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カテゴリー: 人間

リンパの科学

カテゴリー:人間

著者  加藤 征治 、 出版  講談社ブルーバックス新書
リンパとは、血管から周囲の組織に漏れ出た成分である「組織液」を吸収したもので細胞成分(主にリンパ球)と液体成分(リンパ漿)が生まれる。
 リンパ官系の源流は、組織液を吸収する毛細リンパ官である。
 心臓という「ポンプ」をもたないリンパ管では、からだの位置(重力)や姿勢によって、リンパ管周囲の筋肉などの組織が動くことにともなって受動的な管壁の収縮が生じ、くねるような蠕動(ぜんどう)運動をしたり、弁の開閉によってリンパが行ったり来たりする振り子運動などによって運ばれる。
 リンパは、リンパ節内でいろいろの生体反応を起こしながらも、やがて静脈に合流するまで流れ続けていく。リンパは、いくつもの細いリンパ管が合流した集合リンパ管に集められ最終的には血管に入って血液に戻る。
 リンパは血清に比べて、総タンパク量が少ない。リンパは分子量の低いアルブミンのほうが、グロブリンより60%多い。リンパのほうが、血液より粘土製が低く、さらさらで流れやすいため、ゆっくり流れていても循環できる。
 リンパ管を流れるリンパの中の血球をリンパ球と呼ぶ。
 リンパは、その大部分が液体成分であり、赤血球をほとんど含まないため、薄い黄色である。リンパの中にある血球は白血球であり、その大多数がリンパ球である。リンパが身体中を一周して元に戻るまでには、12時間かかる。リンパの流れを手助けするためには足首をぐるぐる回したり、ふくらはぎをもんだりするのが効果的。
 胸管やリンパ節の輸出リンパ管内のリンパは、免疫担当細胞である多数のリンパ球を含んでおり、全身をめぐって、局所の臓器における免疫反応に働いている。
 リンパ節から胸管に流れるリンパは、免疫反応を起こすための免疫担当細胞の供給という観点から欠くべからざる存在である。
 リンパ組織は、体内における警備室のようなところで、細胞や異物などの抗原が入ってくると、まず警備員として最前線で働くマクロファージ(大食細胞)がそれらを取り込み、その情報がリンパ球に伝えられる。細胞にとりこまれた抗原は、リンパ管内のリンパに乗って、近くのリンパ節に運ばれる。リンパ節内では、「免疫戦争」(抗原-抗体反応)が起こり、特異的な抗体(タンパク質)が産生される。そのときリンパ節の肥大(ぐりぐり)が確認できる。
 大切な人体内のリンパのことを知ることのできる本です。
(2013年6月刊。900円+税)

