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カテゴリー: アジア

インド

カテゴリー:アジア

著者:堀本武功、出版社:岩波書店
 富豪の数でもインドの躍進はすさまじい。2007年度版の世界長者番付は世界の富豪(10億ドルつまり1200億円以上の資産家)946人をランク付けしているが、インド人はそのうち36人を占め、アジア1位の座を獲得した。日本は、これまでアジア一位を占めてきたが、今回は24人でしかない。日本人トップの孫正義は129位で、インド人のトップは5位。
 海外に印僑は2000万人いる。その1割はアメリカにいる。インド系アメリカ人は 230万人いて、アジア系では、最大の人口増加率にある。
 冷戦期に大学教育を受け、印米関係が最悪だった時期に青春時代を過ごした40歳以上のインド人のインテリには、社会主義への親近感とともに、反米的傾向が顕著だ。
 インド経済の成長にともなって、自動車などの耐久消費財を購入する余裕をもつ中間層が急速に増加している。アメリカの総人口に匹敵する3億人の中間層がいるとアメリカのブッシュ大統領は言ったが、それほどでなくても、2億人には近い。それにしても多いですよね。中間層だけで日本の総人口より多いのですからね。
 インドのITサービス産業は70万人を直接雇用し、250万人に間接的な雇用を提供している。
 インドのITサービス輸出額の7割はアメリカ向けである。
 インドの農村に貧困者が2億人近くもいる。問題は、現在も3億人は読み書きができないということ。うむむ、これって、大問題ですよね。
 しかし、人口増加がインドの強みである。インドでは、24歳以下の人口が全体の半分(54%)を占めている。圧倒的に多い若年層は、豊富な労働力であり、今後とも、インドの長期的な成長を支えていくだろう。
  インドの選挙では、替玉投票、投票済み投票箱の強奪、差し替えなどの不正が日常茶飯事である。候補者殺害事件も起きる。議員の質も低下している。国会議員の4分の1(136人)が犯罪歴をもつ。しかし、そうは言っても、インドは世界最多の有権者をもつ。有権者が6.7億人もいて、世界最大の民主主義国でもある。
 テレビは120チャンネルもある。
 今、世界的に注目されているインドについての基礎的な知識を得られる本です。しかし、それにしても、インドのミタル製鉄がヨーロッパの製鉄会社を吸収合併してしまい、日本の新日鉄まで併合のターゲットになっているというのですから、恐るべき変化です。
(2007年9月刊。1000円+税)

ビルマとミャンマーのあいだ

カテゴリー:アジア

著者:瀬川正仁、出版社:凱風社
 正直言って、この本を読む前には、ちっとも期待していませんでした。また、どうせ観光案内に毛のはえた程度のおじさんの探訪体験記くらいになめてかかっていたのです。ところが、どうして、どうして、ふむふむ、なるほどなるほど、そうだったのか、とうなずきながら興味深く一気に読みすすめてしまいました。
 ビルマには2つの顔がある。一つは、人々をトリコ(虜)にする微笑(ほほえみ)の国・ビルマ、底知れぬ優しさにあふれた顔。もう一つは、軍隊や秘密警察が生活の隅々まで目を光らせている軍事独裁国家・ミャンマーという顔だ。
 ただし、ツァー旅行に参加して、お寺めぐりと川下りだけを楽しんでいるだけでは、この現実は体感できないだろう。この本を読むと、そのことが実感として伝わってきます。
 バーマもミャンマーも、もともとは同じ意味の言葉だ。バーマは口語的で、ミャンマーは文語的だというだけのこと。
 首都だったラングーン(ヤンゴン)は、人口600万人。2006年、突然、首都はネピドーに移された。ヤンゴンは、ビルマ語で戦争の終わりを意味する。1757年、長年の宿敵モン族に打ち勝ってビルマを統一したアラニパヤ王によって名づけられた。
 ラングーン市の中心部に高さ98メートルの黄金の仏塔シュエダゴン・パゴタがある。仏塔の全面に張りめぐらせてある金箔の総量は10トン以上。これは、イギリス統治時代の大英帝国が保有する金の総量を上回っていた。仏塔の上部に埋め込まれているダイヤは2000カラットをこえる。ルビーやサファイヤなどもあり、お金に換算したら、ビルマの全国民を30年間養えるほどの額になる。
 ビルマでは、その昔、1週間を8日ごとに区切る8曜日となっていた。今は、もちろん7曜日。だから、水曜日を午前と午後とで分けている。
 ビルマ人は、とても読書好きだ。慢性の電力不足のため、テレビはあまり普及していないし、政府系のテレビ局しかないからだ。
 ビルマ政府は外国人を絶対に立ち入らせないブラック・エリアのほか、許可をもらって初めて行けるブラウン・エリア、誰でも自由に行けるホワイト・エリアの3つに分けている。
 ビルマでは、輪廻転生(りんねてんしょう)を信じている人が多い。教養ある女性が次のように言った。あの人たち(政府高官)は、前世で立派な行いをしていたのでしょう。だから、現世では、いい暮らしができるのよ。でも、来世はないわね。地獄におちるか、虫けらに生まれるわ。
 かつて覇権を争ったビルマ民族は今3000万人。モン民族はわずかに100万人(ただし、モン民族によると400万人)。
 しかし、ビルマ民族にとって、モン民族は煙たい存在だ。タトン王宮、シュエダゴン・パゴタなど、有名な遺跡は、ほとんどモン民族の文化遺産なのである。
 行ってみたいような、行くのが怖いようなビルマ・ミャンマーです。
(2007年10月刊。2000円+税)

