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カテゴリー: 生物

モグラ博士のモグラの話

カテゴリー:生物

著者 川田 伸一郎、 出版 岩波ジュニア新書
 我が家の庭にモグラがいることは間違いありません。でも、死んだモグラしか見たことはありません。この本を読むと、モグラの生態ってまだまだわかっていないことがたくさんあるんですね、びっくりしました。こんな身近な存在なのに、分からないことだらけというのも不思議ですよね。著者はモグラ博士ですが、ぜひいっしょにモグラの謎を解明しましょう、と呼びかけています。
 モグラには目がない。目はあるけれど、皮膚でおおわれてしまっている。モグラは光を感じることができない。また、その必要もない。モグラの棲む地下世界は夜の闇よりもっと暗く、まさに真っ暗。ここまで光がない環境だと、目は必要ない。
モグラの鼻には、アイマー器官というのがあって、微弱な振動を感知することができる。これによってモグラのトンネルにミミズが出てきたことなどを知る。
モグラは、地上を歩くのは苦手。モグラ塚は地上との出入口ではない。
 西日本にすむ大きなコウベモグラがどんどん北上していって、小さなアズマモグラを北東に押しやっている。この分布境界線は、富士山から金沢市を結ぶ線あたりにある。
 モグラのテリトリーは、水田の1枚から2枚ほど。モグラの寿命は3年から4年。5年も生きていたら珍しい。メスは一度に3匹から6匹の子どもを産む。ただ、モグラの人工的な繁殖に成功した例はない。
モグラは植物を食べない。そうなんです。でも、毎年春のチューリップ畑を目ざしている私にとって、モグラはチューリップの球根を地上に放り出すという厄介者なのです。
 モグラはトンネルに穴が開くことをとても嫌う。出入り口が開くと、すぐに土を持ち上げて隠してしまう。というのも、ネズミなどが入ってきたりするからです。
 モグラは、1日3回食事をする。おなかがすくと、体力を消耗してすぐに死ぬ。そのため、早朝、夕方、深夜と3回トンネル内の見廻りに出かける。モグラが何度も繰り返し利用し続けるトンネルは、モグラのブラシのような被毛によって壁が磨かれ、つるつるの硬い壁面になっている。
モグラは温帯にすむ。暑いところにもすごく寒いところにも住んでいない。いやはや、モグラって、こんなに分かっていないことが多いのか、ホント不思議ですよね。
 モグラが生きて捕まるのは、母親モグラが子育てが終わって、子どもモグラを追い出すときだというのです。なーるほど、子別れって命がけなんですね。
 モグラの不思議な話が盛りだくさんの面白い本でした。
 
(2009年8月刊。780円+税)

先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!

カテゴリー:生物

著者 小林 朋道、 出版 築地書館
 大好評の先生シリーズです。毎回、私も楽しく読ませていただいています。
 私も、動物を飼育してみたいという気持ちはあるのですが、あちこち旅行もしたいし、両立できませんので、あきらめています。本当は犬を飼って、毎日散歩したいのです。
 といっても、我が家の庭にはモグラがいますし、ヘビもいます。そして、夜になるとヤモリが窓に貼りつきます。小鳥はキジバトそしてヒヨドリは常連です。もちろん、スズメ軍団もいます。春にはメジロ、そしてウグイス、さらにはカワラヒラなどもやって来ます。山のふもとの近くに住んでいますから、それなりに豊かな自然に恵まれています。ただし、モグラは生きた姿では見たことがありません。見るのは、地上の死骸となっているときです。庭のあちこちに土が盛り上がりますので、何頭ものモグラがいることは間違いありません。
 ヘビの姿の方は、幸いにして最近は見かけません。ただし、庭に出るときには、思わぬ遭遇ということにならないように用心しています。
 先生シリーズは、鳥取環境大学で動物行動学と人間比較行動学を専門にする小林先生の日常生活が愉快なタッチで紹介されています。微笑みながら、動物と人間の行動科学が学べるという勝れものの本です。
 イタチ科の動物であるフェレットを飼育したときの顛末は面白いのですが、その顔写真がなんとも可愛らしいのです。いやあ、これはぜひ飼ってみたいと思いました。実際に飼うと大変なんでしょうね……。
 シマリスの子どもたちがカタカタカタという音を一斉に立てて、イタチ(フェレット)を撃退するのは実証する実験は面白いものです。やはり、学者になるには、少し奇抜な発想のできることが必要なんですね。ということは、やっぱり学者は変人に限る、ということでしょうか…(おっと、失礼しました)。
 ヤモリは家守り。イモリは井守り。ヤモリは爬虫類、イモリは両生類。ヤモリの尿は、白色のねっとりとした半固体状、イモリの尿は液体。
 アカハライモリの生態を探求するためには川岸のアシを夜中に鎌で刈りつくす作業が必要となる。その作業のため、小林先生は、ついに腱鞘炎となり、両手首にサポーターを巻かざるをえなくなりました。学者って、それほど大変な職業なんですね。いやはや、学者なんてならなくて良かったと私は思ったことです。本を読むだけなら、私も出来ますから…。
 モグラはミミズだけでなく、セミも食べる。私は、初めて知りました。そういえば、うちの庭にも、もちろんセミの幼虫はいます。7年ほども地中にいて、地上ではわずか1週間の生命というはかなさです。
 面白いシリーズの本です。どうか、引き続き、がんばって面白い本を書いてくださいね。
(2009年8月刊。1600円+税)

