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カテゴリー: 社会

ぼくらの民主主義なんだぜ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  高橋 源一郎 、 出版  朝日新書
 朝日新聞の「論壇時評」が本になっています。私は「朝日」の読者ではありませんので、初めて読みましたが、同感、共感することばかりの「時評」でした。
 「なんだか、この職場、暗いですね」
 「労働運動がなくなったからね」
 「労働運動って、何ですか?」
 「みんなで上を向くことかな」
 いまや、ストライキとか労働運動っていう日本語は残念なことに死語に等しいですよね。私が弁護士になったばかりには1週間の交通ストライキがあり、大変でした。そして、労働組合とか「連合」というものの存在感も、ほとんどなくなってしまいました。本当に残念です。ですから、労働三権、労働者の団結権、団体行動権、団体交渉権なんていうのも、聞くことがほとんどなくなりました。本当に、そんな日本でいいのでしょうか・・・。
 派遣社員とパート・アルバイトばかりの職場。たまにいる正社員は過労死寸前だなんて、おかしくありませんか。そして、経営者はカルロス・ゴーンの年俸10億円、オリックスの宮内義彦の退職金50億円なんて、間違ってませんか・・・。
 世界で入学入試の試験をやっている国は、ほとんどない。ええっ、ホントですか・・・?
 日本のパパやママは、世界の平均の2~3倍もお金を払わされている。
 いまどきの大学生は、アルバイトの拘束力が強くて、テスト前でも休めない。だから、ゼミでコンパや合宿をしようと思ってもなかなか出来ない。
 親からの仕送り額は16年間で、3割以上も激減し、奨学金は有利子の学生ローンになっている。そのうえ、就職先は正社員ではなく、非正規労働。夢も希望も奪われている。
 軽井沢スキーバスの事故も、そんな大学生たちが、少しでも安く楽しみたいと考えたものなのです。彼らを責めるわけにはいきません。社会のしくみがおかしくなっているのです。
 今の政治は、みんな無知でいようぜ、楽だから、というメッセージが蔓延している。政治家のレベルは低い方が好ましいし、それを意識下で熱望している。
 アベ首相の支持率が4割をこえるという現実は、現実を知らされず、知らないで、幻想に踊らされ、イメージだけで自分の考えをもっていると思い込まされた人々が、それだけ日本人に多いということを意味しているのでしょうね。本当に怖い世の中になっています。
 それでいいのかと警鐘を鳴らしている本です。手軽に読めて、気が重くなってしまう本でした。
(2015年10月刊。780円+税)

日航機事故の謎は解けたか

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  北村行孝・鶴岡憲一 、 出版  花伝社
 30年も前の夏の悪夢のような出来事でした。520人が乗ったジャンボジェット機が墜落して、助かったのは女性ばかり4人のみ。
 月に1回以上、飛行機に乗っている私にとって、とても他人事とは思えない惨事でした。
 アメリカ軍のミサイルに追撃されたという説に私も心が惹かれた時期があります。それほど、謎に満ちた事故でした。そして、今でも救出が遅れたことには大いなる疑問があります。
 本書は、ボーイング社の修理ミスによって発生した大事故だったことを論証しています。
 それにしても、アメリカ言いなりに動く日本政府に腹立たしさを覚えてなりません。
 このジャンボジェット機が迷走している様子を奥多摩でカメラで撮った人がいた。その写真をもとに画像を解析すると、垂直尾翼面積の58%を失った状態で飛んでいたことが判明した。
 修理ミス部分の隔壁破断面に披露亀裂が発生した。かろうじて持ちこたえていたリベット接合部が、事故発生の8月12日午後6時24分すぎ、客室与圧と外気圧の差が0.59気圧にまで高まった段階で耐え切れずに一気につながって、長大な亀裂となった。
 尻もち事故後の修理において、直径4.5メートルのドーム状をしたアルミ合金製の圧力隔壁の下半分に損傷が目立ったため、上半分は既存のものを使い、下半分を新しいものに取り換えた。このとき、本来なら一枚板でつながらなければならない修理箇所を2枚にしてしまった。
 圧力隔壁の修理において、気密性が強く求められることから、強度よりも気密性を優先させて、1枚の板をわざわざ2枚に切りわけて1枚を隙間埋めに使った。
3年間の調査のなかで、275機の機体から1054件の亀裂が発見された。このうち事故機と同じB747の亀裂が714件と68%も占めた。与圧による疲労亀裂に弱い機種であることが明らかになった。
 そして、航空機整備が「金のかからない整備」になっていった。
 B747は、機首部を2階建てにしたため洋ナシ状の断面となり、不均等な複雑な力を受けがちである。
 私も2階部分の座席にすわったことがありますが、あまり乗り心地のいいものではありませんでした。やはり、洋ナシ型よりも真円形のほうが強度があるのですね・・・。
 それにしても、「格安」で飛んでいる飛行機の安全性はどうなっているんでしょうか。安かろう、悪かろうでは困りますよね。乗り物は、快適性の前に安全性です。心配性の私はいつも祈る思いで飛行機を利用しています。
 なんでも安ければいいという社会風潮は、ぜひ改めてほしいと痛切に思います。
(2015年8月刊。2500円+税)

