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カテゴリー: 社会

原発崩壊

カテゴリー:社会

著者   明石 昇二郎 、 出版   金曜日
 この本を読んで、既に10年前にフクシマと同じような事態がハマオカで起きたと想定して、どのような事態になるか週刊誌がシミュレーションしていたことを初めて知りました。
 2001年3月の「サンデー毎日」です。4週にわたって、「シミュレーション・ノンフィクション、『原発震災』」という連載記事です。東海大地震が起きて、中部電力浜岡原発で大事故が発生したら、日本がどうなるかをシミュレーションしました。ハマオカをフクシマに置き換えると、今回の3.11震災事故の実況中継になってしまいます。
 浜岡原発の事故は、殺人レベルの放射線を放ちながら移動する「放射能雲」を生み出した。折から吹いていた南西の風に乗り、時速14キロという自転車くらいの速度で、ゆっくり首都・東京を目ざす。放射能雲が上空を通過したからといって、バタバタ死んでいくわけではない。やみくもに動き回るほうが、かえって危険だ。
 通過予想地域とされた地区の住民は、危険が刻々と迫り来るなか、今すぐ逃げるべきかどうか、それともここにとどまるべきかの判断に迷う。せめて子どもにだけでも甲状腺被害を防ぐためのヨウ素剤を服用させるべきだが、とても足りない。
 昼夜動きを止めないはずの1200万都市・東京から人影が突如として消え、沈黙の時が流れる。その結果、交通機関をはじめとする都市機能や企業などの経済活動が完全に麻痺してしまった。原発事故発生から半日以上が経過し、「雲」は消失して放射性ガス群へと変わっていた。しかし、肉眼で見ることができないだけで、そこには確実に大量の放射能が漂っていた。
 見えない「雲」が太平洋上に去ったとき、静寂に包まれていた東京は一転して、大パニックに陥った。これ以上の被曝を恐れた人々が、東京からの脱出を一斉に開始したのだ。
 東京の汚染レベルは、7日後に都民全員が避難したとしても、210万人全員がガンで死亡するほどのものであり、東京に住むすべての人が避難対象となった。その場にとどまり続ければその分だけ、発ガンのリスクは増していく。
東名高速で西に逃げる人は一人としていない。事故を起こした浜岡原発に自ら近づいていくことになるからだ。
 政府の原子力災害被害本部は原発震災発生の翌日、東京から大阪に移された。
 震災発生後、1週間たって、東京は完全なゴーストタウンと化し、人の住めない東京の不動産物価はゼロとなった。原発震災による損害額は1週間で天文学的な数字に達し、世界恐慌すら懸念され始めた。
 浜岡原発の放射能を封じこめるため、決死隊が募られた。人海戦術しかない。第一陣の決死隊は5000人。最終的には数万人規模と予測される。ソ連のチェルノブイリ原発事故のときには86万人が作業に従事し、5万5000人が死亡したと伝えられている。
 今回の3.11フクシマ原発事故による放射能雲が東京に飛来したことは間違いありません。東京に人が住めなくなったら日本経済の中枢が破壊されたことになります。こんな狭い日本に50あまりも危険な原発をつくるなんて狂っていますよね。電力不足なんて問題じゃありません。すぐにも脱原発に切り換えましょう。
(2011年5月刊。1500円+税)

書くことが思いつかない人のための文章教室

カテゴリー:社会

著者   近藤 勝重 、 出版   幻冬舎新書
 書くことが大好きで、いつもモノカキと名乗っていますので、少しでも文章表現の幅を増やしたいと思っています。文章絵本も、そんなわけで、ときどき読みます。この本にも、参考になるところがたくさんありました。この本で示された例題については、あまり出来が良くなかったのが残念です。
書くって、しんどいと言えばしんどい作業だ。でも、書いたことで意外な発見があったり、人生の進路や生き方の再発見があったり、得られるものは貴重だ。それに、文句一つ言わずに自分を受け入れてくれるのは、文章のほかにそれほどたくさんはない。書いて、もやもやした気持ちを晴らす。
 これは、そのとおりだというのが私の実感でもあります。気力と、それを支える体力がなければ、この書評を書くことなんて出来ません。その意味で、この10年間よくぞ続いているものだと、我ながら感心します。
 全体から部分へ、そして細部へと三点注視で目を移すのが肝要だ。とりわけ細部である。全体の感じは、誰が見てもそんなに変わるものではない。でも、部分からさらに細部を気をつけて見ているかどうかの差は歴然と出る。細部には、そこに本質や表面から分からない実態が潜んでいることがある。そのことに気がつく、気がつかないという差は大きい。
 細部にこそ、物事の神は宿る、よくこのように言われますよね。
文章力をつけるには、思う、考える、感じる、を多用しないこと。それを他の表現に変えてみる。それで、文章が客観的になり、かつすっきりする効果がある。
 私も努力しているところです。なかなか難しいのですが・・・。
(2011年6月刊。760円+税)

