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カテゴリー: 生物

生命海流

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 福岡 伸一 、 出版 朝日出版社
ええっ、このコロナ禍の下で、ガラパゴス諸島へ行ったのですか…。
『動的平衡』などの著者として有名な著者が、2020年3月、ガラパゴス諸島へ行き、船を一隻チャーターしてダーウィンの1ヶ月の航路を1週間でたどったのです。
実は、コロナ禍がひどくなる直前で、危機一髪だったのです。あと何日か遅れたら、エクアドルかどこかで缶詰めにされるところでした。
ガラパゴス諸島の航海図が本のはじめに添付されています。本当にたくさんの島から成っているのですね、初めて知りました。
島は全部で123島。主な島は13島ある。これが関東平野くらい広い範囲に分布している。この太平洋の島々は、プレートのせめぎ合いの上に生まれた。北側のココスプレート、南側のナスカプレート、この二つがぶつかり、地下からマグマを噴き上げる海底火山、ホットスポットが生み出された。そして、ナスカプレートの上に乗って島々は南東の方へゆっくりと動いていく。その速度は1年に5センチ。100万年の間隔で、次の火山活動が起きて新しい島の列ができる。
いやあ、ガラパゴスの島も生きているのですね。
このガラパゴス諸島は、エクアドルの領土。移民を送り込んで定住させたが、大変な困難をともなった。まあ、アメリカ領土になっていたら、観光資源として「利用」され、貴重な生態系が滅茶苦茶になっていたことだろうと著者は指摘しています。
ガラパゴスの生物も砂も、一切がもち出し禁止。そして、外部からの持ち込みがないよう、靴の底の泥まで洗浄させられるのです。
ときどき不心得の観光客(収集マニアなど)が持ち出しを試みて捕まっています。日本人もいるようです。泣いて謝罪したというのですが、そんなことで許されるはずもありません。世の中を甘くみてはいけません。エルサルバドルの刑務所に入れられた日本人は、果たして生きて出てこれるのでしょうか…。
ガラパゴスにすむゾウガメは、ふだんは高度1千メートルの火山のカルデラ内外にいる。ゾウガメは草食。高地からエサを求めて何日もかけて下りてくる。ゾウガメは一度エサをとると、水やエサを与えなくても1年近く生きている。
ダーウィンたちはゾウガメを食べた。「なかなかの味だった」と評している。
ゾウガメは、卵のとき、赤ちゃんガメのときには天敵に食べられる心配があるが、それを過ぎたら、もはや天敵はいない。サボテンやリンゴを食べながら、ゆっくり長生きする。ゾウガメの最大寿命は200年。体長1メートル、体重300キロにまで成長する。いやはや、途方もないことです。
そして、このゾウガメの祖先は南米大陸にすむリクガメ。でもリクガメは泳げない。なにかの自然災害が起きて、付近の植物がイカダの役割をしてリクガメがガラパゴス島に流れついたのではないかと想像されている。
ガラパゴス諸島の生き物たちは人間を恐れない。恐れないどころか、近くにやってきて、一緒に遊ぼうよと、ちょっかいをかけてきたり、好奇心旺盛だ。
著書は空を飛ぶグンカンドリの行動をみて、一緒につきあってくれたと解しました。
また、海中ではアシカが寄ってきて、足のフィンに甘がみしたりして、一緒に遊ぼうよと誘ってきた。小鳥だって、そうだ…。
ガラパゴス諸島をチャーター船で1週間かけて巡るなんて、これぞまさしく究極の理想の旅ですよね。船のトイレに苦労したり、真水シャワーが少なかったりの不便はあるものの、三度三度の豪華な食事、そして海を眺めながらのビールなど、これほどの極上の旅はないでしょう。プロのカメラマンによる写真もまたすばらしく、ガラパゴス諸島を紹介する決定版の一つです。いやあ、実にうらやましい限りです…。
(2021年6月刊。税込2090円)

