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西日本鉄道殺人事件

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西村 京太郎 、 出版 新潮文庫
 福岡から大牟田へと走る西鉄の特急電車の車内で91歳の元社長が殺された。
 ええっ、私もよく利用している特急電車のなかで殺人事件が起きて、その謎解きをしていくなんていうのが小説になるの…。
 まったく期待しないで読みはじめたのですが、意外や意外、けっこう読ませるのです。
 かつて三連覇に熱狂した西鉄ライオンズが出てきますし、ともかく鹿児島・知覧の特攻記念館と話が結びついていくのです。まあ、そうなると、ちょっと気になりますよね…。
 それにしても鹿児島へ行こうというのに、大牟田までの特急電車に乗り、大牟田駅で降りたら、かなり離れている新大牟田駅まで行って新幹線に乗るなんて、よほどのことがなければ、ありえないコース展開です。
 では、何をしに91歳の男性が知覧へ行こうとしたのか、そして、なぜ殺されなければならなかったのか…。これは、敗戦間近の知覧基地から飛び立った特攻機が関わっています。
 特攻機に乗っていたのは、学徒出陣した元学生、そして少年兵です。まったくの片道飛行ですし、もはやオンボロ飛行機しかなく、また、パイロットも訓練不足のまま、ともかく突っ込め…。日本軍は本当に生命を粗末にしていましたよね。そんな考えで戦争しても勝てるわけがありません。それじゃあ、何のため自分の生命を捨ててまで戦うか、わけが分からなくなってしまうじゃないですか…。
 特攻機は整備不良で飛べなかったり、エンジンに小石を投げ込んで不良機にしたり、整備優良機なのに、わざと不時着してみたり、いろいろあったようです。
 また、特攻兵が戦死することなく生き残って、戦後は西鉄ライオンズで活躍した人もいるようです。年代がそうなるのですね…。
 ということで、十津川警部シリーズは案外に読ませるものだから、シリーズものとして成功していることを実感しました。
(2020年1月刊。880円+税)

口笛のはなし

カテゴリー:日本史(戦前)

(霧山昴)
著者 武田 裕熙 ・ 最相 葉月 、 出版 ミシマ社
 口笛の世界チャンピオンに「絶対音感」の著者がいろいろ質問している面白い本です。
 口笛も指笛も周波数が高い。指笛だと数キロ先まで音が届く。女性が口笛を吹いてはいけないというのは文化を超えて世界共通。霊や悪運を呼ぶという。
口笛のコミュニティは狭いので、口笛を吹けると、世界大会やオンラインでつながって、世界中の人とつながる。
口笛は楽器で、口笛音楽は器楽。
ビートルズのポール・マッカートニーは、楽譜の読み書きが苦手だから、作曲するときは、ジョンと口笛を吹きあったと話している。
 アメリカには職業口笛奏者を養成する学校があった。1909年に設立され、1990年代まで続いた。
ディズニー映画に口笛は欠かせない。「夕陽のガンマン」で楽曲を担当したエンニオ・モリコーネは口笛をテーマ曲に使った。
 口笛は、今も科学的には完全に解明されていない。口の中で何が起きているか見えないので、説明できない。誰もが学べる教育システムが確立していない。
声道全体が楽器と考えられている。その中を空気が通ったときに、出口のところで小さな空気の渦ができて音が出る。さまざまな周波数の音の一部が口の中の空間と共鳴して、音程をつくる。
口笛はヘルムホルツ共鳴だとされてきたが、今では間違いだとされている。口笛は非常に独特な原理で鳴っている。口笛に一番近いのはフルート。気柱共鳴の一種で音が鳴っている。
 声にはいろんな波が混ざっているが、口笛は単純、純粋な音と言える。
男性も女性も口笛に違いがない。そこは歌と違う。口笛は声帯の振動を使っていない。だから、男と女で違いがない。下とあごで音程が決まっている。
口笛は自分で音をつくる作音楽器。口笛はバイオリンやトロンボーンと同じで、機械的に音程が決まっていない。
 口笛で和音が吹ける。一人でハモれる。
 ハーモニカと同じで、吸っても音が出る。息継ぎをしないでずっと演奏が出来る、夢のような楽器。日本には全国各地に口笛教室がある。これは世界的には珍しい。
「上を向いて歩こう」の坂本九は、自分で口笛を吹いている。
 いやあ、口笛のことを初めて知りました。口笛が上手に吹ける人が、歌のほうは音痴だということもあるそうです。
 この本にはQRコードがのっていますから、聞いてみました。すごいです。読んで聞いて楽しい本でした。
(2025年2月刊。2200円)