原発の闇

カテゴリー:社会

著者  赤旗編集局    、 出版  新日本出版社  
 その源流と野望を暴く、こんなサブタイトルのついた本です。
 佐賀県の古川知事がやらせメールの発端なのは明らかだと思いますが、古川知事は辞めませんし、九電の会長も社長も居座ったままです。それどころか、国会はベトナムなどへの原発輸出を認可するなど、この国はいったいどうなっているのか、不思議かつ奇怪と言うほかありません。ドイツのようにすんなり脱原発と動き出さない、出せないほどの利権のしがらみは大きいということなのでしょうね。
 玄海原発訴訟の原告への加入を訴えると、家族に九州電力の関係者がいたら、まるで話になりません。それだけ九電が怖い存在なのですね。
停電は困るが、原子力はいやだ、という無視のいいことを言っているのが大衆である。
 繰り返し繰り返し広報が必要である。新聞記者も、読者は3日すれば忘れる。繰り返し書くことによって、刷り込み効果がでる。政府は原発容認意識を国民に刷り込んできた。原発推進のために税金からでている原発の広報費は毎年60億円規模にのぼる。すごいですよね。この60億円が福祉にまわせたら助かる国民がどれだけいるでしょうか・・・・。
 60億円の広報費によって恩恵を受けているのは、大手広告代理店の電通、博報堂そして産経新聞社などである。メディア業界にとって、電力会社はスポンサーとして超優良企業である。大手メディアは、完全に電力業界に取り込まれている状況にある。
いやですね。自民党は電力会社本体が支え、民主党は電力労連が支えていて、どちらも脱原発を明確に言い切れないのです。困ったことです。
 会社も労組も、人あっての企業であり、組合であると思うのですが・・・・。
(2011年11月刊。1200円+税)

仏教、本当の教え

カテゴリー:社会

著者  植木 雅俊  、 出版  中公新書  
 目からウロコの仏教の本です。
 歴史上の人物としての釈尊はまったく女性を差別していなかった、釈尊在世のころの原始(初期)仏教の段階では、女性出家者たちが男性と対等にはつらつとした姿で修行に励んでいた。ところが、中国に入ったとき、男尊女卑の儒教倫理を重んずることから、女性を重視した箇所が翻訳改変されていった。
インド人はみんな北枕で寝ている。北枕で寝るのは日本と違って、生活習慣なのである。中国には北枕という言葉自体がない。
結婚式に、インド人は蓮の花を持参する。もっとも目出たい花として。
現在のインドには、仏教徒は人口の0.8%しかいない。
仏教の三つの特徴。
第1.仏教は徹底して平等を説いた。
第2.仏教は迷信やドグマや占いなどを徹底して排除した。
第3.仏教は西洋的な倫理観を説かなかった。
   仏教徒は最後までカースト制度を承認しなかった。これがインドに仏教が根をおろせなかった理由の一つになっている。釈尊は、人を賤しくするのも、貴くするのも、その人の行為いかんによるとして、「生まれ」による差別を否定した。
釈尊の弟子のなかに女性出家者が13人、在家の女性が10人いた。これらの女性の名前が、中国そして日本に伝わることなく削除された。教団の権威主義化にともない、在家や女性は軽視されはじめた。
  仏教は「道に迷ったもの」に正しい方角を指し示すものであって、道を歩くのは本人であるという前提がある。仏教は暗闇のなかで燈火を掲げるようなものだ。なーるほど、これだったら、仏教を信じたくなりますよね。
 ところが、日本には、分からないことイコールありがたいことという変な思想がある。そうなんですよね。わけの分からない教えだからこそありがたいというわけです。いわば呪術的に信仰するのです。これでは広がりがあろうはずはありません。だって、要するに分からないのですから。
釈尊は王制ではなく、共和制を重視していた。日本では仏教用語や哲学用語が、安易でおかしな方向に引きずられてしまいがちだ。哲学的・思想的対決を真剣にやろうという姿勢があまりない。
 サンスクリット語の原典からひもといて、中国の訳そして日本語訳を比較して論じられています。すごい学者です。巻末の著者紹介をみると、ほとんど同世代ではありますが、私より若いということに衝撃すら覚えました。学者は偉いです。
 あなたもぜひ手にとってご一読ください。仏教を語れなくて日本人とは言えませんからね。
(2011年11月刊。800円+税)

