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カテゴリー: 社会

団塊ボーイの東京

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 矢野 寛治 、 出版 弦書房
団塊ボーイって誰のことだろうと思って本を手にとると、私とまったく同世代の人でした。
私も福岡から1967年に東京に行って生活をはじめました。決定的に違うのは、著者は朝夕2食付き(月1万円)の下宿生活をしていたのですが、私は寮費月1千円の6人部屋の寮生活をはじめたということです。1年生が5人で、1人だけ2年生でした。みんなで真面目に岩波新書の読書会をやったりしていました。そして、5月からは学生セツルメント活動に没入していましたので、語学のクラスでは垢抜けたシティボーイたちに気遅れはしましたが、寮では田舎者ばかりだし、セツラーは大学も学科もさまざまな人がいて、しかも生きのいい女子学生がわんさかいましたので、寂しいなんて感じるヒマもないほど、毎日忙しく身体を動かしていました。
東京が両手を広げて自分を待っていてくれている、と思っていた。すぐにガールフレンドができて、楽しい日々が展開するものと思っていた。
この点は、私もまったく同じでした。
世の中は甘くない。ただ、井の頭公園の池面の水を眺めているだけの日々だった。
ここが私と違うところです。
著者は実家から毎月3万円が送金されてきたとのこと。そして、その見返りに、毎週、実家に手紙を書いた。これが約束(条件)だった。そして、息子の異変を手紙で察知すると、大分から直ちに両親は上京してきた。
私には、それはありませんでした。東大闘争に突入して以降、親は息子のことを心配していたと思いますが、私が年に1回帰省するくらいで、親が上京してきたことは一度もありません。私が司法修習生のころ結婚するとき、その前に上京してきて、はとバスで東京遊覧したくらいです。
著者の親のおみやげは、いつも自然薯だったとのこと。大分の名物なのでしょうね。
著者は麻雀に入れこみ、かなり強いようです。それでも、ヤクザ者との麻雀ではまき上げられてしまっています。
東京で生活すると、とんでもない上流階級の身分の連中に身近に接することがある。
なるほど、それは私にもありました。なにしろ、大学に自家用車でやってくる学生がいたのです。それも大学入学祝いに買ってもらった…、なんていう学生がいたのです。私のほうは、寮にこもり切りで生活すると、最低月1万3千円で生活できることを実践的に証明していました。
著者はコピーライターとして活躍してこられたようですね。そう言えば、中洲次郎というペンネームには見覚えがあります。50年以上も前の東京での日々が描き出されていて、身につまされるところが多々ありました。挿絵がよくよく雰囲気をかもし出しています。
(2020年5月刊。1800円+税)

歴史戦と思想戦

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山崎 雅弘 、 出版 集英社新書
いま、広く読まれるべき本だと思いました。残念ながら…。
読みはじめる前は、なんだか大ゲサなタイトルだな、と思っていました。ところが、サンケイ新聞は2014年から「歴史戦」と名付けた「戦い」をすすめてきたというのです。驚きました。
戦後70年たって、日本は本来の歴史を取り戻す「歴史戦」にうって出るべきだとサンケイ新聞編集委員が叫んでいるというのです。いったい日本の「本来の歴史」とは何を指しているのか…。
著者は、それは戦前の大日本帝国を指していて、そこに戻ろうということだと明快に指摘しています。つまり、とんでもない呼びかけなのです。
そして、「歴史戦」を呼びかけるとき、それは歴史研究の分野に日本対韓国の「戦い」という国家間の対立、すなわち政治を持ち込んでいるのです。
桜井よし子は、「主敵は中国、戦場はアメリカ」と本に書いている。つまり、日本の「敵」は中国と韓国だというのです。なんという偏狭さでしょうか、時代錯誤もいいところで、とても正気とは思えません。
ところで、この本には、サンケイ新聞社長だった鹿内(しかない)信隆が、戦前に日本陸軍の将校として、経理学校で慰安所の運営規則が教えられていたこと、つまり軍が慰安所の運営に関わっていたことをサンケイ出版の本で明らかにしていることを紹介しています。まさしく慰安婦は陸軍のよる性奴隷だったのです。
南京虐殺について、「歴史戦」を主張する人は、「人数の問題」にすり替える論法をつかって、虐殺自体がなかったとする。これは、「誤った二分法」と呼ばれる詭弁(きべん)論法のパターン。受け手を錯覚させる心理誘導のテクニックだ。要するに、ごく一部の人の「見てない」という体験をもとに、全体の大虐殺はなかったとしてしまうのです。その論法が不合理なことは明らかです。30万人でなく、たとえ3万人であっても、大虐殺であったことには変わりありません。
シンガポールでも日本軍は現地の市民を5万人も虐殺したとされています。ここでは「歴史戦」を主張する人たちは、虐殺が「なかった」とまでは言わず、言葉を濁してはぐらかすか、はじめから無視するだけ。あまりに無責任です。
「歴史戦」を主張する人にとって、勝ち負けを競う論争ゲームであって、将来の人々に対して何の知的成果ももたらさない。これでは困ります。きちんと祖父や父が何をしたのか子や孫に伝えるべきです。
自虐史観というときの「自」とは、大日本帝国の臣民としか考えられない。なーるほど、そういうことだったんですね。時代錯誤もはなはだしく、とてもついていけません。
著者は、この本の最後に「歴史戦」の人々に対して、戦前・戦中の「大日本帝国」の名誉を回復することではなく、戦後の「日本国」の名誉や国際的信用を高めるような方向への路線を転換し、基本的な戦略を練り直したらどうか、と熱く呼びかけています。まったくそのとおりです。というわけで、ご一読をおすすめします。
(2019年11月刊。920円+税)

