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カテゴリー: 中東

軍事カメラマンの見たイラン

カテゴリー:中東

(霧山昴)

著者 柿谷哲也 、 出版 並木書房

 世の中にはいろんな職業があるものです。軍事カメラマンとして生計が成り立つものなのでしょうか…。それでも、著者のような人がいるおかげで、私のように居ながらにしてイランという国の一断面を知ることができます。ありがたいことです。

著者はイランを20回も訪問しています。そして、イランの泣く子も黙る革命防衛隊に3回に拘束されたのです。

それでも、著者はイランに心惹かれるといいます。イランと日本の距離は遠いとしか言いようがありません。でも、イランは「親日国」とみられています。

その理由の一つが「おしん」です。視聴率が90%だったというのですから、信じられません。イランはイラン・イラク戦争を戦った国です。太平洋戦争で、おしんの長男が戦死したシーンは、イラン女性すべてが泣いたとのこと。そして、「おしん」のオープニング曲はイラン人の好む音色と旋律だったのです。

アニメ「フランダースの犬」は「おしん」に次ぐ、日本作品のヒット作。イランでは何度も再放送され、知らない人はいない。犬を家族のように扱った作品なのに…。一般に、シーア派では犬は不浄の存在だ。それなのに…。

イラン・イラク戦争が終わったあと、大勢のイラン人が日本に出稼ぎにやってきました。1988年から1992年、日本でそれなりにお金を稼いで、イランに戻っていきました。いい思い出だったようです。上野公園あたりに不法滞在イラン人が大勢いると日本で問題になっていたことを思い出します。

著者は世界の81ヶ国を訪問したなかで、もっともいい国はイランだと断言します。

旅行者を騙すような悪い奴はイランには滅多にいない。ぜいたくせず、イスラム教シーア派の教義を守り、先祖を敬い、たくさんの子どもをつくり、人と仲良くのんびり生きる。町中でケンカを見ることもない。

ところが、日本人はイランで困惑してしまうことがある。算用数字がない。暦も独特で、世界共通の〇月〇日がない。

1980年から1988年までの8年間も続いたイラン・イラク戦争(イランでは、ジャング・エ・タフミーリーと呼ぶ)に、40歳代以上の男性はみな参加している。イランは、ペルシャ人が住む西アジアの国で、イランはシーア派の中心。

イランには、体制転換を狙う組織的な反政府組織はない。国民は、最高指導者の下で、平和で安定したイスラム教シーア派の教義にもとづいた平穏な生活を望んでいる。革命防衛隊は必要な存在であり、国民の敵ではない。そのことをアメリカは読み間違えている。

中東の人々は平和憲法をもつ日本に大いに期待している。

イランの一断面を知ることができる貴重な本と思いました。

(2020年8月刊、980円)

なぜ中東で戦争が終わらないのか

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 西谷文和 、 出版 かもがわ出版

ガザの悲惨な状況は活字でしか伝えられません。映像がまったく紹介されないのを不思議に思っていると、イスラエルが日本を含めて世界のジャーナリスト立入の取材を禁止しているからだということを知りました。著者もガザを遠くから眺めるだけの映像にとどまっています。本当に残念です。

イスラエルの多くの国民はガザの人々が水も食料もなく苦しんでいる様子を見て、笑いものにして喜んでいるというのです。これもまた残念な現実です。ガザに住むアラブ人をハマスと同視して、死んでしまえと叫んでいます。むごいことです。

この本には、ネタニヤフとハマスは、ずっと持ちつ持たれつの関係だとしています。むしろ、ネタニヤフがずっと首相であり続けたのはハマスのおかげ、そのためカタール政府と一緒になってハマスに資金を提供してきたというのです。恐るべきことです。でも、ありうる話です。単なるフェイクニュースとは片づけられません。

イスラエルは「ペガサス」という商品を開発販売して、各国に販売している。ペガサスは、ライバルのスマホに忍び込んで、会話や写真を盗み出すという、ハッキングツール。

イスラエルの諜報部隊モサドは、イランの防犯カメラや通信網を完全に把握していて、イランの要人の行動経路や生活スタイルをつかんでいた。イラン戦争初日に、ハメネイ師と革命防衛隊の幹部を一挙に殺害したのは、その「成果」。

