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カテゴリー: 人間

老虎再来

カテゴリー:人間

著者  瞳 みのる 、 出版  祥伝社
 ザ・タイガースのピーによるトークライブがそっくり再現されている本です。
 その誠実な人柄がじんわりと伝わってきて、読み手の心を温めてくれます。
 著者は私より2年だけ年長ですが、同じ団塊世代です。京都出身で苦労したようです。母親を幼くして亡くし、乳母に可愛がられたようです。父親もひところは羽ぶりが良かったものの、人に欺されて没落し、著者も働きながら定時制高校に通ったのです。町工場に働いたり、ナイトクラブのドアボーイなどいくてもの職を渡り歩いています。
 ザ・タイガースは、そんな京都の同級生たちによって結成されたのでした。
 著者のトークには、京都の町なか、通りの名前がいくつも登場してきて、メンバーたちと結びつけて語られます。
 著者は二度も大病し、離婚もしています。いろいろ大変なことも多かったようです。
 それでも、ザ・タイガースの解散のあと、一念発起して慶応大学に一発で合格し、あとは慶応高校で40年間も漢文を教えていたのです。
 教師時代の教え子が全国にいて、活躍しているようです。本人は不良教師だと自称していますが、熱血教師だったのではないでしょうか。
 慶応高校の生徒たちは、天性の聡明をもっていて、キラキラ光るものがある。僕なんか、逆立ちしても彼らにはなれない。授業していても教えるよりも、教えられることが多くて、楽しかった。教師失格だった。いや、反面教師だったかな。生徒たちは、真の形で人間を捕らえることに優れていた。いくら飾りたてて、知識をひけらかしても、見破られてしまう。ごまかしはきかない相手と何十年も過ごしてきたという自負がある。
 うむむ、味わい深い言葉ですね。
 僕は迷う。迷うからこそ、迷いを断ち切るために決断する。本当は優柔不断だけど、できるだけ自分に忠実なように生きてきた。他人からみれば好き勝手やってきたように見えるかもしれないけれど、本当は不器用な人間で、あれもこれもはできない。
写真がたくさんある全国ツアー報告も楽しいレポートになっています。
(2012年12月刊。1800円+税)

あなたはボノボ、それともチンパンジー?

