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カテゴリー: 社会

現代史の中の安倍政権

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  渡辺 治 、 出版  かもがわ出版
 安倍首相のやっていることを時代錯誤的な個人的な思いつきと考えるのは、まったくの誤りだ。安倍政権には二つの顔があり、その二つをセットとして実行している。
 その一つは、新自由主義改革の本格的な再稼働。
 もう一つは、アメリカや日本の保守支配層も眉をひそめる侵略戦争肯定論。
 安倍首相の目ざしているのは、復古的な大国ではない。 安倍政権は、国民動員の見地から、植民地支配と侵略戦争の歴史を否定したいという強い衝動をもっている。
アメリカや日本の財界も、安倍政権の評価をめぐって動揺していた。しかし、2013年ころから、割り切って安倍政権を支持するようになった。というのも、これほど野蛮な情熱をもっていなければ、軍事大国化、そして「構造改革」を再建することはできないという判断をしたから・・・。いわば、安倍政権は、現在の支配階級の最大の切り札になっている。
安倍首相に対しては、従来の政権以上に官僚機構が全面的に支援している。
アメリカの世界戦略は変化した。イラク・アフガニスタンへの派兵そして戦争は、二つの結果をアメリカにもらした。一つは未曽有の財政赤字。二つには、国民の反戦・厭戦意識の高まり。
オバマ政権の対中政策には、二面性がある。一つは、中国をアジアにおけるパートナーとして位置づける。もう一つは、中国を軍事的・政治的に抑え込もうという路線である。
安倍政権の描いたシナリオに誤算が生じたのは、国民運動の高揚である。
安倍首相が歴史の修正と改ざんの執念を燃やしている最大の要因は、戦後のドイツとは異なって、「戦後」を肯定化する延長線上では、安倍の軍事大国は正当化できないということにある。
安保法制は、国民の側からすると、戦後70年にわって堅持してきた、海外で戦争しないという国是を壊す大転換でもある。
安保法制を施行させない、若い自衛隊員をたとえばアフリカの戦場へ送らないようにする必要があります。
安倍首相の確信犯的な恐ろしさは、このところまさに倍加しています。ひどいものです。にもかかわらず、安倍首相への支持率が4割をこえているなんて、おかし過ぎです。
(2016年1月刊。1800円+税)

文化庁国語課の勘違いしやすい日本語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  文化庁国語課 、 出版  幻冬舎
 文化庁というと文科省かなと思ってしまいましたが、どうやら違うようです。文科省って言ったら、教科書検定でかたよった意見を押しつけ、教育統制の強化につながる全国学力テストなど、まったく悪いイメージしかありません。
文化庁は、文化財、美術館などを担当している役所で、そのなかに国語の改善と普及を担当している国語課というのがあるそうです。
 言葉は、年月とともに変化していく。かつては規範的であった言葉の形や意味が、現代では通用しなくなったり、使い方が変わってしまう例は少なくない。言葉の正誤を軽々しく決めることは出来ない。
それを前置きとして、私も「間違った」使い方をしている表現にいくつもぶつかりました。「弁護士さんって、敷居が高いんですよね・・・」これは、「高級寿司店は、ちょっと、僕には敷居が高いかなぁ・・・」というのと同じ使い方です。ところが、本来の「敷居が高い」というのは、不義理したり、面目の立たないことがあって、その人の家に行きにくいという意味の言葉。単に入りにくいとか近寄りがたいというものではなかったのに、今ではそのように使われることが多くなっている。ふーん、そうだったのか・・・。
流れに掉(さお)さす。これは、本来は、流れのままに棹を操って船を進めるように、物事を時流に乗せて順調に進行させること。ところが、最近では、時流に逆らって反対意見を言うようなものとして使われることが多い。ホント、私も、そんな使い方をしてきましたよ、トホホ・・・。
 枯れ木も山のにぎわい。本来は、つまらないものでも、ないよりある方がましの意味。ところが、人が集まれば、にぎやかになって良いという意味で使われることがある。
「キミは本当に破天荒な人間だな・・・」これって、ホメ言葉なのか、けなしているのか、どちらでしょうか・・・?本当は、誰も出来なかったことを初めて成し遂げることというホメ言葉です。ところが、豪快で大胆な様子をさす意味で使われることが多くなっています。
「さわりだけ聞かせてよ・・・」。さわりの本来の意味は、聞かせどころ、聞きどころです。ところが、話の最初の部分だけ聞かせてよ、という意味につかわれることも少なくありません。
憮然(ぶぜん)としている・・・。これは失望、落胆、ぼんやり、呆然の意味です。ところが、最近では、腹を立てている様子という意味で使う人が多くなっている。
「議論が煮詰まってきた・・・」。本来は、議論して、考えが出尽くして結論が出せる段階になった状況をさします。ところが、議論がこれ以上は発展せず、行き詰った状況をさす言葉としても使われるようになっています。
割愛する・・・。本来は、仏教用語で、愛着の気持ちを断ち切ること。つまり、惜しいと思っているものを、思い切って捨てたり、省略したりすることを言います。ところが、最近は、単に省略するという意味で使われることが多くなっています。
うひゃぁ、知らないことって、こんなにたくさんあるんですね・・・。しかも、言葉の本来の使い方が誤用されていくうちに、変化していって、誤用が誤用じゃなくなるんですね。言葉って・・・。まさにコトバは生きています。そのことを実感させてくれる本でした。
(2015年12月刊。1000円+税)

