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カテゴリー: 社会

原発難民

カテゴリー:社会

著者  鳥賀陽 弘道 、 出版  PHP新書
この本を読んで驚き、かつ、呆れたことは次のくだりです。なーんだ、政府(菅首相以下)も東電も法律に反していたことは明らかじゃないか。改めて怒りを覚えました。
原子力災害対策特別措置法15条に定められたとおり、福島第一原発が政府に「緊急事態」の通報を3月11日午後4時45分にした時点で、放射能格納容器が壊れることを想定し、住民非難を指示しなければいけなかった。すなわち、放射性物質が外に漏れ出すことを考えて、住民を避難させなければならなかった。
 安定ヨウ素剤を子どもにのませるのは、被曝から24時間以内でないと効果が急激に下がる。格納容器が壊れてから飲んでも意味がない。「壊れそうだ」という時点で飲ませなければいけない。
 メルトダウンがあったのか、なかったのかという論争は、住民避難の観点からは、枝葉末節でしかない。寺板信昭・原子力安全・保安院長は、15条通通報が出たのだから、ただちに緊急事態を宣言し、住民避難を開始してくださいと菅首相に進言すべきだった。15条通報の段階では、原子力のなかでどうなっているのか、メルトダウンしているかどうかは分からない。分からなくても、15条通報があったら、住民の避難を開始すべきだった。
 このとき、東電は事態をまだ楽観視していて、廃炉になるとは思っていない。菅首相などの政府首脳も、それは同じこと。だから、ずっとずっと後手後手にまわってしまい、犠牲者を増やしてしまった。
東電、原子力安全・保安委員そして政府(菅首相)は、なんとかして廃炉になるのを避けたいと思っていた。原子炉を助けようとして、住民のことを忘れていた。
 巨大な資産だった原発が、一気に価値ゼロの廃棄物になるため、バランスシートが急激に悪化する。
 1号機を廃炉にする決断を早くしていれば2,3号機は助かったかもしれない。
1号機の水素爆発によって、放射能レベルが高くなったため、2,3号機に近づけなくなり、3月14日と15日に、メルトダウンを起こした。
全電源喪失や炉心溶融は、地震や津波と関係なく起きる現象である。格納容器は壊れないことにしてしまう。
日本の原発は、テロ、ミサイル攻撃そして誤操作などに対して十分に対策がとられているとは思えませんよね。恐ろしいことです。
(2012年11月刊。760円+税)

ルポ・子どもの貧困連鎖

カテゴリー:社会

著者  保坂渉・池谷孝司 、 出版  光文社
日本の子どもたちが、今、大切にされていないことが明らかにされています。安倍政権は教育改革と言っていますが、ここにこそ光をあてるべきだと思います。でも、やっていること、やろうとしていることは差別の拡大です。残念です。
文科省によると、高校の奨学金受給者は2007年度に15万2000人だったのが、2009年度は予算ベースで17万2000人に増えた。
 不況で大都市圏を中心に定時制受験者が急増し、多数の不合格者が出ている。希望すれば入れるのが定時制だったのに、学校が統廃合で減った。定員を増やし、門戸を開いてほしい。学びの最後のセーフティーネットがほろび始めている。
 文科省によると、定時制高校は1997年度に907校だったのが、2009年度は732校に減った。ところが、不況とともに新卒の志願者は増え、1997年度の2万367人から2009年度は3万989人になった。
 この数年、不況の深刻化で全日制の公立高校を落ちても経済的な事情で私立高に進めず、定時制の公立高を志望する生徒が激増している。定員を増やしても受験で不合格者が出て問題化するほどになった。
 困窮している高校生のなかには定期代や教科書にも事欠く子が大勢いる。公立高の授業料が無償になったとはいえ、私費負担はまだ大きい。途中でやめる子も多い。高校の実質的な無償化が必要である。
 教員がなぜこんなに疲れているかというと、ありとあらゆることが指導の対象だから。日本では、「○○指導」と言えば、何でも教員の守備範囲とみなされる。清掃指導、給食指導、下校指導、校外指導、みな教員がやらなければならない。それが、一番根幹のはずの授業に割ける時間、エネルギーを奪っている。担い過ぎているものを代わりに担当する人を付けていく必要がある。部活の指導者や図書館司書もちゃんと手配する細かい対処が必要である。しかし、政府は、手厚い公教育の提供をサボってきた。
 もっと国が教育に費用を投入する必要がある。所得税の累進制を大きくしたり、相続税を大幅にアップしたりして、富裕層からの再分配を拡充すべきだ。
 1955年に廃止された失業対策事業をリニューアルして、もう一度やるべきだ。仕事を探しても全然ないとき、高い賃金ではないけれど、ここに来たら当座の働き口はあるという場を公的につくる必要がある。
 これについては、私も大賛成です。働ける人は、みんな働きたいのです。
問題のある子どもや家庭を支援していく教育ケア会議の対象となる子どもの6割が生活保護世帯、一人親家庭も入れると7割になる。
虐待ケースでは身体的な虐待にいく前のネグレクトで発見できる比率が高い。野宿している若者は、母子家庭と虐待が多い。母子家庭で生活保護を受けていて帰れないとか、暴力がひどくて家には死んでも帰れないと言う。親を頼れない若者が、どんどん貧困、野宿になっている。
一人親家族や非正規雇用の家庭・虐待家庭が増えていることに学校も苦労している。そうした子どもたちの多くは、社会のスタートラインから不利な立場に置かれる。学校の保健室は子どもたちの駆け込み寺のような存在だ。
学校によっては、7割の子が虫歯で4割は死力が低下している。お金がないので歯医者に行けず、眼鏡を買えないという家庭が少なくない。
 保健室を利用する小学生は2006年度には一校あたり1日41人で、これは2001年度より5人も増えている。相談内容のうち、心の悩みが41%にのぼる(9%増)。うつ病やそううつ病など、「気分障害」の患者は1999年に44万人だったが、2008年には104万人、2.4倍に急増した。
 一時保護は、児童相談所が虐待や非行などで緊急に収容の必要のある子どもや、養育者のいない子どもを保護する制度。対象は18歳未満で、全国に125ヶ所ある一時保護所に2ヵ月内をめどに入所させる。2008年度の受付件数は2万件ほど。
 かつては日本の子どもほど親に愛され、大切にされている子どもはいない、このように絶賛されていましたが、今では悲惨な状況に置かれているのですね。
 安倍首相の教育改革は、こんな実情に目をふさいで、国のいいなりになる強い子どもを育成しようというものです。とんでもない改革ですよね。
(2012年8月刊。1600円+税)