しかし、ハメネイ氏らを抹殺すればイランの政治体制が変わるというアメリカの予想はまったく外れだ。イランには反体制派があってもリーダーはいない。労働組合も野党も大きなものはない。デモの核も母体もない。イランの宗教支配体制は複雑で頑強。

イスラエルはヨルダン西岸に住むパレスチナ人全員の情報を得ていて、誰が入り、誰が出ていくのか、リアルタイムで把握できている。

イスラエルはパレスチナ側にあえて危険な工場を立地させている。安全基準も環境基準も守らない。排煙に苦しむパレスチナ住民をあざ笑いながら操業し、利益はユダヤ社会に落ちる。

ネタニヤフは、アメリカのトランプと極右の国内世論に支えられている。

ハマスのテロ行為は絶対に許せません。でも、イスラエルのガザ攻撃はあまりに度を越しています。一刻も早く止め、ガザの人道的復興支援に日本は手を貸すべきです。

写真がたくさんあって、悲惨な現実の一端に触れることができました。

(2026年6月刊。1980円+税)

メソポタミアのボート三人男

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 高野秀行 、 出版 集英社

チグリス・ユーフラテス川は古代 三代文明発祥の地だと昔、学校で学びました。どうやら、最近は疑義が出ているようです。それはともかくとして、その源流に向かって、陸上ではなく、川を男2人がボートで漕ぎのぼっていく旅のレポートです。

私個人は、まったく冒険心がありません。臆病なので、石橋を叩いて、やっぱりやーめた、と言って渡らないタイプです。でも、冒険ものを読むのは大好きなのです。

著者の本は、全部では決してありませんが、いくつも読んでいます。『謎の独立国家ソマリランド」『バカの巨大湿地帯」『酒を主食とする人々」などです。

私の本棚をのぞいてみると、いくつもの冒険旅行があります。大竹英洋の『そして、ぼくは旅に出た』(あすなろ書房)には圧倒されました。服部文祥のサバイバル登山家としての体験記にも惹かれます。そして、角幡唯介です。『空白の五マイル』は読みながら思わず息を呑みました。

この本に戻ります。著者は25以上の言語に挑戦し、現地の人々と話しています。今では翻訳機能をもつスマホも活用しているようです。

現地でサズという楽器を購入し、それなりに弾いて現地の人々と交流に生かしているとのこと。

サズの演奏にあわせて、男たちは肩を組ませて踊る。クルドの踊りは、ほとんど手をつなぐか、肩を組む。

イスラム・シーア派の一派とされることが多い、アレヴィーという宗派があるのを初めて知りました。このアレヴィーの信徒はモスクに行かず、コーランを読まず、一日5回のお祈りをせず、ラマダンのとき断食をせず、そして酒を飲むのは自由。ええっ、そんなイスラム教徒がいるなんて、信じられません。ところが、トルコの人口の10〜20%を占めているとのこと。

アレヴィーには、トルコ人のアレヴィーとクルド人のアレヴィーがいる。アレヴィーの人の住むデルスィムでは、「男女の徹底した平等」「酒をタブー視しない」「犬を不浄とみなさない」という三つの特徴があるようです。アレヴィーの信者には、昔から左派が多い。アレヴィーやクルド人は共産主義に魅了されている。

トルコでは、国内のクルド人エリアを「クルディスタン」と呼ぶことが禁止されていて、タブーとなっている。

イラクでは、2023年に飲酒が公式に違法となったが、クルディスタンでは普通につくられ、販売されている。

イラクのクルディスタンはバルザーニーという一族が支配している。南部は、ライバルのタラバーニーという一族が支配する。

この本を読んで救われるのは、トルコ政府と激しく対立抗争していたクルド人の武装勢力が平和交渉に転換したということです。そうなんです。いつまでも武力抗争していては解決しないのです。

それにしても2018年に行ったときと、それから6年たって再訪したときの激変ぶりには、読んでいる方も驚かされました。でも、これって、日本でも恐らく同じことなんでしょうね...。

