法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

犬のココロをよむ

カテゴリー:生物

著者  菊水 健史・永澤 美保 、 出版  岩波書店
犬派の私は、犬について論じている本を見逃すわけにはいきません。
 犬は5万年前から1万5000年前には人間と共に生活を営みはじめた。そして、400種をこえる犬種がつくり出された。といっても、この400種は、わずか数百年のあいだに作成されたモノ。地球上の生物の中で、犬ほど多様性に富んだ動物はいない。なぜ、犬がこれほどまでに短期間のうちに遺伝的多様性を獲得できたのかは未解決なのである。
犬は発達時期に人間の社会と接触することによって、成長したあと人に対する恐怖反応が減少し、同時に訓練能力が向上する。8週齢までに人の家庭的な環境で飼育されなかった犬は、成長後に人を回避する行動をしたり、見知らぬ人への攻撃性が高くなったりする。
 6週齢より前に子犬を親や兄弟犬から離れてしまうと、その後、その子犬はほかの動物やまわりの人との関係を良好に保つ、いわゆる社会化が阻害され、さらに体重が減少したり死亡率が高くなったりする。
 犬は、そもそも生活の場にはトイレをしない。必ず、自分の安心した住みかから離れた場所に排泄する習慣性をもっている。
 子犬にとってもっとも大切なことは、飼い主との関係をうまくつくること、成長して社会性を身につける時期にできるだけ多くの経験を積むこと、あとは行動を制御することを覚えること。
 犬の世界は、人の世界とは異なる。たとえば、犬の視神経には、赤色光に反応する細胞がない。犬の嗅覚は人の1000倍、感知能力は100倍から1万倍もある。
 犬が人間の匂い嗅ぎをするとき、親しみのある相手だと、太ももから足の付け根にかけて匂いを嗅ぐ。見知らぬ相手だと、手から腕、さらには胸部にかけて匂いを嗅ぐ。
 犬は、個々の人間を見分けることができる。そして、少なくとも3年間は記憶が残っている。
 犬は東アジアに起源をもち、世界に広がっていった。もっともオオカミに似た遺伝子をもつ犬種として、柴犬、チャウチャウ、秋田犬があげられる。うひゃあ、柴犬がオオカミに似ているだなんて、信じられません。
 日本古来の犬は、オオカミと犬をつなぐ素質をもつ、非常に貴重な犬である。
生物学的には犬とオオカミは同じ動物種である。
 オオカミは、生後3年の性成熟過程を過ぎると、遊びの行動をしない。しかし、犬はいくつになっても遊びに飽きることがない。犬は年老いてきても見知らぬものへの興味や探索心をもち、学習能力や友好な態度がいつまでも高い。見知らぬ犬や人への寛容性などは犬の特徴だ。
 犬のことをさらに知ることのできる本です。130頁の薄い本なので、すぐに読み終えてしまいました。また、犬を飼ってみたいのですが、自由に旅行に出かけられなくなるのも困るので、あきらめています。
(2012年11月刊。1200円+税)

つながりの進化生物学

カテゴリー:生物

著者  岡ノ谷 一夫 、 出版  朝日出版社
ユーチューブで、ギバタンというオウムが音楽にあわせて足と頭でリズムをとって踊る様子を見ました。まさに圧巻でした。なんかの間違いではないのかと目を疑いました。音楽にあわせて本当に踊っているのです。これって、CGかしらんと疑ってしまいましたが、あくまで実写フィルムです。ぜひ、見てください。オウム、スノーボールと入力して検索すれば見ることができます。
人間が環境を認知するときに使われる五感の割合は、視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1%。聴覚は危険の検出のために生まれた感覚である。人間の安心感には超音波の存在が大事。人間の赤ちゃんは触覚を中心に世界を認識している。
 ジュウシマツのオスは、メスに一生けん命に歌いかけてアピールし、ご機嫌をうかがう。ジュウシマツは、ペットとして飼われているうちに、より効果的にメスにアピールするため歌えるように進化していった。
大人のジュウシマツは、みんなに聞こえるように踊りながら歌う。子どものジュウシマツは、あまり人に聞かれないように、小さな声で自信なさそうに歌う。息子のジュウシマツは、父親が歌いだすと、近くに寄ってきて、一生けん命に歌をきく。このように、ジュウシマツが歌うには、学習が必要である。
子どものジュウシマツは、お父さんの歌だけじゃなくて、まわりのオスのいろんな歌の一部を切りとって、それを組みあわせて新しい歌をつくり出している。
世界には6000の言語があるが、人間の使う言葉は基本的に1種類で、あとは全部が方言だと考えていい。
 人類が12万年前にアフリカから出たころ言葉は生まれた。文字が出来たのは、1万年前のこと。10万年前に言葉ができたとすると、1世代20年として5000世代。そして文字が出来たのが1万年前だとすると、まだ500世代しかたっていない。
言語は、発音という外にあらわれる部分だけでなく、心の中での概念の組み立てをつかさどる。この部分がないと、人間の言語のような構造は誕生しない。人間の言葉には文法がある。
スズメは、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」としゃべることができる。発声学習する鳥は、ハチドリ目、スズメ目、オウム目の3つに属する鳥たち。
ええっ、スズメが話せるなんて・・・。
歌をうたっていた人間の祖先は、だんだん言葉をもつようになっていった。
いろんな生き物と対比させながら人間を考えてみると、人間とはどんな存在なのかがよく分かってきます。
(2013年3月刊。1500円+税)

