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カテゴリー: 社会

幕が上がる

カテゴリー:社会

著者  平田 オリザ 、 出版  講談社
爽快な気分にさせてくれる青春小説でした。
 高校生がマラソンでも合唱コンクールでもなくて、演劇コンクールに出場する話です。
 立派な大人が高校生の演劇部を描いても、この本のように現代高校生の気分を見事に反映できるものなんだと改めて驚嘆したことでした。
 もちろん、高校生たちにも綿密な取材をしたのでしょうね。結論は見えているようなものなのですが、そこに至る経過が若者の心理と置かれている社会環境(入試など)を反映した会話とともに、生き生きと描かれているので、作中人物になりきってしまえるのです。ここらは作家の腕前ですね。
東京近郊の海のない県にある高校という設定です。山梨県のつもりで私は読みすすめました。演劇に関心があり、大学でも演劇部に入りたいという高校生が主人公です。ここらあたりは私には無縁の世界です。私にとって、音楽も劇も自分の人生にはまるで向かない分野でしかありません。映画をみるのは大好きなのですが、コンサートも劇も久しく縁がありません。
部員の少ない弱小演劇部に福顧問として若い女性美術教師が就任したことから、話は急転回をとげます。なんと、その女性教師は大学時代に演劇の女王だったというのです。
 高校演劇はクラブ全体の力が集まらないと勝てない。俳優はそんなにうまくならない。だから、本当にうまい顧問の創作劇は、下手だけどがんばっている子には、短いセリフで確実に受けがとれたり泣かせるような役をつくる。
 静か系というのは、静かな演劇といって、大体、日常生活を描いている。
 口語系というのは、セリフはリアルで、話がちょっとファンタジーとか、ファンタジーでなくてもリアルでないとか・・・。
 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を題材にした演劇を主人公につくりあげていく過程がまた読ませます。これは、ベースに宮沢賢治のイメージがあるのでぴんと来るのでしょうね。
 久しぶりに心の洗われる思いのする本でした。
(2012年11月刊。1300円+税)

原発・正力・CIA

カテゴリー:社会

著者  有馬 哲夫 、 出版  新潮新書
読売新聞は、日本最大の発行部数を誇る新聞ですが、同時に改憲を積極的に主張するなど露骨に財界、右より姿勢を示しています。とても不偏、不党とは言えない紙面になっています。
その社主であった正力松太郎は、CIAの日本エージェントとして、ポダムという暗号名までついていました。CIAとは持ちつ持たれつの関係だったようです。
正力松太郎は総理大臣を目ざしていた。そのためには政治目標が必要だった。それが原子力だった。原子力を手に入れたら、手っ取り早く財界と政界に影響力をもつことができる。いや、直接、政治資金と派閥が手に入るという点で、新聞以上の切り札だった。
 アメリカの援助を背景に原子力発電所を建設し、数年以内に営業運転まで持っていけば、政治キャリアのほとんどない正力でも総理大臣になるのも夢ではない。原子力平和利用推進は、正力にとってまさしく夢を現実にする魔法の切り札だった。
 アメリカの在日情報機関は、第五福竜丸事件のあとに澎湃とわき起こった原水禁・反米運動によって窮地に立たされた。アメリカによる日本占領の終結以来、最大の心理作戦上の大敗北であった。このため、米国情報機関は右よりの読売新聞グループを頼りにした。
 CIA文書には次のようになっている。以下の要件で、ポダム(正力松太郎)の使用を許可する。メディアの分野で、日本の政治的な出来事や傾向、メディアや進部員の関係者についての情報を得るための使用。
うひゃあ、まさしく正力松太郎と読売新聞はCIAの思うままに操られていたのですね。
 正力のメディア帝国は、日本でもっとも中央集権的で、したがってもっともコントロールしやすく、大衆の心をかきたてるという点では、もっとも影響力が強い。
 これもCIA文書の言葉です。
原子力平和利用博覧会が大成功し、正力の態度がいよいよ尊大になると、CIAは正力に対する警戒を強め、関係を見直そうと動きが出ていた。
 そして、ついに正力とCIAは対決するに至ったのです。
 正力は、これまでアメリカの頼みをやめ、イギリスにパートナーを換えることを決断した。CIA文書は、アメリカ側との交渉が決裂したことが、正力をイギリス製の原子炉の購入に走らせたと分析している。そのころ、読売新聞はアメリカの外交に批判的な記事を連続してのせていた。アメリカ型の原発を日本に導入した正力松太郎にまつわる裏話が満載の本でした。
 3.11の前に書かれていることもあって、原発の恐ろしさについてはまったく触れられていません。その目から見直す必要があると思いました。
 それにしても、読売新聞ってCIAにずっと操作されていたような新聞なんですね。どうりで、アメリカべったりというのもよく理解できます。でも、嫌ですね。やっぱり、マスコミには日本の自主性を主張してほしいものですよ。
(2011年6月刊。720円+税)

