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カテゴリー: アメリカ

殺す理由

カテゴリー:アメリカ

著者  リチャード・E・ルーベンスタイン 、 出版  紀伊國屋書店
なぜ、アメリカ人は戦争を選ぶのか。このようなサブタイトルのついた本です。
一見すると、人の良さそうなアメリカ人ですが、昔も今も、戦争が大好きな国です。ということは、大人の男は人を殺したことがある人が少なくないということも意味します。そこが、日本人とは決定的に異なります。世界の憲兵をきどって、自国の利益のためには侵略戦争だって平気です。ところが、自国の利益にならないと思えば、「ルワンダの悲劇」のような事態のときには、見て見ぬふりをして動きません。まことに身勝手な国です。そして、日本は戦後ずっと、そんなアメリカの言いなりに動いてきました。本当に情けない話です。
訳者は、あとがきで次のように指摘していますが、まったく同感です。
 近年のアメリカは、経済を浮揚させておくために軍産複合体を維持・拡大し、圧倒的な軍事力を容赦なく使い、「テロに対する戦争」という言葉によって、あらゆる異論や反論を封じこめようとしている。
 そして、この本の著者の結論を、訳者は次のように総括しています。
 本来なら実利にさといはずのアメリカ人が戦争を容認してきたのは、戦争が道徳的に正当化されると納得したときに戦争を選んでいる。そして、道徳的に正しいか否かの判断に、アメリカの市民宗教が大きな影響を及ぼしている。
 では、本文を紹介してみます。
アメリカは、大きな戦争を10回遂行したが、これにはアメリカの市民宗教が大きな影響を及ぼしている。アメリカは先住民諸部族に18回もの大規模な軍事攻撃をしかけ、25回以上も諸外国に軍事介入した。第二次世界大戦以降だけでも、アメリカが本格的に武力を行使したのは150回をこえる。 これほど好戦的な記録をもった近代国家は他に例をみない。
しかも、アメリカのペースは加速している。1950年代以降、アメリカは20年以上もの歳月を戦争に費やしてきた。朝鮮、インドシナ、イラク、アフガニスタンでの軍事戦争によって、10万人以上のアメリカ国民が戦死しその5倍以上が負傷した。そして、数百万人もの外国人が生命を奪われた。
 アメリカ史を特徴づけるものでありながら見落とされやすいのは、戦争が提唱されるたびに非常に強硬な反戦論が生じること、そして、戦争が始まると、この反戦論は弱まり、消えてしまうこと。
 うへーん、そうなんですか・・・。それは驚きですね、たしかに。
 アメリカ人が生まれつき攻撃的だという議論は、戦争が提唱されるたびに、多くの国民が異を唱え、反戦運動が広まっている事実に矛盾する。そして、戦争がはじまると反戦論は弱まり、戦争がうまく行かないと反戦論の勢いは盛り返す。
 9.11の前、アメリカ政府代表はタリバン指導部とビン・ラディンについて何度も協議していた。しかし、このことはアメリカ国民に知らされることはなかった。
 イラクのサダムがイラクで絶対的な権力を握って行使するのをアメリカ政府は支援していた。イランに侵攻し、クルド人などに化学兵器を使ったとき、サダムは、アメリカの信頼できる同盟者だった。サダムは強硬な反共主義者だったので、CIAは資金その他の援助をふんだんにサダムに与えた。
 サダムが数千人ものイラクの共産主義者を処刑したことは、アメリカのスポンサーたちを喜ばせた。そして、1980年にサダムがイラン・イラク戦争を始めたことこそ、アメリカの大義にもっとも貴重な貢献をした。
 今日、アメリカで徴兵制の復活を提案しているのは、議会内の反戦派メンバーである。徴兵制が復活すれば、イラクやアフガニスタンのような国々でのアメリカの軍事行動は再考を余儀なくされるからという考えによる。
 戦争が大好きなアメリカについて、深く分析した面白い本です。
(2013年4月刊。2500円+税)