カテゴリー:人間

著者  古市 剛史 、 出版  朝日新聞出版
 ボノボが新種の類人猿として発見されたのは、わずか80年前のこと。発見が遅れた理由は二つ。一つは、アフリカのど真ん中という、近寄りがたい地域に隔離されて生息していたため。もう一つは、ボノボの外見が、チンパンジーにあまりにもよく似ていたから。それほど、チンパンジーとボノボは外見上の区別をつけにくい。
 ボノボは、子どものときから顔が黒い。チンパンジーは、子どものときは、顔が白い。
 ボノボは直立二足歩行がうまい。
 パン属とは、チンパンジーとボノボをふくむ属の呼び名。
 チンパンジーもボノボも、複数のオスと複数のメスを含む数十頭の集団をつくって生活し、その中での性関係は乱婚的だ。子育てはメスだけが受けもち、生後3年以上もお乳を与えて、手厚く育てる。
 オスは一生を生まれた集団で過ごすが、メスは思春期になると、生まれた集団を離れて他の集団に移籍する。
 チンパンジーでは、オス間の順位争いが熾烈をきわめるのに対し、ボノボのオスはあまり順位を気にしない。
 チンパンジーでは、集団内の勢力争いが殺しに発展することがある。ボノボでは、そのようなことは起こらない。チンパンジーでは、優劣関係を確認しあうためのさまざまな挨拶が発達している。ボノボは、優劣のつかない性交渉を挨拶がわりに使う。
 チンパンジーの性交渉はオスがメスの背に乗る馬乗り型が普通だが、ボノボはお互いの顔を見合わせる対面型を好む。
チンパンジーのメスは、妊娠の可能性のある時期にしか発情しない。ボノボの雌は、妊娠の可能性のない授乳期や妊娠中にも発情する。
チンパンジーは、集団内の関係がとても敵対的で、一方が他方を抹消してしまうことがある。ボノボの集団関係は、比較的おだやかだ。
チンパンジーでは、オスがメスに対して圧倒的に優位にある。ボノボのメスは、オスと対等以上にわたりあえる。
 チンパンジーのメスは、ふだんはばらばらに生活する傾向が強い。ボノボのメスはみんな他の集団から移籍してきたよそ者であるにもかかわらず、集団の中心部に集まって緊密な関係を保つ。私たち人間(ヒト)のなかには、チンパンジーも、ボノボも住んでいる。
 ボノボは、何かにつけ、みんなで一緒にやりたがる。仲間があとから到着するのを待っているのは自然なこと・・・。
 ボノボが使う道具らしきものは、雨が降ってきたときに、葉の突いた枝を頭にのせる行動(レインハット)くらい。
 チンパンジーは、独立性の高い大人の集団という感じ。
 ボノボでは、順位の高い母親をもつオスが高い順位につく傾向がある。
 チンパンジーは、オスたちが一列になって歩くことが多い。ボノボは、適当に散開して、だらだらと同じ方向に動くことが多い。
 チンパンジーは、独身心が旺盛で、自らの行動は自分で決め、社会的知能を駆使して生活する。ボノボは、いつも他の仲間のことをきにかけて、できるだけ行動をともにしようと、和気あいあい遊んでくらす。
 ボノボでは、父系社会なのに、メスたちが集団の中心部に集まって実権をにぎっていて、このメスたちに受けられないと、いろいろないじめを受ける可能性がある。
 ボノボは男の子をもつのは大きな意味がある。女の子を産んでも、やがてその子は集団を出て行く。男の子をもたない限り、メスはいつまでたっても、ひとりぼっちだ。
ボノボのメスは45年ほど生きて、生涯を閉じる。
 ボノボでは若いオスが第一位の座につくことが多い。その理由は、母親がもっとも力のある壮年期にあり、メスたちのあいだの第一位についているから。
ボノボでは、肉食するときにメスが肉を支配していて、オスがそれを取りあげたりすることはまずない。ボノボのオスは威勢をはって威嚇することはあっても、メスに対して手をあげることはなく、食べ物にからむ場面では明らかにメスに対して下手に出る。
 人間は、チンパンジー的要素をボノボ的要素の二つを状況に応じて使い分けて生きていますよね。もう少し、優しい生き方をしたいものだと思いました。
 現代の人間にとって、とても参考になる本だと思います。
(2013年12月刊。1300円+税)