ルポ・コールセンター

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  仲村 和代 、 出版  朝日新聞出版
  私のお客さんにもコールセンターに勤めているという人が男女、何人もいました。
  話を聞くと、実にすさまじくて、大変な精神労働だと感じました。一人の男性は、明らかに顔色が悪くて、そんなにストレスがあるのなら、早くやめたほうがいいんじゃないですかと言ったほどでした。
  沖縄にはコールセンターがたくさんあるようです。
  あるコールセンターで働く人の3~4割は男性。ほとんどが20~30代。パソコン操作が必要だから、だ。
  コールセンターは個人情報の宝庫。情報管理のため、センター内に私物持込みは制限されている。ケータイは持込み禁止。
  このコールセンターにかかってくるのは、忙しいときには1日10万件、暇なときでも1日5千件近い。ここでは、一時間当たり8.5件。つまり、1件のコールを7分で処理するのが、コールセンターの目標。しかし、なかなかそうはならない。目標を上回っているのは、上位10人だけ。
フロアに40人いるオペレーターの9割はパートかアルバイト。仕事の厳しさに耐えられず、1ヶ月で3割がやめていく。残った人でも、1年で1割がやめる。だから、慢性的な人不足が続いている。
  オペレーターには、10人に1人の割合でスーパーバイザーがつき、そのうえに大きな班をまとめるマネージャーがいる。スーパーバイザーも非正規社員であることはオペレーターと同じ。
  クレーマーに耐えるコツは、「自分が怒られているんじゃない。何か別のことに怒っていると思うと、気にならなくなる」ということ。
  このコールセンターでは、昔はなるべく早く電話を切るようにしていたが、今はより丁寧に応対するように変えた。早く電話を切っても、次のクレームにつながり、結果として、一人の客にとられる時間が、かえって長くなることが多かったから。
  ふむふむ、これはよく理解できます。
かかってくる電話は、フツーの内容が8割、怒っているのが1割5分。そして残り(5分)は、あげ足とりみたいなもの。
  オペレーターの仕事は、「ありがとう」と言われるものではなく、見返りがほとんどない。
  自給1100円は、沖縄では高いほうだ。
  コールセンターを営む上位30社の売上高の合計全額は前年比6.1%増で、金額にして8628億円ほど。
  いずれの会社も、正社員の割合はせいぜい2割以下。
  日本の企業のために海外にもコールセンターができている。たとえば、中国の大連にコールセンターを置いておくと、人件費が安くてすむ。またアメリカでもコールセンターをインドやフィリピンに設置して、アメリカで深夜にあたる時間帯で対応させる、ただし、日本の客の求めるサービスの質は高いので、いいかげんな対応はできない。
  どうやら大連のコールセンターは撤退したようです。
  沖縄には、いくつものコールセンターが進出し、人材の奪いあいになっている。
  コールセンターの労働は、感情労働である。一つは、人と接することが不可欠なこと、第二に、他人のなかに何らかの感情変化を起こすこと。
コールセンターでの労働組合の組率は低い。平均23%、でしかない。
  食品会社「カルビー」は、事前の「お客様相談室」をもっている。みんな6年以上つとめていて、10年をこす人も少なくない。カルビーは、「客のニーズを探る場所」と位置づけている。これって、すごいことだと思いました。
  電話をめぐる状況は大きく変わりつつある。コールセンターにわざわざ電話をかけてくる人はどんどん減っている。
 弁護士も「感情労働」の一つですよね。「お客様を大切に」といっても、限度があります。
  社会の一断面を知らせてくれる面白い本でした。
  
(2015年10月刊。1200円+税)

