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カテゴリー: 生物

鳥、驚異の知能

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ジェニファー・アッカーマン 、 出版  講談社ブルーバックス新書
鳥は恐竜から進化した生き物です。1億5000万年から1億6000万年前のジュラ紀に鳥類は恐竜から進化した。しかし、恐竜は、ある日、鳥に変わったというのではなく、1億年にわたる着実な進化によって一つずつ時間をかけて現実になった。
長いあいだ、道具を使うのは霊長類のみと考えられていた。道具の使用がヒトに特有なものという考えは、チンパンジーが道具を使うことをジェーン・グドールが発見して斥けられた。その後、オランウータンもマカクザルも、ゾウも、昆虫までもが道具を使用していることが判明した。そして、鳥類ではカレドニアカラスが道具をつかっていることが観察された。
ミヤマオウムは、世界でもっとも賢くて、いたずら好き。悪ふざけをするのが大好きだ。
カラスは、同じ作業をしたのに、自分のもらう褒美が仲間より少ないと作業を止める。つまり不公平さに対する感受性がある。
ただし、鳥にも個性がある。鳥も他者にならう。
セキセイインコは、そのオスがパートナーに対する献身の度合いをパートナーの呼び声を完璧に真似ることで示す。つまり、つがいのセキセイインコは、同じ呼び声で集まる。オスがメスと寸分たがわない呼び声を出す。メスの呼び声がオスの呼び声でもある。模倣の正確さを基準にして、メスはオスの求愛の本気度と、パートナーとしての適性を判断する。
カケスは貯食するが、泥棒でもある。隣人が苦労して集めた餌をさらっていく。
アオアズユヤドリのメスは、活気があり熱のこもった歌とダンスのディスプレーに魅かれるが、それも度をこすと逆効果になる。オスのメスへの求愛は、自信たっぷりの行動より感受性、気持ちの通いあい、力の誇示の抑制が必要なのだ。
ハトは数を理解する。最大で9個の物が描かれた絵を、数が少ない絵から多い絵へと正しい順序で並べることができる。また、相対的な確率も理解する。
2月中旬の日曜日、青空の下で種ジャガイモを植えつけました。いつものジョウビタキは来ず、珍しいことに白黒ツートンカラーのカササギが2度もすぐ近くの梅の木までやって来ました。
この冬は寒いと思っていると、そうでもなく、高菜が例年より早く伸びたので急いで収穫したと聞きました。ジョウビタキも暖冬異変で早々と帰っていったのでしょうか・・・。
(2018年3月刊。1300円+税)

タコの心身問題

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ピーター・ゴドフリー・スミス 、 出版  みすず書房
カラスが人間を見分けて、いじわるされたと思ったら執拗に仕返しするという話は聞いたことがあります。本当のようです。ところが、この本によると、タコも人の顔を識別して、たとえ同じ制服を着ていても、特定の人物にだけ水を吹きかけたりするとのこと、不思議な能力をもっています。
タコは人間の顔を一人ずつ記憶しており、嫌いな人が近づくと水をかける。
水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。ショートして停電が起きるのを楽しんでいる。
実験室でテストを受けさせてみると、タコは総じて良い成績をとる。
タコは新しい環境に適応する能力が高い。研究室に見慣れない訪問者が来ると、必ず水を吹きかける。
タコは逃げるときを選ぶ。注意深く、人間が見ていないときを選んで逃げる。
タコは、目の前のものが食べものかどうかを短時間で見きわめることができる。しかし、食べられないと分かったあとも、興味をもち続け、触ったり動かしたりすることがある。
タコは見慣れないものをただ弄ぶだけでなく、有効にいかすこともある。
タコは好奇心が強い。そして、順応性があり、冒険心がある。他方で、日和見主義なところもある。
タコには、硬い部分というのがほとんどない。タコは、5億個のニューロンがある。タコは方向感覚もすぐれている。
タコの心臓は一つではなく、三つだ。タコの血液は赤くなく、青緑色をしている。酸素を運ぶのは鉄でなく、銅をつかう。
タコの寿命は短く、わずか1年か2年だ。最大のタコであるミズダコでも、野生はせいぜい4年しか生きられない。
ええっー、まるでタコって人間じゃないですか・・・。どうして、こんなに似ているのでしょうかか、謎が深まりました。
(2019年1月刊。3000円+税)

