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カテゴリー: 社会

おひとりさまの最期

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  上野 千鶴子 、 出版  朝日新聞出版
 著者は私と同じ団塊世代です。団塊世代の私たちにも、いよいよ死が身近なものとなってきました。といっても、20代、そして50代のうちに亡くなった知人も一人や二人ではありません。老後をいかに過ごすのか、どうやって死を迎えるのかは、それぞれ重大な課題になっています。
 おひとり様の数は増え、2013年には、高齢者世帯の4世帯に1世帯が単身世帯である。それに夫婦世帯が3割。両方を合わせると、5割以上。いまや、子と同居している世帯は3割台でしかない。
著者は、本当のことを言えば、死んだあとのことなんて、気にしちゃいないと書いています。私も同じです。宇宙のチリの一つにしかならないし、いずれみんなそうやって宇宙を漂っていく存在なのです。だから、宇宙に本当に果てがあるのかどうか、今から気になるのです・・・。
 おひとり様人口は、これからも増えるし、これから先は、病院でも施設でも死ねなくなる「死に場所難民」が増える。
日本人の最新の平均寿命は、女性は86.83歳、男性が80.50歳。6歳も違うのですよね。それでも、男性も80歳を超えたのですね・・・。仕事人間、社会人間ばかりではなくなった、ということでしょうか・・・。
日本人の死に場所として、病院が80%、在宅が13%、そして施設が5%。
末期になると、脳から麻薬物質のエンドルフィンが出て、モルヒネと同じ作用をする。だから、苦しくはない。これが老衰のときの大往生。その自然死の過程に、医療は余計な介入をしないほうがいい。
病院では、死は敗北。しかし、高齢者施設ではゴールであり、達成。
住宅をただのハコとは考えるべきではない。記憶や経験が詰まった、暮らしの場。身体の延長のような装置系。
在宅医療には、病院にはない不思議な力がある。在宅では、医療職の想定をこえた「奇跡」がいくつも起きている。なんでもない日常が、家族にとって、かけがえのない時間となる。
本人が強い意志を持たない限り、周囲が意思決定して終末期は病院に送られてしまう。
 日々の暮らしとは、口から食べて、お尻から排泄して、清潔を保つことの日々の積み重ね。食事介護、排泄介護、入浴介護というのが三大介護。
生きるとは、迷惑をかけあうこと。親子の間ならとめどもなく迷惑をかけてもかまわないと共依存する代わりに、ちょっとの迷惑を他人同士、じょうずにかけあう仕組みをつくりたいもの。
そうなんですね。もつべきは相互に支えあう人間関係なんですよね・・・。老後を真剣に考えされられる本でした。
(2016年2月刊。1400円+税)

ふしぎな君が代

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  辻田 真佐憲 、 出版  幻冬舎新書
  私は、君が代をまともに歌ったことなんて、一度もありません。歌詞も嫌ですが、なにより、あの暗さがたまりません。晴れの儀式に暗い、心を沈ませるような歌を強制するなんて、付きあっておれません。君が代は法律で国歌と定められましたが、どれだけの日本人が愛着をもっているでしょうか・・・。
  学校での強制は、とんでもないとしか言いようがありませんが、会社でも実社会でも、こんな歌を斉唱するなんて、ないのではありませんか・・・。
  この本を読んで、君が代について、いくつも新発見をしました。君が代という歌を日本人が広く国歌として歌っているのは、戦前も末ころのことなんですね・・・。そして、国歌斉唱を義務付ける国なんて、ごくごく例外なのですね。
  日本政府は、戦前、君が代を国歌だと明らかに宣言したことはなかった。君が代が日本全国に行きわたるには、かなり長い時間がかかった。
  君が代は暗いという批判は既に明治34年には出ていた。君が代の歌い方は、昭和になってようやく統一された。君が代が神聖不可侵のシンボルとなったのは、昭和12年(1937年)の国定教科書以降のこと。つまり、全国の教育現場で、君が代が明確に位置づけられたのは1937年以降でしかない。これって終戦(敗戦)まで、あとわずか8年しかありませんよ・・・。
  今の天皇は、国旗・国歌について、「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と明言しています。素晴らしい明言です。まったく同感です。
  サッカー選手の中田英寿が、「国歌、ダサイですね。気分が落ちていくでしょ。戦う前にうたう歌じゃない」と言ったそうですが、私も同感です。やめてよ、という感じです。
  欧米の先進国で国歌斉唱が義務づけられている国はない。例外なのは、中国と韓国。だから日本は、中国や韓国にならっているだけ・・・。
  古歌「君が代」はおめでたい歌として、日本文化に根付いていた。そして、この「君」は天皇に限らず、「将軍家」でもありえた。
  君が代の作曲者は、日本人の奥好義を原作曲者としつつ、フェントン、林広李、エッケルトなどの合作だった。フェントンはイギリスの軍楽隊長だった。エッケルトはドイツ人。
  君が代って、英独のセンスが入った歌なんですね・・・・
  ともかく、子どもたちに学校で君が代の斉唱を強制するなんて、愛国心を育てるどころではない愚行そのものだと思います。
                (2015年7月刊。860円+税)

