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カテゴリー: 社会

ウォークマン、かく戦えり

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 黒木 靖夫 、 出版 ちくま文庫
 今ではソニーって、あまりパッとしない会社になってしまいました(今もありますかね…)が、かつてのソニーは、それこそ飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがありました。そんなソニーの商品の一つが世界の話題を集めたウォークマンです。それまでのカセット・レコーダーと違い、録音できず、再生するだけの小型・ポケットタイプのものです。爆発的な人気を集めました。
 ウォークマンの原型ができたのは1978(昭和53)年11月のこと。売り出すとき、事業部は5万円にするというのを盛田昭夫会長は3万3千円にしろと注文した。ところが、今度は販売部門から反対の声が上がった。「録音もできない機械が売れるはずはない」という。
 そこで、売れるかどうか、中学・高校そして大学生を100人集めて視聴させた。すると、いける反応が出た。それで、2万台を売り出して市場の様子をみてみようということになった。
 さて、名前をどうするか…。はじめウォーキィ・ウォッチという案があったけれど、すでに登録されていてダメ。そこで、ウォークマンになった。しかし、これは英語ではない。ウォーキングマンにしたらどうか。いや、それは名前として長すぎる。
 そして、ついに1979年6月、ウォークマンが発売された。すると、人々は争って買い求めた。全国一斉といっても、実は、東京、大阪、名古屋だけで、7月1日から売りに出したが、反応が鈍い。ところが、8月に入ると急に売れだした。口コミと雑誌が紹介記事を書いたことによる。
小柳ルミ子そして西城秀樹が「明星」などでウォークマンとともにグラビアで紹介されると、品切れ店が続出した。そうすると、品切れ店続出が話題になって、みんなが買いたいという気になる。
ソニーは増産に次ぐ増産。そして、二代目のウォークマンが売り出されたのは1981(昭和56)年2月。ヘッドフォンが28グラムという驚異的軽さのものになった。
 1986年9月、ソニー・アメリカはアメリカで1000万台のウォークマンが売れたと発表した。1986年11月、ソニー本社は、2500万台のウォークマンが売れたと発表。1日1万台も売れたという、とんでもないヒット商品になった。
 1987年の1年間で、ソニーは850万台のウォークマンを生産、月産70万台になる。
 私ももちろんウォークマンを購入し、聴いていました。といっても、あまり音楽を聴く習慣はありませんので、フランス語の勉強を兼ねてシャンソンを聴いていました。私のお気に入りはパトリシア・カースです。フランス語の先生にそう言ったら、おっ、渋い趣味だなと驚かれてしまいました。今は、もちろんスマホ全盛時代です。スマホでは日本は遅れをとっているようですね、残念です。日本の技術力は、今のように大企業のなかも非正規社員ばかりだと伸びないということでもあるのでしょうね。同じ課で懇親会をしようとしても、非正規(パート、派遣など)がいろいろいて、出来ずに、結局、意思疎通が難しくなっていると聞きます。大企業の経営者が近視眼症状になっているようです。もっと若者を大切にしないと、日本の明日はありません。
(1990年2月刊。500円)

