法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

ブランドの条件

カテゴリー:社会

著者:山田登世子、出版社:岩波書店
 幸いなことに、わが家はブランド現象とはまったく無縁です。私はコンビニと同じようにブランドも嫌いなのです。
 ブランド現象とは、贅沢の大衆化である。かつては、遙かな高みにあった高級品が、 20代の女の子にも手の届く品となって、ごく身近にある。贅沢と大衆が見事な「結婚」をとげている。
 もともと、ブランドは大衆の手に届かない奢侈品だった。貴族財であるものを一般大衆が持つのは、ミスマッチなのだ。だから、今でもフランスやイギリスの財力のない若者がブランド品を持つことはありえない。エルメスもルイ・ヴィトンも、ブランドの起源をさかのぼると、必ずそれは一握りの特権階級のための贅沢品である。だから、その「名」は晴れがましいオーラを放ち、惹きつけてやまない。
 モードとブランドは相反するものである。エルメスのバッグがあこがれを誘うのは、手が届きにくく、近づきがたいものだからだ。ブランドとは、本質的にロイヤル・ブランドのこと。扱う商品が高級品なのは、顧客が王侯貴族だからであって、ブランドとはもともと貴族財なのである。だから、贅沢品であるのは当然のこと。
 エルメスとルイ・ヴィトンは、王侯貴族を顧客にして今日の繁栄を築いてきた。永遠性と貴族性を志向するブランドだ。
 2002年、ルイ・ヴィトンは東京の表参道店をオープンさせた。前夜から1000人以上の客が列をつくった。オープンした一日だけで一億円の売上げを計上した。
 こりゃあ、日本人って間違ってますよね。これって、まさに格差社会の象徴でしょうね。
 この日、行列をつくった人たちの頭に、今の日本に、一日を何枚かの百円硬貨で過ごす、月に数万円しかつかえない生活を送っている人々が無数にいることなんて想像もできないことでしょう。
 日本人女性の44%、およそ2人に1人がルイ・ヴィトンを持っている。日本全国の所持者は2000万人とも3000万人とも言われている。
 ルイ・ヴィトンって、そもそも自分が持つものじゃないのよね。そう、召使いに持たせるものなのよ、あのトランクは。
 これは、ウジェニー皇后の言葉。ウジェニーは、奢侈品産業を育成するというナポレオン3世の意を受け、政治的任務として贅沢にこれ務めた。
 エルメスのバッグは、すべて職人によるハンドメイド。一つ一つ造った職人が分かるようになっている。修理に出すと、担当した職人が自ら直すシステムだ。しかし、その職人の名前は表舞台には出てこない。
 どうして、日本人って、アメリカと同じでブランドが好きなのでしょう。虚栄心をみたすためか、貴族の幻想にひたりたいのか、私にはとても理解できません。

モグラの逆襲

カテゴリー:社会

著者:残間里江子、出版社:日本経済新聞出版社
 あまり感心しないタイトルの本です。それでも、サブ・タイトルが「知られざる団塊女の本音」となっているので、同世代の女性たちが今どんなことを考えているのか知りたくて呼んでみました。意外にまじめな本でした。
 団塊は専業主婦率がもっとも高い世代である。自ら望んでそうなったのではなく、社会が彼女らを受け入れなかった。一生を捧げたはずの結婚生活で得たものは、くたびれた夫と今なお寄生する子どもたちだけ。
 2007年春、団塊モグラ女たちは長い冬眠から目覚めてしまった。このままここで朽ちてしまうのだけはいやだ。長い冬ごもりから飛び出して、春風にあたろう。ここまで来たら捨てて惜しいものはないし、怖いものもない。軽やかに飛ぶためなら、夫一匹捨てるくらいのことは簡単だ。
 おおっ、怖い・・・。私なんて、夫一匹、捨てられてしまいそう。
 団塊男たちのリタイアが迫っている。40年も企業社会につながれていた男たちの縄がほどかれ、一斉に家庭に戻ってくる。戻り方次第では、とんでもない日々になるわけで、妻たちは戦々恐々だ。
 団塊世代が結婚して10年から15年目あたりの離婚数は3万2000組だった。結婚して30〜35年たった最近の離婚数は6000〜7000組。つまり、問題のある夫婦は既に離婚ずみなのだ。
 夫婦は感性だの価値観だのという抽象的なことで別れてはおらず、離婚の具体的な理由は、お金、女(男)、暴力の三要素に集約される。離婚を切り出すのは7割が妻側から。
 離婚を意識して、完遂するまで平均して3.5年かかっている。
 今の夫は別れたいけど、危害は加えないし、喋るぬいぐるみだと思えば、まあ、いいかなと思ってガマンしてる。
 ヒャー、こんなに思われているんですか・・・。何だか、背筋がゾクゾクしてきました。
 団塊の女は他の世代に比べて学歴を重視する人が多い。とりわけ、息子の学歴は、とても気にする。
 団塊世代はお見合い結婚が多数派だった。しかし、1995年以降は9対1で恋愛結婚が圧倒的多数になっている。だから、その機会に恵まれないと、いつまでたっても結婚できないわけですね。お見合い用の写真をいつも持ち歩いている世話好きのおじさん、おばさん族というのは今ではすっかり姿を見ません。
 女は独りでは何もできないと男に思わせることこそが、「サブ」や「副」として生きていくための基本マニュアルなのである。女は夫に相談する前にとっくに決めている。ただ下手に主張すると、あとでもめたときに面倒だし、おだやかに手に入れるためには簡単に口にしないようにしているだけのこと。
 よほどの偏屈でもない限り、団塊世代は「テレビが家にやってきた日」のことを覚えている。私の家には小学四年生のころ、年の暮れにテレビがやってきました。『ひょっこりひょうたん島』や『ふしぎな少年』の「時間よ、止まれ」という叫び声があがると全員がそのままの姿勢で固まってしまうシーンも、よく覚えています。
 日本の妻たちは、夫に忍従を強いられているように思っている人が少なくないが、世界に冠たる銀行振込制度が家庭に入り込んで以来、時間とお金の両方の裁量権を発動できるという意味で、日本の妻は世界最強と言われている。
 日本の女性が昔から強かったことは、戦国時代の宣教師(ルイス・フロイス)の目撃談や江戸時代の『世事見聞録』などでも明らかです。銀行振込制度の前から、日本では妻が一家の財布を当然のように握っていました。
 私の周囲を見まわしても、実にたくましい女性ばかりのような気がします。むしろ、いろんな意味で弱いのは男ではないでしょうか。

