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カテゴリー: 司法

「日本国憲法」なのだ!

カテゴリー:司法

著者  赤塚 不二夫・永井 憲一 、 出版  草土文化
天才バカボン、ニャロメのマンガで語る日本国憲法なのだ・・・。中味はいたって真面目なケンポーの本です。もちろん、マンガで日本国憲法がちゃんと紹介されています。
 シェーと奇声をあげるイヤミも登場します。これが流行ったのは、私が高校生のころでした。私も、さんざんマネしてマンガを描いていました。バカボンとその鼻毛伸びのびのお父さんも登場しています。
 ニャロメが、「日本人は、アジアの人にずい分ひどいことしたんニャ」と叫びます。本当に、そのとおりです。これは現実(歴史)を直視することであって、橋下徹や石原慎太郎のいう「自虐史観」なんていうものでは決してありません。
このマンガに時代を感じるのは、「ソーリ大臣も悪いことをして逮捕されたベラマッチャいま裁判中」というセリフがあることです。もちろん、田中角栄の裁判を描いています。田中角栄が逮捕された日、私は偶然に東京地検あたりを歩いていました。そして、田中角栄を逮捕・連行した松田検察官は、私の実務修習中の検察指導教官でした。
 裁判官についても、こんなセリフが書かれています。
 「さいきんは国民のためというより、国の権力につごうのいいことを決める裁判官が多いだス」
 いえいえ、残念ながら、昔も今も、権力に弱い裁判官が少なくないという現実があります。
 「憲法改正してゲンバクをつくり、兵器をどんどん作るなら協力します」
 という議員が腰かけていて、ハタ坊が、「こういう国会議員も多いから気をつけよう!」と注意を呼びかけています。この国会議員は、イシバ議員にそっくりです。
 マンガを描いた赤塚不二夫は終戦時に10歳。むかし満州といわれた中国・東北部の奉天(瀋陽)から、母親の手を握りしめて3人の妹・弟とともに日本に引き揚げてきた。赤塚不二夫の父親は憲兵で、特務機関にいて、八路軍(中国共産党の軍。パーロ)をずっと追いかけて工作していた。
 くやしいのは、終戦になって、民間人は軍隊が守ってくれるどころか、置き去りにされたこと。最初に逃げたのが軍部だった。
 そんな目にあっているから、いくら政府が自衛隊のための軍隊だなんて説明しても、ぼくを守ってくれるものじゃない。まるで信用できない。
 今から30年前の1983年4月に初版が出た本です。今に生きる貴重な赤塚流の憲法マンガ本です。ぜひ、ご一読ください。
(2013年6月刊。900円+税)
 参院選で自民党が「大勝」が確実な状況ですが、自民党の石破幹事長がテレビで軍法裁判所について次のように発言しました。
 「これは国家の独立を守るためだ、出動せよと言われたとき、死ぬかもしれないし、行きたくないなと思う人がいないとはかぎらない。そのとき、それに従わなければ最高刑に死刑がある国なら死刑、無期懲役なら無期懲役、懲役300年なら300年を科す。(すると)、そんな目にあうくらいなら出動命令に従おうということになる。
 軍事法廷っていうのは何なのかというと、すべては軍の法律を維持するためのもの」
 たしかに自民党の改憲草案には「国防軍」とあわせて「軍事審判所」を設定することになっています。人を殺しに行けと命令されていやだと拒否すると死刑判決ということです。とんでもないことです。
 自民党はこんな怖い改憲草案を発表しているわけですが、そのことを、選挙最終盤で言い出しました。
 弁護士会(日弁連)は10月3日、広島で、「今、なぜ国防軍なのか」というシンポジウムをもち、自民党の改憲草案、とりわけ「国防軍」構想を集中的に議論することにしています。
 国民にしっかり情報を伝え、そのうえで選択してもらいたいからです。

