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カテゴリー: 生物

深海のとっても変わった生きもの

カテゴリー:生物

 著者 藤原 義弘、 幻冬舎 出版 
 
 海の底に、こんなにも変わった色と形をした魚たちが棲んでいるのかと、びっくり驚天です。たとえば、水深270メートルの海底に生きるベニハゼは、暗いはずなのに、派手なピンク色でアピールしています。
 海底に沈んだクジラの骨の中には、ホネクイハナムシ、エビやカニ、ホシムシその他の生き物たちの棲み家になっている。海底のクジラの骨には、小さなクリスマスのようにツリガネムシがまとわりついている。クジラの遺骸は、生物の少ない深海では、大変なごちそうなのだ。スタウナギ、カニが肉を食べ、骨はホネクイハナムシ、ヒラノマクラなどが利用するなど、たくさんの生命を支えている。
長いアシをもつムンナは、まるで地上のカマキリ。長い手足は、カマキリが海底を歩いているとしか思えません。
 海底には、猛毒の硫化水素を含み、300度にもなる熱水噴出効孔がある。そこに、なんと多くの生物が寄り集まっている。アルビンガイもその一つ。
 深海では、赤い光が届きにくいため、赤いものは黒く見える。だから、赤い色をした生き物が多い。赤は深海では目立たない。
とっても奇妙な形をしていて、不思議な色をしている生き物が、こんなに深海の海底でうごめいて生きているとは、まったくの驚きです。
 どうやって撮ったのかしらん、と思うような傑作の深海底生物の写真集です。
 どうぞ、あなたも手にとって眺めてみて下さい。楽しい写真集ですよ。
 
(2010年6月刊。1300円+税)

となりのツキノワグマ

カテゴリー:生物

 著者 宮崎 学、 出版 新樹社 
 
 動物写真家が長野の山で、たくさんのクマを発見。ツキノワグマって、こんなにもフツーに山にいるのですね。九州にだっていないはずはない。著者がそう言っているのを知った何日かあと、宮崎の森の奥深くでクマを目撃したという記事を新聞で見つけました。九州のクマは絶滅したと言われて久しいのですが、どうやら、そうでもないようです。
 無人カメラをクマの通り道に仕掛けておいて写真を撮るのです。クマたちがフラッシュを浴びてびっくりした様子も面白いですよ。
 両耳に赤と黄色のタグをつけたクマが、その年に生まれた子ぐまを連れて里にやってきた。タグをつけているということは、親グマは、お仕置きされて里にはおりてこないはずだったのです。それなのに、相変わらず里の近くに定住しているのです。クマの通り道にカメラを設置しておくと、好奇心旺盛なクマからカメラは倒されていた。そこで、その様子を別のカメラで撮ることにした。これが面白いのです。まるでカメラを構えたカメラマンのようなクマの立ち姿まであります。
クマの好みも十人十色。蜂蜜が大好きなクマがいれば、そうでないクマもいる。ニジマスの養殖場で弱ったニジマスを獲っていくクマもいる。
クマ同士は、お互いに無駄な接触を避けるため、人の耳には聞こえない超音波を出して交信している。そして、弱い方は危険を察知し、立ち去るなり、木に登るなりする。クマが移動中に口を細くあけているのは、低周波を出しながら自分の存在を知らせているのだ。
 クマの個体としての寿命は、野生下では20年ほど。しかし、えさの面でもすみか(洞窟)の面でも強く木に依存しているクマは、種のレベルでは木や森の時間軸にあわせて動かなければ、生きていけない。クマが冬期穴に利用する樹洞は、できるまでに100年以上の期間を要する。そこで、クマは本能的に、未来の子孫に向けて、樹洞づくりを始める。
少なくとも長野県では、20年前に比べて、ツキノワグマは著しく増えている。近い将来にクマが絶滅する心配はない。
 中央アルプスの全景を写した写真があります。そこに無数といえるほどにクマが出没した地点が表示されています。長野県はクマだけでなく、人間だって、大いに住みたい地域です。そこにたくさんのクマが棲みついているというのです。びっくりしてしまいます。
 私にとってクマは動物園で会うことがあるくらいの生き物なのですが、これほど人里近くに居住しているというのですから、すっかり認識を改めました。
 クマの写真が生きいきと、躍動感にあふれています。
(2010年7月刊。2200円+税)
 宮崎県の西都市に出張してきました。西都原古墳群で有名なところです。今回は残念ながら古墳群の見学はできませんでしたが、すごい数の大きな古墳群が密集しています。これを見ると、なるほど、日向(ひむか)の土地こそ天孫降臨したところ、日本文明発祥の地だと確信させられます。まだ見ていない人は是非一度出かけてみてください。
 西都に日弁連のひまわり公設事務所がオープンし、その開所式に参加しました。実は、6月に予定されていたのですが、例の口蹄疫騒動で延期されてしまったのです。
 所長の水田弁護士は、福岡のあさかぜ事務所で1年半のキャリアを積んでいます。温厚かつ熱心な弁護士ですので、弁護士の少ない地元の要請に必ずこたえてくれるものと確信しています。