牛乳とタマゴの科学

カテゴリー:人間

著者  酒井 仙吉 、 出版  講談社ブルーバックス新書
母牛が乳を与えるのは自分の子牛のみで、血のつながりのない子牛には決して与えない。馬が後ろ脚をうしろにけるのと違って牛は前にける。だから、自分の子牛以外、たとえ人でも乳房に触れるのは容易ではなく、むしろ危険。はじめに子牛に乳を飲ませ、少し早めに親から引き離し、そのあと搾乳する。再び親牛に近づかないよう、子牛は親牛の前足につないでおく。
 キリスト教の創始者のキリスト、イスラム教の祖マホメット、仏教の開祖ブッタは、例外なく牛乳と乳製品を礼賛している。もともと日本本土に牛はいなかった。縄文時代の末期に大陸から運ばれてきた。
 大陸で起きた争乱などによって移住者がでて、日本に馬や牛、ブタ、ニワトリをもたらした。近江(滋賀県)では、農耕の役目を終えると肥えさせ食べたようだ。干し肉、粕漬け、味噌漬けにして、12月から1月にかけて江戸に運ばれた。これが近江牛。
牛乳の完全制は子牛にとってであって、人にとってではない。牛乳は乳児にとって母乳の代わりにはならない。
 有用菌とされる乳酸菌であっても、胃に入れると胃酸によって99.9%は胃で消滅する。
 哺乳類は、ブドウ糖を細胞に無害な乳糖に変えることで子に大量の炭水化物を与えている。子牛が乳を飲むのは1日に2回、ウサギは、1日に1回でしかない。
 人は生まれてすぐ母親の初乳から特別な物質を受けとる。そのため、初乳を飲んだ新生児は感染症をふくめて病気になる割合が格段に低い。初乳には病気を予防するという重要な役割がある。母牛の病気抵抗性が初乳によって子牛に伝えられる。しかし、初乳は出荷禁止。それは、殺菌のために加熱すると、免疫グロブリンが固まるので、市販できないから。
 ニワトリは、ヒナから人手で育ててもなつかない。ただし、無視もしない。ニワトリの性質は珍しい。人を恐れない。腹が減っても催促せず、こびもしない。とにかく雄は気位が高く、闘争心が旺盛。鳴き声は独特で、姿は美しい。自分でエサを探すので、飼う手間はかからない。カゴに入れてもおとなしい。寿命は10年以上。
ニワトリのタマゴが人の食用になるのは江戸時代から。江戸では、ゆで玉子が売られていた。1個50文(200円相当)だった。このころは、そば1杯16文だった。安くはない。江戸で、だし巻きタマゴは高級料理だった。一人あたりの年間消費量をみると、日本は主要先進国のなかで際立って多い。
 卵は、洗わなければ、2ヶ月は保有して生食が可能。本当でしょうか・・・。あまり試したくはありませんよね。
いまのニワトリはタマゴ生産機械と化している。体重2キログラムのニワトリが1年間で280個ほど(17~20キログラム)のタマゴを産む。
 産卵間隔は25時間。鶏舎では、14時間点灯、10時間消灯がやられている。
なぜ、ニワトリは年間280個で十分ではないのか・・・。なーるほど、これってちょっとしたギモンですよね。
牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロいうのは、乳糖不耐症と呼ばれるものがあるからです。そして、日本人は過去、牛乳を利用していませんでしたので、日本人の大半は乳糖不耐症である。
 タマゴを食べると、高血圧や心筋梗塞になると騒がれた。これは、タマゴにとって、とんでもない濡れ衣だった。
 毎日の牛乳とタマゴの秘密に迫った面白くて、ためになる本でした。
(2013年5月刊。900円+税)
 妹尾河童原作の映画『少年H』をみました。
 とてもリアルに戦争の怖さが再現されていました。次第に市民生活が息苦しくなっていく様子、政府にタテつく者が突然逮捕されて、まるで不向きの人が兵隊にとられることの不幸がよく描けています。そして、戦争によってすべてを失い、虚脱感に陥り、そこから抜け出すことの大変さもしっかり伝わってきました。
 いま、安倍首相の言うなりに世の中が動いていくと、こうなるよという具体的なイメージもつかむことのできる素晴らしい映画です。ぜひ、ご覧ください。

