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カテゴリー: 人間

ヘルプマン vol.8

カテゴリー:人間

著者   くさか 里樹 、 出版   講談社 
 マンガ本です。とても勉強になりました。介護現場の実情を知るための格好のテキストです。
申し訳ありませんが、私は介護の苦労をしていません。姉に全部やってもらいました。姉夫婦は大変だったと思います。それでも、介護問題については、弁護士として成年後見人になったりもしますし、依頼者には介護ヘルパーも多いので、このマンガ本によって認識を深めました。
認知症になった母親の介護を弟が放りだしてしまいます。そして、突然、母親を運んできてサラリーマン夫婦の兄一家に押しつけるのです。徘徊症の母親は大変です。どうにも扱いかねて、一家中がひっかきまわされるのです。
夫婦とも大切な勤めがあるので、簡単には会社を休めません。そこでヘルパーに助けを求めます。すると、登場してきたのは、なんとフィリピン人の若い女性。
フィリピン人は親を大切にします。でも、日本人とは生活習慣が異なるので、あつれきが生じて直ちにクビ。でも、次に来た日本人よりは、実はよほど良かったのでした。
 マンガなので、臭いのする汚れの場面もきれいな絵となり鼻をつまむ必要もなくさっと読めます。
 21巻シリーズですが、全巻読み通すつもりです。
(2011年12月刊。514円+税)

脳には妙なクセがある

カテゴリー:人間

著者   池谷 裕二 、 出版   扶桑社 
 生後2日から5日という新生児の脳を調べると、すでに母国語と外国語を聞いたときで、左脳の反応が違っている。これは、胎児のとき、母親の腹のなかで、ずっと母国語を聞いていたからと考えるのが自然だ。
 笑顔は楽しいものを見出す能力を高めてくれる。
 人口の4%は音痴だ。音痴の人は、空間処理能力が低い。もともと音階は空間として表現されるもの。一般に男性のほうが女性よりも空間把握にすぐれている。ある実験で音痴であると判定された人の半数以上は女性だった。
20歳以前まで高かった幸福感は、20代で一気に落ち込み、40代から50代前半ころまでが最低迷期となる。そして、これを過ぎると回復を始め、調査された範囲では、最高齢である85歳に向けて上昇していく。つまり、歳をとると、より幸せを感じるようになる。
 働き盛りのビジネス人は、とかく時間に追われて心を失いがち。しかし、しかるべき時期を耐え抜けば、幸せなときが待っているということなのだろう。
 食欲のコントロールはもちろん、覚醒状態や記憶力に至るまで胃腸の支配を受けている。内臓をふくめた全身がバランスよく機能して、初めて脳の健康を保つことができる。
直感もひらめきも、「ふと思いつく」という状況は似ている。しかし、思いついたあとの様子がまるで違う。「ひらめき」は、思いついたあと、その答えの理由を言語化できる。ところが、直感は、本人にも理由の分からない確信をいう。そして、重要なことは、直感は意外と正しい。
単なる「ヤマ勘」や「でたらめ」とは決定的に異なる。ひらめきは「知的な推論」、直感は「動物的な勘」。ひらめきは陳述的、直感は非陳述的なもの。ヒトは、自分自身に対して他人なのである。
 自動判定装置が正しい反射をしてくれるか否かは、本人が過去にどれほどよい経験をしてきているかに依存している。よく生きることは、よい経験をすることである。人の成長は、反射力を鍛えるという一点に集約される。反射を的確なものにするためには、よい経験をすることしかない。
 いつも脳についての刺激的な指摘があり、大変参考になります。
(2012年9月刊。1600円+税)