日本軍はフィリピンで何をしたか

カテゴリー:アジア

著者:戦争犠牲者を心に刻む会、出版社:東方出版
 昨年11月にフィリピンに行ったので、読んだ本です。
 アジア、太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻むという課題で開かれた集会(1989年8月)の記録集でもあります。
 戦前にフィリピンで流通していたペソは3億。ところが、日本軍が占領してからは、軍票が大量に発行されたため、65億から110億にも達した。20倍だ。日本軍は物の裏づけのないおもちゃ(ミッキーマウスと呼ばれた)として軍票を発行し、多くのフィリピン人を苦しめた。
 1945年1月31日にアメリカ軍はバタンガス州の海岸に上陸し、翌日には空挺部隊がタガイタイに降下した。
 先日のフィリピン旅行では、このタール湖畔のタガイタイに行きました。高原の高級避暑地だという前宣伝でしたが、まったくそのとおりでした。
 日本軍は敗退するなかで、フィリピン人の大量虐殺を行っていきました。
 「おい田辺、思い切ってやってみせろ。責任はこの藤重がもつ。後世の人間が、世界戦史をひもといたとき、誰しもが肌に泡立つ思いがするような虐殺をやってみせろ」
 口を閉じた藤重兵団長は、田辺大隊長に視線を当てたまま薄く笑った。
 彼らは、戦火のもとで死に、罪を一身に負い、刑場の露と消えた。
 うむむ、ぞくぞくする会話です。肌が粟立ちます。
 フィリピンのレイテ島のパサールに銅製錬所がある。1983年、マルコス大統領の時代、妻イメルダの生まれ故郷に移転して操業を開始した。このパサールには、リン酸アルミナなどの化学コンビナートがあり、その3分の1が日本の勝者による共同出資となっている。そこに、ODAの一貫として地熱発電所がある。この電力は、パサールのコンビナート、日本の技術と出資によるコンビナートのために使われている。日本のODAで建てた発電所を日本の企業のためにつかっている。そして、レイテ島には公害(汚染)を残す。
 実は、私は、その現地に日弁連の視察団長として出かけました。1989年8月のことです。今から20年近く前のことになります。そのレイテ島は今どうなっているのでしょうか。泊まっていたタクロバンは、台風被害にあったりして、大変だったようですが・・・。現地ではカトリックの神父さんに案内してもらいました。お元気でしょうか。
(1990年5月刊。1300円)