鷹と生きる

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 谷山 宏典 、 出版  山と渓谷社
鷹使いとして生きてきた松原英俊氏の半生を紹介した本です。
こんな生き方もあるんだね・・・、驚嘆しながら一気に読了しました。
松原(以下、この本にならって呼び捨てします。他意はありません)は、慶応大学を卒業している。鷹使いを志して1974年9月に鷹匠に押しかけ弟子入りし、1年半後に独立した。
電気もガスも水道も通っていない山小屋に移り住み、鷹と暮らした。
鷹はクマタカ。居間にクマタカがいる。これが日常生活。
鷹匠は、かつて中央または地方の権力(天皇家や将軍家、または大名家)に属し、鷹の捕獲、飼養、訓練にあたっていた役職名。これに対して、鷹使いは、役職でもなんでもなく、鷹を飼養、訓練して鷹狩を行うことが出来た農民や猟師を指す。
山形県鶴岡市の田麦俣(たむぎまた)集落に生活していたが、今は同じ山形県内の天童市田麦野に住んでいる。
東北地方の山間農村部に伝わる鷹狩では伝統的にクマタカが用いられる。クマタカは翼を広げたとき、オスで1.5メートル、メスで1.65メートルになる。オオタカやハヤブサより大きい。獲物は鳥類、ヘビ、ウサギ、テン、リスなど。木々の間をぬって飛ぶのが得意なので、山岳地帯の森林での狩りに向いている。
クマタカは神経質なので、そのままの状態で人に慣れることはない。時間をかけた地道は訓練が必要。秋、10月下旬から11月ころ、鷹の訓練を開始する。訓練は5段階。据え、絶食、据え回し、呼び戻し、突っ込み。据えとは、鷹を腕に留まらせること。
鷹を慣らすためには、一に据え、二に据え、三、四がなくて、五に据え。据えは、鷹狩りにおける基礎中の基礎。鷹を人の腕に据えさせるためには、いくつかの段階を踏まないといけない。第一段階では、光の入らない真っ暗な部屋で、ほかの生きものの気配が感じられない環境の下でやる。鷹は何も見えず、飛べないため、おとなしく鷹使いの腕に乗る。暗闇のなかでの据えを数日間続けると、次に部屋のなかにろうそくを灯す。はじめは部屋の反対側にろうそくを置く、その薄くほのかな明るさに1週間ほど慣らす。そして、徐々にろうそくを自分と鷹のほうに近づける。1本の光に慣れたら、次にろうそくの本数を増やしていく。こうやって、鷹使いがすぐそばにいることにさせる。暗室での据えが十分できるようになったら、夜の居間で家庭用の照明の明るさに慣らす。次に夜明けごろの薄明かりの外光に慣らし、最終的には日中の明るい状態でも鷹使いの腕におとなしく留まっている状態にする。この据えの訓練には2週間から3週間かかる。
据えの訓練と同時に「絶食」も開始する。鷹は満腹の状態では、獲物を見つけても飛びかかっていかない。過度な絶食は鷹を餓死させてしまう。はじめに10日間絶食させて、その後、ウサギやニワトリなど脂身の少ない肉を与える。次に1週間、絶食させて肉を与え、5日間絶食させて肉を与え・・・と、徐々に絶食期間を短くし、餌の量を調整していく。
最後の仕上げは、「突っ込み」。獲物を捕まえるための訓練。勢子が雪原に獲物を放ち、鷹が逃げる獲物を目がけて一直線に飛んでいく。そして、鋭い爪でがっちりと獲物をつかみ、押さえ込む。これができるまで、1ヶ月半。長いと2ヶ月から3ヶ月かかる。
いやあ、大変な訓練ですよね。気が長い人でないとやれませんよね・・・。
もっとも鷹狩りに適している時期は2月末から3月、4月。
山に入ると、地図はほとんど見ない。目の前の地形を見て、狩りができそうな場所を探す。
鷹は、4キロ先にいる動物を見つける視力をもっている。狩りが成功する確率は、10回のうち、よくて3回ほど。ウサギは身をかわすのがとにかくうまい。
鷹が獲物をつかまえると、走って行って、取り上げる。そして、鷹が怒って泣き叫ぶので、餌箱の肉を少しほうびとして与える。鷹の好物の心臓やレバーをほうびとして与える。
ひと冬にだいたいウサギを10羽から15羽とる。昔はひと冬に平均200羽ほどとっていた。
ウサギの肉は、鍋や刺身にして食べる。ウサギの肉は1羽2000円、毛皮は50円ほどにしかならないので、商売にはならない。
鷹使いでは生活できない。それで、アルバイトをするし、生活でムダづかいはしない。
よくぞ、こんな生活で結婚できたと不思議です。山好きの女性とめぐりあい、子どもも出来ました。いやはや、すごい生活です。それでも、こんな人生を過ごす人が世の中にいることを知ると、なんとなく生きる元気が出てきますよね・・・。
(2018年12月刊。1600円+税)

