法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 司法

夢をかなえる読書術

カテゴリー:司法

著者   間川 清 、 出版   フォレスト出版
 本を読むと売り上げが伸びるという、まさかを語る弁護士の本です。
 私よりも30歳も若い埼玉の弁護士ですが、なんと弁護士13人、事務職員11人という法律事務所のボスだというのです。信じられません。よほど経営の才覚(マネジメント能力)があるのでしょうね。
 本を読むと売り上げが伸びるかどうかはともかくとして、「夢」をかなえてくれるというのは、そう信じたい気分をふくめて同感です。
 ライバルが本を読まないのは、とてもチャンスなのだ。読んだ人は、それだけで読んでいない多くの人に差をつけることができる。
 読書嫌いの人を見て、なぜ本を読まないのかと気に病む必要はない。それよりどんどん本を読んで、最大の成功を手に入れ、周りの人を置き去りにしたらよい。
 人は本を読まない現実があり、本を読んだ人は成功する事実がある。これは、歴史が証明している。
私が「成功した」といえるかどうかはともかくとして、たくさんの本を読んで、日々充実した生活を送っていると確信を持って言うことは出来ます。
 人は本を読まない。そして、読んだとしても、その内容を実行に移さない。
 年収の高い人ほど、書籍や雑誌の購入費が高い。本や雑誌を読む人ほど、年収が高い。本を読む量とその人の年収は比例する関係にある。
 はてさて、これは本当でしょうか・・・。あまり信用できませんよ。
 本は全ページをめくって、一応は目を通して読んだことにして、自分を納得させる。自分にとって本当に役に立つことが書いていれば、1秒見るだけでも目にとまるので、情報の取りこぼしがなくなる。
 これは、私も実行しているやり方です。脳が自動的に読み分けてくれるのです。
人間の脳は、自分にとって重要なこと、探し求めていることについて、自動的に意識を集中させ、うまくその情報を収集することができるという優れた機能をもっている。
 脳の性能は、自分が思っているより、はるかに素晴らしいので、自分にとって明確化された重要な情報をシャットアウトすることのほうが難しい。本は読みとばしていいということに気がつくと、読書量が一気に増える。
 ここに書かれていることはまさしく、そのとおりです。読みとばしていても、自然に目の動きがゆっくりになるところが出てくるのです。
 著者は1日1冊の本を読むということです。私は年間500冊、そして、1日1冊の書評をかくのを10年以上にわたって続けています。それが楽しいからです。これは自己表現であり、充実した一瞬だからです。
(2012年3月刊。1400円+税)

法律相談のための英語ノート

カテゴリー:司法

著者   宇都宮 英人 、 出版   林田印刷
 すごいです。本職は弁護士なのに、子どもたちに空手を教え、さらには英語にも中国語にも堪能なのです。3年前に『法律相談のための中国語ノート』を刊行していますが、今回は英語ノートです。昨年、『空手と護身の英語ノート』を出していますので、英語ノートとしては第2弾になります。
 子どもたちに英語を教えるほうでも、その成果が本にまとまっています。8年前の『体と心を鍛える日の里空手スクールの実践から』(海鳥社)と、3年前に出たそのパートⅡです。
 著者の空手は、さすがに京大空手部の主将だったというだけに、何も分からない素人の私が見ても、いかにもぴしっと型が決まっています。決して一朝一夕にはできない体型です。
 この英語ノートは、とても実践的な内容です。弁護士が法律相談を受けて直面するだろうという質問を英語で回答するとこうなるというものです。
 たとえば、近所にいる80歳の一人暮らしのお年寄りが訪問販売からいろいろ物を買わされているようだが、という質問があります。民生委員を利用するとか成年後見申立をするというのがその回答になっています。まったくシステムの異なる国から日本に来て働いている人にとって、日本のシステムはとても複雑で分かりにくいと思います。
 解雇など労働契約が解除されたときにともなう質問に対しては、労働審判制度が説明されています。
具体的な質疑応答のほか、ボキャブラリーということで司法の専門用語についての英訳もあります。これで助かる人も多いと思います。
 著者の引き続きのご活躍を期待します。
(2012年3月刊。1600円+税)