ユーフラテス川の源流を手こぎボートでのぼっていくなんて、よくぞ考え、それを実行したものです。無事に日本に帰れて、本当に良かったですね。おかげで、こんな楽しい旅行記を今回も読ませてもらいました。それにしても、家庭生活はどうなっているのでしょうか……。

(2026年6月刊。2420円)

ハンムラビ法典

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 中田一郎 、 出版 講談社学術文庫

「目には目を、歯には歯」といった報復主義刑法で有名なハンムラビ法典について、実際にそんなことが書かれているのか、知りたくて読んでみました。

もし、人がある人を殺人の罪で告発したが、その罪を立証しなかったら、その告発者は殺されなければならない。

もし、人が息子を産まなかった正妻と離婚しようとするなら、夫は妻にテルハトゥム相当の銀を与え、妻が実家から持した財産を元どおりにして返して離婚することができる。

もし、正妻が息子を産み、そして女奴隷も息子を産んで、夫が自分の子だからと正妻の息子と同等だとみなした上で、夫が死んだとき、正妻の子と女奴隷の子は父の財産を平等に分けなければならない。ただし、正妻の子のほうが先に自分の取り分を選び、取ることができる。

もし、職人が男の子どもを養育のために引き取り、その職人技(わざ)を子どもに教えたなら、その子との返還を要求されることはない。

もし、息子がその父を殴ったなら、息子の腕を切り落とさなければならない。

もし、人がアウィールム仲間の骨を折ったなら、彼らはその人の骨を折らなければならない。

もし、アウィールムが同等のアウィールムの歯を折ったなら、彼らは歯を折らなければならない。

もし、理髪師が奴隷の所有者の承諾なしに奴隷の目印の髪型を切り落としたなら、その理髪師の腕を切り落とさなければならない。

もし、船頭が船の防水化工事をしたが、信頼に足る仕事をしなかったため、その年のうちに船が傾き、欠陥が生じたなら、船頭はその舟を解体し、自分の財産で堅固につくり直し、堅固な船を所有者に与えなければならない。

古バビロニア時代、小作料は収穫量の3分の1がフツーだった。

バビロニア南部では、塩害に強いナツメヤシの栽培が重要な産業になっていた。

結婚は、花嫁が人法による支配権者である花嫁の父から新しい支配権者である花婿に引き渡されることをもって完成すると考えられていた。

ハンムラビ法典には一夫多妻制の例が見られる。第一夫人と第二夫人が姉妹であったり、第二夫人は第一夫人の奴隷であることは多かった。

ハンムラビ法典には、タリオンの原則、すなわち同害の原則があった。ハンムラビ「法典」碑は、1901〜02年にフランス発掘調査団がエラムの旧都スーサで発見した。現在は、パリのルーブル美術館に収蔵されている。大変興味深い内容で勉強になりました。

(2026年5月刊。1650円)

 日曜日の夕方、少し暑さがやわらいだので、庭に出て雑草を取ってコンポストに放り込んでいました。すると、突然、左手に鋭い痛みを感じます。大変な激痛です。これはハチだと察しました。たしかにアシナガバチが飛んでいます。痛いのはガマン出来るほどでしたので、まもなく作業を終えて風呂に入ったあと、ドクダミ酒をつけて様子を見ることにしました。

 すると、翌日午後から、左手はふくれあがりさらに夜になると、水ぶくれまで出てきました。

 連休明けに皮膚科に行き、処置してもらい薬を飲みはじめたら、どうやらおさまりました。

 すっかり忘れていましたが、昨年7月にもやはりハチに刺されるとカルテに書いてありました。アナフィラキシーショックが心配だと周囲からは脅されましたが、医師からは何も言われませんでした。だって、心配しようがありません。もちろん庭仕事は手袋をしています。

 ブルーベリーがたくさんなっていますので、ヨーグルトをまぜて、ハチミツをたらして美味しく食べました。

シオニズム

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 鶴見 太郎 、 出版 岩波新書

イスラエルのガザ攻撃など、イスラエルの横暴は目に余ります。 ネタニヤフ首相はパレスチナ人を根絶やしにするといって、かつてのナチスのユダヤ人絶滅の暴挙を思い起こさぜるをえません。

