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カテゴリー: 生物

ハナバチがつくった美味しい食卓

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ソーア・ハンソン 、 出版 白揚社
ハナバチって、ハチとかミツバチとは違うのかなと疑問に思いました。訳者あとがきによると、そもそも日本語の「ハチ」にあたるコトバが英語にはないのだそうです。英語のbeeは、花の蜜や花粉を食べる「ハナバチ」だけを指すコトバ。beeは蜂(ハチ)ではない。また、肉食性のハチはwasp(カリバチ)と呼ぶ。日本語のハチは、英語にしたらbees and waspsになる。
ええっ、そ、そうなんですか…。こんなに人間に身近な存在なのに、よく分かっていないなんて、不思議です。
ハナバチの行動は、今でもほとんど分かっていない。
紀元前3000年ころまでに、古代エジプト人は養蜂術を確立していた。ミツバチを長い陶製の筒で飼育して、作物の栽培や野生の植物の開花期に合わせてナイル川を上り下りしていた。今でも、ほとんどすべての作物や野生の植物はハナバチに全面的に頼っている。
ハナバチは白亜紀中期にいたアナバチ科の祖先から進化した菜食主義者である。
ハナバチの身体構造には、まったく無駄がなく、見事なまでに合理的だ。
ハナバチの触角は飛行中の姿勢に影響を支えたり、地球の磁場に反応したり、花が放つかすかな静電気を感知したりする。左右の触角はほとんどわずかしか離れていないが、その程度の間隔でも、左右官の微小な密度の差、つまり匂いの方角を示す小さな感覚勾配を察知するのに十分だ。ハナバチは、1キロ先にある花から漂ってくる香りを追跡できる能力をもっている。
ハナバチは紫外線も見えるので、花弁には、ヒトには見えないけれど、ハナバチを惹きつける言葉(絵)がはっきり書かれていることを見分ける。
ほとんどのハナバチは、めったに刺さない。オスバチは針をもっていないので刺せない。刺すのはメスだけ。
北アメリカの養蜂家は、その所有している巣の30%以上を毎年失うという状況が今に続いている。その明確な原因は今日に至るも確定していない。ただ、2006年に急増し、今は減少はしている。
ネオニコチノイド系殺虫剤がハナバチに良くないことは明らか。
ネオニクスは、野生のマルハナバチや単独性のハナバチにも悪影響を及ぼしているのは確かな証拠がいる。
この本の最後に登場してくる次のフレーズは衝撃的です。
「人間なんかいなくても世界は回る。でも、ハナバチがいないと世界は回らない」
自称「万物の霊長」も片なしですね…。私の知らなかった話が次々に登場してきます。
(2021年3月刊。税込2970円)

虫は人の鏡、擬態の解剖学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 養老 孟司 、海野 和男 、 出版 毎日新聞出版
虫屋の著者と虫写真の専門家による画期的な本です。なぜ、虫が面白いか…。なにより形と色。そして、その多様性だ。虫は面白い。見ているだけで退屈しない。いろいろ見ていると、しだいに区別がつくようになる。
擬態にはじめて気がついたのは、ダーウィンと同世代のイギリス人のベイツ。アマゾンで昆虫を採集していて気がついた。
派手で有毒な虫が食われにくいので繁栄する。すると、派手であっても毒のない虫までもが食われにくくなる。これも一種の擬態。
虫の世界では、年中、「トラが出る」。ふだん、すなおに生きているときには、べつにトラ模様ではない。しかし、たとえば羽を開くと、なんのことわりもなしに、だしぬけにトラ模様が出現する。ふだんはなにげない顔つきをしていて、なにかの拍子に「ワッ」と他人を脅かす。同じように、突然、目玉を出す虫がいる。それがいいのだ。
人間には、クモ嫌いとヘビ嫌いがいる。私は、ヘビ嫌いです。庭に長いヒモ状のものが落ちているだけでもダメです。ところが、モグラのいるわが家の庭には、ずっとずっと歴代ヘビが棲みついています。何年も前のこと、ヒマワリ畑になっている一角で、ヘビがぶら下がって昼寝をしているのを、雑草を抜いていた家人が上を見上げて気がついて腰を抜かしたということもありました。ヘビの抜け殻を、ときどき庭のあちこちで見かけますので、ヘビが生息しているのは間違いありません。
運動のための必要最小限の装置をエネルギーももっている。運動と栄養という二つの条件を、二つの細胞がどちらかに分担することが有利。なので、一方は運動に専門化し、他方は栄養に専門化した。それが精子と卵子だ。
虫によっては、親が子どもの世話をする。コオイムシは、雄の背中に雌が卵をうみつける。
ハサミムシは、親は卵を保護し、かえった幼虫を見張り、ついには子どもに食われてしまう。親の鑑(かがみ)だ。オーストラリアのゴキブリのうちには、子どもを養育するものがいる。種によっては腹に腺があって、その分泌液を子どもがなめる。哺乳しているのと同じ。
虫、ムシ、むし、決して無視できない生きものたちの生きざまを知ることができます。
(2021年2月刊。税込2420円)