ビッグデータの正体

カテゴリー:アメリカ

著者  ビクター・マイヤー・ショーベルガー 、 出版  講談社
この本を読むと、ビッグデータが世界を変えるかどうかはともかくとして、日頃の日常生活を私たちの知らないところで大きく変えようとするものだということは分かります。とんでもない社会に生きているのですね、私たちって・・・。なにしろ、私たちが何をしたかが知られているというだけでなく、何をしようとしているか、何をしたいのかまで機械的に高い精度で読みとられているというのです。
 グーグルは2009年、アメリカの冬のインフルエンザの流行を予測し、国内どころか週単位までの流行まで特定した。
 グーグルでは全世界で1日に30億件以上の検索が実行されている。そのうち、上位500万件の言葉を抽出し、インフルエンザとの相関関係を調べた。データ量、処理能力、統計処理のノウハウでグーグルは群を抜いていた。
 データ利用に関する知識が変化した。昔は、データは何のかわりばえもしない陳腐な存在と考えられていた。ところが、その常識は崩れ去った。データは、ビジネスの素材に生まれ変わり、重要な経済資源として、新たな経済価値の創出に活用されていることになった。
 フェイスブックでは、1時間に新規アップロードされる写真は1000万枚をこえる。「いいね!」ボタンのクリックやコメント投稿は1日に30億回。
 グーグルが運営するユーチューブは月間利用者数が8億人。ツイッターのつぶやきは、年200%の勢いで増加しており、2012年には1日に4億ツイートに達した。
 量が変わることで、本質も変わる。ビッグデータは、限りなくすべてのデータを扱う。
 量さえあれば、精度は重要ではない。重要なのは、理由ではなく結論である。
 固定電話を使った選挙世論調査はミスが大きい。ケータイしかもっていない有権者、これは若い世代やリベラル派に多い、が対象になっていない。だから、標本の無作為性が失われている。コミュニティーの外部の接点をもつ人がいなくなると、残った人々は、まるでコミュニティーが崩壊してしまったように、突如として求心力を失う。
 集団では外部の人々とつながりをもつ人間のほうが盛り上げ役になっている。つまり、集団や社会の中では、多様性がいかに大切かということ。
 ビッグデータの世界に脚を踏み入れるためには、正確はメリットだという考え方を改める必要がある。
 ビッグデータの恐ろしさは、次のような記述にもあらわれています。
 84ヶ国240万人のユーザーが2年間に投稿したツイッター5億9000万件を分析してみた。すると、1日のあいだに人々の気分が変化するパターンも、1週間に変化するパターンも、文化圏の違いに関係なく似ていることが判明した。今では、人々の気分までデータ化している。
 この本は、ケータイ使用によるガンの発生リスクの増加は認められなかった、としています。本当に安全なのでしょうか。
 ビッグデータを上手に利用している企業がすでに生まれている事実にも驚かされました。
 大企業だけでなく、小企業にもビッグデータは驚くようなチャンスをもたらしている。ビッグデータは、業界を超大手と小規模に2分してしまう。中堅どころには厳しい向かい風だ。
今や東ドイツの秘密警察(シュタージ)も舌を巻くほどの個人情報が収集され、蓄積されている。支払いにクレジットカードを使った時点で、あるいはケータイ電話で話をした時点で、私たちの行動は常に監視されている。
そうなんですね、ちっとも知りませんでした。この網の目から逃れるのは、とても難しいことです。だったら、現実を直視しなければいけませんよね。奥の深い本でした。
(2013年6月刊。1800円+税)

ある奴隷少女に起こった出来事

カテゴリー:アメリカ

著者  ハリエット・アン・ジェイコブズ 、 出版  大和書房
アメリカで黒人奴隷制度が続いていたときの実話です。
 セクハラする白人の主人の手から逃れるため、別の白人男性の愛人となり、2人の子をもうけ、さらには奴隷主の家からひそかに脱出したあと、実はすぐ近くの知人の家の屋根裏部屋に7年間も潜伏していたのでした。7年後、ようやく北部へ逃れました。しかし、そこにも南部から追っ手が来て、気が安まることはありません。19世紀前半の話です。
 7年間の潜伏といっても22歳から29歳という、青春まっただなかを暗くて狭いところに閉じこもって生活していたわけです。周囲の支援体制があったからこそなしえたことでしょうが、それにしてもやっぱり本人の意思の強さには脱帽ですよね。
晴れて自由の身になったあと、南部に戻って、解放奴隷のための学校を設立したり活発な黒人活動家として過ごし、84歳に亡くなりました。
 ところで、この本は自費出版で世に出たものの、120年間も忘れられていたのが、1987年に再発見され、しかも事実に非常に忠実な自伝であることが証明されて、アメリカでベストセラーになったのでした。
2人の幼い子どもと、すぐ身近にいながら別々に生活する日々を7年間も続けたなんて、いやはや奴隷制度というのは、本当に非人間的なものですね。
 ただ、奴隷制度を利用する白人ばかりではなかったことが、少しは救いです。でも、結局、映画『リンカーン』にあったように南北戦争に突入してしまうわけです。
理性が暴力を打ち負かすには、多大なる犠牲が必要なのですね。人間社会の不条理を痛感します。読みやすい訳本になっています。
(2013年7月刊。1700円+税)