ホタルの不思議

カテゴリー:生物

著者 大場 信義、 出版 どうぶつ社
 初夏というより、晩春でしょうか。5月の連休(ゴールデンウィーク)が終わって間もなく、我が家から歩いて5分のところの小川に、毎年、ホタルが飛び交います。ほっとするひとときです。
 著者は企業の研究所に入り、そして中学校の教員となったあと、博物館の学芸員としてホタルの研究に専念するのでした。これもすごいですよね……。
 私が東京のような大都会ではなく、田舎で弁護士を続けているのも、歩いて5分のところでホタルの光を眺めることができることの良さに価値を見出しているからです。
 ホタルの放つ光は、次のような生化学的な酸化反応による。酵素であるルシフェラーゼとルシフェリン、ATP(アデノシン三燐酸)などの物質が混ざり、そこにマグネシウムイオン、酸素が加わると反応がすすみ、発光する。この反応は効率が非常に高く、蛍光灯などとは比較にならないほどエネルギーを光に変えている。このため、ほとんど熱を伴わないことから、冷光とも言われる。そしてホタルは発光反応を自由に制御している。
 ホタルには、せっかちな西日本型(2秒に1回発光する)と、のんびり発光する東日本型(4秒に1回発光する)がある。発光パターンだけでなく、産卵習性も異なっている。
 ゲンジボタルの幼虫は、4月の雨が降るあたたかな夜にサナギになるため、一斉に発光しながら川岸に上陸して、土に潜る。ホタルは、幼虫も光るのですね……。見たことはありませんが、なんだか夢幻的な光景です。
  西日本のゲンジボタルのメスは、100個以上の集団となって産卵する。しかし、東日本のゲンジボタルは、同じ種でありながら、集団産卵はしない。
パプア・ニューギニアにはホタルの木というのがあるそうです。オスのホタルが集まり、集団となって発光してメスを呼び寄せるのです。この木が切られてしまったら、このホタルは絶滅するだろうと予想されています。そうならないことを祈ります。
 我が家から歩いて5分のホタル出現地にも、すぐそばに新しく道路がつくられています。レジャーランドへ通じる便利な道路として開設されつつあるのです。でも、いったい、このレジャーランドが、いつまでもつのか、私には疑われてなりません。
 自然環境を孫の代にまで残したいものですよね。
 
 庭の合歓(ねむ)の木が、またふわふわとしたピンクの花を咲かせ始めました。この花を見ると、なぜかいつも子どもの頃の心のときめきを覚えます。どうしてかなと考えていると、夏祭りの提灯に描かれていた花や金魚などの鮮やかなピンクの色を連想させるからだと思い当りました。
 我が家の庭の合歓の木は小さいのですが、お隣にあるのは大きくて、慮杖を大きく広げるほどに全面に咲いて、それはそれは華やかです。
 朝、居間の雨戸を開けると、目の前に秋明菊の花が飛び込んできます。すっと高く延びた茎に、純白の花びら、そして真ん中はクリーム色になっています。気品あふれる、見るからに清々しさの伝わってくる花です。そばに紫色の斑(ふ)入りの不如帰(ほととぎす)の花も咲いています。稲刈りも間近の秋です。
 
(2009年7月刊。2200円+税)