ぼくは挑戦人

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ちゃん へん 、 出版 集英社
日本で生まれた育った在日コリアンの著者はジャグリングを用いた芸をするプロのパフォーマー。日本だけでなく、世界中をかけめぐって芸を披露しているとのこと。
在日コリアンということで、小学校から中学校まで教室で陰湿ないじめを受けていた。子どもって、親のヘイトスピーチを真に受け、行動にあらわすのですよね…。読んでて、辛くなりました。
ところが、母親が我が子がいじめにあっていることを知って小学校に乗り込んで、いじめっ子に向かって言った言葉が圧巻です。
「素敵な夢もってる子はな、いじめなんてせえへんのや。お前らのやってることは、ただの弱いもんいじめや。強さと自慢したかったら、ルールのある世界で勝負せえ」
そして、子どもである著者にはこう言ったのでした。
「朝鮮人とか母子家庭とかで今まで散々ナメられてきたけど、わしは絶対負けへんで。一緒にがんばろな」
そして、家に帰ったら、ひいばあちゃんもこう言って励ました。
「いじめられたくなかったら、他人(ひと)より努力せな、あかん。いつか自分が頑張られるもんに出会ったら、それを一生懸命がんばって一番になりなさい。一番になったら、いじめられるどころか、お前を守ってくれる人がたくさん集まってくるんや。だから、そういう人生を歩みなさい」
この言葉を著者は実践していったのでした。偉いです。
中学3年生のとき、アメリカに単身渡って、パフォーマー・コンテストでヨーヨーの演技をして優勝した。いやはや、すごいですね。
高校3年生のときには、夏休みだけで300万円を稼いだ。なんともはや…、すごい、すごーい。
大道芸W杯のヤジウマ人気投票1位という肩書をもらっていた。
休日は10時間、平日でも毎日7時間から8時間は練習。それくらいすると、身体が覚えてしまうのでしょうね…。
著者は恐る恐る韓国に行きました。うまくいったようです。そのあと、なんと北朝鮮にも入って、平壌にも行っている。公演も2回していて、なんと金正恩本人から話しかけられたとのこと。
なるほど、タイトルどおり挑戦人です。自分の人生を自分の努力で切り拓いている様子が生き生きと伝わってきて、たくさんの元気をもらいました。ぜひ、ユーチューブで芸をみてみましょう。
(2020年8月刊。1800円+税)

血族の王

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岩瀬 達哉 、 出版 新潮文庫
松下幸之助はやはり神様ではなかったというのが、私の読後感です。
幸之助の発想は、すべて、どうやったらもうかるか、だ。なので、目先の話ではない。長く、確実にもうけるには、どうしたらいいか。日本にとって、アメリカの意向に従うしかない。そうしたら経済援助も市場開放もしてくれて、みんながもうかる。そのなかで自分も多いにもうけさせてもらう。そんな考えだ。
幸之助の感性は鋭い。人情の特徴を敏感につかみとり、体験に根ざした言葉で訴えかける、それで販売店の心をつかんだ。そのために、コンピューターを一掃してしまった。
コンピューターに幸之助は偏見をもっていた。その点では遅れていた。
娘婿の松下正治は東大卒で、頭はいいが、物づくりの経験をしていないし、商売の苦労もしていない。人使いも下手。何か問題が発生すると、ただ、怒るだけで、しかも居たたまれないくらいに理詰めでやってしまうので、重役陣からも事業部長からも、いまひとつ信用がなかった。なーるほど、なんとなく分かりますね…。
幸之助の真骨頂は、粘りだった。いったん取り組んだ仕事は、結果が出るまでやめない。良い結果が出るまで続けるので、失敗がない。ふむふむ、これも分かります。
幸之助は、社員の待遇改善につとめた。35歳で自分の家がもてる従業員持ち家制度、死亡した従業員の妻子への遺族育英制度、定年延長したうえ退職金の増額…。また、企業年金として破格の支給率を保証する福祉年金制度…。これはこれはいいことですね。
幸之助は、いくらか出来が悪くても、金太郎飴のように自身に従順で、忠誠という点で変わらない部下をかわいがった。逆に、どんなに功績があっても。幸之助に断りなく独断専行する者を決して許さなかった。ワンマン経営者にありがちな誤まりですよね、これって…。
録画の点で、ベータ方式より、VHS方式のほうが録画時間が長くなるので、幸之助はVHS方式を選んだ。というのも、ベータ方式の1時間に対して、VHS方式は2時間が基本のうえに、4時間録画に向けて開発中だったから。アメリカではアメフトの試合が3時間以上になるので、VHS方式が好まれた。なーるほど、ですね。
社長が松下正治から57歳の山下俊彦になるとき、80歳の幸之助は抵抗した。
それは、幸之助の言いなりになる番頭たちを経営陣から外すことを意味するものでもあったからだ。幸之助は、自分に仕えた役員OBを集めて山下社長を辞めさせる会までつくった。うひゃあ、まさしく典型的な老害ですね…。
幸之助もまた、おそろしく凡人だった。幸之助は孫の松下正幸を社長にしたかった。しかし、山下俊彦は正幸を棚上げしてしまった。
幸之助には世田谷夫人と呼ばれる第二夫人がいた。それを清水一行が『秘密な事情』で明かした。幸之助は世田谷夫人とのあいだに4人の子をもうけ、成人すると、松下関係の会社で面倒みさせた。世田谷夫人は、幸之助より30歳も年下。幸之助は東京・神楽坂の一番人気の芸者(20歳前)を見初めて、大阪に連れていった。
子どものころ、ナショナルの家電製品は身のまわりにいくつもありましたし、テレビのコマーシャルにも身体がなじんでいました。立志伝そのものの幸之助の負の面もふくめて、あまりに人間臭い評伝となっています。
神様とか天才ともてはやすほどの人物だったのかという疑いが確固として強まり、私は「ますます尊敬」という心境には、とてもなれない本でした。
(2019年7月刊。630円+税)
 