無戸籍の日本人

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  井戸 まさえ 、 出版  集英社
 現代日本社会で戸籍がなく、住民票もなかったら、人が生きていくのは大変です。
 私は弁護士として、住民票がなくて生活している人には何回も出会いました。たとえば、夫のDVがひどくて逃げている人、サラ金の取立に脅えて住民票はそのままにして夜逃げした人などです。子どもの学校は住民票がなくても転入できるようになっています。もう30年ほど前から、そうだと思います。
 ところが、そもそも戸籍がないという人がいるのです。中国残留孤児の話ではありません。日本で生まれ育ているのに、学校にも行かず、大きくなった日本人がいるというのです。私は、弁護士として、そんな人に出会ったことはありませんし、そんな人がいるとは夢にも思っていませんでした。この本は、日本人として生まれながら戸籍のない子どもが生まれる過程(からくり)を明らかにしています。いかにも残酷な現実を知ることができました。
 著者は、県会議員や国会議員(民主党)になったこともある女性です。
 ノンフィクションですが、物語風になっていますので、問題の所在がよく分ります。著者がこの問題にかかわるようになったのは、離婚したことから自分の産んだ子どもが無戸籍になったことによります。
 戸籍がなければ住民票がつくれない。すると、生活するときに致命的な困難をもたらす。義務教育を受けるのが難しい。健康保険証がないため、病気のとき、全額が自己負担となる。選挙権はないし、銀行口座もつくれず、正式に就労することができない。生きていくうえでの、ありとあらゆる不都合や不安に直面せざるをえない。
 無戸籍の日本人は法務省の調査で680人。しかし、1万人はいるのではないか・・・。
 これは、大変な人数です。社会問題とすべき人数ですよね。
 成人の無戸籍者が働ける場は、水商売、ラブホテル、パチンコ業、風俗業など、限られている。親が不明のときには、就籍という手続きがある。かえって、簡単だ。
 民法772条によって無戸籍の子どもが生まれる。しかし、決してそれだけではない・・・。
 無戸籍の人が戸籍をもとうとするとき、役所は疑ってかかる。たとえば、指紋を求める。そこで、ひっかかる人が出てくる。犯罪もしていないのに、なぜ指紋を取られるのか・・・。
 そんなことするくらいなら、もう戸籍なんていらない、と考える人がいる。
 なんとなく、その気分は分かります。でも、ないと不便なのですから、ちょっとガマンできませんか、と思ってしまいます。
 そして、身勝手な親や性同一障害の人たちの話となると、涙なくしては読めない辛い人生の歩みとなります。日本の壁のあつさを感じさせる本でもありました。
(2016年1月刊。1700円+税)