安倍政権にひれ伏す日本のメディア

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  マーティン・ファクラー 、 出版  双葉社
 ニューヨーク・タイムズ前東京支局長が、日本のメディアはジャーナリズムの精神を失っていると激しく怒ってます。この本に書かれていることのほとんどに、私も、まったく同感です。
権力の与党であることを売りものにしているかのようなヨミウリ・サンケイって、まともなジャーナリストなんでしょうか・・・。たまには権力から嫌がられるような「正論」を記事にしてほしいものです。
メディアが政府から完全にコントロールされている現在の日本のジャーナリズムは、およそ健全ではない。
アメリカ人の記者から、ここまで断言されているのですから、日本人ジャーナリストも、少しは奮起してほしいですよね・・・。
健全な民主主義が機能するうえで重要な権力のチェック機能を果たすはずのメディアが、第二次安倍政権が生まれてから、腰砕け状態に陥ってしまっている。組織防衛を優先させ、ジャーナリズムを放棄している。そんな信じられない現実が、日本の新聞やテレビといった大手メディアの内部で雪崩(なだれ)のように起きている。
 安倍首相のいる官邸はテレビや新聞を毎日こまかくチェックし、官邸にとって気に入らない報道があれば、担当者に電話をかけ、直接クギを刺す。
 同じメディア内部で、政治部の記者は他の部門にこんな圧力をかけている。「官邸を怒らせないでほしい、取材できなくなるから」。なんということでしょうか・・・。これでは、単なる権力の僕(しもべ)ではありませんか。
日本のメディアのトップたちは、安倍首相と頻繁に一緒に食事をしている。それも高級料亭やフレンチ・レストランなど・・・。
安倍首相は、ニューヨーク・タイムズの取材をあからさまに避け続けている。安倍首相は、ぶら下がり会見が少ないし、そもそも記者会見の回数がとても少ない。
朝日新聞を攻撃した読売新聞は部数を大きく減らした。その減り方は朝日より読売のほうが大きかった。朝日を叩いて拡販しようという戦略は完全に裏目に出た。むしろ、新聞全体への不信感が強まっただけだった。
朝日がこんな「ヘマ」を犯したとき、ヨミウリ・サンケイは権力と同じく朝日をたたきに狂弄した。なぜ、権力と対峙して朝日を擁護しようとしないのか・・・。
 安倍政権の言うとおりに報道していればコトは簡単です。ところが、少しでも批判しようとすると、記者の心身の安全がはかられません。ロシアでは既に何人もの優秀な記者が消されてしまっています。それでもがんばっているメディアがあるといいます。
 日本のメディアは、安倍政権のやろうとしていることの恐ろしさを国民にもっとはっきり伝えてほしいものです。
(2016年4月刊。1000円+税)
 子どもの日(5月5日)、例年のように近くの小山にのぼりました。山の中の少し開けたところで養蜂家が巣箱を開いて作業しているのを見かけ、日本ミツバチにもがんばってもらいたいと思ったことでした。
 かなり急斜面をのぼりますが、大きな岩がごろごろむき出しです。こんなときに地震にあって、岩がころがり出したら、もう逃げようがありません。というのも、出かける30分前に余震が2度もあったのです。熊本では震度3とか4でした。早くおさまることを願うばかりです。
 山頂に着くと、子どもたちが大勢いて、そのにぎやかな歓声がひびいていました。保育園児と親たちの遠足のようです。こんな子どもたちの声を騒音だといいつのる大人の気がしれません。
 ゆっくり見晴らしのいいところで、おむすび二つをいただき、英気を養いました。生命の洗濯です。
 帰りにはミカンの木に丸粒のような白い花がびっしりでした。3時間あまりで、1万5427歩を記録して、いい運動になりました。

