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カテゴリー: 社会

セブン・イレブンの罠

カテゴリー:社会

著者 渡辺 仁、 出版 金曜日
 最近はコンビニ神話にも少々かげりが出ているようです。私は原則としてコンビニを使わない主義ですが、出張したときには水と朝食用の野菜ジュースを買うために利用せざるをえません。
 このコーナーでたびたび鈴木敏文会長(創設者であり、CEO)の本を好意的に紹介しましたが、この本は、セブン・イレブンの裏の貌(かお)を鋭く暴いています。なるほど、というより、ええっ、まさか……と驚いた点がいくつもありました。セブン・イレブンって、前近代的な圧政支配で成り立っているんですね。ほとほと嫌やになってしまいました。
 セブン・イレブンは日本全国に1万2000店舗あり、本部直営店は、そのうち1000店しかなく、残る1万1000店はフランチャイズ加盟店。だから1万1000店はオーナー経営者が存在しているはずです。ところが、ところがです。
第1に、毎日の売上金全額をセブン本部の指定口座に送金する。
第2に、オーナー経営者には仕入原価が知らされず、知る手段もない。
第3に、たとえ親が死んでも24時間365日、営業しなければならず、閉店することは許されない。
 ええっ、ええっ、これではオーナーなんてものじゃありませんよね。売上金の一定割合をロイヤリティーとして本部に送金するのなら分かりますが、売上金全額を毎日、本部へ送金するというのでは、まるで直営店ではありませんか。どこが違うのでしょうか?
 本部には、全国から毎日76億円ものお金が送金されているとのことです。これって、おかしな仕組みだと思います。しかも、商品の仕入れ原価は公表されていないというのですから、経営者がオーナーだなんて、とてもとても言えません。
 セブン・イレブンは売上5407億円で、営業利益1780億円(2009年2月)というのです。3割もの粗利なんて、これまたびっくりですね。
 年間2兆7626億の総売上高を本部がどう運営しているか、ブラックボックスだというのですから、これではまるで江戸時代の鈴木敏文商店ですとしか言いようがありません。21世紀の日本で許されていい商法とは思えませんね。
 セブン・イレブンの客単価は平均700円。客一人当たりの粗利は150円ほど。
一店舗の売上高は、1日でよくて80万円、悪いと40万円。それでオーナー夫婦は年収1000万円。日販40万円だと、わずか2~300万円にしかならない。24時間、年中無休でこれでは、泣けてきます。
ところが、セブン本部には、日販80万円だと年4000万円、日販40万円でも年1200万円ものチャージ収入が入ってくるというのです。これでは、あまりに不公平です。他人事(ひとごと)ながら、読んでいて腹が立ちました。
 便利なコンビニですが、こんな不法な商法は、長続きさせてはいけないのではないでしょうか・・・・・・?
 
(2009年10月刊。1500円+税)

