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カテゴリー: 社会

なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  大村 大次郎 、 出版  ビジネス社
 読んでいると、本当に腹の立つ本です。いえ、著者に対する怒りではありません。
 トヨタのひどさに呆れ、かつ驚きと怒りを禁じえません。亡国企業トヨタの正体!とありますが、まさしくそのとおりです。
 トヨタの車に毎日のっているのが私は恥ずかしくなってしまいました。これまでニッサン社長のカルロス・ゴーンの年収10億円に腹を立てていましたが、トヨタのひどさは日本という国を狂わしている点で、ニッサンをはるかに上回ります。
 まず、なんといっても、トヨタはもうかっているのに法人税を5年間支払っていませんでした。そして、消費税のおかげで戻し税と称して、支払うどころかガッポリ3300億円もらっていました。プリウスなどを開発するために国から4000億円という莫大は援助金をもらっていました。 
税金は支払わないのに、もうかったお金を株主には高配当を続けていました。ところが労働者の賃上げはせず、非正規の社員は国の援助金がもらえなくなると一斉に首切りました。
 まさしく、自分さえ良ければ、日本という国がどうなろうとかまわないという大企業エゴむき出し。そして、そんなトヨタが日本経団連を牛耳り、政治を動かしているのです。
 こんな世の中、間違ってますよね。
 地震多発国の日本で原発推進を今なおやめない電力会社もひどいと私は思いますが、トヨタも日本の将来を暗いものとしている点では同罪です。
 この本は、データを示して明快に論じています。トヨタの反論を知りたいものです。
 トヨタは、税制の優遇制度をうまく利用したのではない。自社の利益になるように税制そのものを変えた。
 トヨタは、それほどの力をもっているのですね・・・。
 トヨタの最大の罪の一つは、日本の賃金水準を低いままに抑え込んでいる張本人だということ。トヨタは史上最高の利益をあげ、株主に対して毎年1000億円から6000億円も配当している。
 ところが、どんなにもうかっていても従業員の賃金(ベア)は1円も上げなかった。それが8年間も続いた。7万人の従業員に1000円のベースアップしても8億円ほど。1万円でも80億円。株主への配当金とはケタ違いに低い。
 トヨタは、日本の雇用や経済活動への貢献度をどんどん減らしているのに、税制面での優遇だけは増やしている。
 こんなおかしいことって、ないですよね。トヨタの車なんか、もう乗りたくない気分です。ぷんぷんぷん・・・。
(2016年6月刊。1000円+税)

書斎の鍵

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  喜多川 泰 、 出版  現代書林
 本を読む楽しみに満ちた本です。
 読書の習慣をもちましょうというのは、立派な常識人になろうというのではない。むしろ、立派な変人になろうと言っている。つまり、変人のすすめ。
 常識などというのは、誰かがつくり出した空想。「常識人」など、実は、一人としていない。人はすべて、誰とも違う常識をもって生きている。
 弁護士の世界では、お互いに「あんたは奇人、変人やねぇ」と言いあうことが少なくありません。実際、そう言いたくなる人がたくさんいます。もちろん、私も、本人はいたって「常識人」だと思っているのですが、はたからみたら、かなりの奇人・変人の類なのでしょう・・・。
 小説には、いろんな人が出てくる。うれしいこと、悲しいこと、ピンチの連続に勇気や感動。ぐうたらな人もいれば、必死で生きている人もいる。そして、たとえ小説であっても、主人公の生き方に共感できるとき、それは、ただの作り話ではなくなる。生き方の指針にすらなる。自分だって、そうありたいと思えたら、人生を支えてくれる力になる。
 どれほど遺伝的に健康に生まれてきても、生活習慣や思考習慣が悪いと簡単に病気になるし、それでも改善しなければ死に至る。良くも悪くも、私たちの人生は、私たちの手にした習慣の産物と言える。
 よい習慣をもっている人は、人生において良いものをたくさん手に入れることができる。今あるのは才能のおかげというより、習慣のおかげだ。
習慣によってつくり出すべきものは思考だ。心と言ってもいい。人間の思考には、習慣性がある。放っておくと、いつも同じことを考えている。自分に自信がない者は、放っておくと、いつも自分に自信がない方向に物事を考える。悲観的な者は、何かが起こるたびに悲観的に物事を考える。
人間の行動が心に左右される以上、この心の習慣をよくしない限り、よりよい人生になることはない。だから、私たちが身につけるべき習慣は、心を強く、明るく、美しくするための習慣ということになる。
そうした心から生み出される言葉、行動そして結果は生きているあいだ、ずっとその人を幸せにしてくれる。人生に大きな意義を与えてくれる。そして、そんな習慣をもつ人は、自分だけでなく、たくさんの人を幸せにすることができる。
一冊の本に出会ったら、心が楽になることがある。一冊の本に出会ったら、前に進む勇気をもらえることがある。一冊の本に出会ったら、未来が少しだけ明るく見えることがある。
私も、毎日、そんな思いで、ひたすらいい本にめぐりあいたいと期待して本を読み、こうやって書評を書いています。
(2016年1月刊。1400円+税)

