法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

愛犬が教えてくれること

カテゴリー:生物

著者   ケヴィン・ビーアン、 出版   早川書房
 犬について、改めてよくよく考えさせてくれる本でした。
 犬の行動は、たとえどんなものであろうとも、常に飼い主の心に訴えかけているのだ。なぜなら、人は、自分では気づいていなくても、潜在的に犬と同じ動物的な意識を心のなかにもっているから。犬と飼い主の心を結びつけるのにもっとも重要なのは、人が動物の中に人間性を読みとることではなく、動物が人間の中にある動物性を読みとることである。
 犬は人の感じることを感じる。これによって犬は自分の立場やこの世界に適応していくためにしなければならないことを「知る」。
犬は、あるもの、あるいはある瞬間をほかと比較してみるという世界観をもっていない。犬の心はエネルギーの回路である。
 犬と人間は、基本的に同じ環状構造をもっている。犬は、人から発散された潜在的エネルギーに非常な興奮を示す。
犬は人が注目しているものに心を奪われる。飼い主が棒を指差し、「取ってこい」と命じると、犬にとって棒は手や足と同様、飼い主の体の一部となる。犬は飼い主が棒に対して発した感情のエネルギーを感じとる。犬からみると、棒は生き物であり、飼い主の体そのものなのだ。
 犬と人の意識は、犬のいる場所で交わる。犬は「心のエネルギー」である。心のエネルギーとは、肉体と神経のエネルギーが交わり、頭と体が結合し、人間が自然とつながる場所である。こうして、犬は人間の内面を映す鏡となる。犬は自分が欲しいと思ったものは、人間も欲しがっていると「感じる」。
 わがままな犬を飼っている家庭では、しばしば子どももわがままである。
犬は、きわめて社会的で協調性に富んだ動物である。だが、狩りの最中は、リーダーを識別するのは容易ではない。
 きちんと育てられ、訓練された犬は飼い主のライフスタイルに適応する術を身につけている。
去勢された雄犬は、されていない雄犬より問題が多い。犬に不妊治療は必要ない。
犬には思い出すことがなく、それでいて、忘れることがない。犬に時間の感覚がないのは、犬が感情に動かされる生き物であり、完全に感情によってのみ動くから。
犬がなにをするにしても、そこに意図はない。犬は、まさに今の瞬間のみを生きており、犬の行動と学び方は、感情が犬の体の中でどう動き、そしてどう発展して特定の感覚を引き起こすのかによって決まる。犬には時間という概念が全くなく、他者がどんなものの見方をするかを想像することもできない。
 感情こそが犬の全意識であり、認識するすべてだ。感情の流れが犬の意識の流れだ。犬は感覚そのものだ。
 犬にとって、一瞬は永遠と同じであり、物事がどうやって、なぜ起こるのかを犬が「考える」ことはない。
犬が生まれつき社会的なのは、個々にもつはずの感情の回路が半分は相手の中にあるからだ。犬はみな、持ちつ持たれつの関係を築いている。
犬とは、どういう生き物なのか?
 犬とは自然界で最も共感力の強い生き物である。犬は心で理解する。犬は感情そのものなのだ。犬は飼い主の姿を映し出している。
 犬は飼い主を心で理解する。犬の行動は、飼い主いや自分のグループの心を写し出す感情の超音波映像のようなものだ。
犬は感情を理解する達人として高度に進化した生き物だ。
犬と飼い主との関係について、これほど深い関係があることを指摘した本を読んだことがありませんでした。犬好きの人には犬という生き物を深く理解するため一読をおすすめします。
(2012年3月刊。1800円+税)