インドの衝撃

カテゴリー:アジア

著者:NHKスペシャル取材班、出版社:文藝春秋
 インドで理工系の大学・学部で学ぶ学生が2006年に44万人だったのが、2007年には50万人になった。毎年4〜5万人ずつ増えている。その最高峰は、インド工科大学(IIT)。5000人の定員に対して、受験者は30万人。競争率は60倍。IITには、全体で2万6000人の学生がいる。
 IITの試験は1日。午前中に数学・物理・化学について3時間。午後からまた3時間。合計6時間で、問題は132問。理解力と分析力、そして論理的思考能力が評価される。日本の試験も、このように暗記重視をやめたほうがいいと思うのですが、残念ながら、そんな声はあまり聞けません。
 合格順位にしたがって、IITの、どの学部に進むかを決める権利が与えられる。受験できるのは2回まで。
 入学したら、全員が大学内の寮で生活する。寮の部屋は3畳ほど。テレビも冷蔵庫もない。IITの試験科目は1科目につき3時間。10問あって、すべて記述式で解答する。IITでは暗記は重視されない。
 IITの卒業生は、20年前は80%が海外へ行っていたが、今ではわずか10%のみ。卒業生も、海外からインドへ続々と戻ってきている。
 インド式計算法が日本でも評判になっている。インドは、生徒が算数を大好きになるように工夫した授業をしている。1年生のときから暗算を始め、習慣として身につけさせる。そのため、生徒の机の上には教科書もノートも鉛筆も一切ない。
 インドでは、年収9万ルピー(26万円)以下を貧困層、100万ルピー(290万円)以上を富裕層とみている。そのあいだが中間層となる。この中間層が2001年に2億2000万人(人口の20%)から、2005年に3億7000万人(34%)に急増した。
 行ってみたいインド、でも行ける自信と勇気のないインドのことを少し知ることができました。
(2007年10月刊。1714円+税)

戦争の後に来たもの

カテゴリー:アジア

著者:郡山総一郎、出版社:新日本出版社
 私は、まだカンボジアに行ったことがありません。アンコール・ワット、ポル・ポトなどですっかり有名なカンボジアですが、戦争の傷跡が今も深く残っていることがよく分かる写真集です。現実から目をそらしてはいけない。そんな思いから、しっかり写真を見つめました。
 「希望の川」というタイトルの写真は、ゴミの山と、そこに住み、ゴミをあさる大人と子どもの写真です。集落はゴミの上に建っています。スラムがありますが、そこよりさらに貧しい層のバラックもあるのです。1日中ゴミを集めて得る収入が100円だというのです。屋台で食べると50円かかるというのですから、とても十分な生活はできません。
 私の小学生低学年のころ、「10円うどん」という素うどんを売っている店がありました。私が高校生のとき、大学生になった兄が昼に110円の定食を食べていると聞いて、ずい分ぜいたくしているんだなと思ったことがあります。40年以上前のことです。しかし、カンボジアの話は、まさに今日の話です。
 OECDが「極端な貧困」としているのは年間所得370ドル。しかしカンボジアでは、その貧困ラインは、プノンペンで55ドル、農村部では33ドル。ケタ違いの貧しさなのです。5歳以下の死亡率は14%、7人に1人の子どもは5歳まで生きられない。そして全人口の85%が農村部に住んでいる。
 「シェルター」というタイトルの写真は、15〜0歳の女の子たちの暮らす施設。外国系NGOが運営している。顔を写さない、場所を特定しないようにする、「売られたのかどうか」訊かない。この3条件が取材が許可されたときの条件でした。「売られたかどうか」という質問は、それが呼びおこす忌まわしい記憶が、子どもの精神状態を悪化させる心配があるから禁止されているのです。大変なことですよね、これって。
 カンボジアの国境沿いでは、1ヶ月に500〜800人の子どもが売り買いされている。値段は1人50ドル。売られた子のなかには、臓器売買に利用される子も少なくない。幼児売春を目的とした「セックス・ツーリスト」の相手をさせられる子もいる。
 そして、その「セックス・ツーリスト」の8割は日本人。プノンペンで「どこの国の女が良かった」「あそこは安くて若い娘がたくさんいる」という日本語が聞こえてくる。本当に同じ日本人として恥ずかしい限りだ。つくづく同感です。カンボジアの売春婦の3割は売られた女性だそうです。
 「エイズ病棟」の写真は、さらに悲惨です。カンボジアではHIVに感染する人が後を絶たない。感染率は15〜49歳で2.6%、これは最悪。そして、エイズ発病を抑える薬は高価で、月60ドルもする。
 最後は地雷です。カンボジアに今も埋まっている地雷は600万発。世界中に7000〜1億1000万発の地雷が埋まっていると言われているが、カンボジアは世界で最悪の国の一つ。今も年に800人以上の死傷者が出ている。農村の13%に地雷が埋まっている。全世界で毎日70人、20分に1人が地雷によって殺傷されている。年間にNGOが処理している地雷は10万発。ところが、新たに250〜500万発が埋められている。地雷の生産コストは200〜500円。しかし、その処理コストは10万円。
 ひゃあ、世の中はひどいこと、すごいこと、むごいことだらけなんですね。
(2005年11月刊。1600円+税)

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