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カテゴリー: 社会

実録アングラマネー

カテゴリー:社会

著者 有森 隆+グループK、 出版 講談社α新書
 山口組若頭の宅見勝は1997年8月、神戸のホテルで4人組の暗殺団に射殺された。享年61歳。宅見は配下に企業舎弟を数千人もち、3200億円の資金力を誇り、オールジャパンの裏経済を支配していた。
 東京都内だけで、暴力団のフロント企業は1000社以上ある。この数字は警視庁が確認したもの。金融、不動産、建設がフロント企業の御三家。風俗、飲食、自動車販売、産廃処理、経営コンサルタント、そしてコンビニ、ペットショップ、俳優養成学校、探偵、人材派遣など……。うひゃあ、す、すごい分野にまで進出しているんですね。驚きました。
2007年現在の暴力団員は8万4200人。正式構成員が4万3300人。準構成員は、
1995年に3万2700人だったのに対して、それから3割も増えている。暴対法は、山口組への一極集中を生んだ。山口組と住吉会と稲川会の3団体で、今や暴力団の73%を占め、寡占化が進んでいる。
 山口組の上納金は幹部クラスで月100万円、他の直系組長で月80万円。
 旭鷲山が引退したのは、暴力団の住吉会系組長に脅迫されたから。モンゴルの金鉱山の開発利権をめぐって、住吉と関西系に2重売りしたのが発覚してのことだった。うむむ、なーるほど、そういうことだったのですか。
 英会話教室最大手のNOVAで創業社長が追放されたのは、資金調達を闇の勢力に頼ろうとしたからだった。猿橋前社長は、業績不振のワンマン銀行の頭取を巻き込んで、見せ金増資を錬金術の舞台につかった。見せ金増資に協力するという名目で、巨額の融資を銀行から引き出そうとしたのである。いやいや、とんだことです。大勢の真面目な教師と生徒が泣かされましたね。
 海軍鎮守府が於かれた横須賀で、沖仲士を取り仕切る近代ヤクザとして生まれたのが小泉組。軍港ヤクザの小泉組の2代目、小泉又次郎が、あの小泉純一郎の祖父である。
 いやはや、現代日本社会って想像以上にヤクザに食いものにされていますよね。知らぬが仏、とはこのことです。仏といえるかどうかは、私たち次第ですが・・・。
(2008年10月刊。933円+税)

「生きづらさ」の臨界

カテゴリー:社会

著者 湯浅 誠、河添 誠、 出版 旬報社
 現代日本において、若者は自らの労働によって生活を成り立たせることが困難になっている。それは賃金水準が低いこともあるが、同時に、その労働環境があまりに劣悪で、それによって生活そのものが暴力的に破壊されているからである。
 貧困に陥った人は、自分自身で新しい仕事に対応する自信が持てないため、せっかく探した仕事も数日で自分から辞めてしまうことがある。これを「意欲の貧困」という。貧困のなかで、意欲までも奪われている。なるほど、そういうことなんですね。貧困というのを単に現象面のみでとらえるのではなく、人間の内面にまで踏み込んで考える視点が必要なようです。
 「不器用」というのは、具体的には、人間関係の作り方が極端に下手な人というイメージである。家族の基礎体力を、まずは高めるところからやらないといけない。家庭の基礎的な所得とか生活条件の整備が必要である。
 貧困な状態とは、生きる上での生活資源(溜め)が減少している状態である。「不器用さ」は、貧困のなかで階層的に生産されていく。非正規雇用が拡大して階層化が進めば進むほど、階層の固定化、貧困の再生産の程度が強まっていく。
 新自由主義は、あらゆるもの、市場外だったはずの領域まで市場化していく運動である。ふむふむ、鋭い指摘ですよね、これって……。
 1960年代半ばまで、生活保護を受けている人の4割は、働ける年齢の人たちだった。ところが、今は、働ける人が生活保護なんて論外だと、突っぱねられる。
人々は、どうしても貧困問題に関して「この人は救済に値するかどうか」を問題にしてしまう。それに値する人だけが救済されるべきだという発想は恩恵の論理であって、人権ではない。24時間がんばり続ける者だけが「救済に値する」という枠組みは突破される必要がある。そうでないと、そんなに「立派じゃない」貧困当事者は声を上げられないままになってしまう。ううむ、この点は、私にとっても痛い指摘でしたね。誰だって楽したいとか怠け心は持っているわけで、ありのままの状態においてその人の持つ固有の権利として保護されるべきだというわけです。
 正規になりたくない非正規の人は相当数いる。それは、正規がひどいから。生活保護を受けていない人たちの状況は、就業していても、高いストレス、長時間労働で、ぎりぎりのところで暮らしている。就業していたとしても、こうした非人間的な労働条件が標準化されている。
 もはや、雇用と生活の安定が多くの人にとって必然的な結びつきをもたなくなった。働いていれば食べていけるというのは神話になった。
企業は利潤を追求する目的集団であり、その目的に人々の生活の安定は入っていない。働いていれば食べていける状態の創造は、企業の目的外行為であり、目的外行為を行わせるためには、社会の規制力が働かなければならない。
 今や、現代日本で働くことの意義が問い直されていることがよく分かる本でもありました。
(2009年1月刊。1500円+税)

