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カテゴリー: 社会

日米地位協定・入門

カテゴリー:社会

著者  前泊 博盛 、 出版  創元社
読めば読むほど、腹の立ってくる本です。いえ、この本の著者に対してではありません。この本に書かれている内容が問題なのです。
 いったい、はたして沖縄は日本なのか。なぜ、戦後70年たっても、アメリカ軍はまだ日本にいるのか。いやいや、日本は、これで本当に独立国家なのか・・・。
 胸に手をあてて、自問自答するとき、いずれのこたえも「ノー」でしょう。残念ながら、「ノー」と答えざるをえません。でも、本当にそれでよいのかと問い返されたら、もちろんそれでいいはずはありません。バカにするんじゃない。そう言ってやりたいじゃないですか。
 アメリカが日本を守ってくれるかなどという疑念をもつこと自体、アメリカに対して失礼である。これは、外務省の内部文書に書かれているものです。驚くではありませんか。これでは、日本は文字どおりアメリカの属国ですよね。
 オスプレイは日本の上空で平均150メートルで飛ぶことが認められている。と言うことは、日本の法令で定めた150メートル以下でもオスプレイは飛べるということですよね。だって、「平均」ということは、それ以下の高度でも飛べるということですからね。これって、恐ろしいことですよね。
 そして、野田首相は「アメリカ軍にどうしろ、こうしろとは言わない」と国会で公式答弁してしまいました。情けない日本国首相です。そして、今の安倍さんは、もっとひどいです・・・。
日米地位協定とは何か?
アメリカ占領期と同じように、日本に軍隊を配備し続けるためのとり決め。日本におけるアメリカ軍の強大な権益についてのとり決め。
 1952年、日本は独立した。しかし、それは、看板だけとりかえて、実質的には軍事占領状態が継続した。
 アメリカ軍関係者は一切の入国手続を省略して自由に日本に出入りすることができる。日本にあるアメリカ軍基地に出入りするときに自由なだけでなく、基地からの出入りについても、完全にノーチェック。だから、日本政府は、日本国内にアメリカ人が何人いるか把握することができない。日本のなかにアメリカ人がいて、あるべき国境がないというのですから、日本ってまるで植民地ですよね。
 日本にいるアメリカの将兵が3千人しか移住しないのに、日本政府はアメリカに対して8千人分の移住費用を支払う。もちろん、これは税金。
広大な横田基地は首都・東京にある。そして、首都圏の上空には「横田ラプコン」といわれる巨大なアメリカ軍の管理区域がある。だから、日本の民間航空機は無理な急旋回と急上昇を余儀なくされる。
アメリカ軍将兵が犯罪をおこしたとき、公務執行妨害、横領・詐欺などについては起訴率ゼロ、まったく罪に問われていない。もっと重大犯罪であっても、常にあまりに寛大すぎる判決が出るのみ。
アメリカ軍の飛行機が日本国内で事故を起こしたとき、基本的にアメリカ軍の指揮下にあって、日本国民もアメリカ軍の命令に従われなければならない。とんでもないことですよ。こんなこと、絶対に許せません。ところが、現実には日本の司法は、政府と同じようにアメリカ軍の前にひれ伏すばかり。
 日米安保条約を解消するのは簡単なこと。終了の意思を日本政府がアメリカ政府に通告したら、1年たつと自動的に終了する。
そんなバカなことと思う人には、フィリピンとイラクの実例が紹介されています。いずれも、アメリカ軍が渋々ながら撤退していきました。フィリピンでは、アメリカ軍基地跡は経済的に大繁栄しているとのことです。同じことは沖縄でもあります。おもろ町周辺の近代な町並みは、基地跡地ですよね。
 前に末浪靖司氏の本『対米従属の正体』(高文研)を紹介しました。その後も、続報が続いていますが、有名な伊達判決をひっくり返すため、最高裁の田中耕太郎長官が駐日アメリカ大使に裁判の内情を全部バラして、指導を受けていたのでした。先日の新聞によると田中長官は当然のことをしているだけ、アメリカ大使と話すことが裁判官としての守秘義務に反するとは思っていなかったとのこと。信じられない感覚です。
そして、この本によると、同じように最高検察庁もアメリカの指導するとおりに論告していたというのです。守秘義務をふみにじり、日本の主権を裏切った司法界のリーダーたちは許せません。今からでも遅くありません。必ず資格剥奪処分をすべきだと思います。こんな人たちが愛国心をもてと若者に説いていたなんて、まるでマンガです。腹が立って仕方がありません。高血圧の人にはおすすめしませんが、日本人の必読文献だと思います
(2013年4月刊。1500円+税)