ボケたって、いいじゃない

カテゴリー:人間

著者   関口 祐加 、 出版  飛鳥新社
とても新鮮で、かつ、ショッキングな本でした。
 まず第一に、アルツハイマーになった実母の病態を実の娘が映像で記録して、映画館で上映される映画として完成させたということです。これって、本当にすごいことですよね。日頃から、親子のあいだで一定の距離感覚がなければ、とても考えつかないし、実行できなかったことでしょうね。
 第二に、自分のことが映画になったことを知ったアルツハイマーの母親の反応が衝撃的です。母親が何と言ったと思いますか・・・?
 「テレビに出ていたって、あんた、有名なの?」
 「なんか、わたすも一緒に出ているらしいんだよ」
 「へえ、ま、せいぜいあたすのネタで稼いでちょうだい」
 娘が自分のボケをネタに映画をとっていて、それで有名になってお金を稼いでいるのをアルツハイマーの母親が理解して、それを許し、娘とともに笑うのです。これって、すごいことですよね。とても信じられません。
 第三に、アルツハイマー病にかかるとは、どういうことかを知りました。
アルツハイマー病になると、その人の脳の働きが全部ダメになってしまうと思われがち。しかし、初期から中等度では、脳の働きが悪くなっているのは5%以下だけ。物忘れや判断など、ほんの一部だけ。残りの95%以上は正常な脳の働きができる。そこで喜んだり、戸惑ったり、怒ったりする。そこを忘れてしまうと正しいアプローチはできない。
 なーるほど、これは目からウロコが落ちた気がしました。
 アルツハイマーの初期は、本人もいったい何が起こっているのかが分からず、怖がっているのがヒシヒシと伝わってくる。一番怖いのは、本人なんだ・・・。自分が忘れてしまっていること、分からなくなってしまっていることは、本人も家族も認めたくない。認めるのが怖い。できないことを知られたくない。分からなくなることが怖いという思いが、外出から遠のかせている。
 一見すると明るい感じというのは、典型的なアルツハイマーの所見だ。そして、数字に強い。計算問題はできることが多い。
 そして、いままで抑えられていた喜怒哀楽が、認知症によってストレートに出るようになる。しつこくふつふつと胸の中でくすぶって消えなかった火種が、ついに発火した。ようやく認知症の力を借りて表に出てきた。本当は、母親は料理も商売も風呂も嫌いだった。ガリ勉で友だちもいなかった。そんな自分を押し殺して、隠して、一生けん命に生きてきた。それは認知症によって解放され、いいたいことを言い、やりたいことしかやらなくなった。
「うっせえなー!」は自由人になれた証拠なのである。
介護をしている人に一番必要なのは、精神の健全だと考える。たとえば、自分の好きな仕事や趣味を続けているとか、自分の時間をもつことがとても大切だ。そして、何よりも感受性を磨くこと、みずみずしい感受性と好奇心を保つこと。
 老化現象とは、イマジネーションがなくなっていくこと。
 すばらしい本です。あなたに一読を強くおすすめします。読んで損することは絶対にありません。だって、あなたも私も、いつかは到来する可能性のある身なのですから・・・。
(2013年6月刊。1333円+税)

赤ちゃん学を学ぶ人のために

カテゴリー:人間

著者 小西 行郎・遠藤 利彦 、 出版  世界思想社
ヒトの赤ちゃんを知るということは、人間を知るということです。
 赤ちゃんは、自ら動くことによって他者や周囲の環境を認知する。
 赤ちゃんの脳は、ムダなシナプスをバランスよく削りながら、成長する。このコンセプトは、何でもかんでも刺激すればするほど、脳は成長するという従来からあった考え方に警鐘を鳴らすものだ。
 赤ちゃん学のもっとも大きな成果は、まったく無力だと思われていた胎児期から新生児期(生後1ヶ月まで)・乳児期(生後1年まで)の赤ちゃんに、きわめてすぐれた能力があることを発見したことにある。
超音波によって、胎児が笑っているような表情を示していることが明らかになった。これは、生まれてきたときに親に愛情を喚起するための方法を準備している証拠ではないかと考えられている。
 新生児微笑というのは、皆さん、私を可愛がってね、というメッセージだそうです。なんと、それを胎児の段階から準備していたというのです。驚きました・・・。
 胎児の睡眠にも、レム睡眠、ノンレム睡眠がすでにある。視聴覚、味覚そして触覚は胎児期にすでに機能している。つまり、胎児は、音を弁別し、母親の声を学習している。赤ちゃんは「白紙の状態で生まれる」わけではない。
 赤ちゃん学の進歩は、何でもできない赤ちゃんという固定概念崩しただけでなく、むしろ大人(親)は、赤ちゃんによって育児されているのではないかという側面を明らかにした。
 赤ちゃんは、生後すぐに目にした母親の顔を記憶して、他人の顔と見分ける能力をもっているようだ。6ヶ月の赤ちゃんは、ヒトの顔でもサルの顔でも見分けることができる。
 赤ちゃんが人見知りするというのは、顔を見分ける能力が身についた証拠だ。
赤ちゃんは、生後すぐに自発的な微笑を示す。そして、生後6~7週間たつと、赤ちゃんは社会的な微笑をあらわす。
 赤ちゃんは、眠っているあいだに身体の中で、あちこちでいろんな活動をすすめている。全身の細胞が点検され、修理され、新しくつくられている。寝る子は育つ。このたとえのように、ぐっすり眠っている間に、成長ホルモンがまとめて分泌されるからである。
 赤ちゃん学の参考文献がたくさん紹介されています。
 人間の不思議さを究明したい人にとって、よい手引き書となっています。
(2012年10月刊。2400円+税)