かつて、世界のユダヤ人の半数がロシア帝国に生活していた。 シオニズムは、19世紀終盤のロシア帝国領で生まれた。 

イスラエルの建国は、当初のシオニストからすると、期待以上の成果だった。 

イディッシュ語は、現在ではニューヨークのユダヤ人街など、ごく一部でしか使われない。 イディッシュとは、「ユダヤの」という意味。 

ヘブライ語は、アラビア語やアラム語と同じ、セム語族の言語であり、アラビア語と同じく右から左に書く。 

長いユダヤ史のなかで、ユダヤ人は特殊性こそが自分たちの売りであると考えていた。 宗教的には、ユダヤ人が神からの戒律を厳密に守ることが異教徒を含めた世界の救済につながるという立ち位置を自任していた。 これは他者を切り捨ててもいいという意味ではないということ。 そして、社会経済的には、他の人々があまり従事しない職種を生業にしてきた。 

ユダヤ教では、土曜日、正確には金曜日の夜から土曜日の日没までを安息日とし、労働が禁止される。 

1948年の時点で、6万5千人(当時のユダヤ人の7.5%)がキブツに暮らしていた。 2018年には17万1千人にまで増えているが、人口比率としては2%にまで低下している。

血縁的な縛りのないユダヤ人にとって、ユダヤ教は唯一の具体的な民族的基盤である。

西欧シオニストは資金力も技術力もあった。東欧シオニストにとって利用価値は高く、そのためシオニスト運動が大きく分裂するまでには至らなかった。

パレスチナにやってきた東欧ユダヤ人は、理論上は世界のユダヤ人の一体性を前提としていたはずだが、実際には、より「東方」のユダヤ人を同胞とは考えていなかった。

1918年ごろ、ユダヤ人の大量虐殺(ポグロム)を引き起こしたのはウクライナ民族主義者、そして白軍だった。赤軍は「もっともまし」な勢力として、ユダヤ人を多く受け入れた。ユダヤ人はブンド、そしてメンシェヴィキに多かった。ボルシェヴィキにはそれほど、ユダヤ人はいなかった。

ソ連はイスラエル独立宣言のころまでは、イスラエル建国にかなり好意的だった。ソ連は、中東におけるイギリス帝国の影響力を弱めようと画策しており、アラブ諸国はイギリスの手先だとソ連は考えていた。そこでパレスチナが分割されることでイギリスの面子がつぶれると考えた。冷戦が本格化すると、ソ連はイスラエルに次第に敵対的になった。

1948年9月に、イスラエルの代表としてゴルダ・メイルがモスクワを訪問したとき、多くのユダヤ人が歓迎のために参集した。それを知ったスターリンが怒った。

フランスは、イスラエルに秘密裏に武器を送った。

アメリカに住むユダヤ人は1881年に30万人だったのが、1926年には400万人に達した。そして、ユダヤ人同士の相互扶助に助けられて急速に階級上昇し、やがて中産階級となった。

イスラエルに渡ったホロコーストの生存者は、当初、沈黙を余儀なくされた。イスラエル社会は、その記憶に着目しようとしなかった。むしろ忌むべき記憶とみなし、ホロコースト生存者への差別的な対応をすることが多かった。ホロコーストに殺されたユダヤ人は、シオニストの呼びかけに耳を貸さず、旧態依然にとどまったため、自ら苦境を招いた者だとみられた。要するに、ホロコーストの被害にあったのは自業自得なのだ。いやあ、これには驚きました。同じユダヤ人であっても、これほど見方が異なったのですね……。まさか、今でも、こんなことを信じている人なんていないでしょうが……。

1961年に始まったアイヒマン裁判がイスラエルの社会を一変させた。それぞれに抵抗していたユダヤ人の存在に光が当てられるとともに、ホロコーストの犠牲者がみな無抵抗だったとする言説は後退していった。

キリスト教は、伝統的にユダヤ人に対して、「生かさず、殺さず」という態度をとってきた。ユダヤ教では、信仰よりも実践が重要であり、この点でイスラームに近い。

ともかく、一刻も早くイスラエル軍はガザ地区から撤退し、ガザ復興に取り組んでほしいものです。知らなかったことも多く、大変勉強になりました。

(2026年1月刊。1120円+税)

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