法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

江戸前魚食大全

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  冨岡 一成 、 出版  草思社
 魚って、「ぎょ」であり、「うお」ですよね。でも、もちろん「さかな」とも読みます。ところが「さかな」と読むようになったのは新しく、あるときから「さかな」と読ませたのだそうです。
 1973年(昭和48年)まで、当用漢字音訓表に「さかな」という読み方はなかった。「さかな」とは、酒の肴(さかな)を意味する言葉で、酒魚(さかな)とか酒菜(さかな)という字が当てられた。ともかく、本来の読み方ではなかったので、戦後の国語教育では、あえて魚はウオ、ギョと教え、サカナとは読まなかった。いやはや、知らないことって本当に多いですね・・・。
 世界中で日本人ほど魚を食べる国民はいない。あらゆる水産物を多様に食べてきたところに、魚食民族としての特色がある。何といっても、日本では食べる魚の種類が多い。これは世界に類をみない。
海藻類も、魚貝類も大好物。毒魚のフグすら高級食材として珍重する。グロテスクなアンコウは、肝、ひら、えら、卵巣、胃袋、頬、皮と、丸ごと食べつくしてしまう。そして、食べ方も、煮る、焼く、干す、蒸す、燻(いぶ)す、発酵させる。鮮度が良ければ生で食べる。
生食は簡単なようで、実はもっとも手のかかる食べ方。漁業者、生鮮市場、消費者が「こいつを生で食うぞ」と心を一つにしなければ実現しない料理だ。
ところで、昔の日本人は、魚を思うように食べることは出来なかった。魚の保存や輸送が難しかったことが最大の理由だ。氷も冷蔵庫もない時代には、魚はみるみるうちに傷んでしまい、思うようには食べられなかった。
 私の身近な魚では筑後川の汽水域でとれるエツです。さらに、東北・北海道でとれるサンマですね。さんまの刺身なんて最高ですよ・・・。
 江戸時代、マグロは下魚あつかいされた。それは遠くから運ばれてきて鮮度が落ちて、黒ずんでしまうからだった。
かつて魚を生で食べられるというのは、すごいことだった。
初ガツオ。カツオは何しろ足が早い。時間がたつと、値はぐんと下がってしまう。だから、カツオ売りはとにかく早く売ろうと必死だった。安いカツオを食べて腹痛を起こす人は少なくなかった。
私が東京から福岡に戻ってきたとき、先輩が石鯛をごちそうしてくれました。そのときの美味さは筆舌に尽くしがたいものがありました。東京では食べたこともありませんでしたが、福岡では秋から冬の味覚として普通に食べているというのです。コリコリした舌ざわりを堪能しながら、郷里の福岡へUターンして良かったと実感したことでした。
 魚好きの人にとっておきの薀蓄話が満載の本です。
(2016年5月刊。1800円+税)

つちはんみょう

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  舘野 鴻 、 出版  偕成社
ヒメツチハンミョウという小さな昆虫の一生が大きく美しく描かれた本です。子ども向けの絵本ではありません。科学絵本です。写真以上に微細に色と形が大きく再現されます。
メス(母親)は4000個もの卵を土の中に生みつけます。1ヶ月後、幼虫がふ化して、地表に出てきます。そして、コハナバチに乗って花にたどり着き、次にヒメハナバチの巣のなかに入りこみます。ヒメハナバチの幼虫を食べ、花粉団子を巣のなかで食べて大きくなります。そして、ヒメハナバチの巣を出て、地上に出て飛んでいきます。
写真もありますが、幻想的な絵として描かれていますので、ツチハンミョウの短い一生がすごく長いものに感じられます。4000個の卵のうち、親になって子どもをもうけるのは、ごくわずかなのです。
それにしても、自力では飛べない幼虫たちが、花にしがみついていて、たまたま飛んできたコハナバチにしがみついて、生きのびるとは、なんと偶然をあてにした生き方でしょう。
でも、人間の一生も偶然性に大きく左右されていますよね。ツチハンミョウの偶然を利用した生き方と、果たして、どれだけの違いがあるのでしょうか・・・。
よくぞ、これほど微細に観察して絵本にしたものです。そのご労苦に敬意を表します。
(2016年4月刊。2000円+税)

虫のすみか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  小松 貴 、 出版  ペレ出版
 私たちの身のまわりには、庭にも道ばたにも土の中にも、虫たちの不思議な巣であふれているのですね。そのことを満載した写真によって実感できる、楽しい虫の本です。
アリジゴクの主(ぬし)は、ウスバカゲロウの幼虫だったんですね。アリジゴクは、獲物をつかまえると食べるのではなくて、巨大なキバを獲物の体内に突き刺して、中身を吸い取ってしまう。そして、アリジゴクは糞をしない。成虫(ウスバカゲロウ)になったとき、まとめて大きな糞をする。ええっ、そんなことが可能なんですか・・・。
ハチやアリ、シロアリの多くは集団で分業して社会生活を送る。まるで人間のように洗練した高度な社会をもっている。だから、ある高名の昆虫学者が「利口ムシ」だと評した。それに対して、一人で好き勝手に食べて寝て暮らすだけの虫は「馬鹿ムシ」だと評する。しかし、著者は逆だと主張します。
群れなければ何ひとつまともな生活が出来ず、ひとりにされたら惨めに野垂れ死にする社会性昆虫こそ「馬鹿ムシ」であり、誰に教わるわけでもなく、たった一人で精巧な巣をつくり、毒針で狩りをする狩人蜂こそ至高の「利口ムシ」だと・・・。なるほど、ですね。
ヤマアリは強力な蟻酸をもっている。鳥のなかには、わざとアリ塚の上に降り立って暴れ、アリの蟻酸攻撃を受けることで、羽についた寄生虫を退治する「アリ浴び」の習性をもつものがいる。人間も、戦争中、服を洗うことが出来ないとき、ノミやシラミが湧いて困ったら、服をアリ塚に突っ込んで消毒していた。
うひゃあ、そんなこと知りませんでした。そんなことも出来るんですね・・・。
軍隊アリは、ジャングルにはなくてはならない存在である。軍隊アリは、ジャングルの空間にいちばん多く優先して生息する生物を一掃してしまうので、その区画内に「空き」が生まれる。そのことによって、森の生物の種の多様性をつくり出している。なるほど、そういうこともあるんですね。
東南アジアの国にはツムギアリの「アリの子」を食用にしているところがある。アリの幼虫をスープに混ぜたり、お米と一緒に炊いて食べる。かなり酸味の利いた味。まずいというのではないが、決して美味しくもない。そして、ツムギアリの巣を落として、その幼虫を鳥の餌にもしている。
攻撃的なツムギアリは、しばしば害虫駆除のために活用される。
たくさんのカラー写真とともに丁寧に解説されているので、素人にもよく分かります。
(2016年6月刊。1900円+税)