いま「憲法改正」をどう考えるか

カテゴリー:司法

著者  樋口 陽一 、 出版  岩波書店
安倍内閣が参議院議員選挙のあと、憲法改正に走り出すのは必至の情勢です。投票率が5割前後と予測されているなかでの自民党「大勝」ですが、選挙で信を得たとうそぶいて強権発動する恐れがあります。根っからの狂信的な改憲論者が首相だというのは、本当に怖いですね。
ところで、憲法って、そんな権力亡者を取り締まるためにあるものなんですよね。それを立憲主義と言います。そして、この立憲主義は戦前の帝国憲法の下でも、指導層の共通認識だったというのです。これは初耳でした。
 戦前の日本で、立憲主義は指導層の間で共有されていたキー(鍵)概念だった。伊藤博文は帝国憲法制定の最終段階に、憲法を創設する精神として、第一に君権を制限し、第二に臣民の権利を保護するにあるとした。
 帝国憲法の適用にあたって、立憲主義は憲政のキーワードであり続けた。二大政党の正式名称は、立憲政友会、立憲民政党だった。
 帝国議会の意思を無視した超然内閣だとして寺内正毅内閣を攻撃する側は「非立憲」をもじって「ビリケン」寺内と呼んだ。それほど、「立憲」という言葉は世の中にゆき渡っていた。
 そうなんですか、ちっとも知りませんでした・・・。
 日本国憲法を受け身で受け入れた戦後の日本社会では、憲法が権力の行使にとって多かれ少なかれ邪魔になるという緊張関係をつくり出し、維持することによって、いわばその基本法を確認し直してきた。
 日本の自衛隊は、国際法上はすでに軍として処遇されている。ただし、直接に戦闘行為をすることのない軍として、国際社会で受け入れられていることも確かなのである。
 戦前の大日本帝国は「満州事変」、「支那事変」、「大東亜戦争」を、15年にわたって遂行してきたが、それはすべて「自衛」の名におけるものであった。
 「決める政治」をひたすら求めていけば、憲法という存在そのものが邪魔になるのは道理である。
 憲法を改正するというのは、遠い話とか、毎日の生活とは無縁のことではない、このことがよく伝わってくる本でした。
(2013年6月刊。1500円+税)
 参院選の最終盤になって、自民党の「大勝」が予想されるなか、安倍首相が改めて憲法改正、9条改正を言い出しました。私は、これはひどい、政権党として姑息なやり方だと思います。憲法9条を変えて自衛隊を「国防軍」にしようというわけですが、それは単なる名称の変更ではありません。海外に戦争しに出かける軍隊をかかえたとき、日本社会がどう変わるのか、その点を安倍首相は自分の口から語るべきです。それも、選挙のはじめから・・・。土壇場になって「大勝」が決まってから言い出し、選挙後に、憲法改正を揚げて大勝したから国民の信を得たというのでは、国民を欺したことになると思います。
 いま、弁護士会は10月に、自民党の「国防軍」構想に反対するという決議をしようと論議し、準備しているところです。
 それはともかく、参院選の投票率が5割ほどと見込まれていますが、困ったことです。みんなが投票所に足を運ばないと、世の中は悪くなる一方です。あなたまかせではいけませんよね。

赤ペンチェック自民党憲法改正草案

カテゴリー:司法

著者  伊藤 真 、 出版  大月書店
自民党の憲法改正草案を紹介し、その問題点を分かりやすく解説している本です。カリスマ講師との定評ある著者の手になるだけあって、さすがにすっきり明快です。
憲法は強い立場の者から弱い立場の者を守る役割を果たすもの。
 そうなんですよね。取締役の年俸1億円なんていう大会社に支えられている自民党・安倍政権が言い出した憲法改正が、弱者救済を目ざしているなんて、とても考えられません。
 近代以降の憲法は、国家権力から国民の自由を守るためにつくられたもの。個人の尊重が国家の基本的な価値であることが中心で、それを実現するために立憲主義が採用された。立憲主義の考え方は、古代ギリシャ・ローマ時代にすでにあった。
 立憲主義は、国民の権利・自由を保障することを第一の目的として、権力者を拘束する原理である。だから、憲法には、必ず人権保障と、国家の権力を分ける権力分立(三権分立)の定めが必要になる。
 今の自衛隊を、自民党は「国防軍」に変えると言う。これは、単なる名称変更ではない。今の自衛隊は、たしかに装備や人員の点から戦力と言えるが、憲法9条2項のしばりがあるので、交戦権はない。つまり、敵国兵士を殺したり敵国の基地を破壊したりはできない。自民党の改正草案は、日本がアメリカと共に普通に戦争のできる国になりたいということ。日米同盟を強固なものとし、アメリカの従来からの要請に応えたいという自民党の思いを「改正憲法」に結実させたもの。
自民党の改正草案では、「個人として尊重される」とあるのを「人として尊重される」に変える。個人を人に言い換えることに、どれほどの意味(違い)があるのか・・・。個人として、一個独立の人格をもつ人間として尊重されなければならない。すなわち、まったく重要な点で変更されることになる。
 自民党草案には、新しい環境権なるものが取り入れられていることを積極的に評価する人に、本当にそうなのか、と鋭い問いかけがされています。
 肝心の環境権なるものは、国の努力義務でしかない。さらには、今や判例上も確立している環境権が、かえって後退してしまうことになりかねない。
 環境権やプライバシー権などは、現在も解釈・運用で使われているものです。
 自民党の改憲理由がきちんと紹介されたうえで、それが論破されています。ですから、読んで胸がすく思いがします。
 カラーを使った、見た目にもセンスのいい本です。とりわけ多くの若者に読まれることを願っています。
(2013年6月刊。1000円+税)
 東京で時間をつくってイギリス映画「アンコール」をみました。じんわりと心が温まる、いい映画でした。年金生活の男女が公民館に集まってコーラスを練習し、コンクールに出場するというストーリーです。歌声がすばらしいです。とくに主人公と、その奥さんがそれぞれソロで歌うシーンでは、歌声に聞きほれてしまいました。
 イギリス映画には、ときどきこのように庶民を主役にした、いい映画がありますよね。いま、福岡でも上映中です。おすすめします。