アメリカ黒人の歴史

カテゴリー:アメリカ

著者  上杉 忍 、 出版  中公新書
2010年にアメリカの全人口3億9000万人のうち白人は2億人近く(64%)、ヒスパニック系は5000万人(16%)、黒人は3900万人(13%)、アジア系は1500万人(5%)となっている。
ヒスパニック系が黒人を上まわったのは1990年の調査からだった。しかも、統計に出てこないヒスパニック系住民(不法入国者)が1000万人いると推測されている。
オバマ大統領はアフリカから連れてこられた黒人奴隷の子孫ではない。ケニア出身の黒人留学生とカンザス出身の白人女性との間に生まれ、継父とともにインドネシアで育ち、思春期はハワイの白人社会の中で過ごした。オバマは黒人社会で生活したことがなかった。そして、大学を卒業してから、シカゴの黒人コミュニティーで地域活動を開始した。
 いま、アメリカでは貧しい人を中心とする犯罪経歴者500万人は選挙権を剥奪されていて、200万人以上の受刑者は投票できない。
 アメリカの「独立宣言」を起草したジェファーソンは数百人もの奴隷を所有していた。そして、ほとんどの奴隷を解放することがなかった。黒人は生まれつき劣った存在であることを「科学的」に論証した。
 合衆国憲法は、奴隷制と奴隷所有階級の支配権を保障したものだった。1860年のリンカーン大統領のまえの大統領の大半は奴隷主だった。
奴隷主は、家族もちの奴隷のほうが従順であることを知っていたから、奴隷財産をふやすためにも、奴隷の結婚を奨励した。
 奴隷は、自らの意志で相手を選んで結婚することが多く、そこには奴隷の主体性が表れた。
奴隷たちは、さまざまな形で抵抗した。主人が見分けにくい抵抗は「ふり」をすることだった。愚純さを装ったり、主人を喜ばせる幸せな表情を装ったり・・・。
 南北戦争の前までに「地下鉄道」などを通じて、南部の奴隷7~10万人が北部に脱出したと推定されている。
 1861年、南北戦争が始まった。南部の利点は、職業軍人の多くが南部出身で、早くから準備を進めていたこと、イギリスの支援を期待できること。しかし、南部は海外からの補給なしには生活物資や武器の調達が困難だったし、人口の38%を奴隷が占めるという深刻な弱点があった。北部の連邦軍は、途中から黒人を受け入れはじめ、合計40万人が連邦軍に入った。
奴隷解放宣言は、南部社会の基盤を揺さぶり、イギリスの介入を阻止することを狙ったものだった。
 イギリスは既に植民地奴隷制を廃止しており、奴隷制擁護を掲げる南部を支持するのは世論の反発が予測された。しかも、戦況は南部に有利に動く気配がなかった。
 1900年ころ、南部で白人支配層は裁判所を握り、罰せられることを心配せずに反抗的な黒人に暴力を振るった。「人種エチケット」を守らない黒人はリンチの対象となった。
 1889年から1932年までに記録されたリンチ被害者は3745人で、その処刑儀式には白人の指導的人物が加わっていた。特別列車を仕立ててやった2000人の群衆による公開リンチがあった(1899年、ジョージア州)。
 リンチは、白人共同体を白人男性のもとに結束させる儀式でもあった。
1920年代に労働運動が厳しく弾圧され、1921年に500万人だった組合員数は1933年に300万人以下になった。しかし、大恐慌のもとで回顧反対運動やストライキを闘い、反撃体制に入った。そして、ニューディール政策のもとで、労働者の団結権と労働組合の団体交渉権が認められると、労働者は大挙して労働組合に入った。
 CIOには黒人や女性を受け入れる組合が多く、1938年には、AFLよりも多い370万人を組織していた。CIOの運動には、当時、勢力を拡大しつつあった共産党が参加し、彼らの戦闘的反人種主義は黒人労働者をひきつけ、CIOの中に反人種差別的政策をもちこんだ。
 第二次大戦中、100万人の黒人が軍隊に入り、海兵隊や沿岸警備隊にも黒人は配置された。黒人にとって、軍隊での生活の法が一般社会での生活よりもましだった。衣食住を確保したうえ、技術や知識も獲得できた。そのうえ、賃金も定期的に支給された。多くの黒人にとって、人生初めての安定した生活だった。
 黒人新聞は、黒人兵に対する不当な取り扱いを曝露し、糾弾した。軍隊での職業訓練や教育、そして戦闘経験を通じて、黒人はかつてなく誇り高くなった。
アメリカの「監獄通過人口」は年間1000万人。監獄内での暴力的支配関係の形成があり、ギャング組織メンバーを増やして一般社会に流出している。監獄内で暴力化することにより、再び監獄に戻る率が高まっている。
 人口に応じて割り当てられる国からの補助金について囚人には選挙権がないので、白人が人口に不釣りあいに大きな代表権を得る。そして、彼らは、厳罰化を主張する候補に投票し、厳罰主義が政治の世界で大きな影響力をもつようになる。
 カリフォルニア州では、刑務所予算が州立大学予算を上回って久しい。
 大量収監は、「社会を安全にする」というよりは、家庭崩壊を推進し、社会を腐朽させ、貧しい人々から政治的発言権を奪い、貧しい地域を一生さびれさせ、社会をより危険にさせている。しかし、政治家がこの問題に立ち向かうにはあまりに危険であり、政治的な展望もない。
 アメリカにおける黒人の苦しく厳しい課題の一端を知ることができました。
(2013年3月刊。820円+税)