きずな図鑑

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中村 庸夫 、 出版 二見書房
海に生きる生き物の姿が見事にとらえられている写真集です。
親子、夫婦、群れ、そして異種の仲間たち…。これらの写真全部を一人で撮ったなんて、とても信じられません。
著者は私と同じ団塊世代(1949年生まれ)です。早稲田大学の大学院(理学研究科)を出たあと、プロの海洋写真の世界に飛び込んだようです。
いくつもの新しい発見がありました。人喰いザメの見分け方。サメには背ビレが2つあり、この2つの背ビレの大きさが大きく異なるときは危険ザメ。
たとえばネムリブカは、第2背ビレが大きく、第1背ビレの4分の3ほどの高さがあることで安全なサメとされている。好奇心が強く、慣れると人間の手からもエサを食べる。
オオカマスは、海中で集団を形成して泳ぐ。捕食されるのを、こうやって防ぐ。オオカマスの体の側面中央部にある「側線」と呼ばれる1本の線で、微細な水の流水を感じとることができ、光の届かない深海や濁った水のなかでも隣の魚の動きも感知できる。
なお、魚群には通常リーダーはいないので、もよりの魚の動きを感知して同一行動をとっている。
マナティー。ここではフロリダマナティは、海牛目の哺乳動物で、ゾウと同じ祖先から進化したと考えられている。大きな体ながら草食性。
貴重な写真集、眺めているだけで、心が洗われる気がしてくる見事な写真集です。
(2020年4月刊。税込2453円)

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ペーター・ヴォールレーベン 、 出版 ハヤカワ・ノンフィクション文庫
イヌは叱られると悲しい表情をする。そして、メンドリの気を引くため、オンドリは平然と嘘をつく。ええっ、ホ、ホントなの…。
オンドリはおいしそうなものを見つけると特別な抑揚をつけてクックッと鳴きはじめる。すると、メンドリがすぐに聞きつけてやってくる。ところが、オスがその鳴き声で何もないのにやって来たメンドリに交尾を迫って成功することがある。しかし、メンドリだって、何回も騙されるわけではない。
カササギは一生涯にわたるオスとメスはつがいを守る。それでも、つがいのメスが侵入者のメスを激しく追い立てていても、オスはつがいのメスに見られていないと思えば、新しいメスに熱心に言い寄る。ふえっ、カササギのオスって、ヒトのオトコと同じなんですね…。
ヨーロッパアカヤマアリは、数匹の女王アリがいて、最大で100万匹の働きアリによって世話されている。社会階層の一番下は、翅(ハネ)のあるオス。オスは女王アリと交尾するために巣から飛び立ち、そのあと死んでいく。オスは長生きが許されていないのです。働きアリは最長6年生き、女王アリの寿命は最長なんと25年。
ワタリガラスは、80以上の異なる鳴き声を使い分ける。だから、これはカラス言葉だ。ワタリガラスは親子間だけでなく、友人とのあいだでも生涯にわたる関係をはぐくむ。
ブタに名前をつけ、エサを与えるときに名前を呼ぶと、呼ばれたブタだけがエサの入った容器へ突進していく。
馬にとって楽しくうれしいのは、うまくできたときにほめられ、なでてもらえること。間違ったことして叱られると、バツが悪そうに顔をそむけ、あくびをしたりする。きまり悪いそぶりをしているのだ。馬も恥ずかしがる…。
カラスは一緒にいたら仲間が自分を助けてくれなかったら、そのことを覚えていて、そのあとは、その仲間とはともに作業しようとはしなかった。
人間であれ、他の動物であれ、恐れを感じないものは生きのびることができない。
ウサギは、オスとメスとが、それぞれ厳格な序列にしたがって生きている。指導的な役割を果たしているオスとメスは、より攻撃的ではあるが、ストレスは少なめだ。抑圧されているものは、次の攻撃を常に恐れながら生きている。大人のウサギの寿命は平均して2年半。ところがウサギ界の上流階級にいると、7年ほど生きのびる。いちばん下位のウサギは性成熟したあと数週間で死んでしまう。これはストレスが多いか少ないかが決定的だということを示している。うひゃあ、すごい違いですね…。
動物が認知症になってしまえば、肉食獣の手頃な獲物になってしまう。
なーるほど、病気になったら、即、死に至るというわけです。
著者の飼っていたヤギはおだやかな死を自分で迎えたのですが、それは、死んだ動物の姿勢で分かるのだそうです。そのヤギは、くつろいだ態勢で腹ばいになり、力の抜けた脚がその下に折りたたまれていました。これはリラックスして眠るときの姿勢なのです。
いやあ、動物の話は、いつ読んでも面白いですよね。
ドイツで人気の職業のひとつに「森林官」があるそうです。森を管理する専門家のことです。日本にこんな職業があるのでしょうか。もし、あったとしても人気の職業ではありませんよね。いえ、決してけなしているつもりはありません。
ドイツの小・中学校の女の子の憧れの動物ナンバーワンは馬なんだそうです。えっ、ええっ、これも日本とは大違いですよね。大学に馬術部はありますが、馬に乗るって、金持ちの子女のやることっていうイメージです。
(2021年7月刊。税込990円)