こねこのタケシ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 阿見 みどり、わたなべ あきお 、 出版 銀の鈴社
南極に日本の子猫が渡って生活していた実話が絵本になっています。
1958年(昭和33年)の正月を南極で迎えた第一次越冬隊11人とともに子猫のタケシがいたのでした。
そして、もちろん、あの犬ぞり用のカラフト犬15頭もいました。放置され、翌年、奇跡的にも生きているのが判明したタロ・ジロをふくめた15頭です。
昭和基地で零下30度の寒さにも慣れたタケシの写真があります。カラフト犬とも仲良くなり、一緒に食事もしていました。
そのほか、越冬隊はカナリヤも連れていっていたようです。
そして、第二次越冬隊に引き継ぐはずだったのに、悪天候のため「宗谷」が接近できず、第一次越冬隊はカラフト犬たちを鎖につないで放置したまま「宋谷」に撤収して日本に帰国したのでした。
タケシは幸い隊員に連れて帰ってもらいました。日本に戻って1週間ほどして姿を消してしまったそうです。そんな子猫のタケシの南極での生活が絵本になっています。
タケシは昭和基地に閉じ込められた越冬隊員の心をなごませるペットの役目を立派に果たしたのでした。
それにしてもタロ・ジロもすごいですよね。自力で南極の冬を過ごしたのですから…。
(2019年8月刊。税込1650円)

電柱鳥類学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 三上 修 、 出版 岩波科学ライブラリー
ええっ、こ、こんな学問って、ホントにあるのかしらん…。
私は町中(まちなか)にみる電柱を、いつも電信柱(でんしんばしら)と呼んでいます。でも、本人だって、これは電信(でんしん)の柱じゃないはずだ…と疑っていました。これって、明治の文明開化のころの呼び名がそのまま残っているだけじゃないの…って、思ってきました。
この本によると、電柱には3種類あるそうです。電信柱(電話柱)、電力柱、そして共用柱です。共用柱は、電力柱と通信線を渡す柱を共用しているのです。
電信柱は、もともと、当初は電報を送る線(電信線)だったことに始まり、すっかり定着してしまったということです。
電線の基本構成は、上に3本の電力線、下に3種類の通信線というもの。
日本で、東京と横浜のあいだで電報サービスが始まったのは1870年。したがって、文句なしに、このころは電柱は電信柱でした。その後、電話線そして電力線が渡されることになったのです。
ウグイスは、主としてヤブの中にいるので、電線のように目立つところに止まることはめったにない。電線によく止まる鳥は、スズメ、ムクドリ、ツバメ、ハシボソガラス(ボソ)、キジバト、ハシブトガラス(ブト)、ドバト、ヒヨドリ…、と続く。
わが家の庭によく来る、愛敬のいいジョウビタキは電線にはあまり止まらないようですが、なわばり内の巡回のときには電線にも止まるそうです。
スズメは、電線の中央付近によく止まり、カラスは電柱に近い電線によく止まる。
カラスは、電線を遊びの場としても利用している。カラスって、賢いんですよね。なので、よく遊ぶようです。すべり台ですべって遊んでいる様子を動画でみたこともあります。
カラスのなかで、電柱に巣をつくるのはボソ。ボソは周囲から様子が見られても気にしない習性をもっている。
ブトは、巣の周りに近づいた人をよく襲う。ボソが人を襲うことは少ない。
わが家の周辺ではカササギがよく巣をつくっています。電力会社は巣づくりを始めて、ヒナが誕生し、子離れしてしまうまではじっと待ち、子育てが完了して親たちが巣に戻らなくなってから、巣を撤去するそうです。
やはり人類と大自然との共有は大切なことですから、せめて、それくらいの配慮をこれからも電力会社にはお願いします…。
(2021年1月刊。税込1430円)

