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カテゴリー: 生物

養蜂大全

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 松本 文男 、 出版  誠文堂新光社
ミツバチの育て方のすべてが豊富な写真とともに懇切丁寧に紹介されています。まさしく、「大全」です。そして、ミツバチを育てるのに何より必要なのはミツバチへの愛情だと強調されていますが、その愛情あふれる記述に、読んでいて心が和みます。
主としてセイヨウミツバチの飼育ですが、ニホンミツバチについても飼育上の注意が書かれていて、蜜源植物まで網羅されています。読むだけでも楽しいミツバチ百科全書です。
春の1頭(1匹とは呼びません)のハチは、10頭も20頭ものハチの世話をする。常に、1頭たりともハチの命を無駄にしてはいけないという気持ちが大切だ。
巣箱は、日当たりのよい南向きか東向きの平地がベスト。北風を受ける場所は避ける。北風が巣を冷やし、巣に戻ってくるハチが向かい風にさからうのは大変だから・・・。
湿地も避ける。カエルやムカデがいて、病気が発生しやすいから。
堆肥は積んである畑から3キロ以上離れる。密に臭いが混じることがある。ハチは静かな環境を好むので、車の往来が多く、振動があるところも避ける。
ハチは冷たい水を飲むと弱ってしまうので、秋からヒーターを入れて、日なた水の水温を保つ。
ハチを飼うなら、血筋を重視すべき。おとなしい気質、分蜂しにくい、病気に強く越冬力がある、分蜂しにくい・・・。
ハチを育てるなら、養蜂振興法にもとづく飼育届を県知事に提出する。
ハチは、そんなに人を刺さない。ハチの機嫌が悪くなるようなことをしなければ、不意に刺されることは少ない。ハチの針はメスの産卵管が変化したもの。だから、オスには針がない。
刺すのはメスの働きバチと女王バチだけ。そして、女王バチが刺すのは、ライバルの女王バチと戦うときだけ。だから、人を刺すのは、働きバチだけ。
ミツバチは、針を失うと、やがて死ぬ。刺すというのは、まさに命と引き換えの行為。
ハチが機嫌を損ねるのは、採蜜の翌日、そして悪天候の日。ハチが耳元で羽音を立てて威嚇行動をしているときは、騒いだり、手ではらったりせず、落ち着いて静かにその場を去る。
ハチの針を抜くときは、指でピンとはじいて、患部から落とす。指でつまんで抜くと、針の「かえし」によって、よけいに肌の奥に毒を入れてしまう。
スズメバチは虫取り網で捕まえるのが、もっとも確実。失敗せず1回で捕まえる。失敗すると、人を攻撃してくることがある。
ミツバチの行動(飛行)半径は2~4キロほど。1日に10回以上も繰り返して、蜜や花粉を集め続ける。小さじ一杯のはちみつを集めるには、働きバチ1頭が5日間稼働し、レンゲなら1万4千もの花を回る必要がある。
女王の寿命は3年から4年。2年目以降は産卵能力が低下するので、養蜂では1~2年で更新するのが一般的。
ミツバチは夏場は30日ほどの寿命。秋生まれだと冬を越し、4~5ヶ月働き続ける。
一般に40日ほどが働きバチの生涯。
実際には大変で、私なんかに出来るとは思えませんが、ミツバチを飼って育てるというのも楽しいだろうなと思わせてくれる写真たっぷりの大全でした。
(2019年4月刊。3000円+税)
朝、車庫のコンクリート床に干からびたモグラを発見しました。なぜか、ときどき死んだモグラを地上に見かけます。
 ヘビに追われて地上に出てきたのでしょうか。わが家の庭にはモグラもヘビもいることは間違いありません。
 いま、庭にネムの木がたくさん赤っぽいピンクの小さな花を咲かせていて、そこだけ華やかです。
 今年は梅雨入りが遅かったせいか、セミの鳴くのも例外よりかなり遅く、心配していました。炎暑の夏が再びやって来そうで、今から心配しています。

先生、アオダイショウがモモンガが家族に迫っています!