ホンダ・イノベーションの神髄

カテゴリー:社会

著者   小林 三郎 、 出版   日経BP社 
 この本を読んで、車のエアバッグは火薬によって膨らまされていることを知りました。そして、高圧の窒素ガスを使うよりも火薬のほうがより安全だというのです。これには驚きました。
高圧ガスは圧縮されているので、物理的に常に高いエネルギーを保持した状態にある。それが故障で開放されたら重大な事態を生む。ところが、火薬は火が付かない限りエネルギーはもっていない。これなら暴発に至る故障モードが少ないし、点検作業も安全にできる。火薬のほうが、ともかく故障しにくい。エアバッグのような安全装置は、万一の衝突のときに絶対故障しないのが絶対の価値なのだ。その仕組みは、火薬が爆発的に燃焼して、大量の窒素ガスを発生させ、エアバッグを瞬時に膨張させる。
 そして、エアバッグは故障率100万分の1の技術を実現した。いやあ、たいしたものです。エアバッグの設計における基本は、システムを可能な限りシンプルにしておくこと。そのためには部品数を最小限に抑え、接続箇所も極力少なくする。
 部品の不良が発生しても、トレーサビリティーのシステムによってその部品を追跡できるようにしておけば、被害は最小限におさえられる。
 成果主義をとり入れたらイノベーションは全部止まってしまう。
イノベーションは、基本的に成功か失敗だ。しかも、10年かけたうえで失敗に終わることも珍しくない。イノベーションには、記憶力と論理分析力にこりかたまった人材は不適だ。それらもある程度は必要だが、それだけではダメ。たとえ何回失敗しても、長い時間がかかっても絶対価値の実現に挑戦し続ける人こそ、イノベーションに向いている。今の日本の教育は、こうした人を排除する方向にある。だから、ホンダでは学歴無用だ。
 イノベーションには掟がある。40歳を過ぎても不別のある、でも頭の固くなりつつある人は、自分でイノベーションをやろうとしてはならない。イノベーション力のある若い人に考えさせる。
 ところが、若い人は知識と経験が少ないので、提案の大半は役に立たない。そこで、技術の価値や実現可能性を見抜くのが40歳を過ぎたベテランの非常に重要な役割だ。
 とても新鮮な刺激にみちたビジネス書でした。成果主義でうまくいった会社なんてないとよく言われますよね。なるほど、と思いました。
(2012年7月刊。1800円+税)

北斎

カテゴリー:社会

著者   大久保 純一 、 出版    岩波新書 
 カラー版の楽しい新書です。新書ながらも、浮世絵の素晴らしさをしっかり堪能することができました。さすがは北斎です。すばらしい絵に目を見張るばかりです。
 1988年、アメリカのグラフ誌『ライフ』が世界の人物100人をあげたうち、日本人では北斎がただ一人上げられていた。
北斎は、めまぐるしく画号を変えた。93度にも及ぶ異常なまでの転居癖。
 浮世絵風景画の代表作は「富嶽三十六景」。絵手本の代表作「北斎漫画」。この「漫画」は現代のコミックとはまったく異なるもの。
 浮世絵で、両国の花火大会を描いた絵は、その大きな構図といい群衆場面といい、さすが描写が驚嘆するほど細かい。
ヨーロッパ彫刻画(エッチング)の影響もあります。いいものは、すばやく取り入れたようです。「富嶽三十六景」の富士山を大波が襲いかかろうとする構図の大胆さには胆を抜かれます。また、あざやかなブルーを使った海洋図も、すごい迫力です。ベロ藍というそうです。
 浮世絵の到達した境地は、世界中に響きわたったのでした。
(2012年5月刊。1000円+税)

プラスチックスープの海

カテゴリー:社会

著者   チャールズ・モア 、 出版   NHK出版 
 いま、世界中の海がこんなにもプラスチックに汚されているなんて、まったく知りませんでした。衝撃的な事実です。
豊かで秩序だった自然が、いま増加する一方の永続的プラスチックによって海洋も陸も汚染されている。海洋のプラスチックはほとんど取り除けないし、すぐには消滅もしない、海と美しいビーチに、未来永劫、醜い姿をとどめるだろう。
プラスチックは腐敗が遅い。現実的な時間枠の中では生分解しない。熱や化学反応で結合された炭化水素である人口の重合体(ポリマー)は非常に強く、分解されにくい化学物質である。プラスチック製品は割れて破片になり、やがてナノ粒子となって幾世期も環境を汚染し続ける。
現在、ポリエチレンの年間生産量は4000万トン。ポリエチレンフィルムがラップフィルムの中では圧倒的シェアを占め、世界中で8000万トンが製造されている。50億個ものライター、ペン、シェーバーから3000万トンのプラスチックが生じている。ペットボトルのキャップふたは年間1兆個生産されている。ボトル入りの水は年間5000億本も製造されている。1970年にはゼロだったレジ袋が、2011年には5000億枚になった。
 アメリカでは生産業の上位5社はプラスチック業界と化学業界が占めている。コカ・コーラ社は、ペットボトル入りの飲料を毎日、15億本も提供している。
北太平洋環流には、重量で動物プランクトンの6倍のプラスチックが存在することが判明している。
コアホウドリの幼鳥は、毎年10万羽死んでいるが、その4%にあたる4万羽はプラスチックの誤食によるもの。アホウドリのごちそうであるトビウオの卵は浮遊ごみの上によく漂っているが、今や、それはたいていプラスチックである。アホウドリの不運は、好みの食べ物がプラスチックにとても似ていることである。ぴかぴか光り、色鮮やかで、ぴょこぴょこ浮く。1963年の調査では、アホウドリの73%がプラスチックをのみこんでいた。
1983年の調査によると、コアホウドリの幼鳥の死体の90%にプラスチックが見出され、摂取されたプラスチックの重量は。1963年に1.87グラムだったのが、76.7グラムに激増している。幼鳥の98%からプラスチックが発見された。
解剖したウミガメの80%の内臓に海洋ゴミが見出され、そのほとんどがプラスチックだった。ウミガメは、好物のクラゲとレジ袋を間違えやすい。
プラスチックゴミが増えることは、食物連鎖に毒物が取り込まれる可能性を高め、その毒物はやがて人間にとりこまれていく。
 恐ろしい現実ですね。スーパーのレジ袋だって大いに減らす必要があるというわけです。身の回りを振り返る必要があります。
(2012年8月刊。1900円+税)

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