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カテゴリー: 司法

自民党憲法改正草案にダメ出しを食らわす!

カテゴリー:司法

著者  小林節・伊藤真 、 出版  合同出版
改憲派の小林節氏と護憲派の伊藤真氏。改憲には意見を異にする点もあるが、立憲主義を否定する自民党の改憲草案への批評では、意気投合!
このオビに欠かれた文章のとおり、不思議なほど、小林教授と伊藤弁護士は共鳴しあいます。まあ、それほど自民党の改憲草案はひどすぎるというわけです。
 問題は、この自民党の改憲草案のひどさが国民全体のものにまだなっていないところにあります。では、どこが、どんなにひどいのか・・・。
 自民党も、決して日本をダメにしようとか、悪い国にしようと思っているわけではないだろう。しかし、自分たちが考えているような、いい国をつくりたい。それに邪魔になるものは排除する。国民はそれに従わせようという感じがする。
 民主主義というよりエリート支配。ところが、実はエリートでも何でもない人が自分たちはエリートだと思い込み、自分たちがうまくやるから、みんな黙っていろと言っている。そんな感じを受ける。
 自民党の改憲草案の起草委員会のメンバーである片山さつきはツイッターで次のように言った。
 「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論はやめよう。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて、国を維持するには自分に何ができるかを、みなで考えるような前文にした」
 おそろしい発言だ(小林節)。別の自民党の議員は、日本の主権は国民ではなくて、歴史や伝統にあると言い切った。
 自民党の改憲派の議員は教養がないから、ほんとに自由だ。恥というものを知らない。自分にも弱さがあるし、間違いも犯すという発想がまったくない。
 自民党の改憲草案9条の2の第3項は、致命的にダメ。海外派兵の条件を法律(国会)にゆだねてしまっている。急ぐときには、国会の承認なしにも海外派兵するということ。
 軍隊は間違うことがないから大丈夫。自分たちは間違えないから大丈夫だ、という発想が自民党改憲草案にはある。
 人権は、誰かから与えられるものではなく、生まれながらにもっているもの。そして、国家権力と人権とは、どっちが上にあるか。人の権利が上にある。
 自民党の改憲草案の全文が現行憲法との対比で最後に紹介されています。ぜひ、比較対照してお読みください。日本の政権党である自民党のレベルの低さ、そして傲慢さがよく分かります。こんな憲法改正は絶対に許してはなりません。
(2013年3月刊。1300円+税)

法服の王国(上)

カテゴリー:司法

著者  黒木 亮 、 出版  産経新聞出版
久し振りに司法改革の前夜の暗黒面を生々しく思い起こしました。
 この本でははっきり書かれていませんが、私が司法修習生になったころ(40年前のことです)は、合格者の身辺を公安調査庁の調査官が聞き込みに動きました。前職のある人は、その勤め先、私のような学生上がりだと下宿先の大家さんをふくめて周辺を訊いて回るのです。狙いは、要するに思想チェックです。合格者は500人ほどでしたので、やろうと思えばやれたわけです。そして、その調査結果は研修所の裁判教官にそれとなく伝えられていたようなのです。任官をすすめるかどうかという点で教官の心覚えに欠かせない資料となっていました。この点は、私自身が体験したことです。任官志望など、考えてもいませんでしたから、差別されたなんて思いませんでしたが、ああ、ここまでやっているのかと思いました。私は、学生運動していたわけではありません(少なくとも、本人は・・・)。ただ、セツルメントという学生サークルに所属していたというだけです。それでも、当時、有名だった三菱樹脂事件の高野さんが大学生協の活動家だったことで採用拒否されたのと重ねあわせて考えていました。
 この本では、そんな私より4年も前の修習22期生で裁判官になった人たちの人生が語られてスタートします。
 青法協(青年法律家協会)の活動が盛んでしたから、元気なモノ言う修習生があふれるようにいた時代です。22期生だとクラスの過半数が青法協の会員だったと聞いています。私のときでも、3分の1は会員でした。ですから、活動はいつだって、おおっぴらにやっていました。クラス毎の新聞も日刊のように発行していました。まだガリ版印刷でした。私もガリ切りしていました。セツルメント活動で日常的にやっていましたので、日刊のクラス通信なんて、軽いものです。2年間、それなりの給料をもらって勉強だけしていればいいのですから、こんなに幸せな環境はありません。私が国選刑事弁護を今もいとわずにやっているのは、若いころに税金で勉強させてもらった恩返しと思っているからです。今のように貸与制だと、そうはいかないでしょうね。
 立法府(国会)にケチくさい、自分のことしか考えない議員が増えたことによる重大な誤りが、ここにもあります。
 主人公の一人、裁判官なる村木は、憲法の精神を護るという使命感に燃えて修習生になったから、すぐに青年法律家協会に加入し、勉強会などに積極的に参加した。
 私も青法協の活動には積極的に参加しました。富士山の裾野に自衛隊の演習場があります。忍野(おしの)村です。逆さ富士でも有名な絶景の地です。そこで、自衛隊が実弾演習するというのです。先日、富士山は世界遺産に登録されましたが、その裾野では、日米両軍が実弾射撃を今もしています。そんなキナ臭い場所に使うなんて、即刻、辞めてほしいと思いますが、マスコミは口をつぐんで報道しません。
青法協主宰の勉強会といえば、四日市大気汚染公害判決が出たばかりでしたので、当時はまだ現職裁判官だった江田五月・元参議院議長を講師として招いたものもありました。
 元気のいいモノ言う裁判官も多かったので、大阪地裁では裁判官会議が実質的な議論をしていて、いろんなことが裁決で決められていました。上意下達の場ではなかったのです。しかし、そこに弾圧の手が及んできます。それに反抗する裁判官は、人事異動で地方(支部)へはじき飛ばされてしまうのです。逆にいうと、支部に気骨のある裁判官がいるようになりました。
 昭和40年(1971年)3月、宮本康昭裁判官(13期)が再任を拒否され、23期の阪口徳雄修習生が修習終了式を騒がしたとして罷免された。いずれも石田和外長官のときのこと。自民党タカ派の言いなりに最高裁は動いていました。
 明るく、自由闊達な裁判所の雰囲気が暗転しました。配達証明つきで退会届を青法協に送ってくる裁判官が続出したのでした。少し前の町田顕・最高裁判官もその一人でした。
 この本は、「小説・裁判官」となっていますので、主人公などは仮名ですが、もはや歴史上の人物は実名で登場しますので、その生々しさは言うことありません。下巻が楽しみです。
(2013年7月刊。1800円+税)