貧困大国ニッポンの課題

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  橘 木  俊 詔 、 出版  人文書院
 アベノミクスだとか、一億総活躍社会だとか、上のほう(首相官邸)では浮かれたように言いつのる人たちがいます。でも、現実には、子ども食堂が、日本各地に必要になっています。子どもたちが、朝から満足に食事が出来ない、甘いお菓子で空きっ腹をごまかすなんて、苛酷な現実です。
 この本は、日本もアメリカと同じで、福祉国家なんて、とても言えない。貧困大国ニッポンという現実があり、貧富の格差はますます拡大しつつあることを実証しています。
 ただ、その解決策として消費税の増税に頼るという提言は素直にうなずけません。軍事優先の国家体制をそのままにしておいて消費税の税率をアップさせても、福祉にお金がまわってくるはずがないからです。
 日本は、アメリカと並んで非福祉国家とみなしてよい。
 二つの選択肢がある。一つは個人の自助を中心としたアメリカ流の自立主義。もう一つは国家が担い手としての役割を果たすヨーロッパ流の福祉国家。
 私は、もちろんヨーロッパ流が断然よいと思うのですが、日本人は、経営者層、指導者層、富裕層を先頭として一般市民においても自立主義を好む人が多い。うむむ、たしかにそうなんですよね。客観的には生活保護を受けたほうがいいレベルの人が保護を受けずに、保護を受けている人々を口汚く攻撃するという現実があります。
日本は、韓国と同じく、児童家族関係の給付が極端に低い。
 ヨーロッパで出生率が増加したのは、子ども手当としてかなりの額が支給されているから。日本でも、ぜひ実現したいものです。
 日本の貧困率は、ここ30年のあいだに12%から16%に増加している。貧困者が増えている。日本の相対的貧困率はアメリカに次いで高く、ヨーロッパやオーストラリアに比べて、かなり高い。65歳を過ぎた高齢者において、女性の貧困率が男性より5~10ポイントも高くなっている。母子世帯の60%が貧困家庭。
 生活保護を必要とする人に適切な支給がなされていないのが現実。受けるべき人の20%しか受けていない。
貧困で苦しむ地方や中小企業で働く人には、アベノミクスの恩恵は及んでいない。
フランスやイギリスの最低賃金は1200円ほどになっている。日本では、最低賃金の額でフルタイムで働いても、1ヶ月の生活費をまかなえるだけの月収にはならない。日本の最低賃金は低すぎる。これって、ホント、おかしいですよね・・・。
若者が結婚できないのは、若年層の低所得に大きな原因がある。
アメリカは特異な国である。公的な医療保険制度がなく、公的年金制度も発展していない。アメリカの貧困階級は病気になっても満足に医療を受けられないので、早死にしている。 
 日本がこれからも安定して生活できる国であるためには、まず教育にお金をかけ、教育費を無料にし、さらに医療・福祉にお金をつかうべきです。反対に、自衛隊などの軍事予算やアメリカ軍への「思いやり」支出をバッサリ削減すべきだと思います。
 「国を守る」だなんて言っても、なにより守るべきは国民生活なのです。
(2015年12月刊。1700円+税)

奇跡の村

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 相川 俊英 、 出版  集英社新書
 「限界集落」が必ずしも自然消滅するわけではないということを再確認させられる新書でした。知恵と工夫によって、若者を呼び込んで、それなりに復活することがあるのです。だって、人間は、目標さえ具体的で確であれば、80歳をこえても楽しく働いていけるし、それが村(町)おこしにもなっていくのですから・・・。
 この新書では、全国いくつかの実例を紹介していて、大変参考になります。
 長野県の南端にある下條村は人口4千人足らず。ところが、子育て支援が効を奏し、全国有数の高い出生率を誇っている。この村は若者定住促進住宅を建設している。マンション風の村営集合住宅が村内に10棟(124戸)建てられている。家賃は2LDKで3万4千円ほど、これには車2台分の駐車スペースが付いている。ただし、二つの入居条件が付いている。一つは、子どもがいるか、これから結婚する若者であること。二つは、祭りなど、村の行事への参加と消防団への加入。この住宅は家賃の安さと暮らしやすさから絶えず満室状態。
 医療費は高校卒業まで無料。給食費は半額補助。保育料も半減。第三子は無料。出産祝い金は、第二子に5万円、第三子以上に20万円。入学祝金は小学生に3万円、中学生に6万円。ただ、悩みも大きい。その悩みは、村内に高校が一つもないこと。下條村は、「平成の大合併」を拒否して、自律した村として独自の歩みを続けてきたのでした。
 群馬県南牧村は人口2千人あまり。ここでは、小学校の運動会は村民参加型となった。小学生が少なくなり、また村民が高齢化して村民体育祭ができなくなったことから、一緒にしたのだ。ここでは古民家バンクという取り組みが進んでいる。人が住まなくなった古い民家を1ヶ月3万円で貸し出す。その結果、3年間で14世帯26人が村に転入してきた。ここでも二つの条件がある。きちんと近所づきあいをすること。地域の伝統行事に必ず参加すること。移住者は地元の人と一緒になって花を栽培して出荷している。
 いずれ地方は消滅すると単純に決めつけていはいけませんね。かの大東京にしても、いつ大震災で破滅するか分りませんし、あの3.11のときには危機に直面したわけです。やはり、日本が生き残るためには地方を守り育てておく必要があると改めて思いました。
                           (2015年10月刊。740円+税)

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