法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 人間

ボケたって、いいじゃない

カテゴリー:人間

著者   関口 祐加 、 出版  飛鳥新社
とても新鮮で、かつ、ショッキングな本でした。
 まず第一に、アルツハイマーになった実母の病態を実の娘が映像で記録して、映画館で上映される映画として完成させたということです。これって、本当にすごいことですよね。日頃から、親子のあいだで一定の距離感覚がなければ、とても考えつかないし、実行できなかったことでしょうね。
 第二に、自分のことが映画になったことを知ったアルツハイマーの母親の反応が衝撃的です。母親が何と言ったと思いますか・・・?
 「テレビに出ていたって、あんた、有名なの?」
 「なんか、わたすも一緒に出ているらしいんだよ」
 「へえ、ま、せいぜいあたすのネタで稼いでちょうだい」
 娘が自分のボケをネタに映画をとっていて、それで有名になってお金を稼いでいるのをアルツハイマーの母親が理解して、それを許し、娘とともに笑うのです。これって、すごいことですよね。とても信じられません。
 第三に、アルツハイマー病にかかるとは、どういうことかを知りました。
アルツハイマー病になると、その人の脳の働きが全部ダメになってしまうと思われがち。しかし、初期から中等度では、脳の働きが悪くなっているのは5%以下だけ。物忘れや判断など、ほんの一部だけ。残りの95%以上は正常な脳の働きができる。そこで喜んだり、戸惑ったり、怒ったりする。そこを忘れてしまうと正しいアプローチはできない。
 なーるほど、これは目からウロコが落ちた気がしました。
 アルツハイマーの初期は、本人もいったい何が起こっているのかが分からず、怖がっているのがヒシヒシと伝わってくる。一番怖いのは、本人なんだ・・・。自分が忘れてしまっていること、分からなくなってしまっていることは、本人も家族も認めたくない。認めるのが怖い。できないことを知られたくない。分からなくなることが怖いという思いが、外出から遠のかせている。
 一見すると明るい感じというのは、典型的なアルツハイマーの所見だ。そして、数字に強い。計算問題はできることが多い。
 そして、いままで抑えられていた喜怒哀楽が、認知症によってストレートに出るようになる。しつこくふつふつと胸の中でくすぶって消えなかった火種が、ついに発火した。ようやく認知症の力を借りて表に出てきた。本当は、母親は料理も商売も風呂も嫌いだった。ガリ勉で友だちもいなかった。そんな自分を押し殺して、隠して、一生けん命に生きてきた。それは認知症によって解放され、いいたいことを言い、やりたいことしかやらなくなった。
「うっせえなー!」は自由人になれた証拠なのである。
介護をしている人に一番必要なのは、精神の健全だと考える。たとえば、自分の好きな仕事や趣味を続けているとか、自分の時間をもつことがとても大切だ。そして、何よりも感受性を磨くこと、みずみずしい感受性と好奇心を保つこと。
 老化現象とは、イマジネーションがなくなっていくこと。
 すばらしい本です。あなたに一読を強くおすすめします。読んで損することは絶対にありません。だって、あなたも私も、いつかは到来する可能性のある身なのですから・・・。
(2013年6月刊。1333円+税)