(株)貧困大国アメリカ

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著者  堤 未果 、 出版  岩波新書
アメリカの低所得者層に提供するシステムは、前は「フードスタンプ」と呼ばれていたが、2008年10月からSNAPと名称が変わった。クレジットカードのようなカードをSNAP提携店のレジで専用機に通すと、その分が政府から支払われる。このカードでは食品しか買えない。SNAPは月に1度、夜中0時に支給されるため、毎朝、その日は夜中すぎから全米各地の安売りスーパーに受給者があふれる。
 4人家族で年収230万円以下という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は4600万人。うち1600万人が子どもだ。失業率は10%に近い(9.6%)。潜在的失業者も加えると、実質20%の失業率だ。16歳から29歳までの若者の失業率は、2000年の33%が、2010年には45%へ上昇した。経済的に自立できずに、親と同居している若者は600万人いる。
 SNAPの受給者は年々増加している。1970年には国民の50人に1人だったが、今では(2012年)7人に1人、4700万人がSNAPに依存して生活している。
 SNAPへの支出は2011年は、2008年の2倍、7兆5000億円。にもかかわらず、アメリカ政府はSNAPの広告予算を増やして、もっと受給するように呼びかけている。なぜなのか・・・?
 SNAPの利用者が増えると、食品業界の消費が増えるからだ。コカ・コーラ社やウォルマートなどがSNAPから大きな恩恵を受けている。そして、肥満による病気が増えているため製薬業界がうるおっている。さらには、SNAPカード事業を請け負う金融業界もSNAPを後押ししている。
貧困児童は、そうでない子どもより肥満率が7割も高い。そして、子どもの医療費は増えている。
 SNAPのコールセンターの仕事はインドの企業に外注している。
アメリカ人は、安い食べ物という幻想を見せられている。食べ物は、加工すればするほど、店のレジで支払う代金が安くなる分、栄養が減り、添加物の増えた食品で健康を損なったり、大量生産工場による環境破壊という形でツケが回ってくる。低価格神話に目がくらんだ消費者は、それをカバーするための公共料金や医療費の請求者は、結局、消費者が支払わされる。
 1990年代から刑務所産業が急速に花開いた。アメリカの囚人人口は、1970年から2010年までの40年間で772%も増え、今や600万人をこえている。
 民間刑務所ビジネスの代表は2社ある。今では、最低時給17セントの囚人労働者が底辺を支えている。
 堤さんのアメリカ・レポートを読むたびに、日本はアメリカを手本にしてはいけない、アメリカのような国になってはいけないと痛感します。でも、まだまだ多くの日本人がアメリカを崇拝し、少しの疑いもせず信じ込んでいるのですよね。怖いですね・・・。
(2013年6月刊。760円+税)

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