を増やせば、テロリストはパニックを起こさせ危害を加えるため、はるかに邪悪な方法を見つけるだろう。
 いやはや、これは本当に怖いことですよ。アメリカ本土について遠隔操作で「テロリスト」親玉を暗殺して喜んでいると、実は身近に「テロリスト」が忍び寄っていることになるだろうというのですから・・・。思わずブルブル震えてしまう現実です。
 イラク戦争は、インターネットから戦闘の映像をダウンロードできる、まさしく最初の戦争だった。2007年の時点でイラクでの戦闘を撮影したビデオがユーチューブで流れたものだけで7000件をこえていた。
 無人システムによる誤認は、民間人の生命を犠牲にするだけでなく、味方の部隊に対しても起こりうる。
 敵からの距離が物理的にも気持ちのうえでも大きいほど彼らを殺しやすくなる。近くにいる兵士や直接戦っている兵士のほうが、殺すことにはるかに抵抗を示すが、距離が増えると、殺すことへの抵抗は、はるかに少なくなる。
 掃除機ロボット「ルンバ」は、あいロボットがアメリカ空軍用に設計したロボット「フェッチ」を進化させたもの。「フェッチ」はクラスター爆弾を取り付けていた。
あいロボットの売り上げと収益は5年間で10倍に増えた。2007年には7000点で300万台をこえるルンバが売れた。戦争用ロボット事業は年間60%も成長して、2008年には国防総省との契約額が2億8600万ドルに達し、3000台のマシンを供給した。あいロボットの軍事ビジネスは売上の3分の1を占める。
 小型戦車のような外観で、キャタピラーがついて、重さ45キロのタロンは最高時速9キロ、5時間も持続できる。2008年、イラクの戦場に2000台のタロンが活動した。イラクの地上では、22種類のロボットシステムが活動していた。
重さ510キロのプレデターは1機2450万ドル。滞空時間2400時間で、7900メートル上空を飛行できる。3000メートル上空から車のナンバープレートが読める。操縦する人間はアメリカにいて、アフガニスタン上空のプレデターを操縦する。プレデターは敵を発見すると、攻撃を指揮することができる。
 2007年にはプレデターが180機いて、プレデターが1年間にこなした任務は2000件をこえる。240件の奇襲攻撃を行った。
ロボット兵士は人間に代わるものではありえないことがよくよく分かる本でした。アメリカの軍需産業のためにたくさんの人々が殺されている現実を一刻も早くなくしたいものです。
(2010年10月刊。3400円+税)

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