アイバンのラーメン

カテゴリー:社会

著者:アイバン・オーキン、 発行:リトルモア
 東京は世田谷に、アメリカ人によるラーメン屋があるそうです。京王線の芦花公園駅の近くです。今度、私も行ってみましょう。といっても、開店日にはかなりの行列が出来ているようなので、行っても食べられるか心配です。
 店主は、生粋のアメリカ人です。それも、コロラド大学を出て、シェフになったうえで、日本にやってきて自己流のラーメンを作り上げたというのです。すごいものです。伊丹十三監督の映画『タンポポ』を見て、ラーメンにあこがれたというのですから、大した根性です。
 店主の父親は知財専門の弁護士です。すごく成功しているそうです。
アイバンで出るラーメンが見事な写真で紹介されていますが、どれも、いかにも美味しそうです。ともかく、メンもスープもトッピングの卵も、すべてが手作りだというのです。しかも、感心したのは、仕入れが近所の商店街からなのです。いやあ、実にいいことですよね。共存共栄の精神をまさに実践しているのです。
サイドメニューとして焼きトマトがあり、豚飯があり、デザートのアイスクリームまであるのです。スープは豚骨スープではありません。塩ラーメンとしょうゆラーメンです。これも脂の多すぎるラーメンにしないようにしているからです。
毎日でも食べられるラーメンであるために、豚の脂は10cc未満しか入れていない。有名ラーメン店のラーメンは、基本的に一杯のラーメンに30~40ccの動物性の脂が含まれている。こんなに大量の脂が入っていると、身体に良くないし、毎日なんか、とても食べられない。
アイバンのラーメンは、さわやかな味だそうです。食べたあと、よい気持ちになるラーメン。これがコンセプトというのです。ここまで聞いたら、一度は食べずにいられません。でも、1日、120人の客しか入れない。営業時間も平日は夕方から夜のみ、土日は昼から夕方まで。そして、水と第四火は休み、というのです。席も10席しかありません。そのくせ、キッチンは広々としているというのですから、異例づくめです。
 メンはスープとよくからんでいる。メンをすすると、スープが口に入り、メンマも細長いので、同時に口に入る。一度に3つの味を楽しめる。さらにチャーシューと卵を合間に食べたら、すべての味がなじんで、ひとつのラーメンの味になる。一口ですべてが味わえるのが、アイバンのラーメンだ。
 いやあ、ぜひぜひ行って味わってみたいラーメンです。
(2008年12月刊。1600円+税)

資本主義はなぜ自壊したのか

カテゴリー:社会

著者 中谷 巌、 出版 集英社 インターナショナル
 オビに、改造改革の急先鋒であった著者が記す「懺悔の書」とありますが、本文を読むとまさしくそのものずばり懺悔をしています。お金儲けばかりを優先して、人間を大切にしてこなかったことを反省するなかで、キューバやブータンに行って、人々の幸せとはいったい何なのかを考えたというのです。これが対比として、実によく分かるのです。私も、前にキューバもブータンも、その実情を描いた本をこの書評欄で紹介したことがあります。
 著者がグローバル資本主義は間違っていると大きな声で叫び始めたわけですが、これを今さら遅いと叱る向きもあるようです。私は決してそう思いません。過ちは、まだ何とか是正することが可能なのです。もっとも無責任なのは、懺悔も後悔もせずに、論戦の場からこそこそと逃げ出していくような輩(やから)ではありませんか?
 グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、人間社会にさまざまな「負の効果」をもたらす主犯人でもある。そして、グローバル資本が「自由」を獲得すればするほど、この傾向は助長される。
 「改革」は必要だが、その改革は人間を幸せにできなければ意味がない。人を「孤立」させる改革は改革の名に値しない。
 アメリカでは、スーパーリッチ層が輩出した反面、かつてのアメリカを支えていた豊かな中流階級の人々が「消え去った」。所得上位1%の富裕層の所得合計が、アメリカ全体の所得に占めるシェアは、8%から、なんと17%にまで急上昇した。
 ヨーロッパ諸国では、かなりの銀行に公的資金が投入され、事実上の国有化がすすんでいる。
 今回のバブル崩壊の結果、アメリカが主導してきたグローバル資本主義は大きな方向転換を迫られる。
 グローバル資本主義には3つの本質的な欠陥がある。その一は、世界金融経済の大きな不安定要素となること。その二は、格差拡大を生む「格差拡大機能」を内包し、その結果、健全な「中流階層の消失」という社会の二極化現象を生み出すこと。その三は、地球環境汚染を加速させ、グローバルな食品汚染の連鎖の遠因となっていること。
 いまや、グローバル資本主義はフランケンシュタインのモンスターさながら、その創造主である人類そのものを滅ぼしかねないほどに暴走してしまった。
 新自由主義思想は、一部の人々、はっきり言ってしまえばアメリカやヨーロッパのエリートたちにとって都合のいい思想であったから、これだけ力を持った。これは格差拡大を正当化する絶好の「ツール」になりうるものである。
 コーポレート・ガバナンス改革が進むにつれて、実際に起こったことは、実は未曾有の「高額報酬の常態化」であった。
 いやはや、これはひどいですね。私も、コーポレート・ガバナンスって、少しはましなものかと錯覚していました。とんだまちがいでした。いまの経営者に期待するのは幻想でしかないのですね。キャノンの御手洗をよく見ていれば分かることではありますが……。 
 自分のことしか考えず、日本人の多くの若者がどうなろうと知ったことじゃない。そのくせ、今の若者には倫理観が欠如しているから道徳教育が必要だというんですからね。笑止千万ですよ。プンプン。
 従来の資本主義とグローバル資本主義は、同じ「資本主義」という名を冠していても、そこには大きな質的な違いがある。グローバル資本主義においては、労働者と消費者が同一人物である必要はないからである。
 プレカリアートとは、プロレタリアートをもじった言葉で、不安定な立場に置かれた無産階級という意味。
 日本は、いまや貧困層の割合がアメリカに次ぐ世界第2位の「貧困大国」になっている。日本の「平等神話」は崩壊している。日本は、4世帯に1世帯が貧困に分類される国。貧困層に冷たい国になってしまった。
 シングル・マザー(ファーザーも)世帯の貧困率は60%に達している。日本が「希望なき貧困大国」から脱することがなにより優先されるべき政策課題だ。日本社会が安定することこそ、日本の底力を発揮するための前提条件である。
 大変すっきり読みやすい、告発の本でもありました。
(2009年2月刊。1700円+税)