ニワトリ、人類を変えた大いなる鳥

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 アンドリュー・ロウラー 、 出版  インターシフト
JR久留米駅にある美味しい鶏の唐揚げの店で読了しました。この店は大量生産のブロイラー(鶏)ではないと表示されていますが、なるほど肉質が違います。かみしめると、味わい深さに舌が驚いてしまうのです。
ニワトリは恐竜の子孫です。では、なぜ恐竜が絶滅したというのに、ニワトリだけは生き残っているのでしょうか・・・。
鶏肉は、豚肉や牛肉より風味が付けやすいので、ファストフードにぴったり。
2001年までのアメリカ人は、年間36キロの鶏肉を食べていた。これは終戦直後の1950年当時の4倍。今では、年間45キロに近づいている。
アメリカのタイソン社だけで、売上高は3000億ドル、週間生産高は60の工場で、4100万羽を突破した。
ブロイラーの80%以上を三大育種企業が管理していて、そのうち2社はアメリカの企業。
2010年に、アメリカの育種企業の孵化場300ヶ所で90億羽のブロイラーが生産された。
1950年には平均して70日かかり(体重1ポンドあたり)、体重1ポンドあたり3ポンドの飼料を必要とした。これが2010年には、わずか47日間で育った。必要な飼料は2ポンドですんだ。ヒヨコは生後1週間で、体重が4倍に増える。
ニワトリの寿命は10年で、20年も生きることさえある。
ニワトリの原種は、ビルマ(ミャンマー)の原生種であるセキショクヤケイだ。
人間のいる至るところにニワトリがいる。その数は200億羽にのぼる。ニワトリがこの世からいなくなったら、きっと各地でパニックが起きるだろう。
ニワトリは食材でありながら、かつ、インフルエンザのワクチンをつくる入れものとして、人類に貢献している。
子どものころ、我が家でもニワトリを飼っていました。エサのために草をとってきていました。父がニワトリを殺し、腹をさばいて卵が出来ていく過程を見て、たまげました。
(2016年11月刊。2400円+税)