検証・尖閣問題

カテゴリー:社会

著者  孫崎 享 、 出版  岩波書店
無責任なマスコミと評論家が日本と中国が今戦争したらどちらが勝つか、などの特集を組んだりして放言しています。そして、日本の自衛隊が勝つと断言する人までいて、呆れてモノが言えません。
 日本と中国が戦争するなんて、大変なことです。本当に戦争になれば島をめぐっての局地戦ですむはずもありませんし、日本が勝てるなんて、ありうるわけではないでしょう。アメリカが日本を応援してくれるはずだという幻想に浸っている人が多いのにも困ります。
 アメリカは「日中戦争」をある意味でけしかけ、また、「仲裁」には乗り出すでしょうが、それはあくまでアメリカの国益にそった行動でしかありえません。アメリカが日本を無条件に応援するというのは、まるで考えられないことです。
 多くの日本人は中国軍が弱体だと思っている。しかし、戦闘機とミサイルをかけあわせたとき、日本側が中国に勝つというシナリオはない。同じく、在日アメリカ軍も中国と戦争して勝てるという状況ではない。現時点で軍事費は日本1対中国3くらいの差がある。
 戦闘が起これば、海軍対海軍では終わらない。空軍が出る。ミサイル部隊が出てくる。そのとき、日本の勝ち目はない。
 まったく、そのとおりでしょう。なにしろ、物量に圧倒的な差があるのです。日本が尖閣諸島周辺で軍事行動をとれば、中国は必ずそれに呼応する。軍事力勝負で日本が長期的に勝てるというシナリオはない。
 こちらが軍備を増せば、相手国は当然増す。今日の国際政治では、紛争を避けることに多くの国は利益を見出している。国連憲章には集団的自衛権の規定がある。しかし、自民党の提起する集団的自衛権はそれとは異質なものだ。
 集団的自衛権を推進・主張する人は、国連で認められた権利であり、これを行使できないのはおかしいと主張する。しかし、これは間違いだ。
 国連憲章は、武力行使を相手国が軍事的攻撃をしたときに限定しようとしている。
 自民党などの主張する集団的自衛権は、先制攻撃の一部なのである。両者はまったく違うもの。
 尖閣諸島をめぐる領土紛争は棚上げすべきだと著者は強調しています。
棚上げは、双方が主権を主張するなか、互いの主権主張を認めつつ、軍事紛争への発展を阻止するために、両国では現状を凍結することを目ざしている。
 尖閣諸島を棚上げするのは、日本に有利である。
 まず第一に武力紛争を避けられる。日本の実効支配を中国が認めることになる。この実効支配が長期化すれば、国際法下で、日本の領有権が確定する。
著者は尖閣諸島が日本固有の領土と見ることができるのか、懐疑的です。それには、ポツダム宣言と、カイロ宣言を抜きには考えられないという意見です。
 無主の地であったこと、そして先占の法理が成り立つという主張にも疑問を投げかけています。いずれにせよ、領土紛争が武力紛争に発展しないような知恵と工夫が今求められていると思います。大変タイムリーな本です。
3月1日(金)夜6時から、福岡・天神の都久志会館で著者を招いた弁護士会主催の講演会が開かれます。ぜひ、ご参加ください。
(2012年12月刊。1600円+税)