銀狼王

カテゴリー:生物

 著者 熊谷 達也、 集英社 出版 
 
 開拓期の北海道。老猟師は、幻の狼を追う・・・・。両者の誇りをかけた緊迫の5日間。これはサブ・タイトルとして書かれた文句です。猟師が雪の中、狼を追い続けてさまよい、ついに狼の群れに遭遇します。狼王は、連れの狼が撃たれて倒れたとき・・・・。手に汗にぎる、迫真の対決です。すごいですね、この著者の生々しい描写力には、いたく感服してしまいました。
 老猟師といいますから、60代か70代だろうと思っていると、とんでもない、わずか50歳でしかないのです。これで老猟師とは可哀想です。と、いつのまにか61歳になってしまった私は思います。
 北海道において、ヒグマやオオカミ猟は、とれた獲物の毛皮や肉でもたらされる利益だけでなく、直接、現金を得る手段となる。鹿狩りと違って、捕獲に対する手当がお上から出るのだ。10年前に、狼と羆それぞれ一頭につき2円から始まった捕獲手当は、すぐに狼が7円、羆が5円に引き上げられ、5年前に羆が1頭3円に下がったものの、狼は逆に1頭につき10円の手当がつくようになった。
オオカミを追うほうが、ヒグマをとるより、はるかに楽しい。本物の狩りというのは、獣と人間との知恵比べである。
 北海道の冬を甘く見てはならない。しかも、ここは、標高1000メートルはある山の中だ。いったん気温が下がりだすと、どこまで凍てつくか、分かったものではない。歩き続ければ、体温の低下は防ぐことができる。実際、牧場に飼われてはいても、西洋馬と違って、厩舎をあてがってもらえない道産馬は真冬になると、夜は一晩中歩き続けて身体を温め、昼に睡眠をとることで、厳しい冬を乗り切る。
食えるときにたっぷり食っておくのが、山歩きを続けるときの鉄則である。無理に我慢すると、肝心なときに力が出ないばかりか、悪くすると、食い物をたっぷり持っている状態で行き倒れになることもある。
鈍重そうに見えて、その実、ヒグマは驚くほどに知恵が回る。ヒグマに限らず、野ウサギなどもそうだが、穴に入るときには、必ずといってよいほど、留め足をつかって身の安全を図ろうとする。つまり、自分がつけた足跡を忠実に踏んで後ずさり、そこからひょいと脇にそれる。経験の浅い猟師には、追っていた足跡が突如として途切れたかのようにみえるので、獲物そのものが消えてしまったかのような錯覚をおこし、痕跡を見失ってしまう。
 また、穴に入る前に、必ず沢を渡るヒグマもいる。沢に入ることで、雪につけてきた足跡が途切れ、これまた駆け出しの猟師は途方に暮れることになる。
 狼の奇妙な習性は、もともと自分たちの獲物になる鹿のような動物ではない相手、たとえば人間などに出くわしたとき、気づかれないようにして、しばらくそのあとを追い続けるという習性がある。そして、逃走にかかったとみるや、すぐさま追跡に転じるのも、これまた狼の習性の一つである。いや、狼だけでなく、ヒグマやツキノワグマもそうだ。背を見せて逃げる相手を追いかけるのは、彼らの本能である。
 狼は、つがいになった連れあいに対して、人間以上に情が深い。銃で仕留めたメス・オオカミから離れようとしないオス・オオカミを何の苦もなく仕留めたことがあった。
 間近で見る、美しい銀色の毛並みをもったオス・オオカミは獣の王者の風格にあふれていた。後ろ足で立てば、間違いなく、大人の背丈をこえるだろう。虎やライオンとだって遜色のないだろう体軀の銀狼には、犬の親戚などではなく、猛獣そのものの威圧感がある。言葉では尽くせぬ威厳に圧倒される。
 すごい小説です。こんなに迫力のある小説を一度は書いてみたいとモノカキ志向の私は思ったことでした。 
(2010年6月刊。1400円+税)