なぜ蚊は人を襲うのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  嘉糠 洋陸 、 出版  岩波科学ライブラリー
 ガーデニングの天敵こそ蚊です。冬のガーデニングは蚊がいないので、防寒に気をつけるだけですみます。ところが夏は、熱中症対策だけでなく、蚊から身を守るための装備を欠かせません。
蚊が人間の血液を吸いとったとき、そのお返しに残すのは、痒みだけではない。望まないお土産として、感染症の原因を体内に送り込む。
蚊は病原体の有力な媒介者である。マラリア、フィラリア症、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、そしてブラジル・オリンピックで注目されたジカ熱をもたらす。
蚊は、病原体を充塡した注射器が空を飛んでいるようなもの。
平清盛そして、光源氏はマラリアに襲われた。平安時代は比較的温暖だったことから、マラリアがあたりまえの国土病として存在していた。
著者は研究室で蚊を数万匹の単位で飼育しているとのこと。驚異です。
蚊のオスもメスも、自然界では、花の蜜やアブラムシの排出する甘露をエサとしている。ふだんはそれだけで十分に生きられる。ところが、オスの精子を受け入れたメスは、吸血に対する欲求が高まる。これに対して、処女メスは人間の匂いには全然反応しない。メスの蚊は、卵を少しでもたくさんつくるために、血を必要とする。
蚊は、飛行機に乗って移動する。車輪の格納庫に入り込む。そこはマイナス50度の世界なのだが、蚊は10数時間ほどのフライトなら、その環境下でも生きのびる。
蚊は、人間から遠いところではなるべく最短で標的に向かう。近くなるとジグザグに飛行し、匂いや熱の助けを借りて着地点である肌を探す。
蚊に刺されたくなかったら、明るい色の服を着たほうがよい。
蚊は、血をしこたま吸ってしまうと、それで満足する。血の種類には、まったく無頓着である。
1回の産卵サイクルで生み出す卵の数は、ハマダカラで200個、アカイエカは100~150個。そしてネッタイシマカとチカエイカは100個未満。
蚊についての基礎知識をたっぷりいただきました。
クーラーをつかわない生活をしていますので、蚊取り線香に毎晩お世話になっています。
(2016年17月刊。1200円+税)

カラスの補習授業

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  松原 始 、 出版  雷鳥社
 ゴミ出しは、カラスとの知恵比べです。我が家のゴミには生ごみが入っていませんので、あまりカラスが狙わないはずなのですが、ゴミ袋をつついて内容物を散乱させられたことは数知れません。ネットをかぶせ、ブロックの重しをしていてもダメなことがあります。弱点を巧妙に攻めあげるのです。
朝早くからカラスがカーカーと鳴くと胸騒ぎがしてしまいます。連中がきっとよからぬことを企てているに違いないからです。カラスの集団にやられてしまったら、もうどうしようもありません。ヒヨドリ軍団なんてものではありません。被害のレベルが違います。
この本は400頁近くありますが、前の本に続いてカラスの生態に迫っています。
カラスは南米とニュージーランドにはいない。なぜ、なんでしょうね・・・。
カラフルなカラスはいない。全世界のカラスは白黒か灰色というツートンカラーのみ。日本には、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種のみいる。
東京都心のビルが建て込んだ場所にいるのはハシブトガラスだけ。ハシブトは、森林か市街地に住む。ハシボソは田畑や河川敷が大好き。
ハシブトガラスは基本的に地面が嫌いで、あまり降りてこない。カラスが人間を「攻撃」するのは、ヒナの巣立ちの時期。
カラスの集団は若い個体の集まり。カラスのペアは、よほどのことがなければ、ずっと続く。
カラスの寿命は野性でも20年。飼育下では40年も生きたハシボソガラスがいる。
鳥に食べさせてはいけないのがチョコレート。チョコレートに含まれるテオプロミンは鳥にとって毒となる。またアルコールもダメ。
カラスは大型の毛虫を食べる。また、毒をもつヒキガエルも食べる。ヒキガエルの腹側をつついて食べる。毒のある皮だけを残して、きれいに食べているという証拠を残す。
すべての鳥が鼻を利かせることができないというのは間違い。
カラスをふくむ多くの鳥のエサ探知は、視覚に頼っている。鳥の目は良い。高速で動くものを捉える能力だ。
朝、カラスが行動を始めるのは、夜明けの時間ほど・・・。
鳥は耳のいい動物だ。鳥の耳の感度は高い。これは高密度で生えた感覚毛のせいだ。
カラスについて、さらに知りたいと思っている人には最高のプレゼントになる本です。
(2015年12月刊。1600円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.