酒を主食とする人々

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 高野 秀行 、 出版 本の雑誌社
 アフリカに酒を主食とする人々がいると聞いて、著者はテレビ局に企画を持ちかけ、「クレイジージャーニー」として実現させました。そこで、ロケハンなしのぶっつけ本番の取材に出かけるのです。はてさて、本当にそんな人々がいるのでしょうか…。
 しかし、実際に、酒を主食とする人々がエチオピアにいたのでした。信じられませんが、この本を読むとその事実を受け入れざるをえません。
まずは、マチヤロ村に住むコンソの人々。ここでは、お母さんも13歳の女の子も一緒に楽しく酒を飲む。穀物やイモを原料としてつくるチャガのつくり方はわりと簡単で、手間も少ない。
 コンソの女性は、水を一切飲まない。朝にコーヒー茶を500mlほど飲むだけで、あとは酒で水分を補給している。その理由の一つは、水そのものが貴重だから。女性の主要な仕事の一つが水汲み。ここは、水不足の厳しい土地。
 食事に固形物は少なく、モリンガと豆とソルガム団子だけ。肉も油もゼロ。あとは、チャガをまるでお茶のように飲む。すると、満腹にもならない代わりに空腹にもならない。常に腹五、六分目くらい。それで身体の調子がいい。体が軽い。
 チャガは濁り酒。韓国のマッコリのよう。いや、もっとどろっとしている。穀物の殻のようなものがノドに引っかかる感じもある。そんなにグイグイとノドを通らない。そして、想像以上に胃がもたれる。
次は、デラシャ。13万人のデラシャ人が住んでいる。デラシャのお酒はパルショータ。チャガはわずか3日で出来るのに、パルショータは、つくるのに1ヶ月以上もかかる。2回、発酵されてつくる。
デラシャでは7歳の子どもが丸一日、ビールと同じくらいの度数の酒を500ml缶を4~5本も飲んでいる。しかも、他に何も食べてないし、水も飲まない。
 いやいや、まさか、まさかでしょう…。この現実を自分の眼で見て著者は「幻の酒飲み民族は実在した」と実感したのでした。
パルショータは、食事と水を兼ね備えた、スーパードリンク。パルショータは濁り酒なので、一度にそれほどたくさんは飲めない。そこそこ飲むと、満腹ではないけれど、「満足」してしまう。デラシャの人たちは、1人で5リットルは飲んでいる(らしい)。
 デラシャの人々が、大人ばかりでなく、子どもの一部も、酒を主食としているのは間違いない。驚くべきことに、毎日、朝から晩まで酒を飲んでいても、生活はちゃんとまわっていく。
 デラシャ地区にある病院へ行って、酒と人々の健康との関係を尋ねてみると…。
 「デラシャ人の健康状態は、他よりも良好で、何も問題ない」
 「体格はいいし、筋肉量も多い」
 「デラシャ人に病気が多いということはない」
 「デラシャでは子どもの栄養失調はきわめて少ない」
 パルショータは、イネ科トウモロコシ属のソルガムという穀物からつくられる濁り酒。ソルガムは日本ではトウモロコシとかコーリャンと呼ばれる。アルコール度数は3~4%ほど。ソルガムはアフリカでは主食として広い地域で食されている。それで、稲、小麦、大麦、トウモロコシと並んでいて世界五大穀物の一つ。普通は粉にしたものを煮たり、ふかしたりして、柔らかい団子か餅みたいな形態(練り粥、ねりがゆ)にして食べる。それだけだとデンプン質ばかりで栄養が足りないけれど、発酵させて酒にすると、タンパク質を構成するための必須アミノ酸などが生じ、人間が生きるに十分な栄養をまかなえるようになる(と言われている)。
 パルショータは食事。気晴らしや娯楽のために飲んでいるのではない。病院に入院している患者もパルショータを飲んでいるし、妊婦も同じく飲んでいる。つまり、デラシャ人は生まれる前からお酒(パルショータ)を飲んでいる。
 たくさんのカラー写真があるので、イメージも湧いてきます。ともかく、世の中には、とても信じられないような生活をしている人々が実在することを知りました。面白い本です。どうぞ読んでみてください。
(2025年2月刊。1980円)

宇宙のおしごと図鑑

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 林 公代 、 出版 KADOKAWA
 この本を読むと、すでに宇宙をめぐるビジネスが日本にもあるんですね。そして、宇宙弁護士までいるというのに驚かされました。たとえば、宇宙空間を漂流しているスペースデブリ(ゴミ)の回収がビジネスになっています。いったい、誰が費用負担してくれるのでしょうか…。
 宇宙食といえば、このコーナーでも前に紹介しました若狭高校の高校生たちがサバの缶づめを宇宙食として納入しています。同じように、小学4年生のときから宇宙食「みかんゼリー」を開発を試みて成功した若い女性が登場します。ほどよい「とろみ」にするのが大変だったとのこと。無重力状態では、血液が頭のほうにのぼって、鼻が詰まったように感じるので、濃い味つけが好まれるそうです。すでにISSではラーメンを食べることが出来ています。
宇宙コスメ(化粧品)では、アルコール成分は発火する危険があるので、使えないそうです。宇宙船のなかでは乾燥しやすいので、肌がしっとりする成分の入ったクリームが喜ばれるとのこと。
 ISSには風呂もシャワーもない。そのため、シャンプーをしみこませた突起型のシートでマッサージしながら、洗髪する。飲みこめる歯みがき粉。汗を取り除いてさっぱり感が得られるボディ用ペーパー、水を使わず選択できる製品…。いやあ、どれもすごく工夫しているんですね。
惑星防衛隊というのは、地球に小惑星が衝突したことは何回もあるわけですので、必要ですよね。恐竜大絶滅ならぬ、人類大絶滅は回避してほしいです。
 宇宙飛行士を選抜する試験は5年に1回しかないそうです。これまで宇宙飛行士として活動した同じ人が何回も行っているのは、不思議です。どんどん新人を送り出して世代交代していけないものかと思うのですが…。
 宇宙飛行士の選抜試験は1年かけるそうです。そのなかには、1週間も閉鎖空間に缶詰め状態になって、数人が共同生活しながら、外にいる試験官と面接テストを受けるそうです。これは大変です。4千人をこえる応募者から2人が選ばれたとのこと。ぜひ、がんばってください。
宇宙空間まで、あのインチキで高慢、そして超富豪のイーロン・マスクに牛耳られたら大変です。超大金持ちが宇宙を大もうけの材料にするのは絶対に許せません。
宇宙のおしごと図鑑とあるだけに、多方面の仕事ぶりを垣間見た思いがする本です。
(2025年3月刊。1650円)