命つながるお野菜の一生

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 鈴木 純 、 出版 雷鳥社
いやあ、面白いというか、興味深い野菜の話のオンパレードです。見事な迫力ある写真に圧倒されっぱなしでした。いえ、野生の動物のような荒々しさではありません。私たちが毎日食べている野菜かどうやって大きくなって、美味しくいただけるのか、その様子を美しい写真とともに解説してくれる本なのです。うれし涙がついついホロホロとこぼれ落ちそうになりました。
だって、いま、私は庭に植えたサツマイモが今度こそ、きちんと収穫できるのか、ずっとずっと気にかけているんですから…。じゃがいものほうは、孫たちと一緒に掘りあげ、見事に成功しました。というか、じゃがいもの掘り上げで失敗したことはありません。ところがサツマイモのほうは、地表面に葉と茎が縦横に生い茂っているので大丈夫だろうと掘り上げてみると、なんとなんと、小さな塊がいくつかあるだけ…、という悲しい経験をしたことがあるからです。
じゃがいもは芋自体から葉っぱが出てくる。植物は茎(くき)から芽が出るけれど、根っこからは芽が出ない。ということは、じゃがいもの芋は根ではなく、茎だということ、そして、じゃがいもの花は、なすやピーマン、ミニトマトの花にそっくり。つまり、じゃがいもはナス科ということ。
では、さつまいもは…。さつまいもは根っこに栄養を貯めて太らせるタイプ。じゃがいもが地下茎に栄養を貯めるタイプなのとは違う。じゃがいもはナス科で、茎を食べる芋。さつまいもはヒルガオ科で、根っこを食べる芋。サツマイモは、中南米を起源とし、そこから世界中の熱帯地域や亜熱帯地域に広がっていった。
じゃがいもは茎を食べ、さつまいもは根っこを食べる、だなんて、こんなに似ていても全然違うものなんですね。
落花生(ピーナッツ)は、私の大好物のひとつなのですが、地上に実がなっていると思っている人が多いようです。それを庭に植えてみて、その成長を観察しました。日付入りの写真で紹介されますから、よくよく分かります。黄色い花が咲いて、落ちた花(落花生)が地上にもぐっていくかと思うと…、そうではなくて、地面に突き刺さるもの(子房)があるのです。この子房が土の中で成長していって落花生になるのでした。
いやあ、見事な一連の写真にほれぼれします。
とうもろこしとヤングコーンの関係も写真を見て、よく分かりました。未熟なとうもろこしがヤングコーン。間引きしたものがヤングコーンとして市場に出まわる。うむむ、なーるほど。
野菜は、種(タネ)のまきどきが重要。早くまいてしまうと、種は待てど暮らせど、芽生えてこない。遅くまいてもダメで、もし目が出てきても、その先の成長はあまり良くない。このように種をまく人の責任は重大で、難しい。
きゅうりは、花が咲いてから1週間で食べごろの大きさになる。
ゴーヤーなど、つる性の植物は途中でつるのまく向きを変える。それによって、引っぱられる力に強くなり、かつ、戻る力も増すことになる…。
うひゃあ、ホ、ホントでしょうか。誰が、いったい、そんなことを考えたのでしょうか。まさか、天地の創造の神様がそんなことまで考えたなんて、信じられません。ゴーヤーは、人間が食べるのはまだ未熟な緑色のとき。本来は食害から、その実を守るための苦さなのに、人間には、この苦さが喜ばれて食べられるなんて…。
東京は国分寺に、種どりをする「ほんだ自然農園」がある。畑を耕すことなく、その大地の自然の循環をいかす農法を実践している。いやあ、ホント、すごいですね。こんな人たちの努力で、日本の農業が成りたっていることを知って、少しだけうれしくなりました。みんなで応援しましょうね。
日曜園芸家のはしくれとして、こんないい本に出会えて感激です。日曜日ごとの野菜づくりと土いじりは、私の健康法の一つです。
(2021年6月刊。税込2640円)
 祝日(23日)にサツマイモを孫たちと一緒に掘り上げました。
 初めに姿をあらわしたのは、いかにも細い枝のようなイモでしたから、ありゃりゃ、これは去年に引き続いて失敗してしまったか…と思いました。でも、掘りすすめていくうちに、それなりに太いイモも何個か姿をあらわしてくれて、イモ掘りの格好もつき、孫たちと喜びました。イモのテンプラにして食べましょうか…。