金曜、官邸前抗議

カテゴリー:社会

著者  野間 易通 、 出版  河出書房新社
残念ながら、私はまだ金曜日夜の首相官邸前の抗議行動に参加したことはありません。霞ヶ関と日比谷公園には毎月行っているのですが・・・。
 そして、金曜夜の官邸前抗議行動をテレビも新聞もほとんど取りあげず、報道しないという真実に怒っています。芸能人の動きを一面トップで紹介する一方で、日本の将来を左右する原発反対の国民的大運動を無視するなんて、「社会の公器」が泣いてしまいますよね。
 この本は、金曜夜の官邸前抗議を主催する首都圏反原発連合の主要スタッフによる内側からの苦労話です。なるほど、ケガ人も逮捕者も出さずに、毎週、何万人もの人々の行動を「統制」するって、大変なんだろうなと思ったことでした。
 あまり参加人数が多すぎて危険な状態になったときには、警察の指揮官車のマイクとスピーカーを使った。もちろん、反原発メンバーが、です。とても考えられない事態です。
 それを警察権力との馴れあいすぎだと批判する人もいますが・・・。
この官邸前行動を報道するのは東京新聞と赤旗しんぶんだけ。なんということでしょうか・・・。テレビは、ずっとずっと無視するばかりでした。
 一番最初は300人しか集まらなかった(2012年3月29日)。いや、それだって、300人も集まったというべきだった。
 官邸前抗議は、公安条例にもとづく「デモ」ではない。デモ申請を出さず、歩道上で行われる。歩道には、必ず人が通れるスペースを残しておくのが「許可条件」。
 官邸に向けての抗議の声を上げる場であって、参加者に向けて語りかける集会の場ではない。話は1分以内。テーマは反原発のみ。
 参加者の半数は、ツイッターとフェイスブックを見て来る。しかし、団体から来る人も少なくない。そして、団体旗は、労組の旗をふくめて遠慮してもらう。これが軋轢も生んだ。個人参加を原則としているので、当然なのだが・・・。
 それでは、日の丸を掲げて参加するのは、どうなのか?
 いつまでも、日の丸をお上の象徴として忌避し続けるだけでは、自分たちの手で民主主義を実現するのは難しいのではないか。社会運動が日本の大衆の心情と乖離
しないように心がける必要があるのではないのか・・・。うむむ、なるほどと思わせる指摘ですね。
 警察はなぜ抗議運動を弾圧しないのか。子どもをふくんだ家族連れの参加者が多く、これを弾圧するのは得策ではないという判断が働いているのだろう。
 この人数じゃあ、機動隊は負ける。抑えきれない。
 ある刑事がホンネを語った。恐らく、そういうことだろう。
 見守り弁護団も40名をこえた。そして、ついに首都圏反原発連合の主要スタッフは野田首相と官邸内で会って、直接抗議の声を伝えた。私もこれは、とても大きな意義があるものだと思います。
 デモも世の中を動かすのです。従来の左翼的な大衆行動とは別の国民的なうねりを感じる新しい行動を見る思いがしました。これとは別に、労働組合が反原発運動は生存権に関わる課題として集会し、デモをし、さらにはストライキをしてもいい国民的課題だと思うのですが、いま残念ながら労働組合にその力がありませんね。
 ぜひ、一度この官邸前行動に参加したいものです。
(2012年12月刊。1700円+税)

外国人実習生

カテゴリー:社会

著者  指宿昭一・遠藤隆久ほか 、 出版  学習の友社
縫製工場に働く中国人技能実習生を取り巻く事件を現に扱っていますので、勉強のために読んでみました。チープ・レイバーとして、とんでもない人権侵害が日本各地で横行している現実を知りました。
 縫製工場に働く中国人技能実習生は、その大半が20歳前後の若い女性です。彼女らは、日本の縫製技術の習得とあわせて、お金を稼ぎに日本に来日します。ところが、時給200円とか300円という条件で働かせる企業が多いというのです。そして、日本並みの賃金を求めようなら、斉列させられて、ビンタを見舞われます。ビンタするのは、日本人女性(事務)という話も紹介されています。そして、メイド・イン・ジャパンの縫製といっても、実はメイド・イン・チャイニーズというのが実態だというのです。うひゃあ、ちっとも知りませんでした。
 1992年から2010年までに日本で死亡した研修生・実習生が265人いる。そのうち30%は脳・心臓疾患。ほとんどが過労死ではないか。
 名古屋のトヨタの四次元下請けで働くベトナム人実習生は、トイレに行った回数を書きこむ表が張り出してある。1回トイレに行ったら1分間で70円の罰金という。ええーっ、そ、それはないでしょう・・・。
 実習生・研修生が、日本全国に17万5000人いる(2011年)。東北6県だけでも1万人いた。2007年には、日本に7万人ほどだった中国の送り出し機関は一人あたり60~90万円の経費をとっている。
 大分で働いていた中国人労働者は、時給300円、1ヵ月250時間の残業、月の基本給は5万5000円。そして、月に4万円が強制貯金されていた。年間休日は15日間。パスポートも貯金通帳も取りあげられ、携帯電話の所持も禁止され、自由に外部へ連絡することもできなかった。
 こんなひどい労働現場は許せませんよね。
(2013年1月刊。1429円+税)

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