小椋佳・生前葬コンサート

カテゴリー:人間

著者  小椋 佳 、 出版  朝日新聞出版
 小椋(おぐら)佳(けい)の歌は、心に沁みるものが多いですよね。
 この本には、歌詞がたくさん紹介されています。私の聞いたことのないものがほとんどです。本名は、神田こうじですが、小椋というのは、大学時代に訪れた学生村の所在地の名前です。
 学生村と言えば、私は、長野県の戸狩(とがり)村に一夏(ひとなつ)過ごしました。そこで司法試験の勉強を本格的にはじめたのです。長野の暑さを、たっぷり体験しました。
 「シクラメンのかほり」は有名ですが、著者の奥さんは幼ななじみで、名前は「かほり」さん。佳は、その「かほり」さんの一字をとったのでした。
26年間の銀行員生活を50歳になる直前にやめて、大学に入り直して哲学を勉強したというのです。すごいことですよね。ただ、二度目の大学生活のとき、毎日、昼に喫茶店でカレーライスを食べていたというのには、ちょっと残念な思いがしました。やっぱり、昼食だって、いろいろ変えて楽しんでほしいものですから・・・。
先日亡くなったセゾングループの総師であり、詩人兼作家だった堤清二氏と親交があったというのには驚きました。モノカキ同志として美食をとりながら、途中からは美女も混じえて。さぞかし話ははずんだことでしょうね。本当にうらやましい限りです。
 70歳になったのを記念して、なんと「生前葬コンサート」を企画し、そのための本を出版したという発想もすごいですよね・・・。
著者は、幼いころ、可愛い子だと言われたことがない。よほど、おかしな顔をしていたのでしょう。今では、愛敬たっぷりの、個性的な顔といえるのですが・・・。それでも、祖母は、「この子はいい顔をしている。絶対に食うに困らない顔だ」と、ほめていたとのこと。見る目があったのですね。
 実際、この70年間、著者は食うに困るどころか、その心配したことが一度もない。食うことに神経を使うことすらなく、幸運なめぐりあわせで過ごしてきている。
 小学校低学年のとき、著者は信じられないことに、劣等生だった。目立たず、人にほめられることが何ひとつなかった。ところが、ある日、女の先生から、「きみ、お歌、とっても上手ね」とほめられたのだった。この一言が、その後の人生を決定づけた。
 私も、中学生のとき、国語の先生(女性)から、あなたの文章は良く出来ているわよ、とほめられ、その一言で、文章に変な自信がついたのでした。
お金がない、お金の苦労と言えば、弁護士の卵(司法修習生)のとき、新婚旅行の途中でお金がなくなり、同じクラスの友人のアパートにころがり込んで借金し、旅を続けたことがあります。お金をもたずに旅行するなんて若くなければ出来ないことですよね。今は、いつも少しだけ余計に財布にお金を入れています。もう、変なことは出来ません。
 著者は57歳のとき、胃がんの手術を受け、胃の4分の3を切り取りました。ところが、その結果、糖尿病が完治してしまったというのです。おかげで元気に長生きできているのです。人生、何が幸いするのか、分かりませんね。
著者の長男が2歳になったとき、『ほんの二つで死んでゆく』というLPアルバムをつくった。この歌は、私も好きな歌です。
著者は、中学生になってからは優等生になって、夜まで勉強していました。すると、母親が、いきなり戸を開けて、「お止め。よしな、勉強なんてしていると、頭がおかしくなるから、よしな。早く寝な!」と言った。
 ええーっ、うそでしょ、と、叫びたくなります。
 なかなか「発展家」の母親だったようです。なにしろ、著者が40歳のとき、母親の生んだ子(いわゆる私生児)が別にいるのが分かったというのですから・・・。
 著者は東大法学部出身で、法曹を目ざしたことにもあるそうです。大学ではボート部での生活に明け暮れていたとのこと。私はセツルメント活動一筋でした。授業も真面目に出ず、川崎市内をうろうろしていました。本だけは、いろいろ読んでいましたので、司法試験には早く合格できたのです・・・。
 著者の生涯について、なんと、「挑み」と「挫折」の連鎖だったと本人が語っているのには驚きました。私とちがって成功の連鎖とばかり思っていました。だって、毎年50曲もの歌をつくりつづけ、総計200曲もつくったのですよ。そして、毎年、50回から100回ものステージ公演を全国各地で敢行しているのです。そのタフネスぶりには圧倒されますよね。そんな著者にも、「挫折」があったというのです。人生とは、こんなにも複雑怪奇なのですね・・・。
(2013年11月刊。2381円+税)

愉しい落語

カテゴリー:人間

著者  山本 進 、 出版  草思社
 私の親しい法曹仲間に、落語を語るのを趣味としている人がいます。すごいなあと、いつもうらやましく思っています。彼は、法律の話をさせても見事なものです。ともかく、緩急自在な話しぶりで、ついつい話に引き込まれてしまうのです。
 著者は、東大生のころから落語に打ち込んでいた、落語研究家です。東大を出てからは、NHKで働いていました。それでも、趣味と言えるのか、道楽なのか、落語研究に身を挺してきたのです。何冊もの落語に関する本があります。
 楽しい本です。私も幼いころから、ラジオで落語を聞いていました。テレビでも落語をときどきやっていましたね。残念ながら、東京に4つあるという寄席には行ったことがありません。ぜひ、近いうちに行ってこようと思います。
 前座(ぜんざ)のうちは、まだ落語家としては一人前に扱われていない。それで、羽織を着るのは許されない。「二つ目」になると羽織を着ることが許される。
 前座は「定給」(じょうきゅう)といって、毎日、決まった額をもらう。二つ目以上は、「ワリ」といって、客の人数による歩合給をもらう。
 落語家には、前座、二つ目、真打という階級がある。
 二つ目になるのは、入門から15年前後・・・。ええっ、これって大変なことですよね。
 落語は、お客の想像力に頼る世界だ。できるだけ余計なものを使わず、お客に想像してもらう芸だ。そこで最小限として残ったのが、扇子と手ぬぐい。扇子を「カゼ」と呼び、手ぬぐいを「マンダラ」と言う。
 講談は、落語と違い、前に釈台を置く。ただし、上方落語は、見台、膝隠しを置くことがある。
 上下を切る。カミシモをキる。噺の途中で首を左右に振って、人物の仕分けをする。
落語の序にあたるのが、マクラ。そして、本文(ほんもん)、サゲと続く。マクラを聞いて、お客が、この落語家、気が利いているような、巧みそうだな、面白そうだなと思い、引きずりこまれていく。話のしめくくりを「サゲ」と言う。
狭い長屋で、毎日、顔を突きあわせての生活が、落語の背景になっている。
 400年前に出来た話で、今でもダントツ一番なのが、「子ほめ」。残念ながら、私は聞いた覚えがありません。
落語家のなかには、日大閥ができるほど、日大の卒業生が多い
 落語とは、人間の業の肯定である。
 落語家が形になるのは、江戸の中期の元禄期(17世紀末のこと)。京都、大阪、江戸に三人の落語家が期せずして登場した。
江戸の末期、安政のころ、軍談席220軒、落語席172軒という記録がある。
上野の鈴本演劇場は、この安政年間の創業なので、6代、200年間の歴史がある。
江戸時代には、今みたいな落語家の団体はなかった。関西の上方落語協会は、十数人でスタートして、今では240人を擁している。東京には500人。
 今、東京には、定席(じょうせき)が4軒しかない。上野鈴本演芸場。新宿末廣亭、池袋演芸場、浅草演芸ホール。
 落語には台本はない。みな口伝え。だから、速記が活躍した時代があった。
 山田洋次監督も落語大好き少年だったようです。私も、ラジオでよく聞いていました。
 ぜひ、今度、定席に行ってきます。
(2013年12月刊。2000円+税)