大牟田と与論島

カテゴリー:社会

著者  堀 円治 、 出版  有明新報社
三池炭鉱のあった福岡県大牟田市には沖縄に近い与論島からの移住者の2世・3世が今もたくさん住んでいます。
 93歳になる著者は、世論2世です。その長男は私と同級生ですので、世論3世ということになります。1世は、与論島から集団移住してきて石炭の積み込み作業員をしていました。
 残念ながら、私はまだ与論島に行ったことはありません。奄美大島よりも沖縄本島に近い小さな島です。
 鹿児島空港からプロペラ機で1時間20分。丸いカタツムリに似た形をしている。河川はなく、サンゴ礁が風化した粘土質の土壌。与論島にとってもっとも怖いのは、台風という名の定期便であり、干ばつである。台風で農作物が全滅するとソテツの実で命をつなぐ。ソテツは猛毒なので、毒消し作業が必要である。
 干ばつのため餓死者が出るなか、明治32年から34年まで、3次にわたって合計750人が戸長を先頭に長崎県口之津へ移住した。当時の島の人口は7000人。家族を含めると島民の2割近い1200人が移住した。
 そして、明治43年、有明海を渡って、大牟田へ再移住した。石炭の積み込み作業に従事する。
 現在の三井港倶楽部の北側に三川分教場が置かれ、与論島移住者の子どもが学んだ。そして、昭和11年、川尻小学校に転入した。
 今も、大牟田には与論会があり、与論島との交流も続いているのです。
 堀さん、元気で、さらに長生きしてくださいね。
(2013年2月刊。1715円+税)

ブラックボックス

カテゴリー:社会

著者  篠田 節子 、 出版  朝日新聞出版
恐怖の食卓。サラダ工場のパートタイマー、野菜生産者、学校給食の栄養士は何を見たのか?
 食と環境の崩壊連鎖をあぶりだす、渾身の大型長編サスペンス。この本のオビに書かれているコピーです。週刊朝日に連載されていたとのこと。たしかに野菜を人工的に栽培するなんて、実は危険そのものなんですよね。完全管理型施設栽培のシステムなんて・・・。
太陽の光、土、緑の三点セットをありがたがるのは、農を知らない都会人や、高級住宅地に住んで市民農園を耕している趣味人の発想だ。
露地栽培では、それこそ食っていける農業なんて無理。そうなんですよね。私もちょっとばかり趣味人の野菜づくりをしています。それでも、農業を粗末にしたら生きていけませんよ。ですから、TPPなんて絶対反対です。なんでもお金を出せば買えるというものでは決してありません。額に汗する地道な努力こそ必要です。
 カット野菜。カットした野菜の洗浄殺菌には、次亜塩素酸ソーダを使う。切った野菜をそこに浸けたあと、水道水で洗浄し、さらに鮮度保持剤であるPH調整剤すなわちアスコルビン酸に浸け込む。そのカット野菜を盛りつけてサラダとする。
完全制御型ハイテク農場のなかでは、無数のバクテリアの生息する土は一切使わずセラミックがスポンジなど、作物ごとに異なる人口素材に肥料分を溶け込ませた溶液を用いて、作物がつくられる。空調装置を使い、外気は導入しないので、空気中の雑菌も入らない。考えられる限り、もっとも衛生的な環境でつくられる。無菌状態であるから、病気やムシも寄せつけない。だから、農薬はいらない。異物混入はありえず、出荷の段階で枯葉などが取り除かれるから、下ごしらえもいらない。
 しかし、どれほど厳重な衛生管理をされ、無菌状態で運ばれてきた野菜であっても、カットされた瞬間から、傷みは生じる。切り口から変色し、腐敗がはじまる。
 労働集約型のハイテク農場は地元の雇用創出をうながし、地域の活性化に貢献するはずだった。しかし、現実には地元の人間は働いていない。働いているのは法律で定められた最低賃金をはるかに下回る。研修手当で、事実上の労働をしている外国人ばかりだ。
 研修生のほとんど、アジアから来ていて、日本人はごく少ない。無菌・無農薬でつくられた野菜の味はすかすか。だから、得体の知れないアミノ酸やら合成ビタミンの微粒子をぶっかけられる。
読んでいくうちに、読めば読むほど怖くなる食物の話でした。それでも、今日もマック、ケンタの店も大盛況です。本当に私たちはこれでいいのでしょうか・・・。
(2013年1月刊。2100円+税)