日本のデジタル社会と法規制

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 日本弁護士連合会 、 出版 花伝社
 2022年9月、旭川市で開かれた人権擁護大会のシンポジウムの内容が本になりました。私もシンポジウムに参加していましたが、今や日本のデジタル化はすさまじいものがあります。SNSの活用(乱用)によって選挙のやり方まで大きく変わってしまいました。活字人間の私にはなかなかついていけませんが、黙って指をくわえて見守るだけではいけないと考えています。
大手IT企業が収集するスマートフォン(スマホ)の履歴から、個人情報が収集され、私たちは丸裸にされてしまっている。たとえば、グーグルテイクアウトの利用履歴から、自宅マンションの居住フロア、家族構成、年収、職歴、性別、年齢まで判断し、さらには仕事を転職し、体調を悪化させるという近い将来まで予測する。
 いやあ、これは恐ろしいことです。私は自分を誰かが管理するというのが本能的に嫌いですので、スマホは持たず、ポイントカードも使いません。どこで、いつ、何を買ったなんて知られたくないし、私の趣味・性向なども第三者に教えたくなんかありません。
 フェイスブック(FB)には、月間20億人のユーザーが1日あたり3億5000万枚の写真をアップロードした。これも実は2017年のデータですので、今はもっとすごい数字になっていることでしょう。
 同じことは電子マネーについても言えます。キャッシュレスは、個人情報の集積を促進するものでもあります。
 今では、外部から自動車のエンジンを切ったり、ワイパーを動かすことも出来る。
 そして、データを活用したら、選挙での投票行動に影響を与えることが出来る。この本でも、SNSによるフェイクニュースの拡散の恐ろしさが指摘されていますが、東京都知事選の石丸、衆院選の玉木、そして兵庫県知事選の立花と斉藤。恐るべきペテン師の横行に、身が震える思いです。
 中国ではAIによる信用スコアリングが普及している。中国ではキャッシュレス決済比率は8割近い(2018年)。そのほとんどがアリババグループのアリペイとテンセントのウィーチャットペイ。この2つでモバイル決済の9割を占める。社会信用システムは、顔認証技術と信用スコアから成っている。信用スコアによる評価を回避するのは、きわめて困難。この信用スコアは、第二の身分証のようなものになっている。信用スコアが低い人は、社会の下層で固定されてしまう。
世界には7億7000万台(2019年)の監視カメラがあり、うち54%が中国にある。2021年末には10億台をこえた。
顔認証システム搭載の監視カメラは、旧来型の監視カメラと情報の精度やボリュームの次元がまったく異なる。顔認証システムは、顔に着目した外形による生体認証の一種である。
 ジュンク堂書店は、万引き防止のため、顔認証システムで入店を検知している。顔認証システムも人がつくるシステムである以上、完全ではなく誤りを含む。
台湾では、故意・危害・虚偽の3要素がそろったときは、各省庁に設置された即応対策チームが60分以内に対策として正しい情報を発信することになっている。
 デジタル庁に対する国家予算は4720億円(2022年度)です。これは司法予算3222億円よりはるかに大きいのです。そして、いずれ8000億円の予算になるとのこと。うひゃあ…、です。
 マイナンバーカードの普及・宣伝のため国は1兆8000億円も使いましたが、笛吹けど、踊らず、でした。いつものように、一部の広告会社などに巨額の税金が流れこんだことでしょう。そんなお金があるのなら、大学の学費の無料化が実現できたはずです。
 SNSを規制することが簡単にできるはずもありませんが、現状のような野放しは、さすがにまずいと思います。それと同時に、選挙を金もうけビジネスにしている立花某については、やはりきちんと取締の対象とすべきと私は考えます。だって、「他人を当選させるために立候補しました。私には投票しないで下さい」と候補者が呼びかけるなんて、どうしてもおかしいでしょう。明らかに公選法の趣旨に反しています。
 このシンポジウムの実行委員長をつとめた武藤紗明弁護士(大牟田市出身)から贈呈していただきました。ありがとうございます。大変勉強になりました。
(2023年10月刊。2500円+税)