憲法がしゃべった

カテゴリー:司法

著者  木山 泰嗣 、 出版  すばる舎リンケージ
いやあ、これはよく出来たケンポーの本です。たくさんの本を書いている著者は、憲法についても、こんなファンタスティックな、おとぎ話のような本を書いていたのでした。すごいですね、すっかり感服しました。
安倍首相が、なにかというと憲法改正を唱んでいますし、自民党は古くさくなった憲法を変えようと叫んでいます。でも、憲法って何のためにあるのか、どんな役割をもっているのか、いま叫んでいる人たちは知っているのでしょうか・・・。
 この本は、憲法って何のためにあるのか、そんな役割をするものなのかを、本当に分かりやすく、問答式で解明してくれます。ヘタウマな絵(一見すると下手くそのように見えるけれど、本当は味わいのある上手な絵)が添えられていて、とても柔らかい雰囲気に包まれて展開していきます。
 憲法がしゃべった、世界一やさしい憲法の授業は、第1章、けんぽうって、なんだろう?から始まります。登場するキャラクターはライ男(お)とシマ男(お)、この二人が対話して進行していきます。そして、主人公はメガネをかけたけんぽうくんです。シマ男は、いつもライ男に食べられないか、おびえています。
 憲法というのは、国の基本的なルールなんだ。憲法は、日本の国民をしばるものではなくて、国民が自由になれるように、国の活動をしばっているんだ。
 鎖で拘束されるのは、国であって国民ではない。
 国の活動が、憲法のくさりで、グルグルに巻かれているっていうことなんだ。
居住・移転の自由が、どうして経済活動なのか?
 たとえば、そうだな、アイスクリームの話をしよう・・・。
 こんなふうに、とても具体的に、分かりやすく話が展開していきますので、飽きることがありません。楽しみながら憲法の本質がつかめるように工夫がこらされています。
 国民の三大義務。勤労の義務、教育の義務、納税の義務。
 勤労の義務といっても強制労働のことではない。教育の義務というのは、親が子どもに教育を受けさせる義務のこと。納税の義務は社会権と関係がある。国からいろいろしてもらうには、法律で決めた税金は納めてもらうということ。
 こんなに分かりやすい憲法の本も珍しいと思いました。
(2013年3月刊。1300円+税)

小さな達成感、大きな夢

カテゴリー:司法

著者  木山 泰嗣 、 出版  弘文堂
著者と私は、もちろん年齢はかなり違いますが、とても共通するところがあります。
 その第一は、多読だということです。著者は年間4000冊の本を読むそうですが、私は年に少なくとも500冊は読みます。最高は700冊を超えました。その大半は電車や飛行機に乗って移動中の読書の成果です。したがって、忙しければいそがしいほど、読んだ本も比例して増えます。じっと事務所にいて読書量が増えるということはありません。また、家庭では本を読むことも滅多にありません。家庭にいるときは、インプットではなく、アウトプット、つまりは発信するために書いているのです。
 第二には、著者はたくさん本を書いています。年に8冊の本を出したそうです。これはすごいと思いますが、今の私は真似したいとは思いません。いえ、決してジェラシーからではありません。私にとって、年に1冊の本が出せれば十分なのです。そして、本当に、それを目標として、実行してきました。著者でなくても編集でもかまいません。ともかく、本の出版にかかわれたらいいのです。
 第三に、著者は、他人(ひと)がやっていないことをやってみることにチャレンジしましたが、私もまさにそうでした。関東での3年間の弁護士生活のあと、Uターンして故郷に戻ったとき、新しい分野を切り開くことを決意して、弁護士会への転入申し込み書にそのように書き込みました。そのとき、私は28歳でした。それを実行するのに、私はこだわりました。人権擁護問題、消費者問題に取り組み、そのことで経営的にも安定したのでした。
 著者ほどの本は書いて出版していませんが、自費出版を含めると弁護士生活40年になる今日まで、毎年1冊以上は出版してきました。本当にありがたいことです。
著者は童話『憲法がしゃべった』(すばる社クンケージ)があるとのことです(まだ、読んでいません)。私は、童話ではなく、絵本を出版したことがあります。絵を描くのが好き(得意)な弁護士会職員との共作です。ちっとも売れませんでしたが、私にとっては、いい思い出になりました。
(2013年6月刊。1500円+税)

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