暴力団

カテゴリー:社会

著者   溝口 敦 、 出版   新潮新書
 私の住む町では、暴力団員のことをヨゴレとも言います。まさに、社会の汚れた部分です。でも、大企業を先頭として、日本人は暴力団をすぐに「利用」したがります。もちろん、財界だけではありません。政治家も芸能界も暴力団との結びつき(汚染度)はとても濃厚です。ゼネコンは暴力団抜きには存在自体がないのではないかと思えるほどです。
 日本社会の暴力団とアメリカ社会のマフィアとの最大の違いは、公然性と非公然性にある。アメリカの組織犯罪は、まさしく徹底した秘密組織である。ところが、日本では、暴力団が事務所を町の一等地に堂々と開設している。
 アメリカのことは知りませんが、日本では暴力団事務所は町なかに堂々オープンしています。神戸にある山口組本部の事務所は神戸地裁のすぐ近くにあるようですね。
 私の住んでいる町でも、天下の大企業が戦前より一貫して暴力団を養ってきたことで有名です。労働争議の起きたときには、子飼いの組員がドスを持って労働者を脅しまわり、ついには殺傷事件まで起こしました。
 この本にも指摘されていますが、公共事業の結合も暴力団が裏で取り仕切っているのが実態です。市長と市議会議長そして警察署長が肩を並べて暴力追放パレードを時折していますが、ほんの形ばかりです。決して本気で談合を取り締まったり、暴力団を壊滅させようとはしていません。残念です。
 暴力団が強いのは、なんといってもお金を持っているからです。この本は、暴力団は今や青息吐息としていますが、不景気の続く私の町でも暴力団だけは、なぜか依然として金まわりが良いのです。覚醒剤だけでなく、みかじめ料そしてヤミ金などのあがりがあって、さらに夜の街を支配しているからなのでしょう。
 この本によると、産業処理業も、うまい事業のようです。
暴力団員は長生きできない。たとえば、刺青を入れると、そのためC型肝炎に感染することが多い。針やインクを使い回すからだ。肝臓病や糖尿病も多い。
 暴力団は辞めたい、抜けたいという者をあっさりとは認めない。脅し、難題を吹っかけて、お金を巻きあげようとする。組員の暴力団からの離脱は、脱サラの何倍も困難だ。
 組長でさえ、なかなか引退せず、組を抜けたがらないのは、実は抜けるのが恐ろしいから。組を抜けるともとの若い衆は寄りつかないどころか、逆に元の親分からお金をむしり取ろうとする。元組長は、お金をよほど巧妙に隠していないと、元子分の若い者に食われ、丸裸にされてしまう。
 組を辞めた者に対しては徹底的に踏みつけにして、びた一文残さないほど、むしり取る。これが日本の暴力団の流儀である。やめた者は裏切り者だという認識がある。うへーっ、これって怖いですね。元組長って、安穏と隠退生活を楽しんでいるものとばかり思っていました。
 日本の暴力団対策法は、暴力団と警察が共存共栄を図る法律ではないのか。なぜ、暴力団は違法だと国会は頭から決めつけなかったのか・・・?
 暴力団という組織犯罪集団の存在を認める法律を持っているのは、世界広しといえども日本だけである。
 うむむ、暴対法って、やっぱり暴力団の存在を前提とした法律なのですね。おかしなことですね。暴力団とは関わりたくはありませんが、仕事上で、どうしても時折、接触せざるをえません。チンピラのすご味もそこそこ脅威です。暴力団の実態を知る手引書として一読の価値があります。
(2011年6月刊。760円+税)

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