漫画裁判傍聴記

カテゴリー:司法

著者  岡本まーこ・にしかわたく 、 出版  かもがわ出版
法廷ライター、まーこは見た!
 こんなサブ・タイトルのついたシリアスなマンガ本です。
 いえいえ、マンガ本だからといってバカにはできません。写真撮影が禁止されている法廷の状況をリアルに再現してくれています。そして、実際に傍聴した裁判を通じて、この世(社会)の不条理さを著者の「まーこ」は痛感するのです。弁護士生活40年になる私も、まったく同感だと深々とうなずきました。裁判傍聴を始めて3年、この本が2冊目のようです。
 悪逆非道のレイプ魔裁判を傍聴します。もちろん、強姦犯人なんて許せません。私も同じです。ところが、裁かれる被告人は、「どこにもいそうな、冴えない42歳」の男性。
 レイプに興味をもったのは、「男らしくありたかったから」。男として、女性に対して性的に満足させる自信がもてなかった。それで、レイプというシチュエーションなら、「相手にどう思われるか」を気にせずすむんじゃないかと思ったという。被告人に対する判決は懲役13年。「妥当なところ」。
「男らしく」「女らしく」と「性」にとらわれる「男をこじらせた男」「女をこじらせた女」が少なくない。犯罪をおかす人間と、犯さない人間。その境界線は思いのほかあいまいなのではないか・・・。
 そうなんです。私は、最後の一文にとても共感を覚えました。だから、悪いことをしたやつは死刑か社会から隔離すればいい、という短絡的としか思えない世間の反応にはすごく抵抗があります。
めったにありませんが、たまに状況証拠からみて有罪間違いなしなのに、被告人が否認し、弁護人にも否認の弁論を求める人がいます。そんなとき、弁護人として悩むのか・・・。
 いえ、私はまったく悩みません。被告人の求めるとおり無罪弁論をします。検察官の主張する事実と論理に、どこか穴が開いていないか、記録を精査して弁論を組み立てます。そして、もちろん、そんなケースでは必ず有罪になります。私は、一審弁護人として最善を尽くし、次の二審弁護人に引き継ぐだけです。
 弁護人は、被告人の「最良の友」として、その言いたいことを最大限に主張し、弁論するのが憲法上の役目なのです。ですから、場合によっては矛盾だらけの主張(弁論)をすることも当然あります。マスコミなどから、何も分かっていない弁護人だと叩かれても仕方がありません。弁護人が第二の検察官となって被告人を指弾するようなことがあってはならないのです。
 オビにある次の文句に座布団一枚あげたい心境です。
芝居のようであり、格闘技のようであり、でも、どんな舞台よりもリアル。これが興奮しないわけがない。
 さあ、あなたも一度裁判傍聴してみてください。きっと得られるものがありますよ。
(2013年7月刊。1600円+税)
 日曜日の夕方、猛暑が少しやわらいだのをみはからって久しぶりに庭に出ました。
 ブルーベリーの実がなっていました。早速、食後のデザートにいただきました。店頭に並んでいるのより少しだけ小粒ですが、味の方は負けません。
 庭の伸び放題の草花を刈り取って、すっきりさっぱりさせました。今年はあまりの暑さにヒマワリ畑にはなりませんでした。
 意外なことに、今ごろ赤いクレマチスの花が咲いて咲いていました。
 もう少し暑さがやわらがないと、ガーデニングは無理ですよね。水分補給しながらの作業でした。