職業・振り込め詐欺

カテゴリー:社会

著者 NHKスペシャル取材班、 出版 ディスカヴァー携書
 私も振り込め詐欺の被害にあった人の依頼を受けて回復に取り組んだことがあります。2日間で350万円を騙し取られてしまった。被害者は20代の独身女性でした。架空請求のハガキが来たのです。身に覚えのないことながら、何かしら不安にかられて電話したところ、「弁護士」が出てきて、「それは大変なことだ」と脅され、「弁護士」の指示どおりに「示談のため必要」と言われ、50代の母親に相談し、生命保険を解約してまでお金をつくって、2日間にわたって振り込んだのでした。
 親に相談してもストッパーにならず、かえって一緒にお金づくりに走ったという点でも驚きでした。父親(夫)だけは知りません。ばれたら深刻な家庭騒動になるのが必至なので、黙っておこうという合意が母と娘に成立しました。私は振込先の銀行(なぜか千葉と福岡でした)に連絡して引き出しを止めようとしたのですが、引き下ろされた後のことでした。結局、口座に残っていたのは1万円ほどです。着手金ゼロで始めましたので、実費としてそれを私がいただき、「終了」となりました。本当に残念でなりませんでした。
 警察は銀行口座を開設した人間、そして受け取りに来た人間をなぜ捕まえないのか。そこから手繰っていけば、騙し役の連中も捕まえられるはずだと思いました。
 この本を読むと、振り込め詐欺の手口は海外の電話まで使うというように極めて高度なテクニックが使われていること、そのため、警察も逮捕が難しいことを認識しました。
 一流大学を出た賢い若者たちが、IT技術なども駆使し、企業のウラ情報ネットワークもつかいこなしているというのです。ひどい話です。でも、でも、それにしても、警察には、もっと頑張って逮捕してもらう必要があります。
 振り込め詐欺グループの電話かけは、1日に200件~300件。ノルマは1日200万円。朝9時から夜9時まで、1日12時間、地方の年寄りに騙しの電話をかけ続ける。
 名簿は、東京の名簿屋から買う。1件あたり10~15円。2万人分だと、20~30万円。
 親の年齢は50代後半から60代後半まで。
 こっちからは絶対、名前は名乗らない。アポ電は、名簿を見て電話して、その親が騙されたか、騙されてないかを見極める。
 振り込め詐欺の拠点を、店舗という。ひと月に1~2億円を荒稼ぎするグループがある。騙すためのストーリーは多種多様。個人でアレンジもする。
 同じ人を2回だまし取るのをおかわりと呼ぶ。
電話をかける主要メンバーは、マンションのアジトにこもりきり、人目を徹底的に避ける。その代り、外で手足になって働く人間を雇う。
 出し子からお金を受け取るのは、デパートのトイレとかパチンコ屋のトイレとか、人目に付かないトイレで受け渡しする。出し子をマンション(アジト)へ入れることは絶対にしない。出し子は仲間じゃない。コマだ。いざとなれば切ってしまう。お金を引き出すとき、出し子は帽子をかぶりメガネを掛ける。サングラスは逆に怪しまれる。大きめのアメを2つ口に入れて、銀行ATMの前に並ぶ。顔が変わって見える。
 飛ばしの携帯とは、他人名義の携帯電話のこと。ケータイを使うのは1回きり。不況のなか、1万ほどの報酬で名義を売る人間は大勢いる。
 それまで犯罪に縁のなかった若者が、一攫千金をもくろんで振り込め詐欺にかかわっている。彼等は、世の中がこんなに理不尽なら、オレが復讐してやろうと考えている。
 一生懸命にがんばってきた。なのに社会に裏切られた。だったら、社会に復讐してやるんだと、高言している友人がいる。
 振り込め詐欺の被害者はのべ10万人を超える。
 振り込め詐欺犯たちが容易に捕まらない現状は改められなければなりません。被害者が、息子からオレをそんなに信用できないのかとののしられ、その後、親子関係が断絶したという話もあります。二次被害も深刻です。
 
(2009年10月刊。1000円+税)