犬とぼくの微妙な関係

カテゴリー:生物

著者  日高 敏隆 、 出版  青土社
適応度増大のためにとるべき戦略は、オスとメスとではまったく逆である。メスはオスに迫られても、すぐには応じない場合がほとんどである。知らん顔をしてみたり、逃げたり、明からさまに拒んだりする。複数のオスに近づかれると、メスはその中からどれかを選ぶ。
 メスは対称的な体をもつオスを選ぶ。対称的なオスを美しいと思うからではない。身体がより対称的な個体は、極端に非対称になっている個体より遺伝的にしっかりしたところがあることになる。そこでメスは、体つきの対称性を手がかりにして、そのようにしっかりしたオスを選ぶのだろう。
母親にとってかわいいのは子どもではなく、子どもがもっている自分の遺伝子なのだ。つまり、母親があらゆる苦労を身の危険もいとわずに子育てに努力を傾けるのは、子どものことを思ってではなく、あくまで自分の適応度増大というまったく母親の利己的な動機によるものなのだ。
 ワシ・タカ類は、卵を二つうみ、ヒナがかえる。そして、第一のヒナが無事に大きくなると、第一のヒナは二番目のヒナを殺してしまう。そして、親はそれを見て見ぬふりをする。
 これは、第一子が無事に育たないときの「保険」として第二卵をうんでおくことによる。第一子が第二子を殺せるくらい頑丈に育ったら、保険はもう要らない。そこで、第一子の食物を確保するために、第二子は第一子に殺させる。うむむ、自然の摂理はよく出来ていますね。
 性があることによって、動物は、単に遺伝子を混ぜあわせて多様性をつくりだせるだけでなく、偶然に生じてくる突然変異を急速に集積して有利な特徴をもつ個体を次々に生じることができる。これは性の存在のもたらす大きな利益である。
 ツバメは、渡るときには夫婦別々に飛んでくるようで、たいていオスが先に帰ってくる。そして、前の年に巣をかけた場所を覚えていて、結局は夫婦とも同じ地域に戻る。前年と同じペアで巣づくりを始める。しかし、旅先や旅の途中で不幸にあうものもいるので、半分ほど。
 ツバメが人家を好むのは、巣やひなに悪さをするスズメが来ないから。人の出入りが多い家や店ほどツバメがよく巣をかけるのは、そのため。店が繁盛しているからツバメが来る。
 コウモリは、鳥はなく、モグラとかハムスターに近い哺乳類だ。巣ではなく、赤ちゃんを産み、乳を飲ませて育てる。そして、コウモリは鳥よりも上手に空を飛ぶ。
猫も実は、人間に深く依存している。絶えず人間の動きを気にしている。その状況が猫にとって実に幸せなのである。猫はまず視覚によって世界を認知する。嗅覚はその次である。猫は視覚もすぐれている。
 たくさんの生き物について、語られている面白い本でした。さすがは動物学者です。
(2013年1月刊。1900円+税)