人が学ぶイヌの知恵

カテゴリー:生物

著者 林谷 秀樹 渡辺 元ほか、 出版 東京農工大学出版会
 私は犬派です。幼い頃から犬と一緒に育ちましたから、犬には愛着があります。猫はどうも好きになれません。
 子どもたちが小さいころ、柴犬を飼っていましたが、私の不注意もあって蚊に刺されてフィラリアで死なせてしまいました。この本を読んで、犬について改めていろいろ知ることが出来ました。
 メス犬の生理出血は人間と違って、排卵前後に起きるから、もっとも妊娠に適した時期である。
 イヌは汗をかいて体温を下げることが出来ない。かわりに唾液を蒸発させて、熱を放散させている。
 イヌは肉食に近い雑食なので、丸呑みするのが正しい食べ方である。
 イヌは食べ物の味より臭いで学習し、それによって好き嫌いがある。一般に大型犬は味オンチで、小型犬は好き嫌いの激しい傾向にある。オスよりもメス犬の方が好き嫌いが多い。
 イヌは甘いものが大好きだ。イヌはネコと違って腐肉も好き。イヌはビタミンCを体内で合成できる。イヌは汗をかかないから塩分の排泄が出来ないので、ヒトと同じように塩分をとると、塩分の取り過ぎになって高血圧になる恐れがある。
 イヌの嗅覚はヒトの1億倍もの感度を持っている。イヌの動体視力は優れているから、テレビ画像はヒトと違ってコマ送りにしか見えない。
 イヌがヒトと同じものを食べていると栄養学的に問題があり、虫歯にもなりやすい。ドックフードが好ましい。そして、イヌにはタマネギやチョコレートを与えてはいけない。
イヌも心の病にかかる、飼い主の夫婦げんかが絶えないと、神経性の脱毛症を引き起こすことがある。飼い主と離れていると、鬱状態になり、食欲をなくしてしまう。
 イヌは排便したあと、うしろ足で土をかけるような行動をとるが、それは便を隠すためではなく、自分の臭いをつけるため。
 イヌにとって、臭いは大切な社会的コミュニケーションの手段の一つなのである。
 イヌは叱られると、あくびをしたり、自分の口をなめたり、目をそらしたり、背中を向けてすわったりする。これは飼い主を馬鹿にしているのではなく、怒っている飼い主に対し、落ち着いてよ、もうやめてよと伝えていると同時に、自分を落ち着かせようとしているもの。
 イヌは、もともと群れで生活する動物なので、ひとりで放って置かれるのは苦痛に感じる。そこで、飼い主の外出がイヌにとっての一大事にならないよう、日頃から、慣れさせておくべきだ。留守したときにイヌの気が紛れるようなオモチャを与えるのもいい。
 イヌは、過去の出来事を記憶する能力はあっても、判断応力は欠けている。悪いことをしたイヌを後になって怒っても、なぜ怒られているのか、理解できない。
 イヌは、ヒトの感情や意図を敏感に読み取ろうとし、その動作を積極的に模倣しようとする。イヌが飼い主の家族に順位をつけて認識しているという話は最近は否定されている。
 イヌが腹を見せるのは、服従や信頼を示すシグナルである。しかし、それを強制すると、イヌとの信頼関係を壊してしまう。
 イヌとのことで知らないことが多すぎたと反省させられました。
(2009年7月刊。1400円+税)

自然界の秘められたデザイン

カテゴリー:生物

著者 イアン・スチュアート、 出版 河出書房新社
 1,2,3,5,8,13,21,34,55、89,144…。3つ目以降の数字は、どれも、その前の2つの数字の和となっている。そして、ユリの花びらは3枚。キンポウゲは5枚。ヒエンソウの多くは8枚。アラゲシュンギクは13枚。アスターは21枚。ヒナギクとヒマワリは34枚から55枚、また89枚。大きなヒマワリになると花びらは144枚だ。
 この数字をフィボナッチ数という。フィボナッチというのは、12世紀のイタリア・ピサの人である。いやあ、どういうことなんでしょうね、この規則性は…。
シダの葉は、一部が全体を縮小した形をしている。シダの茎の両脇には、細かく分かれた葉が何枚も並んでいる。葉は茎の根元に近いほど大きく、先端に近づくほど小さくなって、全体として柔らかな三角をつくっている。そして、これが、一つ一つの葉にあてはまる。シダの種数によっては、この構造が4度も繰り返される。
 これまた、不思議なことですね…。
古代ギリシアの哲学者プラトンは、正多面体が5つしかないことを知っていた。正四面体、立方体(正六面体)、正八面体、正十二面体、正二十面体である。
シマウマは縞模様のおかげで、草原でも目立たぬように草を食める。トラは縞模様のおかげで、ジャングルで待ち伏せするときに気づかれずにすむ。縞柄のチョウチョウウオやスズメダイは、すみかであるサンゴ礁の色合いにあわせて飾りたてられている。
 黄褐色のライオンは砂漠の砂と同じ色だ。ヒョウがまだら(斑)の皮をまとっているのは、枝にうずくまっているときに木漏れ日の模様に溶けこむためである。
 自然界の生物のデザインの豊富さ、その奇抜さは、人間の想像力をはるかに超えるものがありますよね。そして、その規則性にも感心してしまいます。どうして、そんなことが可能になったのでしょうか。神のみぞ知る、ということでしょうか…。信じられません。自然には不思議さがあふれていますよね。
(2009年2月刊。1600円+税)

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