半導体有事

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 湯之上 隆 、 出版 文春新書
 熊本にTSMCが進出して、巨大な工場をつくりあげました。日本政府は1兆円でしたか、莫大な税金を投入しました。外国の営利企業にそんなに巨額の税金を投入していいものなんでしょうか…。著者は、それに批判的です。
 営利企業であるTSMCのために、日本の税金を使うのは、はっきり言って間違っている。TSMCの工場を熊本に誘致しても、日本の経済安保はまったく担保されないし、サプライチェーンも強靭(きょうじん)化されない。このように、土地、インフラ、助成金など、日本の税金を使うことは許されないと断言しています。
TSMCの熊本の工場でロジック半導体を生産する前工程は日本国内で行うとしても、マスク設計、製造と後工程は今までと同じく台湾で行われ、中国本土で最終製品に組み込まれることに変わりはない。中国の工場というのは、ホンハイという本社は台湾の会社がもっている工場のことで、そこでアイフォンなどのスマートフォンに組み込まれる。
 そもそも、半導体とは、演算するロジック半導体、データを保存するメモリ半導体、電気、音、光、温度、圧力などを処理するアナログ半導体に分かれる。このなかで、とくにロジック半導体の不足が深刻となり、今やTSMCが9割を占めている。
半導体は一国や一地域で閉じて生産できるものではない。TSMCの最先端技術なくして、最新のアイフォンも、高性能コンピューターも、AI半導体も、製造することはできない。
人類の文明の進歩は、TSMCの微細加工技術に大きく依存している。
 TSMCは、世界中のファブレスが設計しやすい世界標準の仕組みを構築した。つまり、TSMCは、受託生産専門だが、設計を制しているのだ。
TSMCの売上高の成長はすさまじいし、その営業利益率は50%に近い。売上高の半分が利益だ。
 EUVは、オランダの露光装置メーカーASMLLしか製造できない。
中国の半導体産業は、市場規模で世界最大だが、自給率が低い。
 日本は、この分野で、韓国に、技術でもビジネスでも負けている。日本は、過剰技術で、過剰品質をつくってしまう。
 昨年(2023年)4月に刊行された新書なので、事態はさらに変化しているとは思いますが、半導体をめぐる動向を少しばかり理解することができました。
(2023年12月刊。950円+税)

大阪・関西万博「失敗」の本質

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 松本 創 、 出版 ちくま新書
 維新の会の「目玉商品」だった関西万博の「失敗」は今から目に見えていますよね。多くのマスコミが万博盛り上げに必死になっていますが、国民のほとんどは冷ややかです。
 この本は、どうして万博が「失敗」必至なのかを具体的な事実をあげて論証しています。
この「失敗」で泥をかぶるのは維新の会ではありません。私たちの納めた税金がその穴埋めに使われるのです。維新の会が国からもらっている巨額の政党交付金をそっくり充ててもらいものです。
 イメージ・キャラクター「ミャクミャク」って、本当に奇怪な姿と形をしています。万博自体がつかみどころがないのを体現しています。
維新の会の新しい代表になった吉村知事は、万博とIRによって大阪成長の起爆剤とすると豪語してきました。でも、このIRって、要はカジノを主体とする大型の公営ギャンブル場です。そんなのでもうけようなんていうのは愚策の最たるものです。そして、たくさんのギャンブル依存症の人々を生み出し、社会不安を増大させることになります。ひどい話です。
 万博がはじまったら、ピーク時には夢洲には1日22万人もの来場者が見込まれている。ところが、夢洲へのルートは2つだけしかない。夢舞大橋と、夢咲トンネル。大地震が起きたら、夢洲に取り残された15万人もの人をこの2本(橋と海中トンネル)だけで避難・脱出させることになっている。本当に、そんなことが出来るのだろうか。
 夢洲の地盤は、粘土層と呼ばれる弱い地層が20数メートル堆積しているので、40~50メートルという長い杭を打つ必要がある。杭の長さだけで、15階建てのビルの高さぐらいある。その上、地上部分には3階程度の建物しか建てられないので、非常にバランスが悪い。掘削制限があるので、地下室はつくれない。
 夢洲には埋立にヘドロが使われているので、そこからメタンガスが発生してくる。それが爆発してしまう危険がある。
 関西万博には電通が関わっていない。というのは、オリンピック汚職に電通OBが関わり、逮捕・起訴されたから。同じく吉本興業も関西万博にそれほど深く肩入れはしていない。
 関西万博には「哲学」がなく、素人集団が動かしている。これでは失敗しないほうが不思議です。
関西万博の会場設計予算は1250億円だったのが、今や2倍の2350億円にふくれ上がっている。そして、来場者を「2800万人から3000万人」と見込んでいた。
 しかし、現実には、これまでの世界の万博の入場者は2000万人ほど。3000万人近くになることには無理がある。
今どき、高いお金を払ってまで万博を見覚してこようという奇特な人や家族がどれだけいるものでしょうか…。
 メタンガスがぶくぶく吹き出し、爆発するかもしれないという旧埋め立て地の会場。大地震が発生したら、2本のルートでしか逃げることが出来ず、大勢の取り残される人々が出てきてしまう夢洲…。本当に怖い話ばかりです。
 身を削る改革と言いながら、税金からなる巨額の政党交付金を削減しようともせず、今なお「都構想」にしがみついて、自分たちの野望の実現に狂奔する維新の会…。もういいかげん万博なんてムダづかいは止めてください。そんな叫び声を上げたい気分です。またまた維新の会の正体を見てしまった思いのする本です。
(2024年8月刊。990円)