「虚構」

カテゴリー:社会

著者:宮内亮治、出版社:講談社
 ライブドアの内側がのぞける本です。ライブドアは、その最盛期に、グループ全体で6000人の社員をかかえていた。そして、プロ野球進出を表明してから、わずか1年半で命運は尽きてしまった。
 ホリエモンについての描写が面白い。堀江には、生意気さと人見知りが同居していた。胸を張って目を見ながら話すタイプではない。下からのぞきこんでくる印象で、目があえば逸らす。それでいて、図々しい。ともかく話が大きくて、自信満々にしゃべる。これは、まだ東大在学中の23歳のホリエモンに会ったときの初対面の印象です。
 堀江はドライな人間関係を好む。役に立てばつきあうし、立たなければアッサリと切る。ビジネスに感情はもちこまず、判断基準を数字にしぼる。感情に流されない。信賞必罰を貫いた。堀江の経営者としての美点は、情報収集力と発想力と理解力にある。
 堀江には天性の閃(ひらめ)きがあり、先読みができる。だが、読みが早過ぎるうえに、飽きっぽい性格もあって、成熟する前に止めてしまったりする。堀江の情報の確かさと読みの速さは天才的。だけど、速すぎてライブドアの業績には結びつかない。プロ野球進出で名前は売れたが、ライブドアに本業と呼べるほどのものはなかった。
 堀江が変わったのは、ライブドアがニッポン放送の買収を断念し、見返りに1340億円もの現金を手にし、堀江個人も若干の持ち株を売却して140億円近くの現金を得てからのこと。それまでの堀江は、かなりシビアな経営者だった。
 堀江は、市場に常にサプライズを与えなければ気がすまなかった。増収増益を続けつつ、100分割のようなサプライズを市場に与え、かつ上方修正することで成長イメージを鮮明にするのが堀江の戦略だった。でも、そんなアクロバットがいつまでも続くはずはない。
 堀江にはスポーツセンスがなく、スポーツは得意でない。ところが、ライバル視している三木谷が名乗りをあげたため、逃げることができず、トコトン戦うしかなくなった。ただし、ライブドアが敗北したとはいえ、堀江は認知度を高めるなど、むしろ勝利した。
 最盛期のライブドアの会員は1000万人。ライブドアが小泉改革の鬼っ子だというのは事実だ。自民党の武部幹事長は、堀江の手をとり、大きく上にあげて、「我が弟です。我が息子です」と絶叫した。
 ライブドアの軌跡は、実は失敗の連続である。近鉄球団買収も、プロ野球進出も、日本放送買収も、総選挙も、話題を提供した案件は、すべて成就しなかった。しかし、損はしていない。ホリエモンという名は売れ、堀江の虚栄心は満たされ、ライブドアのポータルサイトは活況を呈し、資金調達やM&Aは、非常にやりやすくなった。ただし、ホリエモンの浮上は、足蹴にされた企業や人間の恨みにつながる。殴った人は忘れても、殴られた人は忘れない。
 インターネットの世界は人間性を破壊する金権腐敗を生み出しているんだなと、この本を読みながら思いました。六本木ヒルズあたりの500メートルで昼も夜も行動していたというのです。世界が狭くなって、視野狭窄になってしまったのですね、きっと。