空飛ぶヘビとアメンボロボット

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 デイヴィッド・フー 、 出版 化学同人
ノーベル賞ならぬ、イグノーベル賞を2回も受賞したという著者の話は、さすがに面白い。
ええっ、こんなことまで調べるのか…。たとえば、自分の子ども(赤ちゃん)のおしっこが何秒間つづくのか測ったら21秒だった。そんなの測りますかね…。
そして、では、ゾウの排尿はどれくらいか。まあ、図体がでかいから1時間くらいかな…。と思うと、あにはからんや、人間と同じで、21秒ほど。ほ乳類の動物が、ほとんどこの21秒ほどだというのです。
生理現象のときは無防備なので、敵に襲われると逃げきれない心配がある。そこで、21秒くらいが安全。そうすると、尿道は、それにあわせることになる。直径と長さの組み合わせなので…。イヌ、ヤギ、パンダ、サイ、ゾウの排尿時間は、いずれも10秒から30秒のあいだで、平均は21秒。動物たちの排尿時間は驚くほど近似している。
犬の膀胱は、計量カップほど。ゾウの膀胱は、その100倍以上で、20リットルのキッチン用ゴミ箱を一度のおしっこで満タンにする。尿道の長さと直径の比は、男性25:1、女性で17:1。この比は人間だけでなく、ネズミからゾウまで、あらゆる哺乳類に共通している。学者って、こんなことまで調べるのですね。その発想に圧倒されます。
蚊は、雨の中でも飛べる。なぜか…。空から降ってくる雨粒の重さは、蚊の約50倍。では、蚊はどうして雨粒にぶつかったり、土砂降りのなかでも飛んで(生きて)いられるのか…。
蚊の重さは、雨粒のわずか2%でしかない。あまりに軽いので、雨粒の動きに逆らわない。蚊は雨粒の落下を妨げることなく、ただ受け流す。蚊があまりにも軽いので、雨粒は衝突によって減速しないことから、蚊の体には大きな負荷がかからない。
トビヘビは、高さ50メートルの樹にのぼる。そこから滑空し、100メートル先の地面に、ほんの数秒で到達する。トビヘビの滑空率はムササビを10%も上回り、トビガエルの2倍近い。
トビヘビは空中を落下するとき、はじめは頭を下に傾けていたが、次には頭を上に、尾を下にして、体を水平に近づけた。そして自分の体をS字型に曲げ、空中を泳ぐように波打ちはじめた。地表に着地するときには、着地の衝撃を和らげるため、ヘビは再び体の向きを変え、尾を最初に、頭を最後に着地する。
ヘビの体が「ぬるぬるしている」という俗説は間違い。ヘビの体は濡れたように艶やかだが、触ってみると、さらりと乾燥している。
ヘビの椎骨は、数百個もあり、そのため、ヘビの体は長くしなやかなカーブを描き、体全体を地面につけて力を生み出せる。
アメンボはなぜ池の上をスイスイと動きまわれるのか・・・。アメンボが水の上に立てるのは、体のサイズが小さいおかげで、表面張力を利用できるから。アメンボは非常に小さく、そして軽いので、ふだんは無視できる力の影響を受ける。すなわち、表面張力。表面張力がアメンボの体重を支えるのは、トランポリンがヒトの体重を支えるのと同じ原理にもとづく。
アメンボが空気の層をとらえておけるのは、どんな動物よりも毛むくじゃらの脚をもっているから。つまりアメンボが濡れないには、脚の表面積が毛によって増大したおかげだ。毛と毛のあいだには水が入りこめない。アメンボは、水の上というよりも、空気の上に立っている。脚もとにある空気の層のおかげで、アメンボは、アイススケートをするように、水面をスイスイ滑って移動できる。
そして、著者は、このアメンボをつくってみたのです。それは、ステンレススチールの針金でできている。脚は、水をはじくようにコーティングされている。体長9センチで、重さは0.35グラム。いやあ、こんなことまでしてみるのですね、学者って…。
生物の世界は不思議にみちみちています。私が日曜日夜の『ダーウィンが来た』を毎回欠かさず(録画して)みているのは、その神秘の解明に少しでも近づきたいがためです。
(2020年21月刊。税込2640円)

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