ルポ軍事優先社会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉田 敏浩 、 出版 岩波新書
 いま、日本は急速に戦争する国、出来る国に向かっています。大軍拡の予算は5年間で43兆円というのですが、実はそれではすみそうもありません。これは、福祉や教育など、私たちの毎日の生活を支える予算を切り捨てていくことに直結しています。
 ところが、この大軍拡予算に賛成しながら「手取りを増やす」という耳ざわりの良いキャッチフレーズで支持を急増させた政党があります。不倫騒動でしばらく活動を制限されていた代表は、今や30代、40代の男性に抜群の人気だそうです。こんなの明らかに間違いです。まさしく誤った「印象操作」そのものです。
 軍事費の増大は、防衛産業と呼ばれる軍需(兵器)産業に莫大な利益をもたらす。業界は、「ミサイル特需」ともいわれるブームに沸き立っている。武器輸出も促進されているので、日本もアメリカと同じく「死の商人」国家に変質しようとしている。
 軍事費の膨張は、アメリカ製兵器の「爆買い」による兵器ローンの増大を伴う。
 右肩上がりの軍事費増のしわよせは、増税や社会保障費の抑制・削減など、国民負担の増大をもたらす。軍事予算大増強のもとでは、憲法が保障する生存権・社会保障は圧迫、侵害されるばかり。
 日本社会、私たち国民は、いま、「ミサイルか、ケアの充実か」の選択を問われている。
 大分に敷戸(しきど)弾薬庫がある。JR大分駅から南6キロで、周囲は住宅街で大学・小学校、病院そして商業施設などもある。ここに大型弾薬庫が増設されようとしている。
 防衛費(軍事費)の弾薬庫整備費は2千億円台だったのが、2023年度は一挙に8千億円をこし、2024年度は9千億円が計上された。
 全国1400棟の弾薬庫を10年間で130棟も増やす。敷戸弾薬庫は、地中トンネル式。長射程距離ミサイルは2000~3000キロの射程なので、中国本土が十分に狙える。なので、この長射程ミサイルは専守防衛に徹する装備ではなく、先制攻撃に使える。
自衛隊は島を守るというけれど、その守る対象は領土・領海であって、住民ではない。
 台湾有事に巻き込まれたとき、自衛隊に住民を避難させる余力はない。これは自衛隊幹部のコメント。自衛隊は、米軍の後方支援を最優する。政府は台湾有事のとき、先島諸島の住民12万人を九州・山口に避難させるという。しかし、それだけの飛行機や船を本当に確保できるのか、病人や要介護の老人はどうするのか、机上の空論ではないのか…。
自衛隊は司令部を地下にするという。住民を放っておいて自衛隊だけ助かろうとしている。
 富古島には、既に多機能型感染患者搬送袋が備蓄されている。遺体収容袋だ。
アメリカ追随の軍事一辺倒では、国の進路を誤る。
 いま、日本の自衛隊は慢性的な人員不足の問題をかかえている。兵士(士)の充足率は68%でしかない。新規模採用は募集計画の50%超にとどまっている。そのうえ、中途退職者が増えている。この十数年間で倍増した。そのため、自衛隊は適齢者情報を地方自治体から得て募集をかけている。
 日本の軍需産業の三大手企業は、三菱重工、三菱重機と、IHI。武器の共同開発といっても、結局のところ、資金力も技術力も武器輸出の実績もまさる巨大なアメリカの軍需産業の主導下に日本企業は組み込まれるだろう。それは、アメリカの軍産業複合体に従属し、その国際的な武器輸出ネットワークに組み込まれることを意味する。そして、防衛省、自衛隊の幹部の定年後の務める先は、三菱重工(20人)、IHI(20人)、三菱重機に38人。そして、三菱重工から自民党へ過去10年間に3億3千万円の政治献金があったという。
 嫌ですよね、軍人が威張っている世の中なんて…。
                        (2025年2月刊。960円+税)

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