岩盤を穿(うが)つ

カテゴリー:社会

著者 湯浅 誠、 出版 文芸春秋
 日本中を震撼させた年越し派遣村の村長だった著者は、民主党政権の下で、内閣府参与となり、ホームレス等の対策にあたっています。著者には私も大いに期待しています。これは、決して皮肉ではなく、本心からの言葉です。皮肉なんて言っていられないほど、事態は深刻かつ急迫していると思うのです。
 著者は活動家を募っています。そこで求められている活動家は次のようなものです。従来のものとはかなりイメージが異なります。
 活動家は、夢見る権利を擁護し、夢見る条件を作ろうとする。認定された夢だけを夢とする社会の岩盤にぶち当たらざるをえない。
お金がなければアウト、非正規だったら負け組、恋人ができなければ人間失格、マイホームにマイカーがなければ甲斐性なし、病気をすれば自己管理が不十分、老後の貯蓄がなければ人生のツケ。いやはや、なんと寂しい日本の現象でしょうか……。
 国が企業を守り、企業が男性正社員を守り、男性正社員が妻子を守る。そのルート以外の守られ方は、自堕落、怠惰、甘え、努力不足、負け犬……。いい加減にしてほしい。
 この「いい加減にしてほしい」に形を与えること。形を与えるための“場”をつくること。そして、他なる社会を夢見る条件を作ること。それが活動家の仕事だ。
 なるほど、こんな言い方もできるのですね。こうやって運動の輪を大きく広げていって、現代日本の社会を少しでも良い方向に、みんなで少しずつ、一歩一歩、変えていきたいものです。
 私も日比谷公園にはよく行きます。有楽町駅から歩いて日弁連会館に行く途中にあるからです。そこにできた年越し派遣村に来た人は、5日間で500人を超したのでした。そして、ボランティア登録をした人は1800人、のべ5000人となった。寄せられたカンパは2300万円。ちなみに、今年の公設派遣村は昨年を上回って、800人でしたか、1000人でしたか……。
 多くの人にとって、「見たくない現実」だった。忘れてはならないのは、「その現実を生きている」人たちがいること。この現実を直視できるかどうか、そこに日本社会の地力が現れる。そうなんですよね。貧困は目をそむけたら見えなくなるものです。
 かつての日本では、山谷(東京)や釜ヶ崎(大阪)の寄せ場に日雇い労働者はいた。しかし、今では日本全国に広がっている。貧困の問題は、フツー、目に見えないという特徴がある。貧困が見えにくいのは、アメリカでもイギリスでも同じで、これは世界共通のものだ。野宿の人たちは、炭鉱のカナリアのような存在だ。
 日本では、まわりの人から「簡単に人に頼っちゃいけない」と言われて育っているので、SOSの出し方が分からない。
 企業の多くは「地球を大切にしています」などと広告・宣伝している。しかし、「私たちの企業は、非正規労働者の命などなんとも思っていません。そんな私たちですが、良かったら商品を買ってください」と言うべきだ。
 ふむふむ、なるほど、なるほど、そのとおりですよ。日本経団連の露骨な、あまりに金儲け本位の姿勢を少しでもまともなものに改めようと考える資本家はいないのでしょうか……。
 国がセーフティネットを確立しようとするのは、実は19世紀のビスマルクの時代に始まったのだそうです。人間がボロ雑巾のように使い捨てにされる社会は弱くなるにきまっている。これが理由です。そうなんですよね。弱者をどんどん切り捨て、排除していく社会は、全体的な力も弱めてしまうのです。お互い、明日は我が身ですよ……。
ホームレスの人数確認が困難なのは、夜は寒さをしのぐために歩きまわり、昼間は図書館などの公共施設に入って仮眠を取る人が捕捉できないから。なーるほど、そういうことなんですね。
 政治不信は言われ始めて久しい。しかし、本当に深刻なのは、むしろ社会不信ではないのか。どうにも這いあがれない状態に追い込まれながら、そのこと自体が「努力が足りない」と叩かれる理由になっている社会では、何かを言ったところで、誰もそれを受け止めてくれるとは思えなかったとしても不思議ではない。
 自己責任論は、人を黙らせるもの。活動は、人を喋らせるもの。
 著者の提起を受け止め、私も著者のいうような活動家になりたいと改めて思いました。
 
(2009年11月刊。1200円+税)

山田洋次

カテゴリー:社会

著者 新田 匡央、 出版 ダイヤモンド社
 映画『おとうと』を見ました。世間から鼻つまみ者にされている弟を姉が最後まで面倒みるストーリーです。笑いながらも涙を流してしまいました。すごいものです。山田洋次監督の技のすごさに、今さらながら感嘆しました。『母べえ』と同じく、心が洗われ、すっきりした思いで雨のなか帰路につきました。
 この映画には「みどりのいえ」というホスピスが登場します。ほとんどボランティアで運営されている施設のようです。私は申し訳ないことに知りませんでした。こんな施設が存在すること、そして、それを大勢のボランティア・スタッフが支えていることは、もっと世の中に知られていいことだと思いました。その点でも、山田監督はすごいと思いますし、この映画を見る意味があります。ぜひ、みなさん映画館に足を運んで見てください。
 せめて映画館に入る時くらい、このむごい世の定めを忘れたい、と観客は願っている。そんな思いに応える映画をつくるためには、スタッフは皆仲良くなければいけない。仕事を楽しくしなければならない。
 山田監督の映画作りのときには、出演を予定していない人もふくめて、みんなで芝居を見て、役者を励まそうと呼び掛けられる。出演しない人が、外でタバコを吸って一服しているということはない。
 山田監督は、脚本に描かれたことだけを撮影すれば事足りるという姿勢に与しない。
 山田監督の指示どおりにスタッフが動くことを、山田洋次は嫌う。
 監督から言われたとおりにはするな。いや、だったら、こうしたほうがいいんじゃないかと提案すべきなんだ。山田洋次は提案者を待っている。ただし、悩みに悩んだ提案者だ。単に、「いまどきの若者はそんなことは言わない」と批判するのでは足りない。山田洋次はそれでは絶対に納得しない。なぜ言われないのか、どうして昔のような言い方がいけないのか。現在の社会はどういう状況にあるのか、そのなかで若者の生態はどうなっているのか。そして、観客が何を求め、観客に何を伝えるのか。理由とともに具体的な提案をすれば、山田洋次は決して否定しない。採用しなくても、なぜ提案を採用しないのか、必ず考える。
 映画の成否はシナリオの出来が6割を占める。次いで俳優のキャスティングで、これが3割の重要性を持つ。だから映画監督のできることは実は微々たる割合しかない。
 ぼくたちは全部ウソをついている。これが映画の極意。何のためにウソをつくか。映画を見る人達も騙されようと思って騙されている。でも、上手く騙してくれないと怒る。ありえないウソだといって……。
 より真実を描くためにウソをついている人だ。
 これは山田洋次の言葉です。なるほど、そうなんですよね。
 著者はこの本が初めての単行本だということですが、映画『おとうと』の出来上がる過程をよくとらえています。凄い技を持っていると感嘆・感激・感謝します。これからも大いにがんばってください。
 