老人に冷たい国・日本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  河合 克義 、 出版  光文社新書
 いつのまにか私も年金をもらうようになりましたので、立派な老人の一人です。
 日本という国は、アメリカ製の軍艦や飛行機などは超大金を出して惜しみなく買うくせに、福祉となると一変してケチケチです。本当に老人に冷たい国だと思います。
 孤立は、貧困と切っても切り離すことができず、貧困が孤立を生み出している。家計が苦しくなると、交際費が縮小する。親族、近隣そして友人関係が切れると、孤立化を生み出している。家計が苦しくなると、交際費が縮小する。親族、近隣そして友人関係が希薄化し、また切れてしまう。関係が切れると、孤立化をもたらし、その人の問題は親族にも地域にも友人にも分らないという状態を生む。こうして問題が潜在化する。
 ひとり暮らしの高齢者が日本全国に600万人いる。そのうち300万人は生活保護基準以下の生活をしている。生活保護を受けている一人暮らしの高齢者は70万人いるので、残り200万人あまりが生活保護を受けずに生活している。
 2000年以降、孤立死・餓死がそれ以前よりも増加している。
 2000年4月に介護保険制度がスタートしてから、それまでの高齢者福祉の行政サービスは大部分が民間事業者に委ねられた。こうした変化のなかで重大な問題は、行政による高齢者問題の把握力を低下をもたらしたことである。
 このシステムは、比較的生活が安定している高齢者にとっては身近な制度となったが、自分から声を上げない人々にとっては、制度との距離が大きくなった。
 高齢者の生活基盤が脆弱なために、親族・地域から孤立し、ひっそり亡くなっていく人が後を絶たない。それは高齢者だけの問題ではない。日本の社会、社会保障・社会福祉制度は大切なものを欠落させているのではないか。
 緊急に対応すべきは、国民生活に一定のミニマム基準が設定され、各制度がその基準を下まわらないように全体的に調整することである。
 先進国のなかで、日本ほど「老人に冷たい国」はない、とつくづく思う。
 アメリカは果たしてどうなのかと疑問に思いますが、ヨーロッパ各国と比べて福祉が遅れていることは間違いありません。自民・公明の政権は、軍事予算を5兆円以上にどんどん増やす一方で、福祉予算を大きく減らしています。守るべきは「国」ではなく国民生活です。優先順位が間違っているのだと私は思います。
(2015年7月刊。760円+税)

日本の社会保障、やはりこの道でしょ!

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  都留民子、唐鎌直義 、 出版  日本機関紙出版センター
 日本もアメリカも福祉国家と呼ぶべきではない。
 アメリカは公的年金だってまともじゃないし、公的な健康保険制度もない。日本は、生存権が十分に保障されていない。生活保護は受給すべき人の1.5%のみ。それなのに自民党は保護基準をさらに10%も下げるという。
 イギリスのブースは、調査によって、貧困の原因は飲酒や家計の浪費ではなく、雇用の問題だと明らかにした。ヨーロッパの福祉国家は、医療は無料、教育費も幼稚園から大学まで無料、住宅は公共住宅が住宅手当が社会保障として支給される。
 日本の総世帯4900万世帯のうちの1204万世帯(5%)は実質的生活保護基準以下の収入で生活している。ところが現実に生活保護を受けている世帯は127万世帯(176万人)でしかない。今の日本には、表面化していないだけで、膨大な量の貧困層が存在している。
 この点は、地方都市で30年以上も弁護士として生活している私の実感にぴったり合致します。それも年々ひどくなってきているように思います。
 この本では大学で教えている体験から、現代の大学生の貧困、アルバイトに追われる日々にも言及されています。
 私の大学生のころ、国立大学の授業料は月1000円でした(奨学金は月3000円)。それが今では年間40万円とか50万円というのです。とんでもないことです。
 フランスやイギリスでは、失業しても、働いているときとほとんど変わらない生活を送ることができる。失業保険は1年半も支給される。なんでもいいから働けというのはやめている。
 大阪では、生活保護を申請すると、市役所が北新地での夜の仕事を斡旋している。うひゃあ、と、とんでもないですよね。
 アベノミクスなんて、とんでもないまやかしですが、いまなお幻想もっている日本人が少なくありません。だまされたと気がついたときには手遅れのことが多いのですが、勘違いしているのは男性に多いですね。
 その不満が排外的なヘイトスピーチに流れているようです。悲しいですね。もっと、自分の周囲と足元をよく見てほしいです・・・。
 ズバリ本音トークの本でした。一読の価値があります。
(2015年9月刊。1400円+税)

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