罪の声

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  塩田 武士 、 出版  講談社
1984年に始まったグリコ・森永事件は、ついに犯人の一人も逮捕されることなく迷宮入りとなってしまいました。
この本は、グリコの犯人集団の内側を分析していて、とても説得的です。
犯人たちは子どもの声をつかって「指示」を出していましたが、その子どもが成人してから、自分の声がグリコ事件で使われたことを知り、誰が、なぜ、どのようにして犯行が遂行されるに至ったのか、謎解きをすすめていきます。同時に、同じ動きがジャーナリスト内部でも起きていて、ついに両者は出会うことになります。
それにしても、このグリコ事件が起きたころに豊田商事の永野一男会長がマスコミの面前で刺殺されたり、8月に524人乗りの日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落したとあって、そうか、同じころに衝撃的な大事件が相次いでいたことを少し思い出しました。
この事件で、警察は何度も犯人たちを取り逃しています。警察庁の指揮下の兵庫県警、大阪府警、滋賀県警の連携プレーがうまくいってなかったことに主因がありますが、技術的な困難もたしかにあったようです。今のように誰も彼もケータイを持っているのではありませんし、GPSもありませんでした。
無線機20台と臨時中継器1台が活躍したとのことですが、中継器が足りずに、各府県警の連携プレーがうまくいかなかったようです。それにひきかえ、犯人一味は警察の無線連絡を傍受していたのでした。
警察庁の公安的手法による捜査は「一網打尽」を狙うものであるため、むやみと職務質問をかけてはいけないとしていた。そのため、目の前にいる犯人を取り逃すことになった。
犯人チームのリーダーは、株価の値下がりと値上がりによって利益を得ることが目的だった。グリコの株には市場での浮動様が少なかったので、株価操作がしやすかった。
ただ、暴力団をバックにした連中は、身代金を確実にゲットすることに意欲があった。
結局、「株価操作組」は暴力団グループに打倒されます(本当でしょうか・・・?)。
振り込み詐欺グループと同じ運命なのですね・・・。
グリコ・森永事件を思い出し、その犯人像を考えるうえで手助けになる本です。400頁もありますが、なかなか面白く読ませますので、事件の真相を考えたい人はご一読ください。
(2016年8月刊。1650円+税)