赤ちゃん学を学ぶ人のために

カテゴリー:人間

著者 小西 行郎・遠藤 利彦 、 出版  世界思想社
ヒトの赤ちゃんを知るということは、人間を知るということです。
 赤ちゃんは、自ら動くことによって他者や周囲の環境を認知する。
 赤ちゃんの脳は、ムダなシナプスをバランスよく削りながら、成長する。このコンセプトは、何でもかんでも刺激すればするほど、脳は成長するという従来からあった考え方に警鐘を鳴らすものだ。
 赤ちゃん学のもっとも大きな成果は、まったく無力だと思われていた胎児期から新生児期(生後1ヶ月まで)・乳児期(生後1年まで)の赤ちゃんに、きわめてすぐれた能力があることを発見したことにある。
超音波によって、胎児が笑っているような表情を示していることが明らかになった。これは、生まれてきたときに親に愛情を喚起するための方法を準備している証拠ではないかと考えられている。
 新生児微笑というのは、皆さん、私を可愛がってね、というメッセージだそうです。なんと、それを胎児の段階から準備していたというのです。驚きました・・・。
 胎児の睡眠にも、レム睡眠、ノンレム睡眠がすでにある。視聴覚、味覚そして触覚は胎児期にすでに機能している。つまり、胎児は、音を弁別し、母親の声を学習している。赤ちゃんは「白紙の状態で生まれる」わけではない。
 赤ちゃん学の進歩は、何でもできない赤ちゃんという固定概念崩しただけでなく、むしろ大人(親)は、赤ちゃんによって育児されているのではないかという側面を明らかにした。
 赤ちゃんは、生後すぐに目にした母親の顔を記憶して、他人の顔と見分ける能力をもっているようだ。6ヶ月の赤ちゃんは、ヒトの顔でもサルの顔でも見分けることができる。
 赤ちゃんが人見知りするというのは、顔を見分ける能力が身についた証拠だ。
赤ちゃんは、生後すぐに自発的な微笑を示す。そして、生後6~7週間たつと、赤ちゃんは社会的な微笑をあらわす。
 赤ちゃんは、眠っているあいだに身体の中で、あちこちでいろんな活動をすすめている。全身の細胞が点検され、修理され、新しくつくられている。寝る子は育つ。このたとえのように、ぐっすり眠っている間に、成長ホルモンがまとめて分泌されるからである。
 赤ちゃん学の参考文献がたくさん紹介されています。
 人間の不思議さを究明したい人にとって、よい手引き書となっています。
(2012年10月刊。2400円+税)

激走!日本アルプス大縦断

カテゴリー:人間

著者  NHKスペシャル取材班 、 出版  集英社
日本海側から日本アルプスの山々を8日間で踏破して太平洋側の静岡に至る、そんな過酷なレースが誌上で生々しく再現されています。読んでいるほうが息が詰まりそうです。
 NHKスペシャルで放映されて大反響を呼んだとのことですが、例によってテレビを見ない私は、そんな山岳レースがあるなんて、まったく知りませんでした。同行取材みたいにしてカメラマンがランナーを追いかけるのです。すごい話でした。
 2012年8月12日午前0時から8日間にわたる山岳レース。富山湾からスタートし、北、中央、南と続く日本アルプスを縦走し、駿河湾に至る415キロを8日以内に走りきる。剱(つるぎ)岳、立山、槍(やり)ヶ岳、木曽駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、聖(ひじり)岳といった3000メートル級の名峰を次々に制覇し、尾根筋を昼も夜も進み続ける。上り下りする累積標高差は2万7000メートル。これは富士山の登山7回分に相当する。
 このレースには賞金も賞品も一切ない。今回、6回目のレースには28人(うち女性1人)が挑戦した。平均年齢40歳。
 レースの主宰者は、選手に対して徹底した自己責任での挑戦であってほしい、誰にも迷惑をかけないことが最低条件だと強調する。
 選手は、ギリギリまで荷物を軽量化する。平均4.5キロ。簡易テント(ツェッルト)は重さ200グラム。
 主なルールとして、山小屋・旅館に宿泊できない。他者の差し入れを受けてはいけない。伴走は禁止。
問われるのは、走力、ビバーク技術、読図力、危険予測回避力。要は、山の技術力が求められる。過激な天候変化や何らかの事故発生時に迅速に対応できる能力。
30の地点が必ず通過しなければならないチェックポイントとして定められている。そこ以外はどこを走っても自由である。
 新田次郎の『剱岳・点の記』で有名な剱岳に、今や選手は麓から山頂まで6時間で登りつめる。な、ななんと・・・、すごーい。
 山岳レースでは食べられるときに食べるのが鉄則。ハンガーノック状態を避けるため。筋肉や肝臓に蓄えられている糖質が使い果たされ、体を動かすためのエネルギー源が失われてしまい、筋肉が動かなくなる。あるいは、脳に栄養が行き渡らなくなって物事を考えられなくなる、極度の低血糖状態、それが人間のガス欠状態ともいえるハンガーノックだ。
 早くエネルギーに変わる食品として、パン、もち、レーズン、はちみつ、せんべいなど。
 3時間の睡眠が不可欠。ところが1日わずか2時間ほどの睡眠でひたすら走っていく。
リタイアする勇気は、選手にもっとも求められる資質の一つだ。
低温症の要因は、低温、濡れ、風である。低温の空気がそのまま内臓器にはいると、体温低下を誘発する。
雨の中を進むときには、レインウェアの洗濯もさることながら、動き続けることが何よりも大切なこと。止まれば一気に身体が冷える。身体のもつ限り歩けばいい。あとは、眠気との戦いだ。
足の裏にできるマメとは、医学的に皮膚の摩擦や衝撃などの力が加わり続けることで表皮と真皮が引きはがされ、その間に滲出液がたまってできた水泡のこと。サイズのあった靴を選び、靴下をこまめに交換し、足をふやけさせずに乾燥した状態を長く保つようにする。
 エチオピアの有名なマラソン選手であるアベベの足は、とても柔らかかった。ゴムのような弾力をもち、地面との接触面が柔軟に伸び縮みした。その結果、衝撃が吸収され、まめが生じず、ケガもしにくい足だった。
 人間が熟睡できるのは31度。人は食後に体温が上がる。その体温が下がり始めることに眠くなる。
 幻想は不眠症の症状の一つとしてよく出てくる。脳の睡眠が十分にとられていないとき、幻覚は出やすくなる。さらに、糖分不足も幻覚を引きおこす要因となる。
なんともすさまじい山岳レースの記録でした。私自身は、ちっともしてみようとは思いませんが、こんな過酷な山岳レースに挑戦できる体力と知力を備えた人をうらやましくは思います。
(2013年4月刊。1500円+税)