イヌは愛である

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 クライブ・ウィン 、 出版 早川書房
私はイヌ派です。ネコには、どうも親しみがもてません。幼いころからわが家は犬を飼っていました。キャンキャン吠えるので、すぐ人気を失ってしまったスピッツが小学生のころから座敷にも上がるのを許されて飼っていました。おかげで、畳は、いつもザラザラです。今なら、とても耐えられませんが、子どもって平気なんですよね…。
イヌは単に社交的なのではない。正真正銘の親愛の情を示す。それは、人間だったら、普通は愛と呼ぶはずのもの。イヌは、深いつながりを築きたい、温かで親密な関係をもちたいという欲求、愛し、愛されたいという欲求をもっている。イヌの本質は愛である。その愛が、人間にとってイヌを特別な存在に、人間のまたとない相棒にしている。人間に対するイヌの愛の主導権は、人間にはない。主導権はイヌが握っている。
4000年以上も前の古代エジプトの墓碑に、イヌの名前が刻まれている。アブウティユウという王の護衛犬は、死んだとき棺に入れられ、上質の亜麻布、香、香りのついた軟膏が下賜された。
イヌは1万4000年以上前に生まれた。最後の氷河期のあいだに登場した。
イヌは、特定の人間をすぐに好きになる。これって、イヌ好きの人間をイヌはすばやく見抜くということではないでしょうか。イヌ好きの私は、あまりイヌを怖がらないので、イヌも私にすぐに近づいてくるような気がします。
イヌが人間より速く絆を築く反面、イヌはその絆を解くのも速いのではないか…。
これって新しい飼主にイヌがすぐなじむことを指しているのでしょうね。
個体としても種としても、イヌは人間に身を捧げてきた。イヌは狩りの能力などのすべてと引き換えに、人間のパートナーになるチャンスを選んだ。
深くて揺るぎない愛情と引き換えに、人間も自分たちを愛してくれる。イヌはそう信じている。ところが、人間のほうは、残念ながらイヌと盟約をまっとうしているとは言えない。
オープンで愛情深い性質をもつイヌは、身体的な接触と同じくらい、関心を向けてもらうことを求めている。
多くのイヌは、ひどい孤独に耐えられず、いろんな行動をとる。吠える、家具をかむ、室内の、してはいけないところで排泄する。
こうしたストレスの兆候は、分離不安障害と呼ばれる、だから、スウェーデンでは、少なくとも4時間から5時間おきにイヌに社会的交流をさせることを法律で義務づけている。
うひゃあ、これには驚きました。
現在いる犬種は、みな、ここ150年のうちに出来たものでしかない。純粋な血統をもつイヌをつくっていった結果、一部のイヌは、半数以上がガンで死んでいる。
イヌが人間の行動の意味を理解できるのは、人間といっしょに暮しているうちに学習するから。またイヌを飼ってみたくなりましたが…。
(2021年5月刊。税込2310円)

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