激走!日本アルプス大縦断

カテゴリー:人間

著者  NHKスペシャル取材班 、 出版  集英社
日本海側から日本アルプスの山々を8日間で踏破して太平洋側の静岡に至る、そんな過酷なレースが誌上で生々しく再現されています。読んでいるほうが息が詰まりそうです。
 NHKスペシャルで放映されて大反響を呼んだとのことですが、例によってテレビを見ない私は、そんな山岳レースがあるなんて、まったく知りませんでした。同行取材みたいにしてカメラマンがランナーを追いかけるのです。すごい話でした。
 2012年8月12日午前0時から8日間にわたる山岳レース。富山湾からスタートし、北、中央、南と続く日本アルプスを縦走し、駿河湾に至る415キロを8日以内に走りきる。剱(つるぎ)岳、立山、槍(やり)ヶ岳、木曽駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、聖(ひじり)岳といった3000メートル級の名峰を次々に制覇し、尾根筋を昼も夜も進み続ける。上り下りする累積標高差は2万7000メートル。これは富士山の登山7回分に相当する。
 このレースには賞金も賞品も一切ない。今回、6回目のレースには28人(うち女性1人)が挑戦した。平均年齢40歳。
 レースの主宰者は、選手に対して徹底した自己責任での挑戦であってほしい、誰にも迷惑をかけないことが最低条件だと強調する。
 選手は、ギリギリまで荷物を軽量化する。平均4.5キロ。簡易テント(ツェッルト)は重さ200グラム。
 主なルールとして、山小屋・旅館に宿泊できない。他者の差し入れを受けてはいけない。伴走は禁止。
問われるのは、走力、ビバーク技術、読図力、危険予測回避力。要は、山の技術力が求められる。過激な天候変化や何らかの事故発生時に迅速に対応できる能力。
30の地点が必ず通過しなければならないチェックポイントとして定められている。そこ以外はどこを走っても自由である。
 新田次郎の『剱岳・点の記』で有名な剱岳に、今や選手は麓から山頂まで6時間で登りつめる。な、ななんと・・・、すごーい。
 山岳レースでは食べられるときに食べるのが鉄則。ハンガーノック状態を避けるため。筋肉や肝臓に蓄えられている糖質が使い果たされ、体を動かすためのエネルギー源が失われてしまい、筋肉が動かなくなる。あるいは、脳に栄養が行き渡らなくなって物事を考えられなくなる、極度の低血糖状態、それが人間のガス欠状態ともいえるハンガーノックだ。
 早くエネルギーに変わる食品として、パン、もち、レーズン、はちみつ、せんべいなど。
 3時間の睡眠が不可欠。ところが1日わずか2時間ほどの睡眠でひたすら走っていく。
リタイアする勇気は、選手にもっとも求められる資質の一つだ。
低温症の要因は、低温、濡れ、風である。低温の空気がそのまま内臓器にはいると、体温低下を誘発する。
雨の中を進むときには、レインウェアの洗濯もさることながら、動き続けることが何よりも大切なこと。止まれば一気に身体が冷える。身体のもつ限り歩けばいい。あとは、眠気との戦いだ。
足の裏にできるマメとは、医学的に皮膚の摩擦や衝撃などの力が加わり続けることで表皮と真皮が引きはがされ、その間に滲出液がたまってできた水泡のこと。サイズのあった靴を選び、靴下をこまめに交換し、足をふやけさせずに乾燥した状態を長く保つようにする。
 エチオピアの有名なマラソン選手であるアベベの足は、とても柔らかかった。ゴムのような弾力をもち、地面との接触面が柔軟に伸び縮みした。その結果、衝撃が吸収され、まめが生じず、ケガもしにくい足だった。
 人間が熟睡できるのは31度。人は食後に体温が上がる。その体温が下がり始めることに眠くなる。
 幻想は不眠症の症状の一つとしてよく出てくる。脳の睡眠が十分にとられていないとき、幻覚は出やすくなる。さらに、糖分不足も幻覚を引きおこす要因となる。
なんともすさまじい山岳レースの記録でした。私自身は、ちっともしてみようとは思いませんが、こんな過酷な山岳レースに挑戦できる体力と知力を備えた人をうらやましくは思います。
(2013年4月刊。1500円+税)

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