格差社会とたたかう

カテゴリー:社会

著者:後藤道夫、出版社:青木書店
 現在日本の勤労者世帯中の貧困率は2割前後。小泉首相は、格差の増大の原因を高齢者世帯の絶対数の増加のせいにするが、貧困世帯の増加268万世帯のうち、勤労世帯における増加分が142万世帯なので、小泉首相の主張は間違っている。
 国民の4割が加入している国民健康保険の保険料の滞納世帯は、2000年6月に  370万世帯だったのに、4年後の2004年6月には461万世帯と2割近く増えた。
 就学援助を受ける小中学生も急増し、日本全国で1997年度に78万人だったのが、2004年度には134万人となった。
 収入が増えている人々もいる。1997年に年収1000万円以上の人が5万6000人(5.8%)いたのが、2002年には6万8000人(6.5%)に増えた。IT産業関連など高処遇の職種群が形成されている。
 年収2000万円以上の人が2001年に18.1万人だったのが、2004年には 19.6万人に増えた。2005年9月の総選挙において自民党は首都圏で圧勝した。それは、これら上層の人々と、その周辺の人々、そして自分も上層への仲間入りが可能だと思っている人が支えている。
 なーるほど、東京で石原慎太郎が仕事もろくにしないのに300万票もの支持を集めるのは、それだけの現実的基盤が、それなりに存在するということなんですね。
 このような上層国民を社会統合の中心とするためには、上層への利益供与システムをつくり、彼らに社会秩序維持の担い手たる自覚をもたせることが必要となる。そのため、所得税の累進度を大きく緩和した。1980年代初めは75%が最高税率だった。1990年代初めに50%に大幅ダウンした。1998年の税制改革により37%になった。
 公私二階建て方式がとられるようになった。すべての国民に開かれる「公」は薄く、脆弱なものとし、「公」を支えるための高所得層の費用負担は小さくする。その分を、「私」の部分を購入する費用としてつかうことを可能にする。
一部の上層は、たしかに「報われる」。反対に、ワーキング・プアだけで600万世帯をはるかに超えるが、これらの多くの人々が「報われる」ことなく、それどころか、以前なら考えられないような生活不安、労働不安、そして将来の不安に直面している。
 「努力すれば報われる社会を」というスローガンは、自助努力に欠けるとみなす人々を、排除し、切り捨て、財政負担を軽くしたうえで、そんな人を治安管理の対象として、いわば隔離するとともに、一種の見せしめとして、「中層」以下を叱咤鼓舞する。
 ここまで落ちるんだぞ。それがいやなら、何であれ、死に物狂いで努力せよ。
 というものです。いやあ、本当にあたたかみのない、殺伐とした日本になってしまいましたね。弱者切り捨てがどんどん進むなかで、上昇志向の若者が自分の足元を見ることなく、手を叩いて、格差拡大を喜んでいます。ここに切りこみ、対話して現実をしっかり見つめることを多くの人に求めたいものです。

私が選んだ後継者

カテゴリー:社会

著者:松崎隆司、出版社:すばる舎
 2005年における社長の平均年齢は58歳9ヶ月。現実には、社長交代は思うほどスムースには進んでいない。社長族の構成年齢は高いにもかかわらず、なぜ社長交代が進んでいないのか。
 日本の企業倒産の5割以上は、会社を清算する破産。その原因の多くは後継者の問題。倒産企業の4社に1社が、地方で30年以上経営を続けている企業。
 事業承継の形態は4つある。第一は親族内承継、第二は外部からの雇い入れ、第三が M&Aによる企業売却、第四が事業承継をあきらめ清算すること。
 一族以外から後継者を選ぶケースが近年は増加傾向にあり、2002年には38%にも達している。
 後継者に必要な資質は三つある。従業員を管理する能力、縁を大切にする能力、危機管理能力。
 事業承継でうまくいっているところというのは、実は、先代が早世したところが多い。親と子が一緒だと、どうしてもケンカになってしまう。
 中継ぎ役員、セットアッパーも、その一手法である。後継者の育成と経営を見るという役割を担う。後継者育成とともに、右腕になる人をつくることも、事業承継の重要な要素。
 いま、弁護士会も、この中小企業の事業承継に取り組もうとしています。
 5月中旬、久しぶりに阿蘇の大観峰に行ってきました。いつ行っても、その雄大さに圧倒されてしまいます。今回はじめて気がつきましたが、仏様の涅槃像でもあるのですね。大自然の巧みさに感嘆します。透きとおる五月の青空でした。雲雀が天高く飛び上がって甲高い鳴き声で鳴き、大草原で肥後牛たちが草をはんでいました。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.