秘密解除・ロッキード事件

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  奥山 俊宏 、 出版  岩波書店
1976年7月27日、現職の総理大臣、田中角栄が逮捕された。
私が弁護士になって2年目の夏のことです。当時、横浜弁護士会に所属していた私は、この日、たまたま東京地裁に行っていました。騒然とした雰囲気に何事かと驚いた記憶があります。あとでテレビを見ると、田中角栄を逮捕・連行していた検察官は横浜修習のときの指導教官だった松田昇検事でした
 なぜ田中角栄が逮捕されたのか。日中国交回復を独断ですすめるなど、アメリカの政策に逆らったからだという見方がありますが、この本は発掘されたアメリカ政府の内部資料をもとに、そうではなかったとしています。
とりわけキッシンジャーから田中角栄は人格的に嫌われていたようです。
キッシンジャーというと、切れ者のユダヤ人学者、外交官として定評がありますが、同時にキッシンジャーは、チリのアジェンデ大統領をクーデターで倒して死に追いやった張本人の一人でもあります。今度、『チリの闘い』という映画が公開されるそうなので、私もぜひみたいと考えています。
なぜ田中角栄がアメリカ政府のトップから嫌われたのか。それは、田中の政策というより、田中のふるまい、言動が原因だった。田中角栄は政治的に微妙な問題もふくめて、あることないことを織りまぜて報道機関に情報を流してしまう。そして、右翼の児玉誉志夫とのつながり。児玉誉志夫は、第二次世界大戦でアメリカの敵だった日本人のなかでも最悪の敵なので、許すことが出来なかった。そんな児玉を通じて日本の政界にお金がアメリカから流れたというのが、ワシントンの人々にとってショックだった。
アメリカは日航と全日空に民間の飛行機を買わせるだけでなく、自衛隊に軍用機を買わせようとしていた。しかし、田中角栄のほうは逮捕、立件されたが、ダグラク・グラマン事件に関する元防衛庁長官の松野から5億円を受けとったのは時効期間がすぎていて、立件されなかった。
アメリカは全世界に暴力的に君臨しようとする野蛮きわまりない国だと私は考えていますが、同時に、アメリカの政治は一定期間がすぎると公文書が公開され、何が起きていたのか、かなり判明する仕組みになっていることについて、私は高く評価します。それに、先日から、アメリカの大統領候補の選挙運動のなかで、民主的社会主義者を自称するサンダース氏が大健闘したアメリカは、本当に頼もしいとも考えています。それにしても、力に頼る政治の愚かさに、もっとアメリカ人も日本人も気づいてほしいものです。
田中角栄とロッキード事件がアメリカの政治の動向と、いかに関わっていたかを知ることのできる貴重な本だと思いました。
(2016年9月刊。1900円+税)

ホープレス労働

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  増田 明利、 出版  労働開発研究会
 バブル崩壊と、その後の失われた20年で日本の働き手の姿は大きく変わった。2000年ころを境として、それまでの標準的な働き方や生活様式は揺らいできた。それまでに比べて、正規雇用につきにくくなっているし、正規雇用につけたとしても、かつてのような賃金上昇は期待できない。
今や大卒でも3年後の離職率は30%。履歴が汚れると言ってさっさと辞めていく。1ヶ月未満で辞めたら、年金保険料の記録が残らない。
ブラック企業ではダメになったら使い捨て。そこでは従業員は部品ですらない。単なる燃料扱い。
ブラック企業であくどい仕事をして歩合がついて月収40万円。でも良心が痛んだ。
IT企業で諸手当こみで額面30万円。手取りは25万円。でも、それだけ働いていても残業代が出るのは30時間まで。あとはタダ働き。
毎年4人から5人は過労で倒れて入院してしまう。そして、高脂血症と血糖血の異常が多い。一日中、パソコンの前に座っていて、食べるのはファーストフードやジャンクフードばかりだから、そうなるのも必然。
女子社員だと、20代なのに更年期障害みたいになってしまう。男性は過敏性腸症候群。IT企業、死の行動って感じ。
求人が多いのは、ブラック企業だと叩かれているファミリーレストランのチェーン店、居酒屋、回転寿司、そして介護職。
派遣社員は一匹狼。群れることはない。正社員の人から求められるまで、こちらからは求めない。これが大事。自分から食事や遊びに誘うことはない。
「おい、おまえ。そこの派遣。あんた、、、」。
完全に見下している正社員は多い。
フリーターという語感の軽やかさとは裏腹で、現実には低賃金、低技能の使い捨て。安易な選択をして、自ら将来を閉ざしてしまうことになる、、、。
大きな会社のなかで、出世するしないというのは、必ずしも実力ではない。その人の上司の好き嫌いや相性、全体のバランスのなかで決まっていく。
脱サラも大変。勢いと思い込みで脱サラすると間違う。飲食店経営は手軽に始められるが、難易度は高い。始めるために半年くらいは飲食業で働き、理想と現実のギャップを知るべき。現場経験や土地勘がない未経験者が成功する可能性はほとんど皆無。 
大陸ヨーロッパ型は、福祉社会を目ざしている。アメリカ型は能力ある者には高額、ない者には最低限しか支払わない。日本はアメリカ型を選んだ。
でも、それでいいのでしょうか。底が抜けたアメリカ型では日本の将来はありませんよね、、、。
 読んでいくうちに目の前が真っ暗になってしまう本でした。でも、こんな本が出されるだけまだ見通しはあるということなのでしょうね。そう言いきかせるしかありません。
(2016年6月刊。1300円+税)

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