ザ・町工場

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  諏訪 貴子 、 出版  日経BP社
 読んで元気の出る、町工場の話です。まだ若い女性社長の下で、若手から70歳すぎまで働いている精密加工業の中小企業での奮闘努力の過程が惜しみなく公開されています。なにより表紙の写真がいいですね。みんな目が生き生きしています。
 社員34人のうち20代が11人、30代が10人、40代が6人、50代以上が7人。ところが、この会社では定年が70歳。65歳になったら給料は20%減だが、70歳までは同額、そして70歳を過ぎても本人が希望するなら働き続けられるといいます。現に70歳すぎの人が3人も働いているというのです。これは驚きましたし、敬服します。前に、アメリカの小さな会社に、そんなところがあったのをこの欄で紹介しましたが、日本でも同じようなことを実践している会社があるのですね・・・。
 それにしても若者が入社して、定着率もいい。そのなかで会社がつぶれることもなく業績を伸ばしているなんて、すごいことです。そこには、どんな秘訣があるのでしょうか・・・。
 未経験者をゼロから育てる。求職者は3か月間、お試し期間として働いてもらい、ハードルを下げる。採用面接は社長がする。そのとき重視するのは、ヒューマンスキルの高さ。誰とでも親しく接することのできるコミュニケーション能力、素直さ、謙虚さ、向上心。このニューマンスキルがあれば、早くから周囲に溶け込み、技術も知識も短期間で習得できる。学歴は一切関係ない。
自分の短所が答えられない人は採用に至らないことが多い。ネガティブに答える人もバツ。後ろ向きの発想では何事も良い方向には進まない。
誰が見ても優秀な人材は、すぐには採用しない。他社を見たうえで、自らの決断で入社した社員は決してすぐには辞めない。
 未経験の新人にも、いきなり本物の製品の加工をさせる。練習では緊張感がないし、集中しないので、一向に上達しない。
入社して1ヶ月間、社長と大学ノートで交換日記をつける。それで毎日の様子を見る。
職場を楽しい雰囲気、居心地のいい空間にする。2年に1回は社員旅行に出かける。
法律事務の活性化にも大いに役立つような内容の本でもありました。
 日本の中小企業の底力を確信させてくれる本でもあります。引き続き、がんばってくださいね。
(2015年6月刊。1000円+税)

自衛隊の転機

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  柳澤 協二 、 出版  NHK出版新書
 先日、著者には福岡でも講演していただきました。防衛官僚のトップ近くにいた体験にもとづき、自衛隊の海外派兵の危険性を力説されました。もちろん、安保法制にも反対です。
自衛隊員の生命を軽々しくもてあそんではいけない、国民の人権を踏みにじってはいけないという信念は強固なものがあり、とても分かりやすい話でした。聞いていて、胸にストンと落ちました。
著者は1970年に防衛庁に入って退官するまで40年間、防衛官僚として仕事をしてきました。2004年から2009年まで、内閣官房副長官補として首相官邸で働きました。
自衛隊の海外派遣は、三つの矛盾をかかえている。その一は、国内で戦うことを前提としているため、補給などの後方支援部隊の規模を小さくしていること。第二に、隊員の心構え。自衛隊員の多くは、人助けのために入ったというもの。第三、憲法との整合性。武器の使用を考えてこなかった自衛隊員が海外で「交戦」など出来るはずもない。
海外警備活動は、これまで3回しか発動されたことはない。これは、あくまで警察行動であるから、自衛隊員が出ていっても、海外公船に対する実力行使はできない。
イラク派遣のときには、アメリカへの付きあいなのだから、危険をおかすまでもないというのが当時の政権の認識であり、これを反映していた。
当時は、自衛官が撃たれることばかりを心配していた。
武器使用は、自衛官個人の権限として想定されているものなので、自衛官個人が一義的に責任を負うことになる。
安保法制ができて、自衛隊のリスクは格段に高まった。軍法のない自衛隊は使えない。
アメリカは、陸戦(陸上戦闘行為)には、ほとほと嫌気がさしている。
日本の自衛隊は、冷戦時代の防衛力に比べて一回り小さい規模になっている。「陸」は18万人から16万人弱へ、「海」は60隻から54隻へ、「空」は430機から340機へとそれぞれ減っている。
現場感覚にもとづき、自衛隊のあり方とその実態について議論がたたかわされた本でもあります。                          (2015年9月刊。780円+税)

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