買物難民

カテゴリー:社会

著者:杉田 聡、 発行:大月書店
 還暦を迎え、膝が痛かったりする私にとっても、歩いて買い物に行ける商店街がなくなってしまうというのは他人事(ひとごと)ではありません。郊外型スーパーとコンビニばかりになってしまったら、老人は生きていくことができません。少なくともひとりで買い物をする楽しみが奪われてしまいます。
 日本の飲食料品小売店の数がピークだったのは1980年ころ。このとき73万軒の店があった。それから20年間で26万軒が減った。人口10万人未満の地域でもっとも大きな影響があった。
 2005年、65歳以上の老人の自動車免許取得率は28%ほど。女性では半分の14%にすぎない。75歳以上だと免許を持っている人は20%。
 高齢者がバスに乗ったとき、多くの中高年は無視し、むしろ若い人の方が席を譲る。「いまどきの若者は・・・」というより、むしろ「近頃の中年は・・・」と言わざるをえない。
 近年のアメリカでは、大型店、量販店が同じ屋根の下に集まっている「スーパーセンター」の人気が落ちている。その原因の一つは、店内が広すぎて買い物が大変なことにある。大きなスーパーで体を休める場所がなかったり、椅子が少なすぎたり、トイレが外にしかなかったりする。これでは老人は困る。かごもカートも大きすぎて負担がある。
 買い物に行けなくなって、食事をありあわせものでしのいでいるうちに、栄養失調になってしまった高齢者も少なくない。
 日本には2005年現在、4900万世帯がいて、そのうちひとり暮らし世帯は1446万世帯(29%)ある。世帯主が65歳以上だと1350万世帯(28.5%)。75歳以上だと550万世帯(35.5%)である。これから、単身世帯はもっと増えて4割近くになると予想されている。
 コンビニは高齢者にとって便利とは限らない。
 役所は町の中心地に存在し続けるべきだ。このように著者は提言しています。中心地の空洞化は避ける必要があるのです。
 老人を大切にしない社会は、同時に、昨今の「派遣切り」に見られるように若者も切り捨てる、「株主」のみを優先し、人間無視の冷たい社会になってしまいます。
 マイカーがあればいいということでは決してありません。昔は、市の中心部にデパートがあっても、その周辺にたくさんの商店があり、デパートと共存共栄していました。歩いて買い物ができないことになったとき、その人の人生はきわめて味気なくなることは必至でしょう。今のうちに抜本的な解決策をみんなで考え、少しずつでも実行に移す必要があるように思います。
 日曜日、久しぶりに庭仕事をしました。チューリップの芽があちこちでぐんぐん伸びています。クロッカスの黄色い可憐な花が咲いているのも見つけました。あっ、白梅がもう咲いている。そう思ってよく見たら、その上には紅梅がたくさんの赤い花を咲かせていました。隣の家では、あでやかなピンクの桃の花が満開です。
 庭のあちこちに水仙が花を咲かせています。黄水仙も一つだけ咲いて自己の存在をアピールします。枯れたライラックを根から掘り上げ、肥料になる生ゴミを一番下に敷いて新しく買ったライラックを植え付けました。
 庭仕事の最中、ときどきくしゃみが出ます。花粉症に悩まされる候となりました。春近しです。陽が伸びて、夕方6時まで庭に出ていました。
(2008年12月刊。1600円+税)

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