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版  築地書館
この先生シリーズも、ついに13冊。1年に1冊ですから、なんと13年もおつきあいしていることになります。いえいえ、実は番外編もあったりして、本書は15冊目になります。
鳥取環境大学に学ぶ学生は幸福です。とはいっても、学生のときにはそうは思わないかもしれません。大学生であることのありがたさは、社会の荒波にもまれて初めて実感できるものです。少なくとも、私は、そうでした。早く、この中途半端な大学生を卒業したいものだと焦っていました。いま思うと、とんでもない間違いです。
さて、この本には、ヘビを部屋のなかで放し飼いをしている学生、河原でカエル捕りに熱中している学生など、いろいろ登場します。
カエルにそっと近づき、素手で押さえこむ。そして、ピンセットでカエルに強制嘔吐させる。有害なものを誤食したときに、カエルは自ら胃を反転させて口から外に出し、有害物を吐き出す。この習性を利用してカエルが何を食べているのかを調べる。
ヘビ専用のヘビ部屋には幅7メートル、長さ1.5メートル、高さ4メートル、そこに4匹のアオダイショウと4匹のシマヘビを放し飼いにしている。エサとして与えるのはニワトリの骨つき肉。
先生は、アオダイショウを手で自由にあやつれるようです。モモンガ母子のヘビに対する反応を実験するため。アオダイショウの「アオ」に協力してもらっています。
アオダイショウは木登りが上手。気の幹にある小さな取っかかりを巧みに利用して、効率的に登っていく。幹にまったく基点となるようなものなければ、幹に体をぐるぐる巻きつけて締めつけ、締めつけた部分を基点として、そこから体を垂直上方へ伸長させて登っていく。
わが庭でも、スモークツリーの上のほうにヒヨドリがいつのまにか巣をつくって子育てしていましたが、それをアオダイショウが見事に登ってヒナを全滅させてしまったことがあります。地面を這っているアオダイショウが地上2メートル以上の高さにある巣と、そこにいるヒナの存在をどうやって知ったのか、今でも不思議でなりません。
先生シリーズの続編を期待しています。
(2019年4月刊。1600円+税)

虫や鳥が見ている世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 浅間 茂 、 出版  中公新書
紫外線写真でみると、虫や鳥の世界がまるで違って見えてきます。
大部分の動物は紫外線を見ることができるのに、哺乳類には見えない。なぜなのか・・・。
恐竜の時代に誕生した私たちの祖先である哺乳類は小さく、恐竜を恐れて夜に活動していた。夜には紫外線を見る必要はなかったので、紫外線を見る能力が退化し、失われてしまった。そして、ヒトは現在の可視光領域に適した視覚をもつようになった。
鳥やチョウなどでは、紫外線反射の違いでオスかメスかを見分けて、求愛活動に役立てているものが多い。紫外線を利用してエサとなる虫を誘引しているクモもいる。
植物も、目の悪い虫に対して、紫外線を利用して蜜のありかを示して魅きつけている。
生命体は、紫外線の届かない青い海のなかで広がった。
法隆寺の玉虫厨子(たまむしのずし)の色が1300年後の今でもあせることなく残っているのは、その色が色素によってではなく、構造色によって発色しているから。構造色は、その構造が壊れない限り発色する。
昔、『モンシロチョウの結婚ゲーム』という本を読みました。モンシロチョウはオスもメスも真っ白なのに、オスはメスを見分けて接近する。なぜか・・・。紫外線があたると、オスは吸収して真っ黒になるが、メスは吸収せず反射して白っぽく見える。なので、モンシロチョウのオスは白く光るメスを目がけて突進していく、そんな話でした・・・。びっくりしてしまいました。学者はすごいです。
生物の世界は不思議に満ち充ちています。
(2019年4月刊。1000円+税)

かぴばら

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 岩合 光昭 、 出版  クレヴィス
今では、すっかり猫写真家として有名は動物カメラマンがブラジルのパンタナール大湿原に出かけてカピバラの生態をとらえています。
カピバラは、大地に芽生える新鮮な食物を食べる動物です。ジャガーに狙われ、その食事メニューの一つとされています。
カピバラは、いろんな声をもっている。家族とのやりとりはもちろん、危険を知らせるための大きな警戒音も出す。
ジャガーが近くに出現すると、「ピーッ」とホイッスルを鳴らしたような鳴き声が響くとともに、目にもとまらぬ速さでカピバラは鉄砲玉のように川へ飛び込む。
家族で常に用心し、警戒しながら暮らしている。癒し系と称される、おっとりとした雰囲気を保ちながらも、鍛えられ引き締まった体は、ときにおどろくほどの瞬発力を発揮する。
カピバラは円陣を組んで360度、気をつける。
川の真ん中の浅瀬が安全なことを知っていて、そこでしばし静止する。
川の中に広がる砂洲は、親子でのんびりできる安全地帯だ。
泳ぎが得意なので、水際にいると安心。
夕方になると、家族で草地に向かう。
泥遊びするのは、暑さよけ、虫除けのため。気持ちいい。
ほっこり癒されるカピバラの写真集です。
(2018年8月刊。1000円+税)