 日曜日、1年ぶりに仏検(準1級)を受けました。6月はコロナ禍のため中止になったのです。前の日はホテルに泊まり込んで過去問を復習し、当日も朝早く起きて万全の体調でのぞみました。
 自己採点では120点満点で71点でした。6割が合格点ですので、きわどいところです。最近は毎朝、NHKフランス語応用編の2日分を必死で書きとりしています。すぐに忘れてしまい、いつもいつも新鮮な思いですが、なんとかフランス語力を少しでも落とさないようにがんばっています。
 試験会場の大学に行くと、学生がサッカーの練習試合をしていました。また、各種の資格試験の受験生がたくさん構内にたむろしていましたが、対面授業はやられているのかなと心配になりました。

政治部不信

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 南 彰 、 出版 朝日新書
東京・大阪で10年あまり政治部記者をつとめ、新聞労連委員長として2年のあいだ活動してきた著者による、政治部記者のありようを問いただした新書です。著者は古巣の政治部に戻ったのですから、今後ますますの健闘を心より期待します。
菅首相は、自分の言葉で国民に向かって話すことがありませんが、それはもともと政治家として国民に訴えるものを自分のなかにもっていないからとしか思えません。つまり、菅首相が政治家になったのは、国民はひとしく幸せな毎日を過ごせる社会にしようとか、そんなことはてんで頭になく、ひたすら自分と周囲の者の安楽な生活のみを求めて政治家(家)というのを職業選択しただけなのではないでしょうか…。
そして菅首相にあるのは、敵か味方かという超古典的な二分論です。恐らく、それを前提として権謀術数をつかって政界を泳ぎ、生き抜いてきたのでしょう。そんな人が日本の首相になれただなんて、まさに日本の不幸です。これも小選挙区制の大いなる弊害の一つです。中選挙区とか比例代表制では菅首相の誕生はありえなかったでしょう。なぜなら、菅には国民に訴えるものが何もないからです。「自助、共助、公助」という「自助ファースト」というのは政治は不要だと宣言しているようなのです。そんな政治家は必要ありませんよ。
菅が首相になる前、官房長官のときに何と言っていたか…。
「ご指摘はまったく当たりません」
「何の問題もありません」
まさしく問答無用、一刀両断に切り捨ててしまい、質問に対してまともに答えることはありませんでした。議論せず、説得しようともしない政治家ほど恐ろしいものはありません。
前の安倍首相は平気で明らかな嘘を言ってのけました(原発災害はアンダーコントロールにある、とか…)。しかし、そこには嘘が嘘でないかを議論する余地が、まだほんの少しは残されていました。
ところが菅首相になると、「嘘」の前に、「何の問題もない」とウソぶいて議論しないのですから、よほどタチが悪いです。国会でまともな議論をしなかったら、どこで日本のこれからをどうやって決めていきますか…。私は不安でたまりません。
ボーイズクラブという言葉があるのですね。知りませんでした。
体育会系などで顕著にみられる男性同士の緊密な絆でお互いを認めあっている集団のこと。日本の閉鎖的な記者クラブもその一つでしょうね。
安倍前首相はマスコミの社長連中そして局長連中、さらにはヒラの記者たちとよく会食していたようです。例の官房機密費(月1億円をつかい放題…。領収書は不要)でしょうね。
そして、菅首相は、3社くらいずつ、オフレコのある「記者会見」を繰り返しているようです。
エセ「苦労人」の化けの皮がはがれないように手を折っているのでしょうね。こんなにセコいのは、やはり官房長官として仕えた安倍首相譲りなのでしょう。
日本の政治部記者よ、記者魂を呼びもどし、目を覚ませと叫びたいです。
(2020年9月刊。790円+税)

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