権力vs調査報道

カテゴリー:社会

著者  高田昌幸・小里純 、 出版  旬報社
たまにある新聞のスクープは、時の日本社会に大変なショックを与えるものです。最近は、そんな報道がめっきり少なくなりました。それどことか、安倍首相がマスコミ(新聞、テレビ)のトップ(社長ほか)と、そして編集部長クラスまで個別に高級レストランなどで2時間も会食していることが曝露されました。日本のマスコミが、ますます権力機構の一員と化しつつあるようで残念です。でも、第一線の記者まで、すべてがそうではないでしょうから、その自浄努力にひたすら期待するばかりです。
 今から20年前、朝日新聞の広告年間収入は2000億円あった。読売新聞は1500億円。読売1000万部、朝日800万部の時代に朝日の広告単価が読売より非常に高いことから逆転現象がおきていた。それが、ついに朝日は逆転され、苦境に陥っている。
ニュースソースの秘匿とオフレコは守る。これは二大原則である。ニュースソースの対象が自ら名乗ったとしても、それにあわせて認めるようなことはしない。アメリカの有名な記者(ボブ・ウッドワード)がそれを破ったが、許されないこと。
 取材するときに録音するのは当然。了解をとらず、隠してテープを取っても非難されるべきことではない。私も弁護士として、隠しどり録音をいつも勧めています。問題になるのは内容だけなのです。
日本の朝日新聞に限らず、アメリカでも調査報道はまったく衰退している。
 ネット広告は紙の広告の10分1しかない。広告収入が200億円だと、記者が2000人いたら、人件費で全部消えてしまう。
 貴重な資料を入手したときにはコピーをそのまま発表することはない。文書の汚れ、染み、書き込みがあったら、情報源が特定されてしまう。だから、入手した文書の打ち直しは必須。文字の欠け文字ずれがあれば、そこから特定できる。入手して発表するまでに8年かかることもある。
 調査報道に欠かせないものは人間力。自分の興味本位だけで調査報道するのは、とても危険なこと。報道の質を上げていくためには、質問力の向上が絶対に欠かせない。本当は分かっていないことを見抜く力。それが調査報道のスタートである。
 私は活字大好き人間ですから、ネットよりも新聞を愛好したいのです。その意味でも、調査報道の健闘に期待しているところです。
(2012年10月刊。2000円+税)
 春らんまんの候です。わが家の庭のチューリップ500本は全開状態を少し過ぎたところです。私個人のブログで写真を大公開しています。ぜひ眺いてみてください。色も形もとりどりのチューリップが、心をなごましてくれます。
 このところ、娘から全身にお灸をしてもらっています。アッチッチというほどの熱さなのですが、翌朝の目覚めが何とも言えず爽快です。身体に気力がみなぎり、頭が冴えわたった気分です。血行がよくなるのでしょうか。お灸さまさまです。

原発はやっぱり割に合わない

カテゴリー:社会

著者  大島 堅一 、 出版  東洋経済新報社
福島第一原発事故の特徴は、長期にわたって収束できずにいること。政府の「収束」宣言にもかかわらず、実際には、「収束」にはほど遠い。
 福島原発事故は、これまでとはまったく次元の異なる事故である。放射能の放出量が非常に多かったことが一つの特徴。長期的影響が問題になっているセシウム137でみると、広島原爆の168倍も出ている。
 福島原発事故の直後、NHKや民法は、原子力に批判的な専門家をニュース番組に登場させることはなかった。安全は保たれているとか、メルトダウンは絶対に起きないと繰り返し解説していた。
 危険性をいたずらにあおるべきではないという。しかし、このような事故が起きて危険性を軽視することのほうが、国民の安全確保観点からは正しくない。最悪の事態を想定し、これを国民に周知したうえで、最善を尽くすというのが原発事故の対策の基本だ。
 4号機の使用済み燃料プールが壊れ、放射能が放出され、他の使用済み燃料プールが連鎖的に壊れていったとき、強制移転地域は原発から半径170キロメートルとなる。そして、半径250キロメートルまで、移転が認められる。福島第一原発から皇居までは225キロメートルなので、首都圏がすっぽりふくまれる。つまり、日本壊滅の事態だ。これほど深刻な事故であったことを少なくない日本人が忘れている。慣れてしまうのは恐ろしいことだ。
 フランスも原発大国だが、フランスの地盤は安定していて、日本のような地震国ではない。政府も当初は原発は危険だというのを知っていた。しかし、「原子力は安全だ」と繰り返し言っているうちに、自分たちも信じ込んでしまった。原発の安全性について異論をゆるさない雰囲気があった。
 原発の建設には10年とか20年とか長い期間を要する。そして、原発は火力発電所がないと建てることができない。総括原価方式という料金体系は、一般の企業ではありえない。電力会社は、事業にかかわるすべての費用と「事業報酬」をあらかじめ電気料金のなかに組み込んでしまっている。
 大口の電力消費者向けには別の発電事業者と競合しているため、統括原価方式は使われていない。
 原子力だけが特別枠の優遇措置を受けている。政策費用を加えると、原子力は10.25円になる。これに対して火力は9.91円、水力は3.91円でしかない。つまり、政策費用を含めると、原子力はもっとも高い電源なのである。事故が起きる前からそうだった。そして、使用済核燃料の再処理費用は莫大である。
 たった数十年でためた核廃棄物を10万年先までの将来世代に押しつけてよいとは思えない。まことに同感です。こんなに無責任なことはないでしょう。
 電力会社は、九州電力をふくめて、電源として原発が必要だというより、自らの損を避けるために原発にしがみついている。
 こんなことって、許されるものではありませんよね。原発はやっぱり必要だという声がまだぞろじわりと増えつつあるようです。事態の深刻さをもっと私たちは認識すべきだと思います。ベトナムそしてトルコへ原発を輸出する動きがすすんでいます。とんでもないことです。
(2013年1月刊。1600円+税)

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