ウイルスと地球生命

カテゴリー:生物

著者   山内 一也 、 出版   岩波新書
 2000年、ウイルスが人間の胎児を守っていることが明らかにされた。それまで、病気の原因とだけ見られていたウイルスが、実は、人間の存続に重要な役割を果たしていることが示された。ええっ、ウイルスって役に立つものだったんですか・・・。
 ヒトゲノムの9%は人内在性レトロウイルス、34%がレトロトランスポゾン、3%がVNAトランスポゾンだということが判明した(2003年)。
トランスポゾンとは、生物の間を自由に移動できる、いわば「動く遺伝子」であり、その大部分を占めるレトロトランスポゾンは数千万年前に感染したレトロウイルスの祖先の断片とみなされている。われわれ人類のもっている遺伝子情報の半分はウイルスに関連したものになる。ということは、ウイルスは、単に病気に原因というだけの存在ではありえないということを示している。
 ウイルスは30億年前には存在している。これに対して最古の猿人は700万年前、ホモ・サピエンスが出現したのは20万年前にすぎない。
人類(女性)は、妊娠すると、それまで眠っていた人内在性レトロウイルスが活性化されて大量に増えてくる。そして、この内在性レトロウイルスのエンベロープ・たんぱく質が胎盤を形成するのに重要な役割を果たしていることが実証された。
ウイルスは、細胞外では単なる物質と言える。しかし、細胞の中では、自主性をもった生物として振る舞う存在である。そして、無生物との間には、常識的なはっきりした線を引くのは難しい。
生物とウイルスとの大きな違いは、細胞の有無と増殖様式。ウイルスには細胞は存在しない。生物は、二分裂で増殖する。しかし、ウイルスは部品組み立て方式である。
 エイズの原因であるウイルス(HIV)には、二つのタイプがある。そして、全世界に広がったのは1型のHIVであり、20世紀のはじめに西アフリカでチンパンジーのウイルスにひとりの人間が感染して、それが人間のあいだに広がった。2型のHIVは、アフリカ産サルであるスーティマンガベイのウイルスに人間が20世紀半ばに感染したもの。これは西アフリカの中だけで広がっている。
 子孫を残すために共生するウイルスが貢献している側面は、哺乳類よりはるか以前に地球上に出現した昆虫に既に見られる。
 海に存在するウイルスを推算すると、少なくとも海水1ミリリットル中に、深海で100万個、沿岸だと1億個のウイルスが存在する。海洋全体では、10の31乗個のウイルスが存在する。ウイルスは、海洋の至るところで、さまざまなプランクトンに感染することで、地球規模の炭素循環に多大な影響を与えている。
 深海底から採取した堆積物に、1平方メートルあたり28兆個のウイルスが存在していた。また、ウイルスの活動は、地表の温度上昇を防ぐ雲の性瀬にも影響を及ぼしている。ウイルスは、硫化物の循環を介して地球の気候変動にも関係している可能性がある。
 人間の腸内には100兆個もの最近がすみついているが、ウイルスはそれを上まわる数で共生している。それが腸内細菌とどのような相互作用をしているのか、まだ未知の領域である。
ウイルスって、人間にとって有害なだけの存在かと思っていました。実は違っているんですね。ほんとうに、世の中って、知らないことだらけですよね。
(2012年3月刊。2800円+税)
 土曜日に、先日うけたフランス語検定試験(1級)の結果通知のハガキが届きました。61点でした。初めて5割を超えることができました。信じられない成績です。もちろん合格基準点は82点ですから、あと20点以上も上回らなければいけません。それにしても、続けていると少しずつ良くなるのが、うれしいものです。
 フランス語の授業のとき、原発はすぐなくすべきだと言ったら、みんなが電力不足が心配だからと反論してきました。そんなのウソだ、政府と電力会社にだまされてはいけないと言い返せず、悔しい思いをしました。まだまだです。