(2010年1月刊。1500円+税)

天下りの研究

カテゴリー:社会

著者 中野 雅至、 出版 明石書店
530頁を超える大部な研究書です。この本を読んで、まず驚いたことは、天下りという言葉が最近のものであって、戦前にはなく、その定義も一定していないということです。民間の大企業でも関連会社への天下りがありますから、なるほど定義するのは難しいと思いました。
「広辞苑」に天下りが初めて登場するのは1979年だというのです。その前の1955年版には、「天降り」という言葉でした。ただ、天下りは日本だけではなく、私の愛するフランスはもっとすごいようです。フランスでは、製造業の会社のトップ15位のうち、12社までが官界から来た人間によって経営されています。官僚が企業トップに転身するのが当たり前になっているのです。これらの官僚は、グランゼコルというスーパー大学院の卒業生です。
「天下り」に否定的なニュアンスがあるのは、本来、天下りする者には相当の実力があり、天下る先の様相を大きく変えるような存在でなければいけないが、現実には、まったくこれと異なっている現実があるからだ。
国家公務員については、離職後2年間は営利企業への再就職が国家公務員法103条によって規制されている。しかし、地方公務員法には同様の規定はなく、私企業への再就職についての規制はない。
天下りは必ずしも高級官僚に限定されない。ノンキャリア企業の民間企業への天下りが、相当露骨に行われている、
天下り人の再就職は一度では終わらない。二度目、三度目の天下りが行われるのが一般的であり、「わたり」などと呼ばれる。
平成になってからは、天下り批判を避けるため、緊急避難的に用意されている座布団機関を経由する再就職も多い。
防衛省は豊富な天下り先を持っている。平成19年に退職した制服組155人のうち、再就職した148人について見てみると、顧問として40人、嘱託として36人いる。これは、経営中枢というより、防衛省と何らかのコネクションを期待しているもの。
アメリカの軍需産業は、政界中枢と癒着して、アメリカの政治を動かしていると言われていますが、日本でもアメリカほどではないとしても同じ構図です。
事務次官経験者の多くが非営利法人に天下る。それは傷つかない、社会的地位があるという基準にもとづく。つまり、個々人の能力を再利用しようという能力本位の視点からではない。
JAF自身は否定しているが、JAFには全額出資した子会社があり、監督官庁である警察庁・運輸省の天下り官僚が子会社の役員を兼任することで、二重に報酬を受け取っているとみられている。
天下り先における給料は、原給保証である。つまり、辞めたときを上回るようになっている。また、同窓会相場というのもある。東大法学部卒で民間企業に就職した同窓生の収入相場を、東大法学部卒の多い官僚の収入が下回らないようにしている。
審議会委員の報酬のもっとも高いのは、自給換算で43万7000円となっている。日本は必ずしも公務員が多いわけではなく、むしろ先進国では最も少ない。
1000人あたりの公務員はフランスが1位で87.1人、2位のイギリス79.1人、3位のアメリカ78人、4位のドイツ54.9人。これに対して日本は32.5人でしかない。
天下りを受け入れる側にとってのメリットは情報の入手とコネクションの形成にある。退職公務員の知識・能力ではなく、その培った役所内での人間関係を利用できること。中央官庁だと、その仕事の幅の広さにある。
人事課長よりも上のポストである事務局次官や局長については、官房長が扱い、課長クラスのキャリア退職者は官房人事課長が扱い、ノンキャリアは官房人事課の職員や原局の人事担当者が扱うというような役割分担がある。
大蔵省OBは大蔵同友会に入るが、大蔵同友会の人事も現役人事と一緒に組織的に決定している。同友会の会員は1人3回は天下り先を斡旋される。叙勲の対象となる70歳をゴールとするのが目安。1カ所5年として、55歳から50歳まで15年だから、都合3回となる。
なるほど、官僚の天下りというのはこんな仕組みになっているのかと認識することができました。大変に貴重な労作として紹介します。
(2009年10月刊。2800円+税)

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