卵子老化の真実

カテゴリー:人間

著者  河合 蘭 、 出版  文春新書
世の中のことについて、本当に知らないことが、こんなにたくさんあるんだってことを実感させてくれる本でした。
 だって、卵子って、女性がまだ胎児のときに700万個つくられて、あとは生まれてから大人になるまで減る一方だ、なんてまったく知りませんでした。ウソでしょ、そんなことが・・・、っていう思いです。
卵子をつくる卵祖細胞は、一気に一生分の卵子をつくりあげて、いなくなってしまう。女性が女の子として初潮を迎えるときには、すでに20万個に減っている。
 卵巣は、何十年も前につくられた卵を大切に寝かせていて、少しずつ起こしてつかっている。卵巣に眠っている卵子は「原始卵胞」といって、とても小さな卵胞。それが間断なく起きてきて、若い人なら1日平均30~40個、つまり月に1000個くらいは新たな原始卵胞が起きて育ちはじめる。
 小さな小さな卵子は、そのほとんどが消えてしまうが、ごく一部のものが生き続ける。3ヶ月目に入るころ、残った1%の卵子のなかから、いよいよ排卵するたった1個の卵子が決まる。一つの卵子が決まると、他の卵子は、すべてしぼんで消えてしまう。
 老化のすすんだ卵子は、数が減るだけでなく、質も低下する。
 卵子は老化すると、減数分裂が苦手となり、若い人より繁繁に、染色体の数が22本とか24本の卵子ができてしまう。
 いま、初めて出産する女性の平均年齢は30.1歳。35歳以上の高齢出産で生まれる子の割合は全国では4人に1人、東京では3人に1人となっている。
 女性の妊娠する力「妊孕(にんよう)」性」は、若いころから下がりはじめる。外見が変わっても、人の卵巣は何も変わらない。
 一度も生まないで年齢を重ねていくと、女性の生殖機能は意外なほど早く弱くなってしまう。
 江戸時代の「おしとね下がり」は30歳、それと同じ年齢が現在では、初産年齢になっている。30代も後半になると、卵巣のなかでは、卵子の老化がどんどん進行している。妊娠力とは、何といっても「若さ」だ。
 精子と卵子が出会っただけでは、妊娠は成立しない。その質、つまり生命の力が問われる。卵子が老化し、質が低下するといっても、母親の年齢と生まれてくる子どもの能力とは何の関係もない。
 高齢出産で生まれた子どもとして、夏目漱石(母は42歳)、羽生善治(母38歳)がいる。
30代後半で妊娠すると、子どもをもうけるのに、20歳の2倍の年月がかかる。
 大正14年、45歳以上の母親から生まれた子が2万人いた。これは、現在の2倍にもなる。50代の母親から生まれた子も、3648人いた。このように、昔は高齢出産が多かった。
 体外受精による出産は、いま日本では年に3万人近い。その費用は、保険の適用がなく、30~80万円ほどかかる。
子どもが3人もいる私なんて、本当に幸せものなんだなと。この本を読んで、しみじみ思ったことでした。とはいっても、今の若い女性に、早く結婚して、子どもを早くつくったほうがいいよ、なんてとても言えませんよね・・・。
(2013年6月刊。850円+税)
 6月に受験したフランス語検定の試験(1級)の結果が分かりました。63点で不合格でした。合格基準点は85点ですから、22点も足りません(150点満点)。実は、自己採点では68点でしたから、5点も自分に甘かったわけです。これは書き取り、仏作文の出来についての評価が甘すぎたということです。
 それでも、ようやく4割台に乗りました。次は5割の得点を目ざします。毎朝、書き取りを続けています。
 今は、梅本洋一氏(故人)によるフランス映画の話をNHKラジオ講座で聞いています。女優の美声が聞けたり、トリュフォー監督も出てくる楽しい講座です。