テングザル

カテゴリー:生物

著者   松田 一希 、 出版   東海大学出版会
 ボルネオのジャングルに分け入ってテングザルをじっと観察した成果が本になっています。大変な苦労があったことが生々しく伝わってくる本でもあります。
熱帯のジャングルのなかには、蚊、ヒル、ダニといった人間にとって疎ましい虫が多い。耳元で四六時中とびまわる大量の蚊にいらいらさせられ、身体中をダニにかまれて一晩中かゆみに苦しんだりする。 うひゃあ、ご、ごめん蒙りたいです。
テングザルの個体を識別する必要がある。そのうち尻尾の形にはいろいろのパターンがあることがわかってきた。どこを見たら個体識別ができるが、初めはとても骨の折れる作業だ。
 テングザルの産まれたばかりのアカンボウは、顔の肌の色が真っ黒だ。産まれてから1年半から2年くらいで、顔から黒色が消えて、子どもと分類される。区別の難しいのは、コドモとワカモノである。
テングザルは水かきの発達した四肢をもっている。それで体重20キログラムもある巨大なオスが高い木の上から勢いよく川に飛び込む。そして、川では犬かきのフォームで静かにスイスイと泳いで対岸へ渡る。テングザルは、対岸までの距離が6メートルにも満たない場所を選んで、川渡りする。テングザルは、水中の捕食者である。ワニによる攻撃を受けにくい場所を選んで川渡りしている。テングザルが止まり場所として好む場所も、対岸までの距離が短い地点だ。
 テングザルは、森の中で過ごす時間の大半を「休息」に費やしている。このときは、木の枝の上でじっとしている。24時間のうち21時間もの時間を休息に費やしていた。
 その理由は、「特殊な胃の構造」にある。コロブス科であるテングザルは、胃のなかでの分解・消化に多大の時間を要するため、その間じっと動かずに休息しておかなければならない。
 テングザルは、日中のわずか0.5%しか毛づくろい行動に時間を費やさない。テングザルは、188の植物種を採食した。テングザルは若葉のほか、果実そして花を採食した。ところが、テングザルが好んで食べた果実は、売れていない未熟なものだった。なぜか?
 もし糖度の高い、熟れた果実をテングザルが食べると、胃のなかのバクテリアの活動が急激に高まり、多量のガスを発生させて胃を膨張させる。そして、ついには、他の内臓器官もこの膨張した胃が圧迫して、テングザルを死に至らしめる。つまり、テングザルにとっては、熟れた果実はあまりありがたい食べ物ではない。うむむ、そういうことってあるんですね。美味しさが命とりになるなんて・・・。
 テングザルは平日の移動距離は最大1.7キロ、最短は220メートル。これも、テングザルが夕方までには必ず川岸に戻って眠らなくてはいけないからという理由だ。
 テングザルの胃の構造は草食に特化しており、全体として葉を多く食べる傾向にある。
 テングザルの生態をわかりやすく紹介した本として推薦します。それにしても学者って大変ですよね。
(2012年2月刊。2000円+税)

魚は痛みを感じるか?

カテゴリー:生物

著者   ヴィクトリア・ブレイスウェイト 、 出版   紀伊國屋書店
 魚が痛みを感じているのか?
 この問いかけに対する答えは、イエス。ではなぜ、一度エサにかかって釣りあげられた同じ魚が、再びエサで釣れるのか?
それは、ひもじいのに、ほかにエサが見つからなかったから。うーん、魚も痛みを感じているのでしたか・・・。モノ言わない魚も、実は痛みを感じていたなんて。
 痛みとは、単一のプロセスではなく、一連のできごとが集まったもの。皮膚の特殊な受容体が刺激を受けると、それは何かが皮膚にダメージを与えているという情報を身体に伝える。たとえば、最初にやけどが検出され、その情報が伝達する信号が脊髄背角へと伝わり、そこで反射反応が引き起こされる。そして、ヒトはやかんのふたを落とす。ここまでは、すべて無意識のうちに生じる現象だ。信号は、脊髄に到達して反射反応を引き起こしたあと、脳に至る。そのときはじめて、ヒトは痛みを感じはじめる。
 やけどによって引き起こされた不快な情動的感覚に意識的に気づき、脳はたった今自分がとった行動が痛みをもたらしたのだと告げる。何らかの痛みが感じられるまでに2秒ほどかかることがあるが、ほとんど痛みはそれより早く感じられる。
 マスに深い痲酔をかけて活動を完全に停止させ、何が起きているかをまったく関知できない状態にする必要があった。しかし、神経系は依然として機能している。ヒトの場合には、痛みを経験すると、呼吸と心臓の鼓動が速くなる。魚の場合には心拍数が早くなることが、エラ蓋の開閉数を数えることで分かる。
 マスをハチの毒や酢で処置したとき、エラの開閉数は、休息していたことに比べて、ほぼ倍になっていた。したがって、マスは痛みを検知する。そして、それが刺激されると、その情報が三叉神経に伝達される。それによって魚の行動が変化する。
 では、魚は感情を経験しているのか、苦しむ能力をもっているのか?
 魚はエサを迷路のなかでも素早く見つけるようになる。つまり、魚は学習できるのである。エサを早く見つけるため迷路のなかで、どこで曲がったらよいのか、そのときの目印は何かを魚(キンギョ)は学習し、記憶することができる。
フィルフィンゴビーという小さな魚は、満潮時に周辺の地形を覚え込んでいて、干潮のときには海水のたまるくぼみを記憶している。そして、捕食者が来ると、水たまりから水たまりへと飛び移って逃げる。周辺の環境を学習するには、満潮をたった一度だけ経験すればよい。
魚にも「知能」があって、学習できること。そして、魚も痛みを感じていることを実証した面白い本です。
(2012年5月刊。2000円+税)