全盲の僕が弁護士になった理由

カテゴリー:司法

著者   大胡田  誠、 出版   日経BP社
 先天性の緑内障のため、12歳のときに両目の視力を完全に失い、全盲となったにもかかわらず、日本で3人目に司法試験に合格し、今、東京で弁護士として元気に活躍している人の体験記です。読むと元気が出てきます。
 サブタイトルは、あきらめない心の鍛え方となっていますが、まさにぴったりです。
 見えない目で、しっかり相手の目を見て、とことん話を聞く。それが信頼関係を築く第一歩だ。なるほど、です。すごいですよね。見えない目で、しっかり相手の目を見るなんて・・・・。
 そして、奥さんも全盲です。こちらは未熟児網膜症のため、生まれたときから目が見えません。そんな夫婦ですが、1歳の子ども(娘)さんがいます。子育てにも夫婦でがんばっているのです。
 弁護士の仕事は、相手の心を知るところから始まる。口は目ほどにものを言う。声は正直なもの。言葉は選べても、息づかいや抑揚、間のとり方まで装うのは意外に難しい。
 衣ずれや足音や、声以外の音も重要な手がかりとなる、不安やいら立ちが表れる。匂いもその人を物語る。
見えないことはハンディだけれど、だからこそできる仕事もある。見えなくても、きちんと相手の目を見ているつもりで顔を向けて、低く落ち着いたトーンでゆっくりと話す。
 証人尋問では、見えないからこそ有利な面もある。相手の方の証人が、弁護士に言わされているのではなく、自分の意思で自信をもって証言しているかどうか、注意深く観察する。法廷での声の響き方によって、うつむきがちで発言しているか、左右をキョロキョロうかがいながら話しているかも分かる。
 ところで、全国に30万人いる視覚障がい者のうち、点字を満足に読み書きできるのは、1割。大人になってから視力を失った中途視覚障がい者には、点字をまったく読めない人も多い。何歳から点字を覚え始めたかで、読める速さはまったく異なる。
 なーるほど、それはそうでしょうね。
そして、点字を読むのが遅い著者は司法試験を耳で受験したのでした。それにしても、4日間、トータルで36時間30分という長丁場の受験に耐え抜いて合格したなんて、すごいですね。
 試験会場には著者1人に、試験管3人が監督していたというのでした。
 すごいな、すごいなと思いつつ、自然に元気の湧いてくる本です。
(2012年3月刊。1500円+税)

法廷弁護士

カテゴリー:司法

著者  徏木  信  、 出版   日本評論社
 いい本でした。なにより、弁護士にとって大切なことが盛りだくさんで、弁護士になって
40年近い私も、必死で読みすすめました。著者は私よりひとまわり年下の大阪生まれの弁護士です。初めて小説に挑戦したようですが、その割には、本当によく描けていました。
弁護士の苦労もさることながら、少年(ここでは少女のことを指します)の立ち直りがいかに至難なものであるか、実感をもって描かれていて、さもありなん、そうだよね、と思いながら読みすすめていきました。
 手間を惜しんではいけない。手間をかければかけるほど、事件の理解は深くなる。事件の理解が深まれば深まるほど、仕事のモチベーションは高まり、さらに事件の理解が深まる。事実の理解の深さは、そのまま事件の成果の大小に直結する。
 これまで司法試験の受験生として解いてきた問題は、すべて正解のあるものだろう。でも、実務は違う。実務は正解のない世界なんだ。だから、自分の考える答えが正解であると、相手方、裁判所を説得する仕事が弁護士の仕事なんだ。借り物ではなく、自分の価値判断と論理構成を信じること、それが正しいと分かってもらうために努力することなんだ。
 顧問先をもたないことの意義は何か。いったん顧問契約を結んでしまえば、弁護士はもはやクライアント(依頼者)から自由・独立の立場でいることは難しくなる。しかし、事件を受任するかしないかの自由を、そのつど留保しておきたい。
 依頼者にも、事件を誰に委任するかしないの自由が、そのつど保障されるべきだ。いつでも、どちらからでも関係をつくることも、関係を切ることもできる。そんな緊張感が、ぼくとクライアントの健全な関係を形成する。
 安定が手にはいってしまうと、努力しなくなる。依頼者がワラにもすがる思いで事件を依頼しているのに、弁護士の方はぬくぬくと安全なところにいるのでは、その温度差が大きすぎる。不労所得で食べていこうとする保守的な姿勢で、人のケンカを引き受けて勝てるのか。不安定な状況におかれた方がすっと努力するし、その分成長する。太った家畜でいるより、腹をすかせたライオンでいる方を選ぶ。
うむむ、これは、なかなか難しい指摘です。
 私自身は狭い地域で弁護士活動をしていますので、商売上、顧問先を断ることにしています。この断る理由には、かなりの違いがあります。
 もともと感動的な事件があるというわけではない。どんな事件でも、その事件を扱う弁護士によってつまらなくもなり、感動的なものにもなる。だから、どうすれば感動的な事件になるのか、それを常に考えて事件に取り組むべきだ。
 即時起案。よほど難しい書面でない限り、相談中に書面を起案する。依頼者の面前で即時に書面を起案するほうが、きちんと確認しながら完成させられる。そして、書面は正確かつ臨場感あふれたものになる。目の前で自分の思いが文書化されていく。このことは、自分の考えや気持ちを依頼者が整理するのに役立つ。頼んだ弁護士が自分の話をきちんと受け止めてくれている。このことを実感できる。即時起案の過程は、胸のつかえが溶けていく。加えて、即時起案は依頼者が紛争解決過程に積極的に参加する過程でもある。この過程をたどることで、紛争解決のときの依頼者の達成感や満足感は、より大きくなる。弁護士の力をかりながらも、自分自身の力で、紛争を解決したという実感を味わうことが新たなスタートを切るうえで、大きなエネルギー源となる。
 タイミングは、とても大切なんだ。直ちに、その場で仕事を終えること。それを心がけるようにしないと、どんどんしなければいけないことが積み重なってしまう。
 弁護士も、もっとも必要とされる能力は勝つ能力だ。弁護士は勝たなければならない。勝つことが求められている。依頼者は勝つことに期待して高額な弁護士報酬を支払っている。負けることは許されない。依頼者は、自分では戦っても勝てない相手だったので、自分の代わりに相手とたたかって勝ってほしいとお金を支払って頼んだ。
 説得力、交渉能力、書面作成、能力、事務処理能力、そして尋問能力は、すべて戦いに勝つという最終目標に至る手段としての技術であって、それ自体が目的ではない。手段としての技術レベルがたとえ高くても、目的である勝利が得られなければ、無意味・無駄ということになる。
 ええっ、これって、私には大きな違和感が残りました。なんでも依頼者が勝てばいいというものじゃありませんよね。
正義・公平・原理原則・良心。こちらの主張が、これらの要件をみたしていることが交渉に勝つために必要なこと。そして、交渉には真実性が伴わなければならない。小手先だけの姑息な手段には一切頼らず、正攻法で真正面から突破することだ。
 依頼者の希望・要望を実現することが、その基本的な人権を擁護することになるのか、そして社会正義を実現することになるのか、それを判断することが弁護士には求められている。
 弁護士は借りものではない自分の体験から、豊かに相手方と裁判所の良心に訴えかけることができる。
わずか186頁という薄っぺらな本ですが、私にとってはずっしり重たい本でした。若手弁護士にとっては必読の書だと思います。それだけでなく、司法界に関心ある人には、強く一読をおすすめします。
 