金持ち脳と貧乏脳

カテゴリー:人間

著者  茂木 健一郎 、 出版  総合法令出版
 この本を読んで、金もうけのヒントでも得ようかと思う人にとっては、その期待は裏切られます。脳科学者が金もうけのヒントを与えてくれるはずがありません。そうではなくて、人生を豊かなものにしたい、意義のある人生をまっとうしたいと思う人にとっては、役立つヒントが満載の本なのです。
 金持ち脳を持っている人は、夢中になれる好きなことを仕事にしているので、たとえ辛い場面に遭遇しても、我慢という感覚はない。これに対して、貧乏脳は何よりも自己欲求を満たすことで満足してしまう脳。
お金持ちになった人は、数多くの修羅場やリスクを経験しつつ、ピンチをチャンスに変えてきた人たち。リスクテイクに優れている。
 人間関係におけるネットワーク、信頼、そして自分のスキル、知識、経験、そういうものが総合的に脳の安全基地となって、確実性が生まれる。
 自信がないお金持ちほど、お金を使う傾向にある。お金を払うと、「お客様は神様です」とあがめてくれるから。
借金する立場は、お金を借りた人に支配されることになる。そうなんです。だから、私は、借金したくないし、他人に借りをつくりたくありません。いつだって、自由、フリーでいたいのです。
 経験以外に人間が持ち運べるものはいない。だからこそ、若いうちのお金は経験という経済活動に使うべきなのです。
 お金と幸せは必ずしも一致しない。人間の幸せや人生観というのは複雑系なので、お金では測れないもの。人間の本質的な幸せというのは、お金によって得られるものではないことを理解するためには、ある程度経験しないといけない。
 お金は、人間関係を目に見えるようにしたもの。人間関係が充実している人には、お金も集まってくる。お金を貯めるのと同じくらいに、人間関係や自己投資にお金を使うことが大切だ。
 仕事の満足は、決してお金で買えるものではない。仕事の面白さ、やりがいは、自分で決めるもの。
私は弁護士になれて本当に良かったと思っています。受験時代は苦しい日々でしたが、人助けをして、喜んでもらって、お礼を言われて、お金までもらえるのです。こんなに充実感の味わえる職業は滅多にありません。もちろん、すべてがうまくいくとは限りません。でも、一生けん命にやっていれば、いつかはなんとかなるものです。
(2014年1月刊。1300円+税)
 東京は大雪で大変だったようですが、私のところはこの冬はまだ雪が降っていません。それでも寒い日が続いています。
 庭から小鳥の澄み切った流れるようなさえずりが聞こえてきました。声のするほうを見ても姿は見えません。名前も知りませんが、春先になると聞こえてくる小鳥の声です。とうとう春告げ鳥がやって来たのでした。
 庭の紅梅や白梅が咲いています。黄水仙も咲きはじめました。チューリップの芽があちこちに顔を出しています。
 もうすぐ春になります。うれしいことです。

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