左利きのヘビ仮説

カテゴリー:生物

著者   細 将貴 、 出版   東海大学出版会
 人間に右利きと左利きがいるように、カタツムリにも右巻きと左巻きがいます。
 この本は右巻きカタツムリを主食とするヘビが、左巻きのカタツムリは食べられないことを実証した研究の過程を詳しく紹介しています。そう書いてしまうと、なあんだ、たいしたことないやんか、と思われるかもしれません。でも、実は、ものすごく 面白いのです。その過程が。
 まず、カタツムリだけを食べるヘビがいるなんて知りませんでした。よくぞ、それだけで生きられるものです。カタツムリばかり食べるヘビは、西表島と石垣島にしか生息していないイワサキセダカヘビという。樹上で暮らす夜行性のヘビだ。同じようにミミズとかナメクジだけ食べるヘビもいるとのこと。たいていのヘビはごく一部の動物しか食べない偏食家である。シマヘビは何でも食べる変わりもののヘビ。
 そして、カタツムリの右巻き、左巻きです。カタツムリも、人間と同じようにほとんどが右巻き。それで、カタツムリを食べるヘビの頭(口)は、それに適応するように左右不ぞろいな格好をしている。口の形から歯の数まで違うのです。それを発見したのは偶然ですが、それは執念のたまものでした。そこで、右巻きカタツムリを食べるのに適したヘビが左巻きカタツムリを食べようとすると、いったいどうするのかを実験してみたのです。その実験装置をつくるのが大変でした。さらに、その状況を映像を残さなくてはいけません。このヘビは夜行性ですので、カメラをセットして自動撮影にしておきます。
 なんと、右巻きカタツムリを食べるのに適した口をもつヘビは、目の前の左巻きカタツムリを食べることができなかったのです。よくぞ映像にとらえたものです。著者の執念による成果でもあります。
 この本を読むと、人間にも左利きが必ずいるが、「ほどほどに少数」いて、実は一人もいないということはない。そして、それがなぜなのか、その理由は解明されていないというのです。
 人間の場合、左利きになるのは、教育の成果だけでは説明がつかない。利き手の決定には遺伝子が関係している。
右巻きのカタツムリと左巻きのカタツムリとが出会っても交尾はできない。これも考えてみれば不思議なことですよね。前にフランスの自然映画で、カタツムリの交尾の様子を見たことがあります。お互いに触れあい、相性を確かめあって交尾に至るのですが、それはもう、見ている方が思わず赤面してしまうほどなまめかしい愛撫でした。
 カタツムリばかり食べるヘビは、西表島と石垣島にしか生息していないイワサキセダカヘビという。樹上で暮らす夜行性のヘビだ。同じようにミミズとかナメクジだけ食べるヘビもいるとのこと。たいていのヘビはごく一部の動物しか食べない偏食家である。シマヘビは何でも食べる変わりもののヘビ。森の中に入り、このヘビやらカタツムリを採取するというのですから、学者も大変です。なにしろ夜間です。例の毒ヘビ・ハブだっているのですよ。かまれたときの応急薬も持参します。それにしても、怖いですね。夜に森の中に一人で入っていくなんて・・・。勇気がありますね。
 まだ30代になったばかりの若手研究者による苦闘の研究が実感をもって伝わってきます。知的刺激にみちた本でした。
(2012年2月刊。2000円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.