義足ランナー、義肢装具士の奇跡の挑戦

カテゴリー:人間

著者  佐藤 次郎 、 出版  東京書籍
いい本でした。読んでいると、ほわっと心が温まってきます。
そうだ、人間って、誰だって可能性が残されているんだよね。なんとかあきらめずにがんばったら、道は開けてくるものなんだ・・・。
日頃、テレビを見ませんので、オリンピックもパラリンピックも見たことがありません。でも、この本を読んで、パラリンピックで義足ランナーが普通に走っているところを見てみたいものだと思いました。
 義足といっても、いろいろあって、この本ではスポーツ用の板バネ義足が中心となっています。心うたれる話の展開です。交通事故とか病気のために下肢を切断してしまった人が、歩くだけでなく、走れるようになったという話です。
日本人が義足をつけて走り始めたのは1992年初夏のこと。はじめの一歩って、すごく勇気のいったことでしょうね。
はじめに走った人は、やはり日本人女性でした。なんといっても、女性のほうが男より勇気がありますよね。
 鉄道弘済会に義足部門ができたのは、国鉄(今のJR)で鉄道作業員の事故が少なくなかったことによる。うひゃあ、そうだったんですか・・・。
 義足は、人それぞれ、歩き方の特徴や筋力までも把握しておかなければ、使いやすい義足にはならない。ソケットづくり、アライメント調整、いずれにも精密な職人技を求められる仕事なのである。
 臼井二美男は、その難しさ、精妙さにやる気をかき立てられた。
簡単には身につかない。しかし、意欲しだい、工夫しだいでいくでも熟達できる。いい義足をつくれば、それはそのまま患者の喜びに直結する。これほどやりがいのある仕事はめったにない。
義足の使用者は全国に6万人。義足は25万円から40万円する。大腿義足だと40万円から80万円する。そして、本人負担分は1割。
 義足の購入申請は年に6千件近くで、修理費用の申請は7千件ほど。しかし、スポーツ用義足は保険の対象外となり、40万円ほどの負担は大きい。
義足で走るのは怖い。浮いた義足がもう一度、地面につく。その瞬間が何より怖い。恐怖とのたたかいがある。地面についた瞬間、膝がカクっと折れるんじゃないか。それが怖い。
義足の人間が100メートル走るのは、普通の人が200メートルを全力で走るくらいの負担がかかる。
 足先からではなく、腰から動くような形で歩くこと。腰を乗せた歩きは、健足、義足の双方にバランスよく体重をかけていく動きづくりに効果があった。
 走るという単純な行為が、脚を失ったものにとって、どれほど大きな意味があるものか・・・。
 反発力の少ない、ふだん使ってる義足には、ある程度は体重を乗せられたが、板バネの義足はまた一からやり直しだ。板バネの義足には軽さとしなやかさがある。
 風が顔に当たって耳のあたりから抜けていく感じ。ヒューッという風を切る音。加速すると音が高くなっていく。あの感じ、気持ちがよかった。ああ、走っているんだなと思った。
 この義足ランナーの言葉に、はっとさせられました。
 いい本を読ませていただいて、ありがとうございました。そんなお礼を言いたくなりました。
(2013年2月刊。1600円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.