ゴリラは語る

カテゴリー:人間

著者   山極 寿一 、 出版   講談社  
 アフリカでゴリラとともに暮らし(?)て30年以上の山極(やまぎわ)博士のお話です。
ゴリラって、本当に人間(ひと)によく似ていますよね。なにより、アイコンタクトをつかっているのが驚きでした。
サルが目を合わせるのは威嚇するため。ところが、ゴリラは目をそらすと不満を示す。サルとちがってゴリラは、顔をのぞき込まれても視線をそらさず、目と目を合わせる。この「のぞきこみ行動」は、ゴリラの挨拶のひとつ。たがいに顔を近づけ、見つめあって挨拶するのが、ゴリラの流儀。そして、ゴリラ同士では会話も存在する。
 「ゥアゥ?」(フー・アー・ユー)は、問いかけ。とにかく速やかにこたえることが必要だ。
 「ウルウルウルウル」という高くてかわいい声は求愛の声。
好物のキイチゴを見つけると、うたうように声を発する。ハミング。
 「グコグコグコ」というのは笑い声。笑い声を出すのは、人間のほかは類人猿のみ。
 ゴリラは表情から判断するのが人間に比べて難しい。しかし、ゴリラは感情が目に表れる。うれしいときには、ゴリラの目は人間以上に光る。目の色が金色に変わる。
ゴリラは、一日に何度も、そして長く遊び続ける。レスリングや追いかけっこ、ターザンごっこ、お山の大将ごっこ、ヘビダンス。遊んでいる最中の出す「グコグコグコ」という笑い声は、「自分はいま楽しいんだよ」というのを相手に伝える手段。
 動物園に飼われているゴリラが交尾できなくなっているのは、同じ年ごろの子どもたちとたっぷり遊ぶ経験をもたないから。
 ゴリラのオスは、自動的には父親にはなれない。そこには母ゴリラの見事な子離れ戦略がある。母ゴリラは子どもが1歳になるまでは、子どもを片時も離さない。ところが、1歳を過ぎたあたりから、父親であるシルバーバックのそばに子どもを置いていくことがよくある。そうやって子どもが母親のもとを離れていけるように促す。子どもは母親から父親を紹介されてはじめて、父の存在を認め、頼りにするようになる。ゴリラのオスは、メスからも子どもからも認められないと、「父親」にはなれないようにできている。
 ゴリラのグループには、「核オス」と呼ぶリーダーのシルバーバックこそいるが、オスの間に序列はない。だからゴリラは、たとえ争いを起こしても、力の強さや年齢や性別によって負けることがない。勝者も敗者もつくらない。
 大人のゴリラがケンカをすると、子どもや若者たちが引き離して止める。
 サルは、ケンカが始まると、群れのほかのメンバーはどちらかに加勢してはっきり勝負をつける。しかし、ゴリラは、むしろ仲裁を期待している。納得していないことを示すために戦う姿勢は見せる。しかし、仲裁が入ると、それ以上は争わない。
となると、人間よりゴリラは、よほど徹底した平和主義者ですね。人間は見習うべきです。人が住んでもいない領土をめぐって戦争をけしかけるなんて、「賢い」人間のすることではありませんよね。大変わかりやすい、いい本です。
(2012年8月刊。1000円+税)

風のひと、土のひと

カテゴリー:人間

著者   色平 哲郎 、 出版    新日本出版社 
 著者の元気のいい話を聞いたことがあります。
 大学を中退して世界を何年も放浪したなんて、すごい勇気がありますよね。臆病な私にはとても真似できません。お金もありませんでしたし、大学生のころ日本を出るなんて、一度も考えたことがありません。せいぜい東京から九州までどうやって安上がりに帰省しようかというくらいです。結局、夜行列車に乗って帰りました。まる一日、列車に乗っていた気がします。座席の下にもぐり込んで、新聞紙を敷いて、そのまま寝ていました。4人がけの席の下にもぐり込めたのです。
 著者は、長野で無医村だったような診療所で医師として働きます。大変だったようです。
 メディアの名医志向は、とどまるところを知らない。しかし、特定の名医でなければ病気は治らないというような報道姿勢は、ただでさえ崩壊現象が始まっている日本の医療を追い込むだけだ。
 長野県佐久地方には、「医療どろぼう」という言葉がある。医療保険のなかったころ、村民が医者にかかれば、診察料をごっそりとられた。現金収入の乏しい村民は、医者に診察してもらえば、「どろぼう」に入れられるようなものと覚悟を決めて往診を頼んだ。
 テレビでコメンテーターたちは、農産物をもっと安くしろと平気で言う。食料自給率が4割以下という危機的な状況や山林、野原、水源地の荒廃など、眼中にない。医療崩壊も、突きつめれば地方の農業崩壊、産業崩壊が原因だ。
 実は、地方にある医療部には地方出身者が少なく、大都市出身者が多い。都会で私立の中公一貫校や塾などに多額の投資をしたひとが地方の医学部に多く進学している。昨今の地方の切り捨てという風潮のなかで、地方に残ることを避ける傾向にある。
農村に医者が来ない、居つかない三つの理由。
 第一に、農村では勉強できず、技術が遅れて日進月歩の医学についていけなくなる。
 第二に、文化的環境から離れると子どもに医科大学に入学できるような教育を受けさせられない。
 第三に、村民は口うるさく、しかも、高給取りの医者を目の敵にする傾向がある。
果たして、現実はどうなのでしょうか・・・。
 書かれていることは、ごくもっともなことばかりでした。お医者さんも大変ですね。ともにがんばりましょう。
(2012年6月刊。1600円+税)