子どもには聞かせられない動物のひみつ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ハーシー・クック 、 出版  青土社
タイトルに「子どもには聞かせられない」とあるのは、なぜなんだろう・・・、そう思いながら読みすすめていきました。要するに、学校での性教育が遅れている日本だったら、まさしくあてはまりそうな話のオンパレードなのです。
東京の養護学校で教師が苦心のすえつくりあげた性教育について、自民党の議員などが偏向教育として中傷し攻撃したため、教育現場はますます萎縮し、性教育を敬遠して触れたがらないという現実があります。
女性天皇は認めない、夫婦別姓にも反対する。LGBTの人は生産性がない。そんな時代錯誤の考えにこりかたまった人が議員として、もっともらしく議会で「質問」と称してまともな性教育を攻撃するのです。たまりません。性をタブー視するのは良くありません。
ニホンウナギの卵は2009年に太平洋のマリアナ海溝で見つかった。しかし、野生のウナギが交尾しているところはまだ誰も見たことがない。
ナマケモノの胃は、2週間ほどかけて木の葉に含まれる植物繊維や毒性を分解する。ナマケモノの胃袋には、ほぼ丸のままの葉が送り込まれ、友好的な腸内細菌の助けをかりて分解するしかない。だから、ナマケモノはできるだけエネルギーを消費しないように進化した。樹上でのんびりくつろぎ、ゆっくり葉を消化することで、不要な努力を回避している。
こんなナマケモノは、6400万年前から今日まで生きのびている。ナマケモノは一日中、瞑想状態にあるように見えて、実は1日平均9.6時間しか眠っていない。意識はあるが、動作をしない状況こそ、エネルギーを節約し、生きのびるためのカギになっている。
ハゲワシは腐った肉を食べるが病気にならない。それは、動物界のなかで一、二を争う強力な胃酸によって病原菌を撃退しているから。胃酸のPHは希硫酸に匹敵する。ハゲワシの糞は、消毒剤として非常に有効だ。
コウモリは恐ろしい吸血鬼だと思われているが、本当は深刻な病気を媒介し、作を台なしにする昆虫をコウモリが食べてくれているおかげを人間は受けている。また、熱帯の植物にとって主な花粉媒介者の役目も果たしている。
チスイコウモリの寿命は長く、30年もある。
太平洋戦争のころ、アメリカは小さな爆弾をコウモリの大群に背負わせて、日本の都市の上空に放つ計画をたてて、準備してみたそうです。ところが、実験段階で思うように行かず、本番に移る前に中止されました。あたりまえでしょう。でも、その代わりが原子爆弾の投下でした・・・。
パンダ(ジャイアントパンダ)は原初のクマ属の末裔で、2000万年ほど前に別の道を行くようになった。今でもクマとあまり変わらない。
パンダのメスは、セクシーな匂いを木の一番高いところにつけたオスが好みだ。競争に勝ったオスは、ご褒美として、半日で40回もセックスする。
パンダは竹をかじるという食生活を通して、強力な顎(あご)の力を手に入れ、肉食動物のかむ力の比較では、ライオンとジャガーにはさまれて5位に食い込んでいる。
ほとんどのペンギンは一夫一婦制とは言いがたい。コウテイペンギンの85%は、毎年パートナーを取り替えている。ところが、ドイツの動物園にはオスのカップルがいて、10年も一緒だ。そして、ヒナを養子に迎えて子育てまでしている。
メスのフンボルトペンギンの3分の1近くは不貞行為を働き、多くの場合、その相手は同性だ。アデリーペンギンは地球でも数少ない売春に走る動物だ。小石を集めるため、独身のオスに流し目を送り、交尾を求めているそぶりをして、オスと交尾をし小石を得る。ときには交尾せずに小石を得るだけのこともある。
野生のチンパンジーは、いつもお腹のひどい張りに悩まされていて、大きな音でおならをする。湿っぽくて、一瞬のためらいもない。
ギニアのチンパンジーは、葉をつかってスポンジをつくり、ヤシの実からつくった純度の高いアルコールを飲んでいる。ウガンダでは、若いメスのチンパンジーが、お人形遊びのように棒をいじり、抱っこして、寝床をつくって、夜は一緒に寝ていた。
子どもたちに聞かせられないというより、なかなか高度な話なので、それなりに基礎的知識がないと理解するのがたやすくはないという内容の本でした。私は、連休中に面白く読み通しました。
(2019年1月刊。1900円+税)

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