(2012年3月刊。1500円+税)

3.11と憲法

カテゴリー:司法

著者   森 秀樹・白藤 博行ほか 、 出版   日本評論社
 3.11を契機に、改憲派は、「このような緊急事態・非常事態に対応できない日本国憲法は改正しなければならない」と主張しはじめています。こんな火事場泥棒のような主張がサンケイ新聞の社説(3月22日)にあらわれていて驚くばかりです。
 3.11のあと、福島県民の気持ちは複雑に揺れ動いている。
 放射能の危険については、もう聞きたくないという人々がいる。いつまでも放射能の危険性を口にする人は、神経質な人、うとましい人となっている。それも、政府が大丈夫だと言っているからだ。子どもの疎開についても、もうそんなことは言ってくれるなと耳をふさいでしまう人もいる。ここらあたりは本当に悩ましい現実ですよね。
大災害の発生を奇貨として非常事態規定の欠如をあげつらい、憲法改正を声高に主張する国会議員がいる。彼らは国民の権利を制限することを狙っている。
 「自衛隊は軍隊ではない」という建前(政府解釈)は、結果的に「国民を守る」という面をより前に押し出している。自衛隊では国民に銃を向ける治安出動訓練はほとんどなくなり、災害への日常的態勢が強化されている。
 ところが、「軍」の本質は国家を守ることにあり、個々の国民を守ることではない。自衛隊は、「軍」となるのか、「軍隊ではない」という方向にすすむのか、今、大きな岐路に立たされているように私も思います。
 原発をめぐる裁判について、原発差止を認容する判決を書いたことのある元裁判官の次のような指摘は貴重です。
裁判所が判断するのは、その原発において過酷事態が発生する具体的危険があるか否かであって、原発の存置いかんという政策の相当性について判断するわけではない。差止判決は、十分な安全対策をとらないで原発を運転することを禁止しているのであって、およそその原発を運転することを禁止しているのではない。まるで、裁判官が一国の重要な政策を決するかのような言い方をして裁判官に不必要な精神的負担を与えるべきではない。なーるほど、そうなんですか。でも、ある程度は言わざるをえませんよね、どうしても・・・。
 憲法学の学者を中心とした論稿で、大変勉強になりました。
(2012年3月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.