家族進化論

カテゴリー:人間

著者   山極 寿一 、 出版   東京大学出版会 
 人間とは何か、どういう生き物なのかを知るためには、サルやゴリラなど近縁の生き物との対比が欠かせません。
 狩猟採集民の研究が世界各地で進むにつれて、狩猟という生業様式が人間の攻撃性を高めるという考えは否定されるようになった。樹皮や葉を多く食べるゴリラは強大な大腸をもっている。主として果実を食べる霊長類の胃腸は比較的単純で短く、食物の消化時間も葉食の霊長類に比べて短い。
 ゴリラとチンパンジーは、同じ果実でも異なる利用の仕方をするため、両者が出会うことはめったにない。そして両者には敵対的な態度もみられない。どの場合も、先着したほうが食べ終わってその場を離れるまで後着したほうは待っていた。
 ゴリラは草食に、チンパンジーは果実食にあった採食戦略をもっている。
 ゴリラは、大量にあるけれど消化に時間のかかる葉や樹皮を補助食物にしたおかげで、草食動物のように群れ単位で採食することが可能になった。
 直立二足歩行がなぜ生まれたか。その一は、エネルギー効率を良くするため、その二は外敵への威嚇につかうため、その三は、食物を運ぶため。
 四足で歩くのに比べて敏棲性や速度こそ劣るが、時速4~5キロメートルで歩くとエネルギー効率が良いし、長い距離を歩くほどエネルギーの節約率が増す。また、直立二足歩行の利点は手を自由にしたことにある。
人間は食物の消化率を高めて、胃腸の働きを軽減した。そのため、胃腸にまわしていたエネルギーを脳に費やすことができるようになり、脳を大きくすることができた。胃腸の縮小と脳の増大はトレードオフの関係にある。
 食物を分配して一緒に食べるという行為は、人間以外の霊長類ではほとんど見られない。チンパンジーが食物を分配するのは、優位個体の社会的地位が仲間の協力と支持によって維持されているからだ。
 アフリカのピグミーの人々においては、大きな獲物を捕って還ってきた仲間を、村で待ちかまえていた人々が散々にけなす。なぜか?
 それは、肉の取得者に権威が集中するのを防ぎ、平等な社会を維持するための工夫の一つなのである。
ニホンザルのメスは、愛情に結びつかない時期は最優位のオスと交尾し、排卵日になると優位なオスの目を盗んで好みのオスと交尾する。メスは排卵日に限ってはお目当てのオスとだけ交尾をすることが可能なのだ。DNAによる父子判定によっても、けっして優位なオスがたくさん子どもを残しているわけではないことが分かっている。
乱交的な交尾は、どのオスにも自分の子どもと思わせ、オスから子どもの世話を引き出したり、群れ内のオスの数を増やして防衛力を高めようとしていると考えられる。
人間の女性も、排卵日が近くなると性的なパートナーの選択性が高くなる。そして、そのとき、いまのパートナーとは別のタイプの男性に性的魅力を感じる傾向がある。
霊長類社会では、育児や一緒に育った経験が交尾回避を引きおこす要因になっている。ギブツ(イスラエルの子育てシステム)の子どもたちは、一緒に育った異性の仲間の結婚の相手とはみなさない。
 私の子どもたちも、同じ保育園にいた仲間は恋愛そして結婚相手とすることはないし、大人になっても単なる親しい友人としてずっと交際しています。「おしめ仲間」とは結婚できないのですね。
ペアをつくるテナガザルや単独生活するオランウータンには、子殺しが報告されていない。そして、乱交的な交尾を好むボノボにも子殺しはみられない。
 チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは、自分とはちがう種の相手でも、その身体に同化し、相手の意図までそっくり模倣する能力をもっている。
人間と家族の機嫌を根本的に考える手がかりとなる本だと思いました。
(2012年6月刊。3200円+税)

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