オランウータン

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 久世 濃子 、 出版  東京大学出版会
オランウータンは、ヒト科です。
チンパンジーやゴリラとともに「大型類人猿」というグループに属している。1800万年前ころに人類の祖先と袂(たもと)を分かち、独自の進化の道を歩んできた。
オランウータンは、巨体だ。オス80キログラム、メス40キログラム。完全な樹上性で、昼行性霊長類としては、唯一の単独生活者だ。
オランウータンは、ヒトにもっとも遠縁の大型類人猿だ。
オランウータンは遠いアジアで生まれ育った従兄弟だ。
チンパンジーやゴリラの乳児は尻に白い毛が生えていて、「アカンボウのしるし」とされている。白い毛が生えているうちは、何をしてもオトナに怒られることはないが、白い毛が抜けると、群れのリーダーや上位の個体に挨拶をしないと怒られるなど、群れのルールに従わなければならなくなる。
オランウータンのアカンボウは尻に白い毛がなく、目と口のまわりの明色部分が「尻の白い毛」の代わりをしているのだろう。
オランウータンの子どもは、レスリングをして遊ぶ。
オランウータンは、一斉結実期に非結実期の2~3倍のカロリーを摂取して、体脂肪として蓄えている。オランウータンは果実が多いときに「食いだめ」ができるかどうかで生死が分かれる。
オランウータンは、20歳をこえても成長期かと見まがうような右肩上がりの体重増加を示す。
オランウータンは、大きな体で樹上生活をするために進化してきた、多くの特徴がある。たとえば、手首の構造はフック状になっていて、意識的に手足を開く動作をしないと、手足は握り込んだかたちをとるようになっている。つまり、意識を失うと、むしろ手足は閉じてしまう。
オランウータンが地上に下りない理由の一つは、地上には食べものがほとんどないこと。大きな体で樹上を移動するということは、常に「次の一歩が死への一歩」につながりかねない。
試行錯誤の余地の少ない、厳しい世界だ。飼育下でも、オランウータンは慎重で、試行錯誤することが少ない。
オランウータンの寿命は、オスでも50~60歳をみられている。
オランウータンは、全般にチンパンジーに比べて乳児死亡率が低い。
オランウータンでは出生から死亡まで記録された野生個体は1頭もいない。一生放浪し続けるオスがいるのか、ほぼ定住し続けるオスがいるのか、まったく分かっていない。
オランウータンのオスには、フランジ雄とアンフランジ雄の二型がいる。フランジ雄は、顔の両側に張り出し(フランジ)があり、大きな喉袋、臭腺(特有のカビくさいにおいを発する)などの特徴があり、喉袋をつかってロングコールと呼ばれる音声を発する。フランジ雄にはメスのほうから近づき、親和的に交尾することが多い。
フランジ雄とアンフランジ雄では、メスとのつきあい方が異なるだけでなく、オス同士のつきあい方にも大きな違いがある。通常、フランジ雄どうしは、お互いに出会わないよう避けあっている。ロングコールでお互いの位置を把握して、出会わないようにしている。フランジ雄どうしが出会うと、殺しあいになりかねない。
アンフランジ雄は、基本的にフランジ雄を避けているが、フランジ雄がアンフランジ雄と出会っても、激しい闘争は起きない。アンフランジ雄どうしは、複数で連れだって行動することもある。
フランジ雄は、出産経験のない若いメスと交尾することは、ほとんどない。近づくことすらない。オランウータンでは、若いメスはフランジ雄から相手にされないため、若いオスやアンフランジ雄が交尾の相手になるが、若いオスたちも若いメスより経産メスを好む。オランウータンの社会では、オス、メスともに「モテ期は中年」なのだ。
オランウータンは、繁殖のスピードがとても遅い。野生での初産年齢は15歳前後、出産間隔は7年。基本的に1回の出産で1頭しか出産しない。
オランウータンの孤独な子育ては、出産から始まる。野生オランウータンでは、チンパンジーやゴリラと異なり、子殺しの報告はほとんどない。オランウータンの母親は1頭のアカンボウのみとともに過ごす時間が圧倒的に長く、文字どおり「孤育て」に徹している。
絶滅が危惧されているオランウータンをインドネシアの原生林に入って密着観察している女性学者のレポートです。その地道で粘り強い努力には頭が下がります。
日経新聞でも紹介されています。ありがたい研究成果です。
(2018年7月刊。3000円+税)

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