正義のセ(その1)

カテゴリー:司法

著者  阿川 佐和子 、 出版  角川書店
豆腐屋の娘、25歳・独身が検察官になった・・・。
 あのアガワの小説です。しかも、独身女性検事が主人公とあっては、読まないわけにはいきません。
 私はじつは、アガワのエッセイをいくつも読んでいますが、小説は初めてでした。「ウメ子」とか、いろいろ賞をとった小説があることも初めて知りました。
アガワのお父さんの本はいつも驚嘆しながら読んでいましたが、司法界に挑戦するアガワの小説はどれほどのものなのか、まずはお手並み拝見、というくらいの軽い気持ちで読みはじめたのでした。ところが、意外や意外(実は、小説だから当然のことです・・・)、とてもすんなり感情移入して読みやすいのです。またたくまに、主人公の独身女性検事に、「そんなことをしてはいけないだろう」というツッコミをいれながら、読みふけっている自分を発見してしまったのでした・・・。
検察官ですから、コロシもありますし、取調べにおける「犯人」(被疑者)との微妙な駆け引きも求められます。
 ところが、デビュタン(初心者)は、ベテランにもがわれる(可愛がられる)のです。これはどこの世界でも同じですよね。
 取調べのとき、被疑者にからかわれ、憤然として怒鳴りちらし、泣き叫んでしまう主人公に、つい同情してしまいます。実際のところは知りませんが、ありそうな展開です。
 まだ1巻を読んだだけですが、次なる展開が待ち遠しい第一巻ではありました。
(2013年2月刊。1200円+税)

中高生のための憲法教室

カテゴリー:司法

著者  伊藤 真 、 出版  岩波ジュニア新書
『世界』に2004年4月号から2008年3月号まで連載していたのを本にまとめたものです。今から4年前の2009年1月発刊ですから、少しだけ状況が変わっていますが、本質的なところではまったく変わりありません。その後、2012年4月に発表された自民党改憲草案の怖さを知るうえでも、とても役に立つ、とても分かりやすい憲法解説書です。ちなみに、『ジュニア新書』は、今のわたしの愛読書シリーズでもあります。
 本当に、たくさんの中学生や高校生に読んでもらいたいと思いました。
 何のために勉強するのか?
勉強すると、多くの知識を身につけることができる。歴史を勉強するときに、憲法に関連させて勉強してほしい。憲法を勉強してみて、歴史の重要性と歴史を勉強することの意味がはじめて分かる。
 歴史を学ぶと、「人は過去の歴史を変えることはできないけれど、その歴史の意味を変えることはできる」ことが分かる。
 日本が侵略戦争を否定しようとしても、その事実を変えることはできない。しかし、過去の歴史に真正面から向きあって、その事実を認め、心から謝罪をし、必要なら賠償もすることで、過去の歴史を将来に向かって、よりよい関係を築いていくための足がかりに変えることはできる。
 過去の過ちを認めることには勇気がいる。しかし、勇気をもって過去を認め、新たな正しい道を歩み出すのは、正しい生き方である。
 憲法の前文と9条に定める平和活動はリスク(危険)をともなう。しかし、一定のリスクを背負いながらも非暴力によって、平和づくりの活動を積極的にしていこうというのだ。これは、人類の壮大な実権のようなもの。誰もやったことのないことに日本は挑戦している。だからこそ、日本は国際社会において「名誉ある地位を占める」ことができる。
 今の世界の状況で現実に勝つ見込みをもって日本に攻めてくる国があるだろうか・・・。冷静に考えてみる必要がある。勝手な思い込みから、うろたえて下手な行動をとることは、かえって危機管理にとって、マイナスになる。危機管理の基本はリスクを回避すること。
 軍事力に頼って反撃しても、どのあと日本人の被害がさらに拡大するだけ。戦争以外の方法で問題を解決する道を必死で求めなければ、国民がより不幸になるだけ。
 「戦力によらなくても外交力によって自衛はできる」という考えを推し進め、より外交・交渉力を高める方が、日本の国民を守ることにつながる。
 人権とは、人として正しいことを主張しつづけること。日本国憲法のもつ、西欧近代憲法とか異なる独自性は、平和的生存権を保障し(前文)、積極的非暴力平和主義(前文と9条)を採用している点にある。
 そもそも、国家の役割は国民の生命と財産を守ることにある。日本国憲法は、軍事力という暴力ではなく、外交や非軍事の国際貢献などの、理性にもとづく非暴力の手段によって国民を守ることにした。
 そもそも憲法とは、国家権力を制限し、国民の人権を守るもの。つまり、権力者に歯止めをかけるためのもの。だから、権力者が押しつけられたと感じるのは、むしろ当然のこと。
 憲法とは何かを基本にかえって考えさせてくれる本です。
(2009年1月刊。780円+税)

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