だれでも飼える日本ミツバチ

カテゴリー:生物

著者:藤原誠太、出版社:農文協
 セイヨウミツバチが大量死しているというニュースが流れるなか、日本在来の日本ミツバチは病気知らずで元気、しかも味わい深くて、一定の病気には薬効もあるというのです。
 そんなけなげな日本ミツバチを飼ってみよう。写真つきで紹介されていますから、私にも出来そうです。でも、やっぱり一度は現物を見てみたいなと思いました。
 日本ミツバチは野生種であり、人間に飼われているという意識はない。日本ミツバチは居住環境が良ければ居続けようとするが、あわないと思うとすぐに逃げ去ってしまう。
 日本ミツバチは病害虫に強く、甘み以外に酸味や複雑な香りもあって、古酒のような味わい。
 外勤の働き蜂が集めてきた花蜜は、貯蔵係の働き蜂に口移しされて巣房に蓄えられる。貯蔵係は、その後も口から出し入れを繰り返して、蜜中の水分を蒸発させて濃縮する。同時に、唾液中の酸素によって花蜜のショ糖がグルコースなどに変えられ、さらに有機酸も生成して、保存・貯蔵性の高い蜂蜜がつくられる。
 祖先がアジアの森林うまれの日本ミツバチは、木々の間をぬってジグザグ飛行するのが得意である。その行動範囲は西洋ミツバチよろ狭く、1~2キロ程度。集団行動よりも、単独行動による訪花が多く、いろんな樹木・草花から、こまめに蜜や花粉を集めてくる。
 日本ミツバチは、押しつぶされるとか、髪の毛に入って身動きとれなくなるなど、よほどのことがない限り、人を襲い、刺すことはない。
 女王蜂の寿命は、自然状態で2~3年。働き蜂の寿命は、成虫になって20~30日。オス蜂は女王蜂との交尾に成功すると、そのまま空で即死する。失敗して巣にもどっても冷遇され、追放されて野垂れ死にする。ミツバチ社会は女系社会なのである。無情です。オスは、どこの世界でも辛いものがあります。
 西洋ミツバチと比べて日本ミツバチは繊細で、脅えやすい。
 オオスズメバチが侵入してきたとき、西洋ミツバチは一匹ずつで迎え撃つため、次々に殺され全滅する危険が大きい。日本ミツバチは集団で迎撃する。何十匹が一斉に取り囲み、45度以上の熱で殺してしまう。ただし、10匹以上のオオスズメバチが侵入してくると、さすがに日本ミツバチもかなわない。
 群れの運営設計をしているのは女王蜂ではなく、働き蜂である。
 ミツバチは急激な温度変化に弱い。暑いときは水を汲んできて羽で風を送り、温度を調整し、常に34度に群内の温度を保っている。
 ミツバチは羽がぬれると起き上がれない。
 ミツバチを扱うとき、手の感覚を鋭くするため、基本的に手袋はしない。
 できる限り白いものを身につけ、髪の毛は帽子で隠す。昆虫は全般的に白い色に敵対反応が鈍く、ミツバチもあまり攻撃的にならない。逆に、ミツバチは黒色に反応する。ミツバチは乱視なので、比較的コントラストの強いものに反応する。
 ミツバチに刺されたら、ヨモギ汁を塗るとよい。
 女王蜂はセイヨウミツバチと交尾することがあるが、それは受精せず、オス蜂を多く生んでしまう。
 よくぞここまで観察したものです。感心しました。
(2010年7月刊。1700円+税)

邪馬台国と狗奴国と鉄

カテゴリー:生物

著者:菊池秀夫、出版社:彩流社
 邪馬台国は、やっぱり九州にあった。九州(福岡)出身の私は、声を大にして日本全国に向かって叫びたいのです・・・。
 弥生時代末期の鉄器の出土状況は、圧倒的に九州が多い。権力の象徴ともいえる軍事力や農耕に使用されていた鉄器の普及は、弥生時代末期に急速に九州北部(福岡県)から中部(熊本県と大分県)に拡がった。そして、九州中部が北部を凌駕するほどにまでなった。
 弥生時代末期から古墳時代初期にかけて鉄器生産の技術が九州北部から畿内に拡がっていった。畿内では、弥生時代の末期に鉄器生産の技術はほとんどなかった。
 いろいろ考えあわせると、邪馬台国は山門郡瀬高町(現みやま市)にあった、ことになる。
 うむむ、これはいいぞ。なるほど。なるほど、そうなんだ・・・。思わず膝を打って、立ち上がったものです。
 弥生時代の九州には、鉄の武器をもつ強力な勢力が存在していた。これは、鉄器(武器)の出土数が九州は1726点(54%)、近畿は390点(12%)にもよる。
 大型の武器(鉄刀、鉄剣、鉄戈)は、北部九州に集中している。鉄刀の87%、鉄剣の77%が北部九州に集中している。
 弥生時代の末期、いわゆる古墳時代の前夜、九州には、大きく分けると5つの勢力が存在していた。九州北部のほとんどを支配していた卑弥呼の女王国連合の国々。熊本県北部の菊池川流域の勢力と熊本県中部の白川流域の勢力。大分県西部の大野川流域の勢力。宮崎県中部の勢力。そして、宮崎県中部の勢力は、後に畿内の大和王権となった。
 宮崎県中部の勢力が北に存在した狗奴国や女王国連合の国々を飛びこえて畿内へ移動したとは考えにくい。したがって、宮崎県中部の勢力も狗奴国の一員であり、狗奴国が女王国連合の勢力を破り、畿内へと移動したと考えるほうが自然である。
 著者は歴史を愛する素人ではありますが、鉄剣等の出土状況から邪馬台国を探るアプローチをするというところは、さすがゼネコン出身だけはあります。
(2010年2月刊。1900円+税)

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