「野生動物」飼育読本

カテゴリー:生物

著者  横山雅司・なんばきび 、 出版  彩図社
猛獣をペットのように家庭で飼うことは不可能だということをよくよく分からせる本です。ですから、いわばパロディー本です。
 でも、現実に、アメリカでは大金持ちが自宅でトラを飼い、日本でも若い女性が自分のマンションでヘビを飼ったりしています。他人の迷惑を考えない人には困りますよね。
 日本人が飼っているイヌは1193万頭、飼いネコは960万匹。日本人の6人に1人がイヌかネコを飼っている。なぜか。人間が動物から癒しをもらっているからではないか。
自宅でチンパンジーを飼うのは許されない。自宅を霊長類研究所にしたら可能になる。ただし、施設の建設費は7億円、学者を雇う人件費は年に4000万円、チンパンジーの購入価格は最大8000万円、そして年間36万円の食費がかかる。すごいですね。
チンパンジーは賢いし、実は性質が非常に凶暴で、サルの肉が大好物。チンパンジーが興奮して暴れはじめたら死を覚悟するしかない。ええーっ、本当ですか・・・。
 コアラを飼うとしたら、新鮮なユーカリの葉を確保するのが大変。東京の多摩動物園では、コアラ3頭のエサ代として年に6300万円もかかっている。
ゾウは人工的な環境ではきわめて繁殖しにくい動物でほとんど増えていない。ゾウは知能と記憶力がすぐれ、人間の顔を覚えることができる。
 ペンギンのうち日本ではフンボルトペンギンは繁殖に成功し、数を増やしている。
米国全土に7000頭ものトラが飼われている。アメリカには、ペット用のトラを育てるブリーダーが存在する。
 わが家の庭にもモグラがいます。生きているモグラを見たことはありませんが、死んで干からびたモグラは見たことがあります。
 モグラは鳥獣保護法によって、一般人が勝手にとるのは違法である。ええーっ、そうなんですか・・・。
 モグラが農作物を食べて荒らすことはない。誤解がある。モグラは肉食性で、ミミズや昆虫を食べる。モグラは半日何も食べないと餓死してしまう。モグラは、1日で自分の体重と同じ量のエサを食べる。モグラはトンネル状の壁が身体に触れていないと不安になる性質がある。だから、パイプですみかをつくるときには、必ずトンネル状の構造にする必要がある。
 人間が野生の生き物を飼うのが難しいことが実によく分かる本です。
(2013年2月刊。912円+税)

シロアリ

カテゴリー:生物

著者  松浦 健二 、 出版  岩波科学ライブラリー
シロアリがゴキブリだったなんて、おどろきです。シロアリとアリとは、全然ちがう昆虫らしいのです。ええーっ、と思わずのけぞってしまいました。
 アリとシロアリは分類上は、まったくちがった昆虫だ。アリはミツバチなどハチに近いのに対して、シロアリはゴキブリに近い。アリは翅をなくしたハチであり、シロアリは社会性を高度に発達させたゴキブリ。食べているのも、体の形も、成長の仕方だって、まったく違う。さらには、オスとメスの役割や遺伝子の伝わり方まで、社会の仕組みが大きく異なる。
 シロアリ目は7つの科に分けられ、知られているもので3000種いる。もっと研究がすすむと5000種になるだろう。地球上のシロアリを全部足しあわせると、なんと24京匹になる。アリは全部で1京匹なので、シロアリははるかに多い。
 シロアリの巣には、王と王女が存在する。ハチ目のワーカーはすべてメスで構成されている。シロアリのコロニーでは、ワーカーや兵アリも基本的にオスとメスの両方で構成されている。アリの社会は女性社会、シロアリの社会は男女共同参画社会である。
 シロアリは不完全変態の昆虫であり、孵化した幼虫はすでに立派なシロアリの形をしている。シロアリの社会は、カワイイ幼虫たちの社会である。王と女王を除けば、巣の構成員はワーカーも兵アリもみんな幼虫なのである、
 ヤマトシロアリのコロニーで最大のものは、一匹の王に対して、670匹の女王を保有していた。創設王はコロニーの終焉まで長生きする。女王のほうは比較的早期に二次女王に入れ替わる。
 創設女王は単為生殖で分身を産み、それから後継の女王にすることで、自分の死後も遺伝的には生前と同様に次世代に遺伝子を残す。しかし、女王の分身は二次女王のみで、ワーカーや羽アリは通常の有性生殖、つまり女王と王との交配によって産まれている。つまり、女王は単為生殖と有性生殖を適材適所で使い分けしており、その両方の利点をいかしている。
移動しないキノコシロアリ属の女王は、1日に2万から8万個もの卵を産む。移動するヤマトシロアリの女王は1匹で、産むのは1日あたり25個ほどでしかない。若い二次女王が分化したあと、高齢の創設女王は、その役目を終え、生きながらワーカーに食べられ、子どもたちの栄養となって消えていく。
 しかし、食べられていく女王に苦痛の色はない。その表情は死ぬべきときに死ねる喜びに満ちている。分身を残したあとは、むしろ速やかに死んで二次女王に産卵を委ねたほうが自分自身にとっても多くの遺伝子を残せることになる。この時点では、彼女にとって迷うことなく死こそが適応的であり、まさに至上の喜びなのだ。
 ええーっ、これって本当でしょうか・・・。単なる偽った感情移入にすぎないのではありませんか・・・。いや、それにしても、見事なものですね。
野外の巨大コロニーの王は、どんなに短くも30年以上は生きているだろう。
 これまた、すごい長命ですね。シロアリのことを少し知って、大いにトクした気分になりました。でも、住んでいる家に入ってこられては困る生き物ですよね。わが家もシロアリ予防策を講じています。
(2013年2月刊。1500円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.