筆の音

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中山 伸 、 出版 大田文化の会
 東京都大田区で活動している民主的な人々が創立46周年を記念して発行した本です。私が大学生のころ川崎セツルメントに所属して活動していたときの先輩(太田政男さん)から贈呈されました。
 今は亡くなられた人を含め、有名人がずらり並んでいて壮観です。
 まずは、マルセ太郎(2001年1月22日没、67歳)。私は直接、その劇を見聞きしたことはありませんが、映画「泥の河」をひとり舞台で演じたのは圧巻でした(と聞いています)。50歳すぎまで売れなかったそうです。でも、最後は華々しい活躍でした。
 そして、井上ひさし(2010年4月9日没、75歳)。私のもっとも敬愛する作家です。「知の巨人」、「稀有(けう)の文豪」という評価に、まったく偽(いつわ)りはありません。
 井上ひさしの人生は、「言葉」で時代や世の中と真剣勝負をしつづけた生涯だった。日本語の素晴らしさを身をもって示した人間だった。何事も笑いに変える能力にたけた人間だった。これは畑田重夫の井上ひさしの評言ですが、ずばりそのとおりです。
 そして永井智雄(1991年6月17日没、77歳)の名前に久しぶりに接しました。NHKテレビ「事件記者」の相沢キャップ役が大当たりでした。私が小学生のころに観ていた、なつかしい番組です。いかにも知的で、いつだって物事を深く考えようとする表情・姿勢がとても印象深く残っています。この本を読んで、戦前から劇団員として活躍していて、召集されて兵隊にもとられていたことを知りました。戦後は、劇団員、俳優として活動しながら、革新懇話会などでも活躍していたのですね…。
 そして、映画「ドレイ工場」です。大学生のころに観た映画です。「男はつらいよ」では倍賞千恵子の夫役の前田吟が主役を演じました。志村喬が社長を演じています。
 この映画の苦労話として、ギャラが日給制だったということが紹介されています。すべてのスタッフ・キャストが1日3500円から2000円までの日給制だったなんて、信じられません。
 そして、撮影はすべてオールロケ。12ヶ所でロケした。エキストラも、のべ2700人。1968年に始まった上映運動は150万人の観客動員を成功させた。いやあ、すごい映画でしたし、迫力がありました。いまの日本でも、労働組合は労働者の生活を守り、権利を伸ばすために不可欠なものだということを広めるため、ぜひ見てほしい映画です。
 いま、アメリカでもヨーロッパでも、労働組合運動が盛り上がっていて、どんどんストライキをやっていて、成果を勝ちとっています。今どきストライキをやっていないのは日本くらいです。委員長に人を得て(連合の芳野女史のような自民党べったりのダラ幹部ではなく、資本家と対等にわたりあえる人)、若者を広く結集して活動しているのです。
日本だって、出来ないわけがありません。投票率53%という低すぎる壁を打ち破る力が労働組合にはあると確信しています。
(2024年9月刊。2000円)

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